ポリネシア人 ポリネシア人の概要

ポリネシア人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/15 16:16 UTC 版)

ポリネシア人
Polynesian
ポリネシア人の男性
居住地域
ポリネシア
言語
ポリネシア諸語英語
宗教
キリスト教

言語

ポリネシア人の話すハワイ語タヒチ語ラパヌイ語マオリ語サモア語トンガ語などは互いによく似ており、オーストロネシア語族の中の枝先にあたる一分派を構成している。地理的にやや離れた域外ポリネシアの諸言語(ヌクオロ語レンネル語英語版など)もここに含まれる[1]

言語の伝播変遷や相互関係についてはよくわかっていないが、台湾マレーシアを起点として海上交易などの交流を経る過程で南東に拡散していったと考えられている[3]。音韻組織の平易さに特徴を有し、一般に動詞、名詞、形容詞に形態上の差異が無く、音節は全て開音節である[1]

ルーツと移民の流れ

ポリネシア人の拡散
ポリネシア人のカヌー

トール・ヘイエルダールが唱えた南米からの植民説、ベン・フィニー英語版らが唱えたアジアからの植民説があるが、1975年にハワイで建造された双胴の航海カヌーホクレアによる数々の実験航海や、言語学的・人類学的な各種の検証により、現在では東南アジア説が定説となっている。

ポリネシア人の祖先はオーストロネシア語を話すモンゴロイド系の民族で、元々は華南台湾にいたのだが、その一部は紀元前2500年頃に南下を開始し、フィリピンを経て紀元前2000年頃にインドネシアスラウェシ島に到達する。ここからニューギニア島沿岸、メラネシアへと東進する間にパプア先住民メラネシア先住民と混血し、ポリネシア人の始祖となる。この先住民は5万年前に出アフリカ後にインドを経てやってきたオーストラロイドに属す人々で、アボリジニと同祖である。従ってポリネシア人はモンゴロイドオーストラロイドが混ざった人種である。

原ポリネシア人(ラピタ人)は進路を東に進め、紀元前1100年頃にはフィジー諸島に到達する。現在ポリネシアと呼ばれる地域への移住は紀元前950年頃からで、サモアやトンガからもラピタ人の土器が出土している。サモアに到達した時点 でラピタ人の東への移住の動きは一旦止まるのだが、その間に現在のポリネシアの文化が成立していったと考えられている。

再び東への移住を開始するのは紀元1世紀頃からで、ポリネシア人たちはエリス諸島やマルキーズ諸島、ソシエテ諸島にまず移住した。その後、ソシエテ諸島を中心に300年頃にイースター島、400年頃にハワイ諸島、1000年頃にクック諸島ニュージーランドに到達した。ポリネシア人の移住の動きはこれ以降は確認されていないのだが、ポリネシア人の主食のひとつであるサツマイモ南米原産であり、西洋人の来航前に既にポリネシア域内では広くサツマイモが栽培されていたため、古代ポリネシア人は南米までの航海を行っていたのではないかと推測されていた(ポリネシア#歴史を参照)。この説については長らく論争があり、サツマイモの到達が人類以前であるといった反証もあるが、言語学的類似などの謎も残っている[4]

mtDNAの研究からは、より早く東南アジアに到達した先住民であるオーストラロイドの血も引いていることがわかっている[5][6][7]Y染色体の研究では、ポリネシア人はパプアメラネシア人東アジア人の混血であることが判明している(パプア・メラネシア人由来のCMSK*が併せてが6~7割、東アジア由来のOが2~3割ほどである[8][9])。常染色体の研究ではメラネシア人起源は21%、東アジア人起源が79%である[10]。別の研究では、ポリネシア人はメラネシア人よりもミクロネシア人台湾先住民東アジア人に近縁であるとの結果が出ている。これはポリネシア人がパプア・メラネシアに長くとどまらなかったために、混血があまり進んでいないと結論される[11]。ポリネシア人の拡散と関連するミトコンドリアDNAハプログループB4a1aは東アジア由来である[12]

社会

伝統社会

ポリネシアの伝統社会は、地域によってかなりの差異がある。

原始的な狩猟採集民の社会もあれば、焼畑農業を行う社会もある。集約的・大規模な農業を行い、灌漑施設を充実し、世界的にみても高い人口密度を有する社会もあった。

主な農作物としては、タロイモヤムイモバナナココヤシパンノキサツマイモなどが挙げられるが、上述の通り農業技術の地域差があり、気候的にも亜寒帯から熱帯にまたがるため、それぞれの地域に即した作物が栽培、ないし採取された。漁業についても、釣り針すら持たない社会もあれば、大規模な人工池を作り養殖漁業を行っている社会もあった。家畜は、イヌブタニワトリの3種に限られ、地域によってはその3種のうちの1か2しか伝播しなかった。

社会的には多くの島では自給自足であったが、中には高度な分業社会を形成し、農耕の傍らであるが物品製造に従事し、その技術を世襲で受け継ぐ職人階級を形成した社会もあった。

モリオリ人のように極めて平等で上下関係の存在しない社会もあれば、ハワイのように厳密な階級が存在する社会もあった。階級社会が厳密な場合は、異なる階級の通婚が(時として近親婚を行っても)厳しく規制された例もあった。政治権力が存在する場合は、単一の島に単一の政治勢力しか存在しない場合もあれば、複数の政治勢力が分立する場合もあった。トンガ大首長国のように、侵略戦争用の軍隊を持ち、他島に駐留し、多数の島々にまたがって政治支配を行う社会もあった。

社会の形成に比例して、それぞれの地域での宗教にも差異があった。高度な政治・階級社会を形成した場合においては宗教も厳格化され、厳しい戒律(ハワイにおけるタブーなど)を作った。

現代のポリネシア

ニュージーランド以外の大多数の島々は収入を外国の援助と国外居住者からの送金に頼っている。若者は収入が得られ仕送りが出来る土地へ出稼ぎに行こうとする傾向が ある。イースター島のように観光で補う所も多い。ツバルはインターネットドメイン名の「.tv」を売っている。クック諸島は切手販売に依存している。非常 に少ないが西洋文明到来前の生活を送っている島もある。


  1. ^ a b c d e 矢野1990
  2. ^ 『銃・病原菌・鉄――1万3000年にわたる人類史の謎(上・下)』ジャレド・ダイアモンド倉骨彰訳 (草思社, 2000年)
  3. ^ 近藤2005:1
  4. ^ Davis, Nicola (2018年4月12日). “Tests on Captain Cook's sweet potato fuel row over how crop reached Polynesia” (英語). the Guardian. 2018年9月9日閲覧。
  5. ^ Dr. Martin Richards. “Climate Change and Postglacial Human Dispersals in Southeast Asia”. Oxford University Press. 2015年7月20日閲覧。
  6. ^ New DNA evidence overturns population migration theory in Island Southeast Asia”. Phys.org (2008年5月23日). 2013年5月25日閲覧。
  7. ^ Australoid mtDNA and Y-DNA in Southeast Asians and Austronesians”. AnthroScape: Human Biodiversity Forum. 2015年8月8日閲覧。
  8. ^ Scheinfeldt, L.; Friedlaender, F; Friedlaender, J; Latham, K; Koki, G; Karafet, T; Hammer, M; Lorenz, J (2006). “Unexpected NRY Chromosome Variation in Northern Island Melanesia”. Molecular Biology and Evolution 23 (8): 1628–41. doi:10.1093/molbev/msl028. PMID 16754639. 
  9. ^ Kayser, M; Brauer, Silke; Weiss, Gunter; Schiefenhövel, Wulf; Underhill, Peter; Shen, Peidong; Oefner, Peter; Tommaseo-Ponzetta, Mila et al. (2003). “Reduced Y-Chromosome, but Not Mitochondrial DNA, Diversity in Human Populations from West New Guinea”. The American Journal of Human Genetics 72 (2): 281–302. doi:10.1086/346065. PMC 379223. PMID 12532283. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC379223/. 
  10. ^ Kayser, Manfred; Lao, Oscar; Saar, Kathrin; Brauer, Silke; Wang, Xingyu; Nürnberg, Peter; Trent, Ronald J.; Stoneking, Mark (2008). “Genome-wide analysis indicates more Asian than Melanesian ancestry of Polynesians”. The American Journal of Human Genetics 82 (1): 194–198. doi:10.1016/j.ajhg.2007.09.010. 
  11. ^ Friedlaender, Jonathan S., Françoise R. Friedlaender, Floyd A. Reed, Kenneth K. Kidd, Judith R. Kidd, Geoffrey K. Chambers, Rodney A. Lea et al. "The genetic structure of Pacific Islanders." PLoS genetics 4, no. 1 (2008): e19.
  12. ^ Assessing Y-chromosome Variation in the South Pacific Using Newly Detected, By Krista Erin Latham [1]
  13. ^ モンゴロイドの形成 Archived 2013年9月6日, at the Wayback Machine. 九州大学総合研究博物館のサイト。2012年12月16日閲覧。
  14. ^ 崎谷満『DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史』(勉誠出版 2009年)
  15. ^ 正確には1.8倍(レントゲンによる目視も可能であった)『パワーの楽園超人王国』(THE独占サンデー)にて。
  16. ^ やしの実大学:ミクロネシア講座財界
  17. ^ 片山一道『身体が語る人間の歴史 人類学の冒険』筑摩書房、2016年、187頁。ISBN 978-4-480-68971-9 
  18. ^ Streib, Lauren. World's Fattest Countries. Forbes. 2007年2月8日.
    この調査では世界194ヶ国が対象となり、BMIが25以上の人が総人口に占める割合を「肥満率」とした。上位10ヶ国は1位: ナウル、2位: ミクロネシア、3位: クック諸島、4位: トンガ、5位: ニウエ、6位: サモア、7位: パラオ、8位: クウェート、9位: アメリカ合衆国、10位: キリバスの順。日本は163位であった。
  19. ^ シアトルPI英語版『ちっぽけなアメリカンサモアから来た天才選手らがフットボールの様相を一変させている』 (英語)
  20. ^ シドニー・モーニング・ヘラルドIs Fotu, 9 and 85kg, too big for his teammates' boots? (英語)


「ポリネシア人」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ポリネシア人」の関連用語

ポリネシア人のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ポリネシア人のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのポリネシア人 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS