ホットケーキ 記念日

ホットケーキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/15 06:35 UTC 版)

記念日

1902年(明治35年) 1月25日に北海道の旭川気象台において日本の観測史上最低気温(-41.0℃)を記録したことから、寒い時期にこそホットケーキで温まってほしいとの願いを込めて、ホットケーキミックスのメーカーである森永製菓が記念日を申請し、日本記念日協会によって1月25日が『ホットケーキの日』として制定された[5]

また『ホットケーキの日』とは異なるもので、主に英国アイルランドカナダオーストラリアニュージーランドなどの聖公会やそのほか一部プロテスタントカトリックなどの国々で行われている『パンケーキ・デイ: Pancake Day)』も存在する。イエス・キリストの復活を祝うイースター前の四旬節に行われる食の節制に先駆けて、卵、牛乳、砂糖などカロリーの高いもの、またすぐに傷んでしまうものをすべて食べてしまうというものから、パンケーキを作ったのが始まりと言われている。記念日というよりも宗教的な行事であるが、現在ではパンケーキを楽しむ日として定着している[6][7]

日本のホットケーキ

喫茶店のホットケーキ
スフレパンケーキ

歴史

1884(明治17)年にウィルレム・チャンブルが編纂し文部省が翻訳した「百科全書 中巻」(丸善商社出版社)の食物製方の章に“薄餅”と書かれたパンケーキのレシピの記述[8]があり、その20年後の1904(明治37)年に、ボーカス・ディキンソンの西洋料理専門書「常磐西洋料理」(常盤社)で、“パンケーク”というレシピの記述がある[8]ことから、ホットケーキ(パンケーキ)がはじめて日本に伝わった時期は、明治時代とする説が有力である。

ホットケーキ(パンケーキ)が日本で一般に知られるようになったのは、デパートの食堂で取り扱われるようになってからと思われる。1923(大正12)年に、東京・日本橋の三越デパートの食堂でハットケーキという名前で登場し[8][9]バターメープルシロップで食べるものとして提供されていた[8]。そのため、ホットケーキ=スイーツとして定着した[10]

ホットケーキ(パンケーキ)がさらに親しみやすいものとなったのは、誰でも手軽に作れる家庭用ホットケーキミックスが登場したためである。1931(昭和6)年に、最初のプレミックス(ホットケーキの素)「ホームラック(ホーム食品)」 が発売され[11]、1957(昭和32)年12月に森永製菓から加糖タイプの 「森永ホットケーキの素」が発売されている[12]。甘味のあるホットケーキミックスは注目を集め、1962~64年にかけて合計で20 社近くのメーカーが、ホットケーキ市場に参入し 加糖タイプの商品を発売したことで、ホットケーキの一大ブームが訪れた[11][13]

ホテルのブレックファストメニュー、デパートのお好み食堂のデザート、そして喫茶店パーラーのスイーツとして日本のパンケーキは「ホットケーキ」というスタイルで発展した[13]

平成に入ると、外食業界でパンケーキブームが起きた。2008(平成12)年に鎌倉の七里ガ浜にオープンした「bills」は、オーストラリア発のレストランであり、リコッタパンケーキが有名になった[13][14]。さらに2010(平成14)年にはハワイから「Eggs’n Things」が上陸し、山盛りの生クリームのパンケーキがSNS映えすると人気を博した[13][14]

海外から上陸したパンケーキが人気となる一方、昔ながらの喫茶店で食べるホットケーキは、再び人気が高まっている。コロナ禍で「巣ごもり需要」が高まった2020年春以降は、ホットケーキミックスが品薄になるという現象も起きた[14]

ホットケーキミックス

プレミックス」(Prepared Mix=調整粉)の一つである「ホットケーキミックス」は、小麦粉(主に薄力粉)をベースにして、糖類砂糖ぶどう糖、粉末水あめ麦芽糖)、ベーキングパウダーでん粉食塩油脂乳製品香料などからできている[15]

さまざまな種類のものが販売されていて、小麦や卵などのアレルゲンを使用していないものや、米粉大豆粉を原料とするグルテンフリーのものなど多種多様である[16]

また、ホットケーキミックスを使用したメニューは多彩である。手軽にホットケーキが作れるのはもちろんの事、基本食材として応用範囲は広く、レシピ検索サイトなどでホットケーキミックスを検索すると、掲載されているレシピは多く、その数は増え続けている。ホットケーキミックスは、日常に欠かせない万能食材になっている[17]

防災備蓄としてのホットケーキ

おやつや食事にも幅広く食べられているホットケーキは、食材の限られる非常時にも、水とホットケーキミックスがあれば作ることができるため、日常生活で消費しながら防災備蓄としても備蓄出来るローリングストックに最適である[18]

ボウル計量カップなどが不要で、袋の中でホットケーキの生地を作り、絞り出して使うことができる商品もあるので、災害時に水の確保が難しい時にも、パッケージを捨てるだけで済み、後片付けが少なくて済みそうである[19]

ホットケーキと文学

ホットケーキをこよなく愛した作家・池波正太郎は『むかしの味』(1981年1月)[9]、『ル・パスタン』(1986年11月)[20]など自身の著作にホットケーキを登場させていた。池波以外の作家の作品にも、三島由紀夫の全四巻からなる『豊饒(ほうじょう)の海』 第四巻の「天人五衰」 (1971年2月)[9][21]村上春樹の『風の歌を聴け』(1979年7月)[9][22]にもホットケーキは登場する。

どら焼きとホットケーキ

大正時代には現在と同様のホットケーキのようなどら焼きが誕生したとされる。第二次世界大戦後しばらくはどら焼きとホットケーキは混同されていたようであり、長谷川町子漫画サザエさん』にてサザエが「どら焼きを焼く」と言ってホットケーキを焼いていたシーンが描写されている[23]

どら焼きを製造する和菓子店の系列カフェでは、時間限定で焼き立てのどら焼きの皮をパンケーキとして提供しているところもある[24][25]

各国のホットケーキ

ガレット

ホットケーキ状の食品は世界中の様々な国で見られ、特に欧米に多い。地域によって材料や配合、作り方が異なることがあり、クレープやケーキ、プディングに近いもの、食事用の甘みが少ないものなどがある。特に独立した記事があるものを以下に挙げる。

北米

ブルーベリーパンケーキ
ハムエッグとパンケーキ

アメリカ合衆国とカナダのパンケーキは卵、小麦粉、牛乳もしくはバターミルクを原料とし、膨張剤としてベーキングパウダーと重曹を加える。砂糖を少量入れることもある。これらを混ぜ合わせて作った生地を熱した鉄板などの上に流しこみ、約1センチメートルの厚さにして焼く。膨張剤から発生した泡が生地の上面に上がってきたら、ひっくり返してもう片方の面も焼く。焼き上がったホットケーキの表面は明るい色をしており、メープルシロップ、バター、ピーナッツバター果物などを添え、朝食として食べられることが多い。生地自体にブルーベリーイチゴチーズベーコンバナナチョコレートチップを加え、甘みや香りをつけることもある。さらにナツメグシナモンのような香辛料、バニラオイルのような香料を入れるものがある。カナダでは、フランス語の会話で単にクレープというとパンケーキを指す。

アメリカ国内では主にパンケーキ(pancake)と呼ばれるが、ホットケーキ(hotcake)、グリドルケーキ(griddle cake)、フラップジャック(flapjack)といった名称もある(グリドルとは料理用の鉄板の意味である)。「シルバーダラー・パンケーキ」(silver dollar1ドル硬貨)といえば直径約7cmの小型のホットケーキのことである。

北米ではパンケーキを主力商品とするチェーンレストランにアイホップ(IHOP、インターナショナル・ハウス・オブ・パンケークス)があるほか、デニーズなども朝食メニューにパンケーキを置いている。

アメリカ・バーモント州を発祥とするバーモント・パンケーキは小麦粉と一緒にオートミールもしくは蕎麦粉を加え、ベーキングパウダーを多めに入れて焼く。焼き色が濃くなることとそば粉の香りが強く出ることが特徴で、食感も小麦粉だけのパンケーキとは異なる。

アメリカ合衆国にはまた、ホーケーキ(hoecake)やジョニーケーキ(jonnycake)というコーンミールのパンケーキがある。

メキシコではパンケーキはパンケーケ(スペイン語: panqueque)と呼ばれ、アメリカ合衆国のパンケーキと似ているが、材料に小麦粉ではなくトウモロコシの粉を用い、「パンケーキ」よりも「ホットケーキ」という呼び名の方が一般的である。レストランの朝食の定番メニューであり、路上の屋台やお祭りで一日中売られていることもある。パンケーケ一枚にコンデンスミルクフルーツジャム、甘い山羊乳カヘタといったさまざまなソースをかけて食べる。

ヨーロッパ

スロバキアパラチンキ (Palacinky)      
オーランド諸島フィンランド)のオーランドパンカカ(Ålandspannkaka)

イギリスのパンケーキは日本や北米と同じく材料に卵・小麦粉・牛乳を使うが、牛乳が多いために生地がより水っぽい。また、膨張剤を入れないので、フライパンなどで焼いても膨らまず、フランスのクレープに近い、薄いホットケーキになる。色は薄い茶色で、泡の跡が焦げ茶色に残る。砂糖をまぶしたりシロップをかけてデザートとして供するほか、他の食物を巻いて食事として食べることもある。同じ生地でヨークシャー・プディングが作られる。

ドイツのプファンクーヘン(ドイツ語: Pfannkuchen)は、イギリスのものと同様である。ジャム入りドーナツをプファンクーヘンと呼ぶ地域では、アイアークーヘン(Eierkuchen:卵ケーキ)と呼ばれる。このほか、クレープに似たパラチンケ(Palatschinke)やプリンゼン(Plinsen)もある。

オランダのベーコンとゴーダチーズのパンネクック

オランダフランドル地方のパンケーキはパンネクック(オランダ語: Pannenkoek)と呼ばれ、主に昼食や夕食に食べる。クレープよりもわずかに厚く、また直径30cm以上にもなる大きさが特徴である。生地は卵がベースで、リンゴチーズハムベーコンショウガの砂糖漬けなどを入れて焼く。何も入れずに焼くこともあり、砂糖をまぶして食べる。パンネクック・レストランでは様々な種類のパンネクックを提供しており、家族向けの店として人気がある。他の地域のパンケーキと比べて変わっており、値段も手ごろなことからオランダ名物料理として国外からの観光客に人気がある。このほか、オランダには丸い小型のポッフェルチェがある。

ロシアのパンケーキはブリヌイと呼ばれ、伝統的に四旬節前のマースレニッツァ(バター週間)にスメタナキャビアを載せて食べる。より薄いクレープ状のパンケーキはブリンチキと呼ばれる。

アジア

香港

香港のドリアンパンケーキ

中国香港はイギリスの植民地であったため、イギリス風の薄いパンケーキ(広東語で「班戟」)をホテルや茶餐廳などの飲食店で朝食などに供している。近年は、これとは別に極薄に焼いたパンケーキを使ったデザートが広く食べられている。 ハネムーンデザート(Honeymoon Dessert、滿記甜品)というチェーン店は、果肉と生クリームを包んだマンゴーパンケーキ(芒果班戟)、ドリアンパンケーキ(榴蓮班戟)を考案して人気を呼び、現在は海外展開もしている。 デザートプレーグランド(Dessert Playground、沛公甜品)という店は「千層班戟」という、クレープと生クリーム、フルーツソース、果肉などを10-15層重ねたミルクレープで人気がある。

マカオ香港広東省などで作られている「蛋卷」(ダンジュアン dànjuǎn、広東語 ダーンキュン daan2gyun2)は、甘めの薄いパンケーキに似た生地をじっくり焼いて水分を飛ばし、焼き上がり後に円筒状に巻いた菓子である[26]

台湾

台湾では、ホットケーキを鬆餅(ソンビン)と呼ぶ。ホット・チョコレートアイスクリームで付けて食べるのは普通のカフェ店の定番といわれる。

韓国

韓国のホットク
ホットクの中身

韓国では伝統的な韓国風ホットケーキはホットクと呼ばれ、主に冬季、間食系の屋台などで売られている、安価で庶民的な菓子料理である。一言でいえば、中に甘いが入ったホットケーキのようである。また、アメリカ式のホットケーキは三つのホットケーキを重ねて、中身はイチゴ、生クリーム、蜂蜜を加えて、オレンジジュースと一つのセットという形に売れる。

他のアジアの国

マレーシアシンガポールタイ王国などで見られるローティ・チャナイは、焼き上がりの形状がイギリスのパンケーキに似ているが、甘くなく、焼く前に空中で生地を回して伸ばすなど、製法が異なり、ナンチャパティに近い食品である。


  1. ^ Pancake Day”. LearnEnglish. British Council. 2019年10月2日閲覧。
  2. ^ hotcake”. Collins English Dictionary. HarperCollins. 2019年10月1日閲覧。
  3. ^ Darra Goldstein (2005), The Oxford Companion to Sugar and Sweets, Oxford University Press, p. 500, https://books.google.co.jp/books?id=jbi6BwAAQBAJ&lpg=PP1&hl=ja&pg=PA500#v=onepage&q&f=false 
  4. ^ 「パンケーキ 焦げ目の芸術」『日経MJ』2019年9月20日(トレンド面)
  5. ^ 1月25日「ホットケーキの日 体温実証実験」を旭川市で実施!”. 森永製菓株式会社. 2018年12月26日閲覧。
  6. ^ イースター前の風習!欧米で広がる「パンケーキの日」を解説”. Cosmopolitan. 2022年1月22日閲覧。
  7. ^ 今年は2月16日!知っているようで知らない パンケーキ・デーの5つの豆知識”. 英国ニュースダイジェスト. 2021年1月11日閲覧。
  8. ^ a b c d パンケーキがホットケーキになるまで”. PANCAKE QUEST (2018年7月8日). 2022年4月7日閲覧。
  9. ^ a b c d 東京とホットケーキ。今は亡き神田の名店「万惣フルーツパーラー」の味を求めて”. URBAN LIFE METRO (2019年9月23日). 2022年4月7日閲覧。
  10. ^ なるほどそこか…!「パンケーキとホットケーキ」の違い、知ってた?”. macaroni (2019年9月30日). 2022年4月7日閲覧。
  11. ^ a b 今日は何の日?1月25日。今日はホットケーキの日”. 日本食糧新聞・電子版. 2022年4月7日閲覧。
  12. ^ 森永ホットケーキミックスは愛されて60周年”. 森永製菓株式会社. 2022年4月7日閲覧。
  13. ^ a b c d ブームを超えた、国民食パンケーキ!”. PANCAKE QUEST (2018年7月9日). 2022年4月7日閲覧。
  14. ^ a b c パンケーキにない素朴さが魅力! 昔懐かしい「ホットケーキ」都内名店5選”. URBAN LIFE METRO (2021年7月5日). 2022年4月7日閲覧。
  15. ^ ホットケーキミックスとは?”. 昭和産業株式会社. 2022年4月9日閲覧。
  16. ^ 【2022年】ホットケーキミックスのおすすめ人気ランキング13選【徹底比較】”. mybest (2022年2月4日). 2022年4月7日閲覧。
  17. ^ 森永ホットケーキミックス ニッポン・ロングセラー考”. COMZINE. nttコムウェア (2009.12月号 Vol.79). 2022年4月8日閲覧。
  18. ^ ローリングストックで気軽に備蓄をはじめませんか?”. 森永製菓株式会社. 2022年4月7日閲覧。
  19. ^ もみもみホットケーキミックス”. 森永製菓株式会社. 2022年4月8日閲覧。
  20. ^ 「ル・パスタン」誕生秘話:フランス語で「ヒマつぶし」が連載のタイトルに 『ル・パスタン』(池波 正太郎) | 書評 - 本の話”. 本の話 WEB (2022年2月11日). 2022年4月8日閲覧。
  21. ^ 小説は美味しい。とっておきの料理シーンだけ集めました。”. P+D MAGAZINE (2016年8月26日). 2022年4月8日閲覧。
  22. ^ ファンなら必食! 「ホットケーキのコカコーラがけ」”. J-WAVE NEWS (2016年5月25日). 2022年4月8日閲覧。
  23. ^ 「パンケーキ・ノート」と「マンガ食堂」の出会い--マンガに登場するパンケーキあれこれ【前編】”. えん食べ (2013年6月7日). 2022年4月10日閲覧。
  24. ^ 【至福】10分限定! どら焼きの名店が手掛ける激レア「うさパンケーキ」がウマすぎてツラい / 東京・御徒町『うさぎやCafe』”. RocketNews24 (2016年4月6日). 2022年4月9日閲覧。
  25. ^ カステラ1番「文明堂カフェ」の『焼立て “三笠” パンケーキ』はあなたのパンケーキ像を粉砕するほどに激ウマ1番だぞォォォオオ! 東京・日本橋”. RocketNews24 (2016年2月21日). 2022年4月9日閲覧。
  26. ^ 蛋巻皇后香港経済新聞(2013年5月16日)2020年2月23日閲覧


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