ペンタゾシン 薬物乱用

ペンタゾシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/20 15:22 UTC 版)

薬物乱用

背景

ペンタゾシンはμオピオイド受容体に対して拮抗的/部分作動的に作用することや、天井効果があることより、モルヒネ製剤と比較して薬物依存症が少ないとされるが[4]、それでも連用により多少なりとも依存性が発生することが知られる[4]。1970年代、第一世代の抗ヒスタミン薬トリプロリジン(日本ではベネンとして薬価収載)[8]と一緒にペンタゾシンを摂取すると、愉快な気分になることがアメリカで広まった。トリプロリジンは青い錠剤として販売されることが多く、ペンタゾシンはTalwinという商品が広く流通したので、両者の組み合わせを指す隠語として「Ts and blues」というスラングが用いられた。ペンタゾシンの錠剤を粉砕して溶解し薬剤を抽出し注射するなどの行為もあった。対応策としてアメリカ当局がペンタゾシンの内服薬に拮抗剤のナロキソンを混合するようにしたところ[9]、ペンタゾシンの乱用は急速に減少した。

日本でのペンタゾシン依存症

日本でのペンタゾシン依存症は、慢性膵炎や胆嚢炎、腸管の癒着などによる慢性疼痛に対して安易にペンタゾシンが使用されてしまったことが背景にあり[4]、快楽目的で乱用が広まったアメリカとは事情が異なる。1971-1978年の8年間に日本ではペンタゾシン依存症の症例が276例報告されている(疑いも含む)[6]。また、1998年には1年間で13件376アンプルのペンタゾシン注射液が日本の医療機関から盗まれている[4]。これはハルシオン(トリアゾラム)に次ぐ第二位の件数となっている[4]。2014年にも偽造した診断書やIDカードを使って多府県の医療機関を梯子してペンタジンを注射してまわる患者の報告があり[10]、安易にペンタジンを投与するのではなく、乱用や依存症を疑った場合は「問題行動のある精神科患者」として対応するようなリスクマネジメントが必要であるとされている[10]。慢性膵炎の疼痛が原因のペンタゾシン依存症に対して、腹腔神経叢ブロックや右内臓神経切離術を行ったところ、依存より脱却できたという報告もある[11][12]


  1. ^ Stitzel, Robert E. (2004). Modern pharmacology with clinical applications (6 ed.). Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins. p. 325. ISBN 9780781737623. https://books.google.ca/books?id=KqA29hQ-m3AC&pg=PA325. 
  2. ^ a b Joint Formulary Committee (2013). British National Formulary (BNF) (65 ed.). London, UK: Pharmaceutical Press. ISBN 978-0-85711-084-8. 
  3. ^ a b c d e f g h i j がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版 日本緩和医療学会 2017年1月18日閲覧
  4. ^ a b c d e f g h 越智元郎、長櫓巧「ペンタゾシン依存症が疑われる患者への対応」治療 84(3月増刊号): 1058-1061, 2002
  5. ^ ペンタジン錠 添付文書
  6. ^ a b c d e f g h i j k ペンタジン注射液 添付文書
  7. ^ a b c Sweetman, S: “Pentazocine”. Martindale: The Complete Drug Reference. Pharmaceutical Press (2013年12月13日). 2014年3月17日閲覧。
  8. ^ ベネン 添付文書2017年1月23日閲覧
  9. ^ Pentazocine and Naloxone tablets”. DailyMed. National Institute of Health. 2011年12月10日閲覧。
  10. ^ a b 小野寺誠、小泉範高、藤野靖久 ほか、[https://doi.org/10.3893/jjaam.25.307 「投与を求めて東北 3県の救急外来を受診した自称女医のペンタゾシン依存症の 1例を経験して」日本救急医学会雑誌 2014年 25巻 7号 p.307-312, doi:10.3893/jjaam.25.307
  11. ^ 岡本真哉、島田信也、廣田昌彦ほか:右内臓神経切離術によってペンタゾシン依存症から完全離脱 した慢性膵炎.消化器外科21: 1529-1532, 1998
  12. ^ 青山奈歩、五十嵐寛、金丸哲也ほか:腹腔神経叢ブロックによりペンタゾシン依存症から離脱でき た慢性膵炎患者の1症例.麻酔50: 92, 2001
  13. ^ スターリング・ドラッグ・カンパニーは1988年にコダックに買収され、1993年に処方箋薬品部門はサノフィに、1994年に店頭販売薬部門は現在のグラクソ・スミスクラインに分けられ売却された
  14. ^ ソセゴン注射液15mg/30mg 1970年 添付文書参照
  15. ^ a b c Chartoff, Elena H.; Mavrikaki, Maria (2015年). “Sex Differences in Kappa Opioid Receptor Function and Their Potential Impact on Addiction”. Frontiers in Neuroscience 9. doi:10.3389/fnins.2015.00466. ISSN 1662-453X. PMC 4679873. PMID 26733781. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4679873/. 


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