ペンタゾシン 概要

ペンタゾシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/20 15:22 UTC 版)

概要

内服製剤と注射製剤があり、日本ではソセゴンペンタジンの商品名で販売される。海外ではFortalSosegonTalwin NXTalwin PXFortwinなどの商品名で流通する。 Talacenと呼ばれるアセトアミノフェンとの合剤も開発されている。内服製剤には乱用防止のために、オピオイド受容体拮抗剤のナロキソンが添加されている(後述)[5]。日本では第2種向精神薬に分類され麻薬及び向精神薬取締法の適応となる。ペンタゾシンの作用はモルヒネなどのオピオイドとほぼ同様であり、鎮痛、鎮静、呼吸抑制がある[3]

オピオイド受容体への作用

オピオイド受容体にはδ受容体、κ受容体、μ受容体の3種類があり、すべて鎮痛効果をもつが作用が微妙に異なっている。ペンタゾシンはその全てに親和性を持ち[3]、κオピオイド受容体に対して作動薬として作用する一方、μオピオイド受容体に対しては部分作動薬もしくは拮抗薬として作用する。ペンタジン30mgの鎮痛効果は、モルヒネ10mg、ペチジン75-100mgに匹敵するが[6]、ペンタゾシンのオピオイド受容体への作用には天井効果があり、一定量を超えるとそれ以上の鎮痛効果が発揮されなくなり効果が頭打ちになる[3]

薬物動態学

内服

ペンタゾシンは経口投与だと投与後約2時間で最高血中濃度となる[3]。投与されたペンタゾシンの大部分は肝臓でグルクロン酸抱合を受けて非活性化され、胆汁を経て糞便中に排泄される[3]。腎臓から未代謝物として5-8%が尿へ排泄される[3]。継続的に使用する場合、好ましい投与間隔は3-5時間とされる[3]

注射

注射製剤は皮下・筋注で15-20分、静注で 2-3分で鎮痛効果が表れ 薬効は3-4時間持続する[6]。皮下・筋注での最高血中濃度は投与後10分前後とされるが、体重1kgあたり1mgの高容量での最高血中濃度は30分後に遅延する[6]。静注での最高血中濃度は投与直後であり、32時間以内に尿中に8.4-20%が未代謝物として排泄され、残りは肝臓でのグルクロン酸抱合を受ける[6]。好ましい投与間隔は3-4時間とされる[3]

薬物相互作用

  • モルヒネ製剤との併用において、低用量では作用増強作用がみられるが、高容量ではモルヒネの作用を拮抗し減弱することがあることが知られる[6]。このため本剤は癌性疼痛の疼痛コントロールにおいて主流としては使用されない。
  • 睡眠薬、抗不安薬、安定剤の作用を増強する[6]。中枢神経抑制の相乗効果による[6]
  • 中枢神経のセロトニン作動性神経の賦活化を介して、抗うつ薬の作用を増強する[6]。これによって不安感や悪心、発汗、といった抗うつ薬の副作用が増強されることがある[6]

副作用と有害事象

モルヒネのような消化管への作用は弱いが、それでも副作用として最も多いのは悪心嘔吐であり、注射剤で6.1%の症例に観察される。悪心嘔吐の次に多いのは、中枢神経の抑制作用による傾眠(注射剤で5.1%)である。呼吸抑制は頻度不明であるがしばしば問題となり、拮抗剤としてドキサプラムナロキソンナロルフィン等が使用される。麻薬拮抗剤であるレバロルファンはペンタゾシンには無効である[6]。モルヒネと比較して幻覚などの精神症状が出やすいとされるが[3]、これはペンタゾシンのκオピオイド受容体の作用(不安、悪夢、離人感)であると言われる[2]。高容量では高血圧や頻脈を起こす可能性がある[7]心筋梗塞後の急性期の患者には、再梗塞を起こすリスクを増やすため投与は避けた方が良いとされる[7]。有害事象としてごくまれに無顆粒球症や多形性紅斑、中毒性表皮壊死症が報告されている[7]。乳酸ペンタゾシン(TALWIN:日本では未発売)を頻回に皮下注射していると、敗血症や注射部位の壊死が起こることがあり、手足の切断が必要になるケースもある。


  1. ^ Stitzel, Robert E. (2004). Modern pharmacology with clinical applications (6 ed.). Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins. p. 325. ISBN 9780781737623. https://books.google.ca/books?id=KqA29hQ-m3AC&pg=PA325. 
  2. ^ a b Joint Formulary Committee (2013). British National Formulary (BNF) (65 ed.). London, UK: Pharmaceutical Press. ISBN 978-0-85711-084-8. 
  3. ^ a b c d e f g h i j がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版 日本緩和医療学会 2017年1月18日閲覧
  4. ^ a b c d e f g h 越智元郎、長櫓巧「ペンタゾシン依存症が疑われる患者への対応」治療 84(3月増刊号): 1058-1061, 2002
  5. ^ ペンタジン錠 添付文書
  6. ^ a b c d e f g h i j k ペンタジン注射液 添付文書
  7. ^ a b c Sweetman, S: “Pentazocine”. Martindale: The Complete Drug Reference. Pharmaceutical Press (2013年12月13日). 2014年3月17日閲覧。
  8. ^ ベネン 添付文書2017年1月23日閲覧
  9. ^ Pentazocine and Naloxone tablets”. DailyMed. National Institute of Health. 2011年12月10日閲覧。
  10. ^ a b 小野寺誠、小泉範高、藤野靖久 ほか、[https://doi.org/10.3893/jjaam.25.307 「投与を求めて東北 3県の救急外来を受診した自称女医のペンタゾシン依存症の 1例を経験して」日本救急医学会雑誌 2014年 25巻 7号 p.307-312, doi:10.3893/jjaam.25.307
  11. ^ 岡本真哉、島田信也、廣田昌彦ほか:右内臓神経切離術によってペンタゾシン依存症から完全離脱 した慢性膵炎.消化器外科21: 1529-1532, 1998
  12. ^ 青山奈歩、五十嵐寛、金丸哲也ほか:腹腔神経叢ブロックによりペンタゾシン依存症から離脱でき た慢性膵炎患者の1症例.麻酔50: 92, 2001
  13. ^ スターリング・ドラッグ・カンパニーは1988年にコダックに買収され、1993年に処方箋薬品部門はサノフィに、1994年に店頭販売薬部門は現在のグラクソ・スミスクラインに分けられ売却された
  14. ^ ソセゴン注射液15mg/30mg 1970年 添付文書参照
  15. ^ a b c Chartoff, Elena H.; Mavrikaki, Maria (2015年). “Sex Differences in Kappa Opioid Receptor Function and Their Potential Impact on Addiction”. Frontiers in Neuroscience 9. doi:10.3389/fnins.2015.00466. ISSN 1662-453X. PMC 4679873. PMID 26733781. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4679873/. 


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