ベンガル語 ベンガル語の概要

ベンガル語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 15:10 UTC 版)

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ベンガル語
Bengali
বাংলা
ベンガル文字の「バングラ」
発音 IPA: [ˈbaŋla] ( 音声ファイル)
話される国 バングラデシュ
インド
地域 ベンガル地方
民族 ベンガル人
話者数 2億6000万人(2011年-2015年)
言語系統
初期形式
アバハッタ英語版
  • 古ベンガル語
方言
ベンガル語の方言英語版
表記体系 ベンガル文字
ベンガル点字英語版
公的地位
公用語 バングラデシュ
インド (西ベンガル州トリプラ州アッサム州アンダマン・ニコバル諸島)
少数言語として
承認
インド(連邦政府)
統制機関 バングラアカデミー英語版(バングラデシュ)
Paschimbanga Bangla Akademi(インド)
言語コード
ISO 639-1 bn
ISO 639-2 ben
ISO 639-3 ben
Glottolog beng1280[1]
南アジアにおけるベンガル語の話者分布
 
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インド・アーリア語派に属する。表記にはブラーフミー文字から発展したベンガル文字を用いる[4]。構文は主語・目的語・動詞の語順を取る、いわゆるSOV型である。ヒンディー語と異なり、ほとんどの名詞は性をもたない。なお、言語名の呼称に関しては、バングラ語と表記するほうが原語の音に忠実ではあるが、日本語では「ベンガル語」の表記が慣例である[5]

分類

ベンガル語は、インド・ヨーロッパ語族インド語派に属し、ヒンディー語ウルドゥー語など、南アジアに存在する多くの言語と類縁関係にある[6]。特に、アッサム語とは共通点が多く、非常に近い関係にある[6]。インド・ヨーロッパ語族の言語分布の中では、アッサム語と並んで、地理的にもっとも東に位置する[7]

上述のように、ベンガル語はインド・ヨーロッパ語族に属するが、ドラヴィダ語族をはじめとする他の語族/語派から受けた影響が、語彙面や文法面に見られる[8]。ドラヴィダ語族のほかにはオーストロアジア語族チベット・ビルマ語派がベンガル語の成り立ちに影響を与えたものと見られ、20世紀初頭の複数のベンガル語辞書を調査した研究によると、収録語彙の45%が純然たるサンスクリットからの借用語、50%超が土着語彙(サンスクリットから変容した語彙と非印欧語族言語からの借用語)であった[8]

言語史

現代ベンガル語の語彙英語版は、マーガディー・プラークリットパーリ語に由来する基層に、タツァマ語彙英語版とサンスクリットからの再帰的な借用語が加わり、さらにその他、ペルシア語、アラビア語、オーストロアジア語族の言語など、ベンガルに住む人々と歴史的な接触のあった人々の話す言葉からの借用語が加わって構成されている。

古代のベンガル地方の言語状況

紀元前1千年紀からベンガル地方ではサンスクリットが話されていた。グプタ朝期のベンガル地方は、サンスクリット文芸の結節点であった[9]。紀元後1千年紀において、ベンガル地方がマガダ国の版図に組み入れられていた紀元1世紀ごろは、中期インド・アーリア諸語英語版が話されていた。これらはプラークリットの一種で、マーガディー・プラークリットと呼ばれる。「マーガディー」は最終的にアルダマーガディー英語版へとかたちを変えていった[10][11][疑問点]。アルダマーガディーは、1千年紀の終わりごろには、アパブランシャと呼ばれる言語に道を譲り始めた[12]

初期ベンガル語

ベンガル語は、他のインド・アーリア諸語の東部諸語と時を同じくして、西暦1000年から1200年ごろに、サンスクリットとマーガディー・プラークリットから進化した[13]。「無意味な音」を意味する「アバハッタ英語版」とも呼ばれるアパブランシャの東部方言、プルビ・アパブランシャ(Purbi Apabhraṃśa)が、最終的に3つの言語、ベンガル・アッサム語英語版ビハール語オリヤー語に分化した。枝分かれの時期は、西暦500年ごろにまで遡れるとする説もあるが[14][疑問点]、言語というものは静的なものではない。この時代には少しずつ異なる言語が共存し、書き手も複数の方言を同時に書くことがよくあった。例えば、6世紀前後にアバハッタへと進化していったと考えられているアルダマーガディーは、ベンガル語の前身となる言語としばらくの間、競合していた[15][疑問点]。なお、そのベンガル語の前身となる言語は、パーラ朝セーナ朝で話されていた言語でもある[16][17]

現存する最古のベンガル語文献、Charyapada の1ページ。10世紀から12世紀の間に書かれた。

中期ベンガル語

ベンガル・スルターン朝の銀貨。1417年ごろのもの

中世において話された中期ベンガル語(1400年-1800年)には、単語末で ôエリジオンが起きる現象と、複合動詞の広範な使用と、アラビア語やペルシア語の影響が見られることに特徴がある。ベンガル語はベンガル・スルターン朝の宮廷において公式に使用された。ムスリム支配者層は、支配地域におけるサンスクリットの影響を抑え、イスラーム化を進める試みの一つとして、ベンガル語文学の発展を奨励した[18]。ベンガル・スルターン朝において、ベンガル語は最もよく話される地方語英語版vernacular language)になった[19]。この時代にはアラビア語やペルシア語からベンガル語の語彙の中に取り入れられた借用語が見られる。また、この時代の主なテキストとしては、チャンディーダース英語版の『クリシュナ神賛歌英語版』がある。

現代ベンガル語

現代ベンガル語の書き言葉は、19世紀から20世紀初頭にかけて、ベンガル地方の中央部やや西よりに位置するナディーヤー地方英語版の話し言葉を基礎として発展した。この時代のベンガル地方は、イギリスの植民地統治下にあり、ベンガル語が行政・公用の言語として用いられてなかったため、書き言葉の発展はもっぱら文学活動により牽引された[20]ビールバル英語版タゴールらの詩人や作家はベンガル語の書き言葉として、語形変化やその他の変化の形態が複雑な Sadhubhasha(ベンガル語: সাধুভাষা)を使用するよりも、これを簡略化した Chôlitôbhasha(ベンガル語: চলিতভাষা)を使用することを推進した[20][21]


注釈

  1. ^ 本来「バングラデシュ」とはベンガル語話者が住むベンガル地方全体を指す語であった。

出典

  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Bengali”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/beng1280 
  2. ^ Laurie Bauer, 2007, The Linguistics Student's Handbook, Edinburgh
  3. ^ 「What are the top 200 most spoken languages?」”. エスノローグ . 2020年1月24日閲覧。
  4. ^ 『図説 世界の文字とことば』 町田和彦編 88頁。河出書房新社 2009年12月30日初版発行 ISBN 978-4309762210
  5. ^ a b c 藤原, 敬介「<書評>『ニューエクスプレス・ベンガル語』丹羽京子(著),2011年,白水社. (PDF) 」 『印度民俗研究』第12巻、2013年3月30日、 89-108頁、2017年10月24日閲覧。
  6. ^ a b c d ベンガル語とは”. 東京外国語大学ベンガル語専攻. 2017年10月16日閲覧。
  7. ^ a b 渡辺一弘「ベンガル語」『バングラデシュを知るための66章』大橋正明、村山真弓、日下部尚徳、安達淳哉(編)、明石書店〈エリア・スタディーズ32〉、2017年10月15日、第3版、68-71頁。ISBN 978-4-7503-4571-0
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  9. ^ Bangla Script - Banglapedia” (英語). en.banglapedia.org. 2020年12月2日閲覧。
  10. ^ Shah 1998, p. 11
  11. ^ Keith 1998, p. 187
  12. ^ (Bhattacharya 2000)
  13. ^ Oberlies, Thomas (2007). “Chapter Five: Aśokan Prakrit and Pāli” (英語). The Indo-Aryan Languages. Cardona, George ; Jain, Danesh. Routledge. p. 163. ISBN 978-1-135-79711-9. https://books.google.com/books?id=OtCPAgAAQBAJ&pg=PA161 
  14. ^ (Sen 1996)
  15. ^ Abahattha in Asiatic Society of Bangladesh 2003
  16. ^ Pala dynasty | Indian dynasty” (英語). Encyclopedia Britannica. 2020年12月2日閲覧。
  17. ^ Pala Dynasty, Pala Empire, Pala empire in India, Pala School of Sculptures”. www.indianmirror.com. 2020年12月2日閲覧。
  18. ^ Rabbani, AKM Golam (2008). “Politics and Literary Activities in the Bengali Language during the Independent Sultanate of Bengal” (英語). Dhaka University Journal of Linguistics 1 (1): 151–166. ISSN 2408-851X. https://www.banglajol.info/index.php/DUJL/article/view/3344. 
  19. ^ The Rise of Islam and the Bengal Frontier (pdf)” (英語). hudsoncress.net/hudsoncress.org. 2016年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月閲覧。
  20. ^ a b ことばとその周辺をきわめる「ベンガル語:文語体から口語体へ」 (PDF)”. 東京外国語大学オープンアカデミー (2013年11月12日). 2017年10月16日閲覧。
  21. ^ Ray, S Kumar. “The Bengali Language and Translation” (英語). Translation Articles. Kwintessential. 2006年9月25日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2006年11月19日閲覧。
  22. ^ a b アジ研ワールド・トレンド 2014, pp. 31–35.
  23. ^ a b c d David 2015.
  24. ^ a b c d Distribution of the 22 Scheduled Languages”. Census of India. Registrar General & Census Commissioner, India (2001年). 2017年10月16日閲覧。
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  27. ^ Alexander 2011, pp. 201–220.
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  29. ^ P・K・オースティン 2009, p. 24.
  30. ^ 図説 世界の文字とことば 2009, p. 89.
  31. ^ 事典世界のことば141 2009, p. 208.
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  35. ^ 『バングラデシュを知るための60章【第2版】』大橋正明・村山真弓(編著)、明石書店、2009年11月20日、第2版第1刷、63頁。
  36. ^ 事典世界のことば141 2009, p. 207.
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  38. ^ モンズール・ハック 2003, p. 59.
  39. ^ 高田峰夫 2003, pp. 29–32.
  40. ^ 印ダージリンでゼネスト、緊張高まる 観光客ら数千人が一斉避難”. AFPBB (2017年6月13日). 2017年7月29日閲覧閲覧。
  41. ^ ダージリン茶産地デモ拡大 インドで自治州求め3人死亡”. 産経ニュース (2017年6月18日). 2017年7月29日閲覧。
  42. ^ “民族紛争でダージリン紅茶のセカンドフラッシュ収穫できず”. ロイター. (2017年7月7日). http://jp.reuters.com/article/darjeeling-idJPKBN19S0VV 2017年7月29日閲覧。 
  43. ^ “印ダージリンで3か月余続いたスト中止 新州創設求め政府と協議へ”. AFPBB. AFP. (2017年9月27日). https://www.afpbb.com/articles/-/3144594?cx_part=search 2019年4月24日閲覧。 
  44. ^ a b c 大西正幸、ドゥルガ・ポド・ドット「ベンガル語の expressives をめぐって」『言語記述論集 (Journal of Kijutsuken, Descriptive Linguistics Study Group)』第8巻、言語記述研究会、2016年、 193-230頁、2017年10月24日閲覧。
  45. ^ 世界の文字を楽しむ小事典 2011, p. 250.
  46. ^ 『図説 世界の文字とことば』 町田和彦編 88頁。河出書房新社 2009年12月30日初版発行 ISBN 978-4309762210
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  48. ^ 丹羽京子 2018, pp. 126–127.
  49. ^ 鈴木喜久子 2003, p. 62.
  50. ^ 白幡利雄 2003, pp. 76–77.
  51. ^ 金基淑 2018, p. 538-539.
  52. ^ 杉本良男 2018, p. 536-537.
  53. ^ インド現代史1947-2007(下) 2012, p. 469.






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