ベルヌーイの定理 ベルヌーイの定理の概要

ベルヌーイの定理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/20 15:44 UTC 版)

連続体力学


ベンチュリ管を空気が流れている。管の太さが小さくなると速度が増加するが、それには圧力の減少を伴う。圧力の変化は水柱の高さの差に現れる。

概要

ベルヌーイの式は流体の速さと圧力外力ポテンシャルの関係を記述する式で、力学的エネルギー保存則に相当する。この定理により流体の挙動を平易に表すことができる。

ダニエル・ベルヌーイDaniel Bernoulli、1700年 - 1782年)によって1738年に発表された。なお、運動方程式からのベルヌーイの定理の完全な誘導はその後の1752年レオンハルト・オイラーにより行われた[1]ベルヌーイの定理が成り立つ条件として、同一流線上の二点で成り立ち、一方の点と他方の点でエネルギーの総量に変化がないことである。[要出典]また、ベルヌーイの定理は粘性のない流体である完全流体のとき成り立つ。ベルヌーイの定理は、運動エネルギーと圧力の2つの力の和が一定であるので、速度が速くなると圧力が下がり、逆に速度が遅くなれば圧力が上がる。「流体の流れが速い場所では圧力が低い」と言うことがベルヌーイの定理ではない。[2]身近なベルヌーイの定理の使用例として、鳥や飛行機、霧吹き、ビル風の一部、車のキャブレター、スポーツカーについているウイング、野球ボールやゴルフボールが曲がる現象、電車が駅を通過するときに吸い寄せられる現象などがある。

分類

ベルヌーイの定理は適用する非粘性流体の分類に応じて様々なタイプに分かれるが、大きく二つのタイプに分類できる。

外力が保存力であることバロトロピック性(密度が圧力のみの関数となる)という条件に加えて、

である。

(I)の法則は流線上(正確にはベルヌーイ面上)でのみベルヌーイの式が成り立つという制限があるが、(II)の法則は全空間で式が成立する。

最も典型的な例である

外力のない非粘性非圧縮性流体の定常な流れに対して

が流線上で成り立つ。ただし、 は流体の速さ、 は圧力、密度を表す。

一様重力のもとでの非粘性・非圧縮流体の定常な流れに対して

が流線上で成り立つ。ただし、 は速さ、 は圧力、 は密度、重力加速度の大きさ、 は鉛直方向の座標を表す。

は(I)のタイプに属する。

(II)を「一般化されたベルヌーイの定理」と呼ぶこともある。


  1. ^ 日野幹雄 『流体力学』朝倉書店、1992年。ISBN 4254200668 
  2. ^ ベルヌーイの定理:楽しい流れの実験教室” (日本語). 日本機械学会流体工学部門:楽しい流れの実験教室. 2021年6月22日閲覧。
  3. ^ a b c d 巽友正 『流体力学』培風館、1982年。ISBN 456302421X 
  4. ^ Babinsky, Holger (November 2003). “How do wings work?” (PDF). Physics Education 38 (6): 497. doi:10.1088/0031-9120/38/6/001. http://www3.eng.cam.ac.uk/outreach/Project-resources/Wind-turbine/howwingswork.pdf. 
  5. ^ Batchelor, G.K. (1967). An Introduction to Fluid Dynamics. Cambridge University Press. ISBN 0-521-66396-2  Sections 3.5 and 5.1
  6. ^ Lamb, H. (1993). Hydrodynamics (6th ed.). Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-45868-9  §17–§29
  7. ^ ランダウ&リフシッツ 『流体力学』東京図書、1970年。ISBN 4489011660 
  8. ^ 飛行機はなぜ飛ぶかのかまだ分からない?? - NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん - 松田卓也による解説。
  9. ^ Glenn Research Center (2006年3月15日). “Incorrect Lift Theory”. NASA. 2012年4月20日閲覧。
  10. ^ 早川尚男. “飛行機の飛ぶ訳 (流体力学の話in物理学概論)”. 京都大学OCW. 2013年4月8日閲覧。
  11. ^ Newton vs Bernoulli”. NASA. 2012年4月20日閲覧。
  12. ^ Ison, David. Bernoulli Or Newton: Who's Right About Lift? Retrieved on 2009-11-26
  13. ^ David Anderson; Scott Eberhardt,. "Understanding Flight, Second Edition" (2 edition (August 12, 2009) ed.). ,McGraw-Hill Professional. ISBN 0071626964 
  14. ^ 日本機械学会 『流れの不思議』(2004年8月20日第一刷発行)講談社ブルーバックス。ISBN 4062574527 
  15. ^ Report on the Coandă Effect and lift, オリジナルの2011年7月14日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20110714172646/http://newfluidtechnology.com/THE_COANDA_EFFECT_AND_LIFT.pdf 
  16. ^ Kundu, P.K. (2011). Fluid Mechanics Fifth Edition. Academic Press. ISBN 0123821002 






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