ベトナム料理 主な料理

ベトナム料理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/19 05:00 UTC 版)

主な料理

ベトナム料理でポピュラーなメニューとしては、以下のようなものがある。

主食・主菜類

麺類

中央:トマトスープの汁麺ブン、右:つけ麺のブン。(ホーチミン市)
バンカン(ハウザン省ガーバイ)
ミエンガン(ニンビン省ニンビン)

ベトナムの麺類は基本的にライスヌードルである。そのほか、小麦粉麺の「ミー」(Mì)や春雨「ミエン」(Miến)も食べられる[13]。ライスヌードルは麺料理として食べるだけでなく、春巻や饅頭(後述のバインバオ)の具にするなど活用される。ほとんどの場合において、乾麺でなく生麺が調理に使用される。また多くの店でパクチーやバナナの蕾などの香草やもやしを始めとした生野菜・ハーブ類が別皿で供され、自由に乗せて食べることができる。

フォー(Phở)
平たいライスヌードル。ベトナムで最もポピュラーな麺類の一つであるが、本場は北部である[14]。日常的によく食べられているメニューだけに、社会生活の変化などから影響された、フォーに対する食のスタイルの広がりがあり、フォーを扱うファーストフード風のチェーン店が都市部に作られたり、またインスタント製品やカップ麺のフォーが売り出されたりしている。
  • Phở bò:米麺に牛骨から取ったスープをかけ、牛肉をのせたもの[15]。半生(Tái)、よく火を通したもの(chín)が選べる[13]
  • Phở gà:鶏スープをかけ鶏肉をのせたもの[16]
ブン (Bún)
フォーに並んで一般的な麺類がブン(太さ1mmから2mmほどのビーフン)である。生春巻きの具にもなるほか、次のようにさまざまな具材やスープで食べられ、フォーよりも種類が豊富である。
  • Bún móng giò: 豚足。
  • Bún mọc: つみれ。
  • Bún cá: 魚(白身魚が多い)。
  • Bún gà: 鶏肉。
  • Bún măng vịt: 鴨肉と筍。
  • Bún riêu: トマトスープ。蟹のすり身をのせるBún riêu cuaも多い。Bún ốc (タニシ)も同様のスープ。
  • Bún chả(北部)/Bún thịt nướng(南部): 付け麺、または汁なし和え麺。甘辛いタレをつけて焼いた豚肉、サニーレタス、酢漬けしたニンジンや玉ねぎなどと一緒に前述のヌクチャムにつけながら、あるいは丼の中で和えて食べる。しばしば揚げ春巻き(chả giò)や発酵ソーセージ(nem)も具材となる。
  • Bún thịt cho: 犬肉をマムトムで煮込んだもの。味が強いため、付け汁は必要がない。Bún giả cầy(「偽犬」。豚足を用いたもの)も同様に、ミントが添えられた茹でただけのブンに肉がのる。
  • Bún xào: 牛肉や海産物とともに炒めたブン。地方によっては汁なしの和え麺をこう呼ぶこともある。
  • Bún bò Huế (ブンボーフエ): 中部でポピュラーな麺で、2mm~2.5mmほどの太さの麺を用い、レモングラスと赤唐辛子を効かせるのが特徴。このブンボーフエも中部からベトナム全域に広がっている。
フーティウ (Hủ tiếu, Hủ tíu)
カンボジアが本場とされる白くて細い乾麺で、南部でベトナム料理として定着している[13][14]
  • Hủ tiếu Nam Vang:プノンペン風フーティウ。スープは甘めで具だくさん[13]。陸海空の象徴として、豚肉、エビ、ウズラ卵が用いられる。Nam Vangはプノンペンの意[13]
  • Hủ tiếu khô:汁なしフーティウ[13]
  • Hủ tiếu mì:フーティウと、後述の小麦麺を一椀に合盛りにしたもの。
ミエン (Miến)
緑豆などから作られる春雨[13]
ミー (Mì)
小麦粉でつくる黄色い中華麺[13]。袋入りで粉末スープ付きのインスタント麺や、業務用の乾麺も多く見られる。
  • Mì xao: 焼きそば。
  • Mì khô: 汁なしの和え麺。
ミークアン(Mì quảng)
きしめんや稲庭うどんに似た幅広の小麦麺。ダナン発祥で、南部でも食べられる[13]
バンカン (Bánh canh)
メコンデルタの特産品とされる米粉の麺[17]。日本のうどんほどの太さで、都市部では数センチほどに切られ、日本のうどんのような汁麺として供される。

飯物

コムビンザンのお櫃ご飯。(ハティン省ハティン)
コムビンザンの皿飯。(ビンディン省クイニョン
お粥。(ハティン省カムスエン県)

日本と同様に、米飯(コム:Cơm)とおかず、汁物が食卓に並ぶが、朝食は前述のフォーであることが多く[18]、お粥も人気がある。ご飯と汁物は、初めは別に食べていても、最終的に汁かけ飯とすることが多く、これはマナー違反にはならない。なお、ベトナム米は非常に有名であり、ベトナムの米輸出規模は世界でも有数である[19][20]。飯物を提供するもっとも気軽な食堂である Cơm bình dân(コムビンザン)は、直訳すれば「平民飯」であり、日本の大衆食堂にあたる。

米飯
  • コムファン(cơm phận):分飯、すなわちお櫃で供された米飯を茶碗に取り分けて食べる。主に多人数向け。スープ、料理数品、お茶(中国と違い冷えたお茶も提供される)が定食として手頃な価格で提供され、ご飯はお代わり自由であることも多い。
  • コムディア(cơm dĩa):皿飯、すなわち平皿にご飯を盛り、上に直接おかずをのせた安価なもの。スープも供される。お茶はセルフサービスが多い。後述のコムタムであることも多い。
  • コムホップ(cơm hộp):箱飯、すなわちテイクアウト。スチロール製容器に入れられる。
チャオ(Cháo)
粥。人気のある朝食メニューの一つ。
  • チャオガー(Cháo gà): 鶏粥。クァイ(Quẩy)という細長い揚げパン(中華料理の油条と同じ)をちぎって入れながら食べることもある。
  • チャオロン(Cháo lòng): ブタの内臓肉の入った粥[21]
ソーイ(Xôi)
蒸したもち米のおこわ[21]。炒めた肉類やフライドガーリックなどを乗せて供する。軽食のほか、昼食むけにスチロールのパックに盛り付けたテイクアウトも都市部で提供されている。南部ではいろいろな色に着色される[22]
コムガー(Cơm gà)
ベトナム風海南鶏飯東南アジアの他の中華文化圏同様、チキンライスはベトナムでも人気が高い。ただし、チャーハンにフライドチキンを乗せたようなものも同じ名前で呼ばれるため注意すべきである。
コムタム(Cơm tấm)
砕いた米を調理した米飯[23]。もとは脱穀の際などに出るクズ米の有効活用だったが、粒が小さくねばりが弱くなることで食感が軽くなるため朝食などで好まれる。皿に盛り、各種の具を乗せて供され、南部では主に朝食となり[23]、夜も出す店には cơm tấm đên(夜のコムタム)の看板が出る。

春巻き

生春巻き
揚げ春巻き(北部:ネムザン/南部:チャーヨー、Nem rán/Chả giò)
ひき肉やキクラゲ、カニ肉、春雨などを米で作った皮(バインチャン、bánh tráng)に包み、揚げたもの。中華料理の春巻きよりかなり小ぶりで、親指大くらいの大きさである。ヌクチャムに浸して食べる。ブンの具にすることもある。
生春巻き(ヌムクオン/ゴイクオン、Nem cuốn/Gỏi cuốn)
ゆでたエビ、ブン、生野菜などをバインチャンで包んだもの。トゥオンやヌクチャムにつけて食べる。

また、予め巻いてあるものだけでなく、焼肉やしゃぶしゃぶなどをその場で各種野菜、ハーブ、ライスヌードルなどと一緒にお好みで巻いて食べる文化もある。

その他米粉料理

バインセオ。ベトナム料理には珍しく、これにはナイフが用意される。
バインセオ(Bánh xèo)
日本では「ベトナム風お好み焼き」と言われることが多い。米粉とココナッツミルク、ターメリックを混ぜたものをパリッと焼き、豚肉、エビ、モヤシなどを包む。これを一口大にちぎって、香草などと一緒に韓国の焼肉料理でよく使われるサンチュに似た葉に包みヌクチャムに浸して食べる。葉の上からさらにライスペーパーで巻くこともある。
バインチュン(Bánh chưng)
ベトナムのちまき餅米やラーゾン(Lá dongクズウコン科の植物)の葉を用い、四角く作るものが多い。豚肉やリョクトウを入れた塩味のものも甘いものもあり、市場やスーパーマーケットでも売られている。正月料理だが、北部ではおやつとしても食べられる[24]
バインベオ(Bánh bèo)
米粉とタピオカ粉を水で溶き、熱湯を加えて混ぜて小さな皿に入れて蒸し、煎ったそぼろエビ、ネギなどをふりかけ、ヌクチャムをかけて食べる。ぷりぷりとした食感。
バインクオン(Bánh cuốn)
発酵させた米粉汁を鍋の上に張った布の上で蒸し、ひき肉やきくらげをくるんだ料理。

小麦粉料理

バインミー
バインバオ。(ビンディン省タイソン県
ボッチェン(ホーチミン市、タイビン市場)
バインミー(Bánh mì)
切り込みを入れてマーガリンパテを塗ったバゲットソーセージハム(Giăm bông:フランス風にJambonと綴ることもある)、叉焼などの肉類と香草や野菜の甘酢漬けなどをはさみ、ヌクマムをふりかけたベトナム風サンドウィッチ。屋台などでよく売られている。
バインバオ(Bánh bao)
挽肉、ゆで卵、野菜、きくらげなどの具を小麦粉の皮で包んで蒸した、中華まんに似る。
ボッチェン(Bột chiên)
米粉をこねて作った餅状のものを一旦揚げ、炒めたもの[24]。卵と一緒に炒められる。

鍋、汁物、その他

カインチュア
カインチュア(Canh chua)
ベトナム南部の甘酸っぱいスープ。食後の〆として米飯にかけて食されることが多い。ライギョを用いるとカイン・チュア・カー・ロック(Canh chua cá lóc)となる。ベトナムではライギョはポピュラーな食材であり、このほかにもライギョの煮付けなどいろいろな料理がある。なお、カインはさらさらなスープであり、レストランなどのきちんとした食事に食べるとろみのついたもの(スップ: Súp)とは区別される[25]
ラウ(Lẩu)
ベトナムの鍋料理。ヤギ鍋、牛鍋、鶏鍋、海鮮鍋などの種類がある。
  • ラウ・ゼー(Lẩu dê): 山羊肉の鍋。専門店で食べることが出来る。山羊肉の焼き肉(乳房の肉を使うことが多い)とセットで食べることが多い。またラウ・ゼーの店では山羊の睾丸を蒸留酒に漬けた酒も提供される。
チャーカーラボン(Chả cá Lã Vọng)
ターメリックなどに漬けたラン魚(cá lăng:ナマズ目の魚)を油で炒め揚げにし、ディルと青ねぎを混ぜて食べる。ブンと一緒に食べることが多い。ハノイの名物料理のひとつになっている。
ゴイ・ドゥー・ドゥー(gỏi đu đủ)
タイ料理のソムタムに同じ。未熟なパパイヤの実を千切りにし、香草、ナッツ、魚介、柑橘類の果汁などで和えたサラダ。

軽食、デザート類、飲料

バインザン(ベトナム風ドーナツ
ベトナムコーヒー
バインフォントム(Bánh phồng tôm)
南部を起源とする丸い海老せん。サラダ(ノム/ゴイ、Nộm/gỏi)の付け合わせにもなる。
チャオトム(Chạo tôm)
エビのすり身をサトウキビの茎の芯の周りに付けて、竹輪のように焼いた料理。ブンの具にすることもある。
チュンビロン/ホビロン(Trứng vịt lộn/Hột vịt lộn)
孵化前のアヒルの卵を茹でたもの。北部では殻を剥き皿に盛った状態で供されることが多いが、南部では丸のままエッグスタンドがわりのお猪口に乗せて供される[26]。頂上部を下にして気室側の殻を割り、中のスープを飲んだ後、そこに塩・胡椒・柑橘類・ハーブを加えてスプーンでかき混ぜて食べる(生えかけの羽毛やくちばしなどが混ざっていることがあるが、これは食べない)。おやつとして、路上の屋台などで売られている(男性向けの強壮剤食品としてのイメージも根強い)。
オクニョイ(Ốc nhồi)
名称は「タニシの詰め物」という意味だが、通常は味付けしたタニシの蒸し物で、街角の屋台などで売っている。ベトナムのタニシは、日本でよく見られるものよりも大きい。正しくは『タニシモドキ』。
バインザン(Bánh rán)
餅米粉の皮の中に、緑豆あんの入った揚げ団子。ベトナム語版ドラえもんにおいて「ドレーモン」はどら焼きの代わりにバインザンを食べる。
バインフラン(Bánh flan)、北部ではケムカラメン(Kem caramen)[27]
濃厚な風味のカスタードプリン。ポピュラーなデザートのひとつ。砕いた氷やコンデンスミルクが掛けられることも。
チェー(Chè)
餅米など穀類、果物、芋類、果物、海藻、アズキリョクトウなどの豆類で作ったデザート。田舎汁粉善哉、みつ豆、粥と似ている。ココナッツミルクに具を入れ煮込む場合もある。初めはベトナム北部で温かいチェーが作られていたが、全国に普及するにつれて冷たいチェーへと変化した。
スアチュア(Sữa chua)
ベトナム風ヨーグルト。ベトナムではヨーグルトを凍らせて食べる事もある。小さなカップ入りのものを行商していることも多い(カップは要返却)。
ケムズア、ケムチャイズア(Kem dừa, Kem trái dừa)
ココナッツ風味のアイスクリームを使ったデザート。ケムはクリームのこと。ココナツの殻を容器にすることが多い。
バインヤーロン (Bánh da lợn)
緑豆餡を用いて作るデザートの一種。食感は外郎に近い。
ヌクミア(Nước mía)
サトウキビの生搾りジュースに氷をいれたもの。コーヒー・お茶と並んで国民的飲料と呼んでも良いほどどこでも飲める。多くは専用の絞り機(かつては手動が多かったが、現在では電動のものが主流)と材料だけを用意した屋台・行商で供され、公園や川沿いなどの人の集まる所だけでなく、街道沿いなどにも出店していることが多い。風味付けにチャイン(ライム)も加える。
カーフェー(ベトナムコーヒー)(Cà phê)
アルミニウムまたはステンレスの穴あきの容器で淹れるベトナム式コーヒーは、紙のフィルターと異なり、お湯がなかなかフィルターから落ちず、抽出に時間がかかり、加える湯も少なめのため、出来上がりはかなり濃い味になる。ミルクコーヒーにする場合には牛乳ではなくコンデンスミルクを用いるのも大きな特徴で、先にカップの底にコンデンスミルクを入れ、その上からコーヒーを注いだ状態で供される。飲む時には、それをスプーンでかき混ぜて好みの濃さに調整する。南部では、冷たくして飲む場合は砕いた氷の入ったグラスが別に用意され、そこに注いで飲む[28]。路上のカフェなどでコーヒーを頼むと、これに大体ポット入りのジャスミン茶ハス茶がついてくる。粉はバターを加え深くローストするため、苦味が強いが酸味は薄い[28]。温かいものは Cà phê nóng, 氷入りは Cà phê đá, アイスミルクコーヒーは Cà phê sữa đáとなる[28]



  1. ^ ベトナムの声放送局 - ベトナムの沿海地帯の信仰文化”. 2016年6月28日閲覧。
  2. ^ Vietnamese Cilantro”. www.vietnamonline.com. 2019年11月26日閲覧。
  3. ^ トウェンpp.6-7
  4. ^ a b 池田、pp.52-53
  5. ^ a b 「地球の歩き方」編集室、p.29
  6. ^ DH foods - Tự Hào Gia Vị Việt”. 2016年6月28日閲覧。
  7. ^ DOXACO foods”. 2016年6月28日閲覧。
  8. ^ 池田、pp.60-61
  9. ^ 畜産の研究第68巻8号 (PDF)”. 2016年6月28日閲覧。
  10. ^ a b c 池田、p89
  11. ^ 石井、p122
  12. ^ a b 池田、p90
  13. ^ a b c d e f g h i j 池田、pp.18-19
  14. ^ a b ベトナム二都麺類学
  15. ^ トゥエン、p.21
  16. ^ トゥエン、p.19
  17. ^ VnExpress. “Biến tấu với bánh canh”. 2016年2月22日閲覧。
  18. ^ ベトナム料理と食文化 ベトナム料理ダイニング LITTLE HANOI
  19. ^ ベトナム米輸出量が世界1位に ブルーチップ ベトナム投資ニュース
  20. ^ 農林水産省米をめぐる関係資料 p122 平成30年では輸出量は世界3位
  21. ^ a b 池田、p20
  22. ^ 池田、P81
  23. ^ a b 池田、P21
  24. ^ a b 池田、p42
  25. ^ 池田、pp22-23
  26. ^ 池田、p86
  27. ^ 池田、p44
  28. ^ a b c 池田、p35


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