ヘクソカズラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 04:10 UTC 版)
形態・生態
つる性の多年草[8]。大きさ、艶、毛の有無など、変異が多い[9]。葉や果実を揉むとおならや大便のような臭いがすると言われ[10]、全体に傷つけると特異な悪臭があるが[9]、傷をつけなければ悪臭はない[11]。
茎は蔓になり、太くなると木質化し、左巻きに他物に絡みつく[9][4]。葉は蔓性の茎に対生し[9]、形は披針形から広卵形で、やや細長いハート形をしており[11]、葉縁は全縁。葉柄の基部には三角形の托葉がつく[12]。秋には葉は黄色く黄葉する[11]。
花期は夏から秋ころ(7 - 9月)で、葉腋から短い花序を出して[9]、2出集散花序を形成して、花弁・花冠が白く、内面中心が紅色の花を多数咲かせる[13][8]。花形は漏斗形で、花冠は浅く5裂する[12]。花の色や形には微妙に個体差があり、花びらが広がるタイプや後方へ反り返るタイプがあったり、赤い部分の面積にも大小がある[14]。
果実は、径6ミリメートル(mm)ほどの球形で、潰すと強い臭気があり、熟すと緑色から黄褐色・薄茶色になり[12]、秋から冬にかけてよく見かける[9]。果皮は萼が変形した偽果皮で、果実の中にある2個の核は分果に相当する[8]。分果は腹面がくぼむ椀形で表面は粗く、中には1個の種子が入る[8]。
独特の悪臭成分はメチルメルカプタン(別名:メタンチオール)で、ヘクソカズラに含まれる物質のペデロサイドが酵素によって分解されて生成される[10]。この悪臭成分は、食害を受ける害虫などから身を守るためのもの、すなわちアレロパシーであると考えられている[2][3][15]。また、これら成分を持つヘクソカズラは、他の生物との生存競争の上で有利に働き生き残ることができたとも考えられている[15]。しかし、蛾の一種であるホシホウジャク(スズメガ科)の幼虫がヘクソカズラを食草とする[15]。近年に帰化した本種の寄生者であるヘクソカズラグンバイが分布を広げている。寄生を受けると葉がまだらに白くなる。また、ヘクソカズラヒゲナガアブラムシという害虫は、ヘクソカズラの悪臭成分を体内に取り込んで、外敵から身を守っている[3]。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Paederia scandens (Lour.) Merr.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年8月1日閲覧。
- ^ a b c d 田中修 2007, p. 99.
- ^ a b c d e 稲垣栄洋 2018, p. 155.
- ^ a b c d 藤井義晴 2019, p. 21.
- ^ a b c d e f g h i 稲垣栄洋 2018, p. 154.
- ^ a b c d 藤井義晴 2019, p. 25.
- ^ a b c d e f g 貝津好孝 1995, p. 192.
- ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 91.
- ^ a b c d e f g h i j k l 馬場篤 1996, p. 101.
- ^ a b 藤井義晴 2019, p. 23.
- ^ a b c 亀田龍吉 2019, p. 74.
- ^ a b c 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 92.
- ^ 大嶋敏昭監修 2002, p. 368.
- ^ 亀田龍吉 2019, p. 75.
- ^ a b c 藤井義晴 2019, p. 24.
- ^ 藤井義晴 2019, p. 22.
固有名詞の分類
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