プログレッシブ・ロック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/05 06:35 UTC 版)
プログレッシブ・ロック Progressive rock | |
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様式的起源 |
ロック ポップ・ミュージック サイケデリック・ロック ジャズ フォーク クラシック音楽 |
文化的起源 | 1960年代後期 - イギリス アメリカ合衆国 |
派生ジャンル |
クラウトロック ニューエイジ・ミュージック ポストロック シンフォニック・ロック |
サブジャンル | |
カンタベリー・ロック ネオ・プログレッシブ・ロック ロック・イン・オポジション マスロック | |
融合ジャンル | |
アヴァン・プログ プログレッシブ・メタル プログレッシブ・フォーク | |
関連項目 | |
オルタナティヴ・ロック アリーナ・ロック コンセプト・アルバム エクスペリメンタル・ロック フォークロック ハードロック ニュー・ウェイヴ ポストパンク プロト・プログ ロック・オペラ スペース・ロック |
概要
プログレッシブ・ロックは、実験的・革新的なロックとして、それまでのシングル中心のロックから、より進歩的なアルバム志向のロックを目指した。1960年代後半に誕生し、全盛期は1970年代前半である。当初の進歩的・前衛的なロック志向から、一部のクラシック音楽寄りな音楽性が、復古的で古色蒼然としていると見られ、1970年代半ばから後半にかけて衰退した[注 1]とされている。ピーター・バラカンはプログレッシブ・ロックの全盛期が短かったことを指摘している。後年、マリリオン、アネクドテン[2]などの登場により、復活してきている。
プログレッシブ・ロックとは進歩的ロック、クラシック的ロック、アート・ロック、前衛ロック、実験的ロックなどの概念を包括したジャンルである。プログレッシブ・ロック・バンドはロックに、クラシックやジャズ、フォーク、地域音楽などを融合させた。
「アート・ロック」[3]や「ニュー・ロック」、あるいは「シンフォニック・ロック」と呼ばれる場合もあるが、それぞれ微妙な差異を持ち、それらをプログレッシブ・ロックの一派に含めることもある。また、イギリス以外のイタリア、フランス、オランダ、ドイツ、北欧にも、有力なバンドが存在し、ユーロロックとも呼ばれた[4]。
詳細:歴史・定義
現在「progressive rock」は英語でも普通に使われている言葉である。省略形は「prog」。
日本におけるこの音楽用語の初出に関する一つの説として、1970年に発売されたピンク・フロイドの『原子心母/Atom Heart Mother』の日本盤のタスキに、「ピンク・フロイドの道はプログレッシヴ・ロックの道なり!」 (東芝EMIの石坂敬一が発案[5])というコピーが掲げられたのが初であるという説が有力とされる[注 2]。
「プログレッシブ」とは、「進歩的」「先進的」「前衛的」というような意味だが、プログレッシブ・ロック・バンドという場合、そのアルバムや楽曲などには次のような特徴がある。
- 一部のバンドはアルバム全体を一つの作品とする概念(コンセプト・アルバム[6])も制作した
- 大作・長尺主義傾向にある長時間の曲
- 演奏技術重視で、インストゥルメンタルの楽曲も多い
- 技巧的で複雑に構成された楽曲(変拍子・転調などの多用)
- クラシック音楽やジャズ、あるいは現代音楽との融合を試みたものも多く、演奏技術を必要とする
- シンセサイザーやメロトロンなどといった、当時の最新テクノロジーを使用した楽器の積極的使用[7]
- イギリスのバンドの場合、中流階級出身者が多かった[8]
上記の特徴は、ピンク・フロイド[9]、キング・クリムゾン[注 3]、イエス[注 4]、エマーソン・レイク・アンド・パーマー[注 5]、ジェネシス[注 6]などのバンドに見られる。ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエスなどのプログレッシブ・ロック・バンドのメンバーは、イギリスの中流階級出身者が多かった。ピンク・フロイド以前の1967年ごろには、すでにムーディー・ブルース、プロコル・ハルム、ナイスらの一部の曲に、プログレッシブな曲調が見られた[10]。フランク・ザッパらは、その音楽は十分に先進的、前衛的ながら、上記条件にあまり該当しないためにプログレッシブ・ロックにはカテゴライズされないこともあった。それらはアヴァンギャルド・ロックや実験音楽、アート・ロックなどの別のジャンルに含まれる。
上記のバンドのほかに、イギリスでは、ソフト・マシーンをはじめとするカンタベリー出身のジャズ・ロック・バンドが体系化したカンタベリー・ロックが登場した。さらに、1960年代から1970年代にかけてドイツで生まれた実験的な音楽を指すクラウトロックもプログレッシブ・ロックの一派とされる。一方、1970年代のアメリカでは、カンサスやボストン、ジャーニーなどが台頭し、アメリカン・プログレ・ハードというジャンルが登場し、ヒット曲を連発した。だが、このジャンルはコーポレート・ロック、産業ロックなどと英米、日本の音楽ジャーナリズム、ロック・ファンから批判された。1970年代後半、パンク、ニュー・ウェイヴの登場により、ハードロックやプログレなど既存の勢力はパンク勢から激しい攻撃を受けた。その結果、プログレは衰退していった[11]。だが、のちにマリリオンらのネオ・プログレッシブ・ロックが現れ、再度注目されるようになっている。また、プログレッシブ・ロックの分野というよりもヘヴィメタルの分野に分類されるが、1990年代以降はドリーム・シアターなどによるプログレッシブ・メタルと呼ばれる音楽形態も生まれた。
プログレッシブという言葉を日本人が聞くとロックという言葉だけを連想するが、英語圏では「プログレッシブ・カントリー」[注 7]や「プログレッシブ・ブルーグラス」[注 8]など、気軽かつ頻繁に使用される。他にも、プログレッシブハウスやプログレッシブトランスというスタイルもクラブ・ミュージックのジャンルに存在する。
注釈
- ^ 「プログレッシブ・ロック入門」141ページ、プログレ評論家、船曳将仁の分析。プログ・ロックは1974年を境に急降下した。河出書房新社刊行
- ^ 「1968年に発売されたキャラヴァンのセルフ・タイトルのデビュー・アルバムのライナーノーツにも"progressive rock"という言葉が出ている」という指摘があったが日本盤の発売は1982年になってからである。
- ^ デビュー作『クリムゾン・キングの宮殿』は全英アルバムチャート5位まで上昇したが、当時から雑誌のレコード・レビューなどで「1969年に、ビートルズの『アビイ・ロード』を1位から転落させたアルバム」という内容で紹介される都市伝説もあった。
- ^ オリジナル・メンバーは全員が中流階級出身。
- ^ キング・クリムゾン、アトミック・ルースター、ナイスの3つのバンド出身者が結成。
- ^ オリジナル・メンバーは全員、中流階級出身である。後に加入したフィル・コリンズは労働者階級出身。
- ^ オルタナ・カントリーと音楽家が重なる。スティーヴ・アールらが、このジャンルに含まれる
- ^ パンチブラザーズがこのジャンルに属する。
出典
- ^ https://www.allmusic.com/artist/yes-mn0000685647
- ^ https://www.allmusic.com/artist/anekdoten-mn0000696551
- ^ https://www.allmusic.com/subgenre/prog-rock-ma0000002798
- ^ https://www.allmusic.com/subgenre/euro-rock-ma0000012305
- ^ http://www.tapthepop.net/extra/56100
- ^ http://www.urbandictionary.com/
- ^ 「プログレッシブ・ロック入門」河出書房新社
- ^ http://www.bbc.co.uk/music/reviews/gncz/
- ^ http://history.sakura-maru.com/progressive.html
- ^ https://www.allmusic.com/subgenre/prog-rock-ma0000002798 AllMusic
- ^ 『プログレッシブ・ロック入門』ロック・クラシック研究会著
- ^ http://britishrock.nomaki.jp/progrock/vdgg.html
- ^ https://www.allmusic.com/
- ^ https://www.allmusic.com/artist/jade-warrior-mn0000105336
- ^ https://www.allmusic.com/artist/alan-parsons-mn0000031274
- ^ https://www.allmusic.com/artist/the-art-bears-mn0000039350
- 1 プログレッシブ・ロックとは
- 2 プログレッシブ・ロックの概要
- 3 地域、サブジャンルと主なアーティスト
- 4 関連ジャンル
- 5 主な楽曲
- 6 脚注
プログレッシブ・ロックと同じ種類の言葉
スタイルに関連する言葉 | ファンキー ファンク フォークロック ブラスロック プログレッシブロック |
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