プランク定数 理論

プランク定数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/30 08:59 UTC 版)

理論

プランク定数は量子論的な不確定性関係と関わる定数であり、h → 0 の極限で量子力学が古典力学に一致するなど、量子論を特徴付ける定数である。

軌道角運動量スピンは常に換算プランク定数の整数倍か半整数倍になっている。例えば、電子のスピンは ±ħ/2 である。なお、量子力学の分野では ħ = 1 とするプランク単位系原子単位系を用いる場合が多く、その場合の電子のスピンは ±1/2 となる。

プランク定数は位置運動量の積の次元を持ち、不確定性関係から位相空間での面積の最小単位であるとも考えられているが、最近では Zurek らの研究で、量子カオス系においてはプランク定数以下のミクロ構造が現れる事がわかった[13]

キログラムの定義

質量のSI単位であるキログラムは、従来の定義では国際キログラム原器(IPK)が用いられていたが、プランク定数を用いた新しい定義に改定され、2019年5月に発効した。 新しい定義においてプランク定数はSIを定義する定義定数として位置付けられ、SI単位による値は実験的に決定される測定値ではなく、固定された定義値となった。 プランク定数(h = 6.62607015×10−34 J s)とともに値が固定された定数である光速度 c、及びセシウム133超微細遷移周波数 ΔνCs とを組み合わせることで、キログラムが導かれるという仕組みになっている。

経緯

国際度量衡委員会の下部組織である質量関連量諮問委員会による2013年の勧告では、新たな質量の定義を採用する条件として、

  • 相対標準不確かさが 50×10−9 以下のプランク定数が少なくとも3つ、独立した実験(キブル天秤法とX線結晶密度法[14]を含む)により得られていること、
  • その内の少なくとも1つは、相対標準不確かさが 20×10−9 以下であること、

等が要求されていたが、2017年5月の 16th CCM meeting 時点までにこの条件は達成された[15]

NISTの D. Haddad らは、2015年から2017年にかけて NIST-4 キブル天秤による計測を繰り返した結果として 6.626069934(89)×10−34 J s の値を得ており、相対標準不確かさでは 13×10−9 を達成している[16][17]。その他の実験結果については「モルプランク定数#実験値から定義値へ」を参照のこと。

2018年11月の第26回国際度量衡総会 (CGPM) で決議され、2019年5月20日に施行された新しいSIの定義では、プランク定数は定義定数となった[18]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ プランクは光を放出する物体は振動子をもち、その振動によって波を放出すると考えた。ここで言う受け渡しとは振動子と電磁波の間におこるエネルギーの受け渡しの事である。
  2. ^ この仮定が必要となった経緯については次が詳しい。『熱輻射と量子』, §.M.Planck 正常スペクトル中のエネルギー分布の法則について.

出典

  1. ^ 1921年 ノーベル物理学賞(アインシュタイン)
  2. ^ CODATA Value
  3. ^ CODATA Value
  4. ^ The American Heritage® Science Dictionary
  5. ^ CODATA Value
  6. ^ CODATA Value
  7. ^ a b Planck (1900a).
  8. ^ Planck (1900b).
  9. ^ Planck (1900c).
  10. ^ C・ロヴェッリ 『すごい物理学講義』河出文庫、2019年、145頁。 
  11. ^ Einstein (1969), §.輻射の本質と構造に関するわれわれの見解の発展について.
  12. ^ Millikan (1916), p. 388.
  13. ^ Zurek (2000).
  14. ^ 藤井賢一「質量標準の現状とキログラム(kg)の定義改定をめぐる最新動向 (PDF) 」 『計測と制御』第53巻第2号、計測自動制御学会、2013年11月5日、 doi:10.11499/sicejl.53.144ISSN 1883-8170OCLC 984806670
  15. ^ RECOMMENDATION OF THE CONSULTATIVE COMMITTEE FOR MASS AND RELATED QUANTITIES SUBMITTED TO THE INTERNATIONAL COMMITTEE FOR WEIGHTS AND MEASURES (PDF)”. RECOMMENDATION G 1 (2017) For a new definition of the kilogram in 2018. BIPM. 2018年5月10日閲覧。
  16. ^ New Measurement Will Help Redefine International Unit Of Mass”. ScienceBlog.com (2017年7月2日). 2018年5月10日閲覧。
  17. ^ Haddad, Darine; Seifert, Frank; Chao, Leon; Possolo, Antonio; Newell, David B; Pratt, Jon R; Williams, Carl J; Schlamminger, Stephan (2017). “Measurement of the Planck constant at the National Institute of Standards and Technology from 2015 to 2017”. Metrologia (IOP Publishing) 54 (5). doi:10.1088/1681-7575/aa7bf2. ISSN 0026-1394. LCCN 65-9907. OCLC 48198209. 
  18. ^ A concise summary of the International System of Units, SIBIPM,2019-05-20






プランク定数と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「プランク定数」の関連用語

プランク定数のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



プランク定数のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのプランク定数 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS