ブラックホール 大質量ブラックホール

ブラックホール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 09:59 UTC 版)

大質量ブラックホール

銀河系(天の川銀河)の中心部にある電波源複合体いて座A*には太陽の370万倍[38]の質量を持った巨大なブラックホールが存在すると多くの天文学者によって考えられている。1995年にはNGC4258(M106)銀河の中心に太陽質量の3,600万倍のブラックホールがあると推定された[39]

しかし、このような大質量ブラックホールの起源についてはあまり良く分かっていない。1970年代後半に考えられていたシナリオは、巨大なガス雲が一気に収縮してブラックホールを作るという説、高密度の星団の中心部分が重力熱力学的に進化してブラックホールとなるなどといった説であったが、いずれも理論的・観測的な困難があった。しかも、通常の恒星進化の果てに生み出される恒星質量クラスのブラックホールと銀河中心に見られる大質量ブラックホールの中間的な質量を持つブラックホールが20世紀末まで全く発見されず、両者の間に関係があるかどうかも不明であった。

しかし1999年から2000年にかけて、日本の研究者グループによる電波やX線での観測から、M82銀河の内部に太陽質量の1,000倍程度のブラックホールがあるらしいことが初めて明らかになった[40]。これを受けて牧野淳一郎は、以下のような大質量ブラックホールの形成シナリオを考えた[41]

  1. 銀河同士の近接遭遇や衝突などによって銀河内部で爆発的な星形成(スターバースト)が起こり、若くて密度の高い星団が大量に出来る。
  2. 星団中の重い星同士が合体してさらに大きな星となり、ますます合体しやすくなるという「合体不安定」という過程が進行する。
  3. これらの重い星が超新星爆発を起こし、太陽の数十倍から100倍程度の質量を持つブラックホールが生まれる。
  4. このブラックホールが合体することで103太陽質量程度の中間質量ブラックホールが生成される。
  5. このような星団が銀河の中心に向かって沈む過程で星団自体が潮汐破壊され、残された中間質量ブラックホール同士が合体することで大質量ブラックホールが生成される。

さらに巨大な超大質量ブラックホールは、銀河同士の衝突により核である大質量ブラックホール同士が合体して生じるのではないかと考えられている[42]。2008年にはOJ 287というクエーサーが太陽質量の180億倍と1億倍という、極めて質量の大きなブラックホール同士の連星系であることが判明した[43]

2005年にはチャンドラX線観測衛星によってM74銀河にも約10,000太陽質量という中間質量ブラックホールが発見されており、今後観測データが蓄積されることでこの仮説の妥当性が検証されていくものと考えられている[44]




注釈

  1. ^ この乱暴な態度が、その後40年間ブラックホールの研究が滞る結果を招く要因となる。また、このやりとりはチャンドラセカールのその後の人生にも暗い影を落とすことになった[15]
  2. ^ なお、カー解は、ブラックホール唯一性定理により、軸対称定常・真空かつ無限遠平坦という仮定のもとでのアインシュタイン方程式のただ一つの解であることが示されており、ブラックホール脱毛定理(無毛定理)の描像とあわせて、物理的に形成されるブラックホールの最終段階と考えられている[22]。1973年に京都大学冨松彰佐藤文隆が発見したトミマツ・サトウ解はカー解を歪めたもので裸の特異点が存在する[23]
  3. ^ ペンローズ本人は幾何学を専門としており、デニス・シアマにその才能を一般相対性理論の領域で活かすべきだと誘われている[25]
  4. ^ なお、ホイーラーはダラス会議から1年と経たない段階で、スティーヴン・ホーキングと出会っている[25]。ホーキングは後に、事実上ホイーラーの最良の教え子となり、ブラックホールの研究を最も確固たる形で受け継ぐことになった[25]。ホーキングは飲み込みの良い学生で、ペンローズの手法を全て吸収し、逆向きの星の崩壊と考えることができる、開いた宇宙(永久に膨張し続ける宇宙)に手法を応用した[24]

出典

  1. ^ https://www.theguardian.com/science/2019/apr/10/black-hole-picture-captured-for-first-time-in-space-breakthrough
  2. ^ ブラックホールの撮影に成功 世界初 一般相対性理論を証明毎日新聞2019年4月10日
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