フランスの経済 産業

フランスの経済

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 20:31 UTC 版)

産業

フランスは先進国の一国であり、多くの産業基盤を持つ。世界にリードする分野として通信衛星を含む通信分野、宇宙航空産業、造船、医薬品、化学、自動車産業などがある。GDP(購買力平価換算)に占める研究開発費の割合は2007年には5.2兆円(推定)を占め、1位は米国、2位は日本、3位は中華人民共和国に次ぐ、4位である[22] ものの、政府負担の割合では38.4%とイギリス(31.9%)、ドイツ(27.8%)やアメリカ(27.8%)、中国(24.7%)、韓国(23.1%)、日本(17.4%)と比べて高い[23]

第一次産業

パリ盆地北部、ノルマンディーのコーに広がる小麦畑

フランスはEU最大の農業生産国であり、EUにおける農業生産高の3割を占める。北部は小麦甜菜が主であり、西部では、乳製品豚肉鶏肉などの家禽類、リンゴの生産が主である。中部では牛肉の生産が盛んである。また、中部から南部にかけて果物野菜ワイン生産用の葡萄の栽培が盛んである。また、フランスは林業や水産業も盛んである。EUの共通農業政策ウルグアイ・ラウンドにより、農業の自由化の圧力がかかり、結果として農業部門の改革が進んできている。

2007年における主要農作物の生産量ベースでは、牛乳(世界7位)、小麦(世界5位)、葡萄(世界4位)、甜菜(世界1位)となっている[24]

フランスは世界第7位の穀類生産国[25] であり、米国に次ぐ世界第2位の農産品輸出国である[26]。しかしながら、農産品の70%はEU諸国、貧困にあえぐアフリカ諸国(旧植民地を含む)に輸出されている。小麦、牛肉、豚肉、家禽類、日用雑貨が主要輸出品である。米国はフランスへの第二の輸出国であるが、日用雑貨に関しては他のEU諸国や発展途上国と競争関係にある。フランスは米国から主に大豆、飼料、魚介類、消費者が好むスナックやナッツといった製品を合わせて、年間約6億ドル輸入している。フランスから米国にはチーズワインを輸出している。

フランスの農業はEUからの約110億ユーロにのぼる補助金に過度に依存しているため、フランスはEUが補助金を削減することに反対している。補助金によりフランスの農産品は競争力が押し上がっている一方、自由貿易を歪めている。付加価値税を避けるためにフランスワインを健康食品と再分類するといった施策によりフランス国内の農業部門を延命させている。

第二次産業

食品

フランスワインの生産地

葡萄の生産が盛んなことから、ブルゴーニュシャンパーニュボルドー等の地域でフランスワインの生産が盛んであるが、近年ではフランスワイン生産に対する補助金の削減が行われている。

化学

フランス国内には石油資源が無いために、海外からの輸入に依存している。トタルは石油メジャーの一角として存在している。産業ガス大手としてエア・リキード、世界2位の医薬品メーカーであるサノフィ・アベンティス(2004年にサノフィ・サンテラボがアベンティスを合併)[27]、化粧品メーカーとしてロレアルが存在する。

輸送用機器

フランスには、ルノーPSA・プジョーシトロエンといった自動車産業、周辺産業として世界1位のシェアを持つミシュランタイヤが存在する。

軍需産業、宇宙航空産業

エアバス社の最新鋭機A380

フランスは世界第3位の武器供給国である。フランスの軍需産業の主要顧客はフランス政府であり、年間約350億ユーロが軍事費に使用されている。加えて、フランスの軍需産業はアラブ首長国連邦ブラジルギリシャインドパキスタン台湾シンガポールといった外国政府も顧客に持つ。

宇宙航空産業、軍需産業の主要企業としてEADSエアバスの100%親会社として存在し、エアバスが米国のボーイングとしのぎを削っている。また、商業目的としては完全に失敗に終わったが、シュド・アビアシオンは超音速の旅客機コンコルドをイギリスとともに開発、製造した過去を持つ。

EADSはエアバス・ディフェンス・アンド・スペースを通して、A400M他の軍用輸送機を生産している他、ダッソー・アビアシオンを通してミラージュ戦闘機シリーズを、ユーロファイターを通して、ユーロファイター タイフーンを生産する他、ミサイルの生産や国際宇宙ステーションなどの計画に参画している。陸では、ネクスターAMX-30ルクレール等の戦車を生産している。

エネルギー

エネルギー及び天然資源に関する統計
電気(2008年)[28]
生産量 5,491億kWh
消費量 4,946億kWh
輸出 587億kWh
輸入 107億kWh
電気生産のエネルギー源
化石燃料 10.4%
水力 12.4%
原子力 76.2%
石油(2008年)[2]
生産高 70,800バレル/日(2008年)
消費 1,986千バレル/日
輸出 554千バレル/日
輸入 3,181千バレル/日
純輸入 2,346千バレル/日
確認貯蔵量 103.3億バレル
天然ガス[2]
生産高 920百万m³(2005年)
消費 4,921百万m³(2005年推定)
輸出 10百万m³ (2005年)
輸入 4,935百万m³ (2005年)
貯蔵量 6,937百万m³

フランスは産油国ではないため、原子力発電所に依存している。1973年には、発電量の8%に過ぎなかった原子力発電の発電量の比率は、1980年には24%、1990年には75%、2006年には78%に達している。

フランス電力公社の民営化

2004年11月20日、フランス最大の電力会社であるフランス電力公社(EDF、Electricité de France)の株式のうち、国家保有分30%が売却され、ユーロネクスト・パリに上場された。フランス電力公社以外にも、傘下にCNR(fr)等を持つ、エンジー、スペインの エンデサSNET経由)といった電力会社が存在する。

第三次産業

金融業

フランスの金融業は、ミッテランまでの国有化、第1次コアビタシオンにより民営化の歴史がある。旧パリ証券取引所(現ユーロネクスト・パリ)は第1次コアビタシオン時に、フランス政府が保有していた株式を売却するために、シラクの手によって整備された。主要金融機関として、クレディ・アグリコルBNPパリバアクサソシエテ・ジェネラルがある。

観光業

国連世界観光機関の最新の統計によると(世界観光ランキング)、2015年に、フランスには年間約84百万人以上の外国人観光客が世界中から訪れた。観光業はフランス経済に重要な役割を担っている。観光地として、ヴェルサイユ宮殿モン・サン=ミシェルなどの世界遺産が存在する他、地中海沿岸はリゾート地としても開発されており、ニースカンヌといった都市、スイス、イタリアにまたがるアルプス山脈が存在する。

交通・運輸

パリのモンパルナス駅に停車するTGV Atlantique

フランスの運輸業を担うインフラは、100平方キロメートル当たり146キロメートルの距離がある道路と6.2キロメートルの鉄道に依拠している。パリを中心に、道路・鉄道のネットワークが形成されている。旅客の高速輸送手段として1970年代にパリ-リヨン間で開通したTGVがフランス国内のみならず、ドイツ、ベルギー、イタリアまで運転している。




  1. ^ a b c d e World Economic Outlook Database, October 2009”. International Monetary Fund. 2009年12月19日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m THE WORLD FACTBOOK”. CIA. 2009年12月13日閲覧。
  3. ^ 長部(1995)pp.333-334
  4. ^ 長部(1995)pp.335-336 1830~1930年の100年間にイギリス、ドイツ、アメリカの人口はそれぞれ3倍、2倍、13倍増えたのに対し、フランスはわずか1.3倍にとどまった。
  5. ^ 長部(1995)p.336
  6. ^ a b 長部(1995)p.347
  7. ^ 渡邊(1998)p.39。パリの小売物価指数(1938年=100)は、以下のように推移した。1944年 285、1945年 393、1946年 645、1947年 1,030、1948年 1,632、1949年 1,817
  8. ^ 渡邊(1998)pp.39-40
  9. ^ a b 長部(1995)pp.348-349
  10. ^ 渡邊(1998)pp.57-58
  11. ^ 長部(1995)p.350
  12. ^ a b c d INSEEより計算。French GDP”. INSEE. 2009年12月19日閲覧。各年を とおき、各年の実質GDPを(1960年=100)とし、各年の実質GDP経済成長率をとすると、1969年の実質GDPは約165になる。それを相乗平均すると約5.7%になる。
  13. ^ 菅原真 「フランスにおける外国人の公務就任権(3)近代国民国家における<国籍>・<市民権>観念研究序説」 法学73(5), 74(1,4) 2009-2010年
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  16. ^ 長部(1995)p.373
  17. ^ 渡邊(1998)pp.217-219
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  19. ^ 長部(1995)pp.382-383
  20. ^ 長部(1995)pp.384-385
  21. ^ 日経新聞 仏「税率75%」避け富裕層脱出 ベルギー国籍、倍増126人 2013/1/9 23:44
  22. ^ 平成21年度版科学技術白書 p.54 第1-3-7図 主要国等の研究費の推移(購買力平価換算)”. 文部科学省. 2009年12月19日閲覧。
  23. ^ 平成21年度版科学技術白書 p.55 第1-3-8図 主要国等の研究費の政府負担割合の推移”. 文部科学省. 2009年12月19日閲覧。
  24. ^ Food and Agricultural commodities production”. FAO. 2009年12月19日閲覧。
  25. ^ 『世界の統計2009』p.112 表4-4 農業生産量―穀物・いも類・豆類”. 総務省統計局. 2009年12月19日閲覧。
  26. ^ Table C1 – Value of agricultural imports and exports, FAO Statistical Yearbook 2007-2008”. FAO. 2009年12月19日閲覧。
  27. ^ 【世界の製薬企業ランキング】減収もファイザーがトップ守る-武田薬品が「100億ドルクラブ」に”. 薬事日報社. 2008年8月17日閲覧。
  28. ^ L'électricité en France en 2008”. Ministère de l'Écologie, de l'Énergie, du Developpement durable et de l'Aménagement du territorie. 2009年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年12月19日閲覧。(仏語)
  29. ^ Leading exporters and importers in world merchandise trade, 2007”. World Trade Organization. 2009年12月19日閲覧。
  30. ^ Annual Report 2010”. Banque de France. 2012年7月30日閲覧。
  31. ^ 経済動向-フランス”. JETRO(日本貿易振興機構). 2015年3月22日閲覧。
  32. ^ ドイツの貿易黒字は「不公平」、政府高官が異例の批判=シュピーゲル誌”. Reuters. 2015年3月22日閲覧。
  33. ^ 欧州委、13年までの財政規律達成を独・仏などに勧告へ”. ロイター. 2009年12月19日閲覧。
  34. ^ EU財務相会合、加盟13カ国に対し財政赤字削減の期限を設定”. ロイター. 2009年12月19日閲覧。
  35. ^ Barclays Wealth Insights, Volume 5:Evolving Fortunes, In co-operation with the Economist Intelligence Unit (pdf)”. Barclays Wealth. p. 5. 2015年3月閲覧。





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