フォーミュラ計画 フォーミュラ計画の概要

フォーミュラ計画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/29 06:46 UTC 版)

機動戦士ガンダムF91 > サナリィ > フォーミュラ計画

メカニックデザイン大河原邦男

設定概要

宇宙世紀0102年、サナリィは連邦政府に対し、MS小型化の指針を提示[1]。これを受けて連邦軍はアナハイム・エレクトロニクス (AE) 社に小型MSの開発を要請し、初の小型MSとして「ヘビーガン」を完成させるが、その性能に不満を持ったサナリィは連邦議会の承認を経て「フォーミュラ計画」とする小型MS開発計画を進め[2]、宇宙世紀0111年9月にF90を完成させる。翌0112年(0111年10月とする資料もある)[2]に開催された連邦軍の次期主力機コンペにおいて、F90はAEが開発した試作機MSA-0120に圧勝し、MS開発の主導権をサナリィへと移した[3]。この背後には、AE社のMS開発独占を危惧した議会・参謀本部の「工廠派」とよばれる勢力の支持があったといわれる[4]。開発にはサナリィ幹部のジョブ・ジョンが携わっている[5]

フォーミュラ計画によって開発された機体群は、それ以前のMSとは異なる規格となり、本格的な第2期MSと呼べるものである[6]。出力の効率はそのままに機体の小型化に成功しており、軍事費の削減にも寄与した[6]

型式番号
フォーミュラ計画は以下の分類でMSの設計開発が行われていたとされる。このうち、F6シリーズに属するMSは発表されていない。

開発番号はF9シリーズの場合、1番目に開発された機体がF90、2番目に開発された機体がF91と指定され、10番目に開発された機体はF99となる(11番目以降はF01から始まるという説もある[7])。

F8シリーズはヘビーガンの後継を目的としたMSなど、つまり汎用MSとされている[7][8]。このためF89は「汎用量産タイプとして10番目に開発された機体」となるが、漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』においては「完成形の名称がF90であることを前提としての社内コードを付けられた実験機」が別途設定されている。

F5シリーズ

F50D

「F5シリーズ」の存在は書籍『SUPER MJ 機動戦士ガンダム最新MS造型資料集』で言及されている[7]。ジェネレータに核融合炉を採用したAFV型モビルスーツとされ、ガンタンクと関連付けられて紹介されている。

本種別の目的として戦闘支援兵器であるGブル可変モビルスーツの発想をまとめ、長距離支援用の機体を従来の半分の機体サイズに収めようと試みられたものとされる[9]。ガンタンクR-44は「F50D」の改装機だったとの推測も存在する[7]

ガンダムUC」に登場するD-50C ロトはサナリィで開発された機体であり、後続のF50の系列に連なるMSと目されている。また、同機の開発を契機としてサナリィはMS小型化の研究を開始している[10]

ガンタンクR-44

諸元
ガンタンクR-44
GUNTANK R-44
型式番号 RXR-44
所属 地球連邦軍
建造 サナリィ
生産形態 試作機
頭頂高 10.3m
本体重量 8.7t
全備重量 11.8t
出力 1,050kw
推力 14,000kg
武装 200mmキャノン×2
4連ミサイルポッド2基
フィンガーランチャー
搭乗者 ロイ・ユング
シーブック・アノー
その他 アポジモーター×28[11]

劇場アニメ『機動戦士ガンダムF91』に登場する可変MS。

フロンティア4の戦争博物館館長であったロイ・ユングが、私的に所有していた可変MS。頭長高約10mと、小型化が主流であった当時においてもひと際小型なサイズが特徴となっている。「R-44」は、ロイが44歳の時に本機を入手したことにちなむとされている[12]

人型の2本脚の背面側にキャタピラを備えており、2足歩行するMS形態と、両脚を前に伸ばして座った姿勢でキャタピラを用いて走行する戦車形態(タンクフォーム)を使い分ける、簡素な変形機能を有している。タンクフォーム時は車高が抑えられることから被弾率が低下し、射撃安定性は向上するが、機動性は著しく落ちるとされている[12]。可変機構を採用した理由としては一年戦争時の支援兵器であったGブルのコンセプトと可変MSの発想をまとめたためとされる[13]

頭部は、主にMS形態で使用されるゴーグルカメラ部とタンク形態で使用される額のセンサーの2種類から構成されている。また、試作機ゆえにセンサーなどはジェガンタイプの内装部品を[12]、スラスターなどはギラ・ドーガの部品を流用している[13][9]

機体の位置づけとしては、宇宙世紀100年以降の次期主力MS開発プランとして挙がったものの1つとされている[12]。MSの小型化を模索している時期に、ミドルMSを改造して核融合炉を搭載することで小型化を達成しようと宇宙世紀0107年頃に開発された[9]

結局、小型MSが動くという以上の大きな成果は得られず、正式採用には至らなかった。この結果を受けサナリィの小型MS開発方針は従来型MSを縮小する方向で確定したといわれる。実験後に放棄されていたものをロイ将軍が引き取り、個人的に復元し有事に備えて改修を施していたとされている[12]。一方で、レストアの際は寄せ集めの部品を組み合わせてでっち上げたとしている資料も存在する[14]

本機体の開発はフォーミュラ計画の一環でもあり、核融合炉を搭載したAFV型MSであるF50シリーズの1つともいわれる[9]。また、ガンタンクの有用性を主張する高官が開発した核融合炉搭載型のAFV型MS「F50D」のうち、ロイ・ユングが私的に改装した機体がガンタンクR-44であると推定した資料もみられる[7]

コクピット
胸部前面ハッチから乗り込む上部コックピットには左右胸部と中央部に3名分の操縦席があるほか、股間部前面にも1名分のコックピットがあり[15]、設定上ではコックピットハッチ上部に多目的収納庫を備え、股間部背面にも乗員用ハッチが設けられている[15]
武装・装備
200mmキャノン砲2門とマニピュレータ兼用のフィンガーランチャー、外装式の4連ミサイルポッドを備える。200mmキャノンについては徹甲弾を使用している。開発時にはビームキャノンの搭載も検討されたが、開発方針として機体の小型化が優先されてスペースが確保できなかったことから、実体式となった[12]。ただし、本機体はロイ自身によって徹甲弾の炸薬や砲身に手が加えられているとされる[12]。4連ミサイルポッドについては汎用性を持たせるためにマニピュレータを装備することとなった結果、外装式になったとされる[12]
劇中での活躍
フロンティアIVがクロスボーン・バンガード (CV) の襲撃を受けた際にロイが起動させ、襲撃から逃れてきた難民であるシーブックたちを巻き込んで戦闘に参加しようとした。しかし、モニターが下がらなかったりコックピットハッチが閉じなかったりとろくに整備されていない状態であり、初撃時に左200mmキャノンの砲身が発砲の圧力に耐えられず破裂したうえ、右キャノンもデナン・ゲーの攻撃で爆砕して機体は中破し、ロイは死亡する。シーブックたちも、友人の1人であったアーサーを失うこととなった。小説版では、キャノンの誘爆によってアーサーとローバーが戦死するが、ロイは死亡せず、クリスとともに連邦軍士官に説得され、本機体を放棄して避難した。
その後はシーブックたちがフロンティアIVから脱出するために使用し、スペースポートへ移動中に子供を盾として利用しようとした連邦軍のGキャノンと対峙するが、これをかわしている。スペースポートではCVに拉致されるセシリー・フェアチャイルドを奪還するためにシーブックが単独で搭乗したが、シオ・フェアチャイルドに銃撃された影響でまともに操練できずベルガ・ダラスのショットランサーを脚部に受け、機能停止した。黎明期の小型MSの性能ではCVの最新型MSに太刀打ちできなかった(シーブックは本機を「10年以上前に製造されたMS」と称している)。セシリーは放棄された本機体のコクピットの血痕を見て、シーブックは死んだものと誤解してしまう。
デザイン
メカニックデザイン大河原邦男。変形ギミックは、かつてサンライズの特撮映画『ガンヘッド』の時に提案して没だったものを提案して採用された[16]
大河原は雑誌記事において、後年の『機動戦士ガンダムSEED』シリーズに登場したザウート(ガズウート)に変形機構を流用したと語っている[17]

ガンタンクR-44 パワードウェポンタイプ

ガンダムマガジン』No.5が初出。

ガンタンクR-44の試作時に提出された、ビーム砲を装備するもうひとつのプラン。マニピュレーターは廃され、右手にはフィンガー・ランチャーと外装式の2連ビーム・キャノン、左手には地上用戦闘車両としての火力強化を図るためのモーターガン・ユニット(8銃身20ミリガトリングガン、35ミリ機関砲、20ミリ機関砲2基からなる)を装備。右肩にのみGキャノンの4連マシンキャノンを長銃身化し射程を延長したものを装備、これにともない頭部は対空精密照準システムに換装されている。左側頭部にはスモーク・ディスチャージャーを装備。カラーリングは通常型と同様のほか、オレンジに近いサンド・イエローとグレーを基調とした「野戦迷彩タイプ」も確認されている。最終的に、200ミリキャノン装備型が採用されている[18]

漫画『機動戦士ガンダムF90 ファステストフォーミュラ (F90FF)』では、0112年の北米キャッツキルの山岳演習場で1機が登場。ロト4機とともにガンダムF90Sタイプの射撃テストのアグレッサーとなる予定のところを何者かに奪取され、実弾で攻撃を仕掛けるが、山頂に移動したSタイプから逆に砲撃を受けて全滅する。なお、このときの本機の右肩には4連マシンキャノンではなく200ミリキャノンを装備しており、ロトよりひと回り大きく描かれている。モノクロでしか確認できないが、塗り分けは野戦迷彩タイプと同様。


注釈

  1. ^ 総推力を113,300kgとする資料もある[4]
  2. ^ 一方、MSA-0120とF90のコンペティション以降、A・Eに対して連邦軍から提示された数年後以降の開発計画として、F90の兵装バリエーションであるF90S簡易生産バージョンのGキャノンのライセンス生産、および自社開発のヘビーガンの暫定量産にとどまり、次期主力MSの開発計画は、事実上棚上げされたとした資料もみられる[29]
  3. ^ 胸部ユニットに大改造を施したほか、ジェネレーターを増設したバックパックを追加装備しヴェスバーを使用可能としたタイプとした資料もみられる[38]

出典

  1. ^ 最新MS造形資料集 1992, p. 53.
  2. ^ a b モビルスーツハンドブック 1992, p. 15.
  3. ^ ガンダム辞典v1.5 2009, p. 121.
  4. ^ a b c d e f g h i ガンダムエース12 2022, p. 322-323, 「月刊モビルマシーン Vol.3」.
  5. ^ 1/100 ガンダムF-90 増装ウェポン 1990.
  6. ^ a b MS大図鑑8 SPECIALガンダム大鑑 1993, p. 40.
  7. ^ a b c d e f g h i j k 最新MS造形資料集 1992, p. 82.
  8. ^ 週刊 ガンダム・モビルスーツ・バイブル 第24号 2019, p. 32.
  9. ^ a b c d ガンダム辞典v1.5 2009, p. 297.
  10. ^ メカニカルアーカイブス 2010, pp. 28–31.
  11. ^ 『B-CLUB the PLASTIC 1 機動戦士ガンダム作例集』バンダイ出版、1992年7月1日、20頁。ISBN 978-4891892326 
  12. ^ a b c d e f g h 1/100 ガンタンクR-44 1991.
  13. ^ a b MS大図鑑5 コスモ・バビロニア建国戦争編 1991, p. 36.
  14. ^ F91オフィシャルエディション 1991, p. 4.
  15. ^ a b MS大図鑑5 コスモ・バビロニア建国戦争編 1991, p. 77.
  16. ^ 『グレートメカニックG 2018WINTER』双葉社、2018年12月、38-42頁。ISBN 978-4575465136 
  17. ^ ガンダムエース2005-4 2005, pp. 174–175.
  18. ^ ガンダムマガジン5 1991, pp. 12–17.
  19. ^ a b c d e f ガンダムエース01 2023, p. 224-225, 「月刊モビルマシーン Vol.4」.
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y B-CLUB 70 1991, pp. 44–47, 「月刊MSジャーナル」.
  21. ^ a b ガンダム辞典v1.5 2009, p. 300.
  22. ^ MS大全集2013 2012, p. 87.
  23. ^ F91オフィシャルエディション 1991, p. 62.
  24. ^ a b c d e f g h i 1/100 Gキャノン 1990.
  25. ^ F91オフィシャルエディション 1991, pp. 62, 74.
  26. ^ a b c d MS大図鑑5 コスモ・バビロニア建国戦争編 1991, p. 38.
  27. ^ a b c d e f B-CLUB 70 1991, p. 47.
  28. ^ モビルスーツハンドブック 1992, p. 12.
  29. ^ 1/100 ガンダムRXF91改 1992.
  30. ^ MS大図鑑5 コスモ・バビロニア建国戦争編 1991, p. 72.
  31. ^ a b c d e パーフェクト・ファイル21 2012, pp. 21–8.
  32. ^ パーフェクト・ファイル21 2012, pp. 21-7、8.
  33. ^ F91オフィシャルエディション 1991, p. 74.
  34. ^ a b c d e f g h i j k l m n ガンダムマガジン5 1991, pp. 14–15.
  35. ^ ガンダムマガジン1 1990, p. 145.
  36. ^ a b c F91モビルスーツ・イン・アクション 1991, p. 134.
  37. ^ a b B-CLUB 66 1991, pp. 8–9.
  38. ^ MS大全集2015 2015, p. 397.
  39. ^ a b c d ガンダムマガジン2 1991, pp. 18–19.
  40. ^ ガンダムエース2018-8 2018, p. 140.
  41. ^ G20 volume.9 2000, pp. 104–105.


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