フェアユース 関連項目

フェアユース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 08:09 UTC 版)

フェアユース英語fair use公正利用とも訳される)とは、アメリカ合衆国の著作権法などが認める著作権侵害主張に対する抗弁事由の一つである。同国の著作権法107条(合衆国法典第17編第107条 17 U.S.C. § 107107条の参考日本語訳)によれば、著作権者の許諾なく著作物を利用しても、その利用が4つの判断基準のもとで公正な利用(フェアユース)に該当するものと評価されれば、その利用行為は著作権の侵害にあたらない。このことを「フェアユースの法理」とよぶことがある。


注釈

  1. ^ 調査とあるように、指し示されている以外の目的で複製等を行った場合にもフェアユースは認められうる[4]
  2. ^ 例えばアタリゲームズ対米国任天堂裁判英語版では、著作物を不正に入手したことが考慮され、フェアユースの成立を否定した[5]。ただし、5つ目以降の要素が検討された裁判例はごくわずかである[5]
  3. ^ 未公開の著作物を著作者の許諾なしに出版し、フェアユースの適用を求めたが却下された事例として知られる、ハーパー・アンド・ロー対ネイションエンタープライズ裁判でも、「必ずしも決定的でないとしても、鍵となる要素」としている[15]
  4. ^ ただし、本件では、仮に日本国内でフェアユースが認められていたとしても、4要素に照らしてフェアユースは成り立たないとした判決が出されている[39]
  5. ^ 著作性を有する書が飾られた部屋で照明器具のカタログを作成するため、撮影を行っていたところ、前述書が写り込んでしまった事例[42]。写り込んだ書の大きさが極めて小さく、「墨色の冴えと変化、筆の勢いといった美的要素を直接感得することは困難である」として著作権侵害を否定した[43]
  6. ^ 「市バス車体事件」[45]や「バス車体絵画事件」[42]とも呼ばれる。車体に美術の著作物(絵)が描かれた横浜市営バスの車両を撮影し、教育を目的とする書籍の形態で出版された事例[46]。東京地裁は、バスに描かれた絵が、継続的に運行されており不特定多数の目に触れるものであったことなどを理由に、著作権法第46条に定める「屋外の場所に恒常的に設置されているもの」であると認定し、著作権侵害を否定した[47]
  7. ^ 例えばコンピュータの修理のためにデータのバックアップを取ることは、著作権法第47条の3(当時、2015年現在では第47条の6)が施行されるまで違法であるとされていた[37]

出典

  1. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, pp. 672–673.
  2. ^ a b エリック・J・シュワルツ 2004, p. 291.
  3. ^ ロバート・ゴーマン、ジェーン・ギンズバーグ 2003, p. 639.
  4. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, p. 674.
  5. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 23.
  6. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, pp. 22–23.
  7. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 30.
  8. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 31.
  9. ^ 横山久芳 2009, p. 54.
  10. ^ エリック・J・シュワルツ 2004, p. 299.
  11. ^ a b c 八代英輝 2004, p. 163.
  12. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, pp. 62–63.
  13. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, p. 681.
  14. ^ a b c d e 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 33.
  15. ^ a b マーシャル・A・リーファー 2008, p. 682.
  16. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, p. 685.
  17. ^ 横山久芳 2009, p. 56.
  18. ^ a b エリック・J・シュワルツ 2004, p. 295.
  19. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 10.
  20. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 26.
  21. ^ 横山久芳 2009, p. 55.
  22. ^ 椙山敬士 2009, p. 78.
  23. ^ a b c Hugenholtz 2013, p. 26.
  24. ^ Hugenholtz 2013, p. 27--著者はこの21条件を「ショッピングリスト」(shopping list) と評して揶揄している。
  25. ^ EUの新しい著作権指令について教えてください”. Europe Magazine (駐日欧州連合代表部の公式ウェブマガジン). 駐日欧州連合代表部 (2019年8月29日). 2019年9月15日閲覧。
  26. ^ 中山信弘 2014, pp. 396–397.
  27. ^ a b Hugenholtz 2013, pp. 27–28.
  28. ^ van der Noll 2012, p. 12.
  29. ^ a b ティナ・ハート、リンダ・ファッツァーニ、サイモン・クラーク 2006, p. 264.
  30. ^ ティナ・ハート、リンダ・ファッツァーニ、サイモン・クラーク 2006, p. 265.
  31. ^ a b M.F.フリント、C.D.ソーン 1999.
  32. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 11.
  33. ^ Fair Use under Israel's New Copyright Act”. Tony Greenman (Mar, 2008). 2008年3月閲覧。
  34. ^ Israel now has the right copyright law”. The Jerusalem Post (Mar 26, 2008 21:08). 2008年8月20日閲覧。
  35. ^ The Football Association Premier League Ltd. v. Ploni and others”. 2010年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月16日閲覧。
  36. ^ Israeli Judge Permits Unlicensed Sports Event Streaming—FAPL v. Ploni (Guest Blog Post)”. Technology and Marketing Law Blog (2009年9月21日). 2015年11月16日閲覧。
  37. ^ a b フェアユース研究会 2010, p. 3.
  38. ^ 東京地方裁判所平成7年12月18日判決 平成6年(ワ)9532号” (PDF). 最高裁判所. p. 7. 2014年11月25日閲覧。
  39. ^ 椙山敬士 2009, pp. 74–75.
  40. ^ a b 斉藤博 2007, p. 224.
  41. ^ 東京高等裁判所判決平成14年2月18日 平成11年(ネ)5641号” (PDF). 最高裁判所. 2014年11月25日閲覧。
  42. ^ a b 横山久芳 2009, p. 50.
  43. ^ フェアユース研究会 2010, p. 34.
  44. ^ 東京地方裁判所平成13年7月25日判決 平成13年(ワ)56号” (PDF). 最高裁判所. 2014年11月25日閲覧。
  45. ^ フェアユース研究会 2010, p. 38.
  46. ^ 奥田百子 2012, p. 146.
  47. ^ 奥田百子 2012, pp. 146–147.
  48. ^ 横山久芳 2009, pp. 49–52.
  49. ^ “公正利用なら許諾不要に 著作権保護の新制度審議へ”. 共同通信. (2009年3月16日). https://web.archive.org/web/20090320032846/http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031601000648.html 2009年3月16日閲覧。 
  50. ^ “「日本版フェアユース」の対象は 報告書まとまる”. ITmedia. (2010年1月20日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/20/news087.html 2010年2月17日閲覧。 
  51. ^ “著作物の許可ない利用反対 日本新聞協会など7団体”. 朝日新聞 朝刊 (朝日新聞社). (2016年10月25日) 


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