ファウスト (文芸誌)
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刊行状況
- 創刊以前
- 直接の母体となったのは、講談社文芸図書第三出版部が発行していた小説誌『メフィスト』だが、売上不振から当時の3冊ルールに抵触し、講談社ノベルスから新刊を出すことができなくなっていた佐藤友哉に小説を発表する場を与える名目で、2002年7月に大塚英志と東浩紀の2人が編集する文芸誌・批評誌として創刊された『新現実』(角川書店)と、2002年11月の第一回文学フリマで販売された同人誌『タンデムローターの方法論』が、本誌の原型となっている。
- 特に後者は、佐藤友哉と西尾維新が小説を書き、舞城王太郎が挿絵を付けた太田克史編集のコピー誌で、これに周辺の若い世代の書き手が加わっていくことにより、初期『ファウスト』のコンセプトが固まっていく。
- 創刊からコミックファウストまで
- 2003年9月5日にVol.1が発売され、9月20日には創刊を記念して、紀伊國屋サザンシアター(新宿)で「激変する文芸 ファウストフェスティバル2003」が行われた。
- Vol.1・2は、講談社の文芸誌『メフィスト』と同じように『小説現代』増刊として刊行されたが、発行部数が少なかったためオークションなどで高騰した[6]。Vol.3以降は「講談社MOOK」として刊行され、Vol.1・2も後にムック化され復刊した。
- Vol.3以降は『特集』という形で1人の作家にスポットを当てたり、文芸やノベルゲーム周辺のブームを取り上げたりしている。入れ替わりに企画が重複していた『新現実』はVol.3で刊行を終え、文芸色を排し、大塚英志の個人誌に戻した『Comic新現実』へ移行した。
- Vol.3で年3回の定期刊行化が決定したと発表し、2004年はVol.2 - 4までの3冊、2005年はVol.5、6A、6Bと3冊が発行された。2006年には本誌2冊、別冊2冊の発行が予告されていたが、実際には6月に別冊である『コミックファウスト』1冊が発行されただけで、その後、2008年の夏まで2年間発行が途絶えた。
- 国内での2年間の休止と海外でのファウスト刊行
- 日本で『ファウスト』本誌の刊行が途絶えていた間、2006年2月に台湾尖端出版より、同年4月に韓国鶴山文化社より、それぞれ現地語版の『ファウスト』が出版され、日本のものを追いかける形で巻を重ねた。ただし、台湾版は2007年8月のVol.4 SIDE-A発売以来、刊行が途絶えている。韓国版はVol.6 SIDE-B(2009年8月)まで刊行されている。
- 2006年、太田が海外文芸出版部に異動し、11月には新レーベル『講談社BOX』を立ち上げた。それまで『ファウスト』掲載作品は講談社ノベルスから単行本化されていたが、以降は講談社BOXからの刊行が主となり、作品によってはハードカバーとなることもあった。
- 2008年10月には太田発案のキャッチコピー「思春期の自意識を生きるシンフォニー・マガジン」を掲げた兄弟誌『パンドラ』が創刊され、2009年8月のVol.4まで刊行された。
- ファウスト再始動
- 2008年8月、約2年半ぶりに本誌 (Vol.7) が発売された。Vol.7では日本を代表するSF作家である筒井康隆がライトノベル「ビアンカ・オーバースタディ」三話を執筆し、話題となった。また、前年に刊行が決定していたアメリカ版「FAUST 1」が同月19日、アメリカの出版グループランダムハウスのレーベルDel Reyより発売された。
- 『ファウスト』は海外展開を始めた頃から積極的に海外のクリエイターに声を掛けるようになった。Vol.6A,6Bでは台湾の雑誌『月刊挑戦者』で活躍していたVOFANのイラストを巻頭に置き、『コミックファウスト』では日本・台湾・香港・韓国のイラストレーターの作品を巻頭に配した。
- Vol.7では、中国の80後(バーリンホウ)作家を代表する人物である郭敬明の作品が翻訳掲載されており、郭敬明が編集長を務める文芸誌『最小説』と協力し、互いに作家を紹介し合う計画が編集長の口から述べられている[7]。
- その後、『最小説』2009年2月下旬号[8]掲載の企画「百人恋愛世紀(下)」(バレンタインデーに関する短いコメントを各界の著名人や一般人が寄せている)に太田克史、渡辺浩弐、翻訳家の泉京鹿が参加した。西尾維新は、2月上旬号掲載の予告では同企画に参加するとされていたが、実際には登場しなかった。
- "解散"へ
- 2008年12月、太田は講談社BOX編集長(部長)から異動し、講談社文芸局付き担当部長となり、2010年には星海社副社長へ就任する。これらの人事の影響で再び刊行が止まっていたが、2011年9月末に講談社からVol.8が発売された。同時に太田は次号Vol.9で“解散”[9]とツイートし、表紙でも宣言したが、以降、刊行への動きはない。
- Vol.8は『タンデムローターの方法論』からのレギュラー執筆者で皆勤賞だった西尾維新が寄稿していない唯一の号だが、舞城王太郎や清涼院流水も執筆陣から外れており、代わりに2000年代のムーブメントを懐古・総括する記事が多く入るなど、初期『ファウスト』の雰囲気とは大きく異なっていた。
- 実質的には、2010年9月に開設された星海社のwebサイト「最前線」が『ファウスト』の後継媒体となっているが、西尾維新を含む数人の作家は講談社BOXに残る形となり、星海社では執筆していないため、創刊からの人的な流れは二分されている。
- ^ Vol.2編集後記参照
- ^ Vol.5 (p.136) 及びVol.6A (p.362) 参照
- ^ Vol.1編集後記および本物のDTPを目指した文芸誌「ファウスト」 Archived 2014年3月27日, at the Wayback Machine.参照
- ^ 本物のDTPを目指した文芸誌「ファウスト」 Archived 2014年3月27日, at the Wayback Machine.より
- ^ 導入してわかる新たな次世代DTP戦略 Archived 2007年1月2日, at the Wayback Machine.より
- ^ Vol.4「Editor×Editor」での矢野優の発言参照
- ^ 「カルチャー・ビッグバン発生中! 渡辺浩弐×『ファウスト』編集長トークセッション」『ファウスト』Vol.7 pp.573-575、講談社、2008年8月 参照
- ^ 『最小説』は2009年より月2回刊行となっており、上旬号は『最小説』、下旬号は『最小説 映刻』(通称『最映刻』)というタイトルで刊行されている。
- ^ http://twitter.com/FAUST_editor_J/status/116899965434998786
- ^ a b 原作/ゆずはらとしゆき
- ^ Vol.1のみキャッチコピーが異なり、「全台第一本專為青少年量身打造的文學MOOK」となっている。
- ^ Vol.6A p.332およびp.335参照
- ^ 台湾版Vol.3 SIDE-A編集後記 (p.256) 参照
- ^ 台湾版Vol.4 SIDE-A編集後記 (p.258) 参照
- ^ 『FAUST 2』収録の対談"Talk Session: On the Occasion of the Publication of the U.S. Edition of Faust" p.313参照
- ^ 講談社BOOK倶楽部 - ファウスト Archived 2007年1月20日, at the Wayback Machine.
- ^ Vol.7 p.18参照
- ^ 先端出版 2008年浮文誌新人奨(中国語)
- ^ 台湾版Vol.3 SIDE-B編集後記 (pp.290-291) 参照
- ^ 關於〈請勿挖掘〉這篇小說 - 作者の冷言による解説(中国語)
- ^ 烏奴奴的異想國度 - 推理作家烏奴奴のWebサイト(中国語)
- ^ 韓国版ファウストVol.6A p.781参照
- ^ 『『ファウスト』Vol.6』講談社、2005年、362頁。
- ^ “松岡正剛の千夜千冊”. 松岡正剛の千夜千冊 - 古今東西1700夜を超える千変万化・前人未到のブックナビゲーションサイト (2020年9月25日). 2023年7月23日閲覧。
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