ヒマラヤ山脈 氷河と河川

ヒマラヤ山脈

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/09 14:28 UTC 版)

氷河と河川

ブータンの氷河湖
航空機から見たヒマラヤ山脈。いたるところが氷河に覆われている

ヒマラヤ山脈には非常に多くの氷河が存在し、面積は極地を除く地球上では最大である。ほかにおもな氷河としては、ガンゴートリー山系英語版ガンゴートリー氷河ヤムノートリー英語版氷河、カンチェンジュンガ山系のゼム氷河英語版、エベレスト山系のクーンブ氷河英語版などがある。またカラコルム山脈にはシアチェン氷河ビアフォ氷河バルトロ氷河などがある。

ヒマラヤ山脈の麓は熱帯気候や亜熱帯気候に属するが、頂上部は万年雪に閉ざされている。これらの万年雪は巨大な2つの河川の水源となっている。西への流れはインダス盆地に流れ込み、インダス川はその西方水系の中でもっとも大きな河川である。インダス川はチベットでセンゲ川英語版ガル川英語版の合流地点から始まり、カーブル川ジェルム川シェナブ川ビアス川サトレジ川などの河川と合流したのち、パキスタンを南西方向に横切り、アラビア海に流れ込んでいる。

インダス川方面以外のヒマラヤ山脈の水源の多くはガンジス・ブラマプトラ川流域に流れ、両河川に合流する。ガンジス川はヒマラヤ南麓にあるガンゴートリー氷河に流れを発するバーギーラティー川英語版を源流としている。氷河の下からバギーラティー川が流れ出す地点はゴームク(牛の口)と呼ばれ、標高3,892メートルである[3]。その後、下流でヒマラヤから流れ出したアラクナンダ川英語版と合流し、そこからガンジス川という名に変わる。アラクナンダ川のほうが長いが、ヒンドゥー教の文化や神話ではバーギーラティー川のほうが真のガンジスの源流であるとみなされている[4][5]。その後、リシケーシュで山脈から離れ、ヤムナー川と合流したあと、北インドヒンドスタン平原を南東に横切る。

ブラマプトラ川は、西チベットに発するヤルンツァンポ川が、チベットを東に流れ、アッサム平野を西に流れていく。ガンジス川とブラマプトラ川は、バングラデシュで合流し、世界最大のデルタ地形を形成して、ベンガル湾へ流れ出ている[6]

ヒマラヤ最東部の河川はエーヤワディー川を形成している。エーヤワディー川は東チベットから始まり、ミャンマーを南に縦断、アンダマン海に流れ込む。

サルウィン川メコン川、長江と黄河は、ヒマラヤ山脈とは地質学的に区別されるチベット高原から始まるため、本来はヒマラヤ山脈を水源とする河川ではないと考えられている。一部の地理学者は、ヒマラヤ外縁水系の川と分類している。

近年、ヒマラヤ山脈の全域で顕著な氷河後退現象が観測されているが、世界的な気候変動の結果であると考えられている[7]。この現象の長期的な影響は未知であるが、乾季の生活を氷河を水源とする北インドの河川に頼る数億の人々に甚大な影響を与えると見られている[8]


  1. ^ Definition of Himalayas”. Oxford Dictionaries Online. 2011年5月9日閲覧。
  2. ^ 辛島昇・前田専学・江島惠教ら監修『南アジアを知る事典』p594 平凡社、1992.10、ISBN 4-582-12634-0
  3. ^ C. R. Krishna Murti; Gaṅgā Pariyojanā Nideśālaya; India Environment Research Committee (1991). The Ganga, a scientific study. Northern Book Centre. p. 19. ISBN 978-81-7211-021-5. https://books.google.co.jp/books?id=dxpxDSXb9k8C&pg=PA19&redir_esc=y&hl=ja 2011年4月24日閲覧。 
  4. ^ "Ganges River". Encyclopædia Britannica (Encyclopædia Britannica Online Library ed.). 2011. 2011年4月23日閲覧
  5. ^ Penn, James R. (2001). Rivers of the world: a social, geographical, and environmental sourcebook. ABC-CLIO. p. 88. ISBN 978-1-57607-042-0. https://books.google.co.jp/books?id=koacGt0fhUoC&redir_esc=y&hl=ja 2011年4月23日閲覧。 
  6. ^ Sunderbans the world's largest delta”. gits4u.com. 2013年2月19日閲覧。
  7. ^ Vanishing Himalayan Glaciers Threaten a Billion”. Planet Ark (2007年6月5日). 2009年4月17日閲覧。
  8. ^ Glaciers melting at alarming speed”. People's Daily Online (2007年7月24日). 2009年4月17日閲覧。
  9. ^ Drews, Carl. “Highest Lake in the World”. 2010年11月14日閲覧。
  10. ^ Devitt, Terry (2001年5月3日). “Climate shift linked to rise of Himalayas, Tibetan Plateau”. University of Wisconsin–Madison News. http://www.news.wisc.edu/6138 2011年11月1日閲覧。 
  11. ^ 「世界地理4 南アジア」p385 織田武雄編 朝倉書店 1978年6月23日初版第1刷
  12. ^ 辛島昇・前田専学・江島惠教ら監修『南アジアを知る事典』p863 平凡社、1992.10、ISBN 4-582-12634-0
  13. ^ 「ビジュアル・データ・アトラス」p541 同朋舎出版 1995年4月26日初版第1刷
  14. ^ “水力発電はブータンの「白色金」、2020年までにGDPの5割を目指す”. AFP. (2013年7月8日). https://www.afpbb.com/articles/-/2954758 2014年12月29日閲覧。 
  15. ^ 「ヒマラヤ世界」pp138-139 向一陽 中公新書 2009年10月25日発行
  16. ^ http://j.people.com.cn/n/2014/1124/c95952-8813117.html 「チベット初の大型水力発電所、正式に稼働開始」人民網日本語版 2014年11月24日 2014年12月29日閲覧
  17. ^ “チベット自治区最大の水力発電所が稼働開始、中国”. AFPBB. (2014年11月25日). https://www.afpbb.com/articles/-/3032619 2019年7月27日閲覧。 
  18. ^ “エベレスト登山者にごみ収集を義務化へ、ネパール”. AFPBB. (2014年3月4日). https://www.afpbb.com/articles/-/3009742 2014年12月29日閲覧。 
  19. ^ 「情報も写真も無し、ヒマラヤ未踏峰に世界初登頂 早大隊」『朝日新聞』朝刊2017年11月8日(スポーツ面)
  20. ^ Dallapiccola, Anna (2002). Dictionary of Hindu Lore and Legend. ISBN 0-500-51088-1 
  21. ^ Pommaret, Francoise (2006). Bhutan Himlayan Mountains Kingdom (5th ed.). Odyssey Books and Guides. pp. 136–7. ISBN 978-9622178106 
  22. ^ “Tibetan monks: A controlled life”. BBC News. (2008年3月20日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7307495.stm 
  23. ^ “Mosques in Lhasa, Tibet”. People's Daily Online. (2005年10月27日). http://english.peopledaily.com.cn/200510/27/eng20051027_217176.html 






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