パターナリズム パターナリズム批判

パターナリズム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/30 14:26 UTC 版)

パターナリズム批判

国家と個人の関係については、国家が国民の生命や財産を保護する義務を負っているのは当然であるにせよ、少なくとも心身の成熟した成人に対する過剰な介入が、いわば「余計なお節介」であるとして批判が加えられている。

また、表現の自由を重視する立場から、パターナリズムに基づく、有害図書有害情報に対する表現規制に対する批判も存在する。

国民の自由である自己決定権を広く認めるのか、ある程度国家の介入を許容するのかという点で意見が分かれる。

関連文献

  • 山田卓生 『私事と自己決定』日本評論社、1987年、ISBN 4535576742
  • 吉原敬典医療経営におけるホスピタリティ価値:経営学の視点で医師と患者の関係を問い直す』白桃書房、2016年、ISBN 978-4-561-266747
  • 篠崎智・加茂直樹編『生命倫理の現在』世界思想社、1989年、ISBN 4790703533
  • フリードソン、エリオット(進藤雄三・宝月誠訳)『医療と専門家支配』恒星社厚生閣、1992年、ISBN 4769907354。(原著は、Eliot Friedson, Professional Dominance : The Social Structure of Medical Care, Atherton Press, 1970)
  • 加藤尚武・加茂直樹編 『生命倫理学を学ぶ人のために』世界思想社、1998年、ISBN 4790706907
  • 澤登俊雄『現代社会とパターナリズム』ゆみる出版、1997年。ISBN 4946509089 
  • 花岡明正 著「第1章 パターナリズムとは何か」、澤登俊雄 編『現代社会とパターナリズム』ゆみる出版、1997年。ISBN 4946509089 

脚注


注釈

  1. ^ パターナリズム paternarism の「パター pater」の語源は、父親 (father) を意味するラテン語からである(江崎一郎「パターナリズム - 概念の説明 - 」、加藤・加茂編、1998年、65頁)。模様・規範を意味する英語の「パターン (pattern) 」とは無関係である。
  2. ^ この「ウォルフェンドン委員会報告」を巡ってハートとパトリック・デヴリン判事の間で戦わされた論争であるためこの名がある。詳しくはハーバート・ハートLaw, Liberty and Morality, Stanford University Prress,1963および井上茂「法による道徳の強制」、『法哲学研究』3、1972年、有斐閣を参照。
  3. ^ パターナリズムに直接言及してはいないが、明治憲法体制下の日本で、天皇を「父親」とし、臣民を「子」とする国家観について、石田雄『明治政治思想史研究』未來社、1954年。 NCID BN12136785 、および、石田雄 著「家族国家観の構造と特質」、松本三之介 編『明治思想における伝統と近代』東京大学出版会、1996年。ISBN 4130301012 
  4. ^ ジェラルド・ドゥオーキンが挙げているパターナリズムの例のなかで、国家と国民に関係するものとして、オートバイ運転者にヘルメット着用を義務づける法律、自殺を犯罪とする法律、両者の同意を得ている決闘を禁止する法律、などがある(Gerald Dworkin, 'Paternalism' in Rolf E. Sartorius ed., Paternalism, University of Minnesota Press, 1983,p.20)。なお、ドゥオーキンのパターナリズムについての紹介は、中村直美「ジェラルド・ドゥオーキンのパターナリズム論」、『熊本法学』32号、1982年、を参照。
  5. ^ 直接パターナリズムに言及してはいないが、市町村などの行政機関の窓口で、クライアント(行政サービスの受け手)に対して「善意の支配」を及ぼす「第一線職員」の動態について分析した研究として、畠山弘文『官僚制支配の日常構造 善意による支配とは何か』三一書房、1989年、ISBN 4380892131
  6. ^ これについて直接パターナリズムに言及する研究はみあたらないが、一例として、20世紀初頭のオランダ領東インド(現在のインドネシア)で、宗主国のオランダは、現地住民に初等教育の機会を与え、また下級官吏や医師を養成するための専門教育機関の設置した。また、1918年には現地住民の代表を含む植民地議会 (Volksraad) を開設した。これらの諸政策は現地住民の自治能力の育成と、本国から現地政府への権限委譲を目的としていた。これらは「オランダ=白人=キリスト教徒=文明の光が、東インド=有色人=非キリスト教徒=野蛮の闇をはらい、蒙を啓き、文明に導くのだ」との発想に基づいていた(早瀬晋三・深見純生「近代植民地の展開と日本の占領」、池端雪浦編 『東南アジア史Ⅱ 島嶼部』、山川出版社<新版 世界各国史6>、1999年、283頁)。

出典

  1. ^ 『19世紀イギリスにおける経営パターナリズム』武居 良明,1995年
  2. ^ 『医療におけるパターナリズム』谷本光男,医療とバイオエシックスの展開, p154, 1994年
  3. ^ 『生命倫理学講義』p68,日本評論社,1998年
  4. ^ 統治・自律・民主主義―パターナリズムの政治社会学”. 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア. 2022年10月23日閲覧。
  5. ^ 英辞郎 on the WEB”. eow.alc.co.jp. 2022年10月23日閲覧。
  6. ^ 横山謙一 著「パターナリズムの政治理論」、澤登俊雄 編『現代社会とパターナリズム』ゆみる出版、1997年、166頁。ISBN 4946509089 
  7. ^ J.S.ミル(早坂忠訳)『自由論』(世界の名著38『ベンサム、J・S・ミル』)、中央公論社、1967年、224-225頁。
  8. ^ エリオット・フリードソン『医療と専門家支配』恒星社厚生閣、1992年。ISBN 4769907354 
  9. ^ 患者の自己決定とインフォームド・コンセントについては、上村貞美「患者の権利 - インフォームド・コンセントを中心に」、虫明満編 『人のいのちと法 - 生命倫理と法』法律文化社、1996年、58頁、を参照。
  10. ^ 悪徳商法防止「父権訴訟」を導入しては
  11. ^ 以下のパターナリズムの類型については、花岡 1997中村直美 著「パターナリズムの概念」、井上正治; 西山富夫 編『刑事法学の諸相 : 井上正治博士還暦祝賀』有斐閣、1981年。ISBN 4641040575 John, Kleinig (1983), Paternalism, Manchester University Press, p. 14, ISBN 0719017033 を参照。 なお、クライニッヒの議論については、パターナリズム研究会「紹介 : J・クライニッヒ著『パターナリズム』」(1) - (4)、『國學院法学』25巻1号 - 4号、1987年-1988年、に詳しい。
  12. ^ 花岡 1997, pp. 34–35.
  13. ^ 花岡 1997, pp. 35–37.
  14. ^ 本田裕志「医療におけるパターナリズム」、篠崎・加茂編、世界思想社、1989年、を参照[要文献特定詳細情報]
  15. ^ 被災自治体における住民の意思反映:東日本大震災の現地調査・多角的考察を通じて』 日本都市センター 2014 pp.104-107.
  16. ^ 植田今日子 (2012). “なぜ被災者が津波常習地へと帰るのか”. 環境社会学研究 (環境社会学会) 18 (0): 60-81. doi:10.24779/jpkankyo.18.0_60. 






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