バーゼル 経済

バーゼル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/26 06:33 UTC 版)

経済

ロシュタワー

動力源としてライン川の水力を活用できたことや、宗教的に比較的寛容だったことを背景に欧州各地から宗教的な迫害を受けた商工業者が移住しやすかったことから、近世には織物工業や製紙業が発達した。こうした工業生産に必要な染料や薬剤を供給するため、化学工業が早くから発達し、現在もバーゼルに本社を置く世界的な製薬会社ノヴァルティスロシュの淵源となった[20]

ドイツとアルプス山脈以南とを結ぶ陸路がライン川を渡る地点として、また、ライン川の最終遡行点という地理的な条件を背景に、古くから商業も栄えてきた。1471年から毎年続いている秋季市(Herbstmesse、10月末~11月初)のほか、春の宝飾品・時計の見本市(バーゼル・フェア(Baselworld))、夏の美術品商談会(Art Basel)など多くの見本市が開催されることでも知られている。

中立国スイスにあり、フランスとドイツへの鉄道の便が比較的よいことから、1930年国際決済銀行の本部が置かれた。同銀行は、世界各国の中央銀行間の協力を目的としており、その一環としてバーゼル銀行監督委員会に事務局機能を提供している。

行事

バーゼルの年間行事のうち、もっとも有名なものはバーゼルのカーニバルBasler Fasnacht)である。一般的に、プロテスタント世界ではカーニバルを祝う伝統がない中、バーゼルのカーニバルはその例外である。ただし、灰の水曜日の直後の月曜日の午前4時に始まる日程は、カトリック世界で一般的な日程と比べ1週間遅くなっている。さまざまな衣装に身を包んだ地元の参加者が、72時間にわたって音楽を演奏しながら市内を練り歩き、大量の紙ふぶきを撒き散らす様子は、欧州の奇祭の1つに数えられている。

春のカーニバルに対し、秋には秋季市(Herbstmesse)が開催される。1471年、時の皇帝フリードリヒ3世の勅許によって始まり、現在に至るまで500年以上にわたり中断されることなく続いている。10月末から11月初の2週間にわたり市内数か所の広場に、観覧車メリーゴーラウンドなど移動式の遊具が設置されるほか、各種の屋台が立ち並ぶ。

文化

バーゼル大学

バーゼルは、スイス最古の大学であるバーゼル大学(1459年創立)などの高等教育機関を擁し、多くの美術館博物館もある。このほか、市立劇場の芸術性も高い評価を受けており、スイスにおける文化の中心の1つとなっている。

バーゼルとその近郊には30を超える数の美術館および博物館がある。世界最古の公共美術館といわれるバーゼル市立美術館(1661年)は、15世紀から16世紀にかけての南ドイツ地方で活躍した画家、および、19世紀から20世紀にかけて活躍した画家の作品を中心としたコレクションが充実している。また、バイエラー財団美術館は、現代美術のコレクションのほか、独創的な企画展の開催で知られ、欧州全域からの入場者が絶えない。このほか、特色のある美術館として、「動く彫刻」の作者として知られるジャン・ティンゲリーの作品を収蔵するティンゲリー美術館、現代美術館(市立博物館の分館)、漫画美術館などがある。

博物館としては、考古学博物館、自然史博物館、歴史博物館、民俗博物館といった一般的なもののほか、バーゼルの産業史を背景に、製紙博物館、製薬史料館といった特色のあるものも少なくない。また、動物園はスイス最古(1874年創立)かつ最大であるほか、大学付属植物園(1589年創立)も世界有数の歴史を誇っている。


  1. ^ Statistik - Bestand und Struktur バーゼル=シュタット準州統計局、2017年1月29日閲覧。
  2. ^ Tourismus, Schweiz. “バーゼル Basel | スイス政府観光局”. スイス政府観光局. 2022年11月3日閲覧。
  3. ^ a b Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1505.
  4. ^ Baedekers Autoreiseführer Schweiz. Stuttgart : Baedekers Autoreiseführer. 1968/69. S. 266.
  5. ^ a b Gerhard Köbler: Historisches Lexikon der deutschen Länder. 6. Aufl. München: C.H.Beck 1988 = Darmstadt: Wissenschaftliche Buchgesellschaft 1999, S. 40.
  6. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1505-1506.
  7. ^ a b Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1506.
  8. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1507.
  9. ^ 西側の扉(Westfassade)には1330年頃制作の、右手に教会堂の模型を手にするハインリヒ帝の像がある。- Florens Deuchler : Gotik.(Belser Stilgeschichte 7) Stuttgart: Chr.Belser 1970, Abb.102 (S.86).
  10. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1506-1507.
  11. ^ Michael Imhof / Stephan Kemperdick:  Der Rhein. Kunst und Kultur von der Quelle bis zur Mündung. Darmstadt: Wissenschaftliche Buchgesellschaft 2004 (ISBN 3-534-17215-9). S. 44-46.
  12. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1513.
  13. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1508-1510.
  14. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1514.
  15. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1512-1513.
  16. ^ エーディト・エネン著 佐々木克巳訳 『ヨーロッパの中世都市』岩波書店、1987年、(ISBN 4-00-002373-X) 、292頁。
  17. ^ エーディト・エネン著 佐々木克巳訳 『ヨーロッパの中世都市』岩波書店、1987年、(ISBN 4-00-002373-X) 、293頁。
  18. ^ 木間瀬精三『死の舞踏』中公新書359 1974年、86-87頁。- LA DANSE DES MORTS.BALE, Felix Schneider, Editeur.1875. Faksimile-Druck Museums- und Heimatverein Bad Waldsee, 1. Auflage 1982, 2. Auflage 1992.
  19. ^ Lexikon des Mittelalters. Bd. I. München/Zürich: Artemis 1980 (ISBN 3-7608-8901-8), Sp. 1514-1515.
  20. ^ 川口マーン惠美『世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン』講談社、2016年、60頁。ISBN 978-4-06-272965-9 
  21. ^ (2033) Basilea = 1953 DA = 1953 EY = 1955 WD = 1955 XD = 1973 CA”. MPC. 2021年9月23日閲覧。


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