ノーベル賞 授与

ノーベル賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/27 06:07 UTC 版)

授与

受賞者へは賞状とメダルと賞金が与えられる。受賞者に与えられる賞金は、ノーベルの遺言に基づき、彼の遺産をノーベル財団が運用して得た利益を原資としている。ただし「経済学賞」は1968年に創設され1969年から授与されたが、その原資はスウェーデン国立銀行の基金による[4]

ノーベル賞の賞金は、過去幾度も変動してきた。ノーベルは遺産を安全な有価証券にすることを指定しており、このため得られる利子額は長年にわたって低いものであり、賞金もそれに連動して設立当初より相対的に低い額にとどまっていた。こうした状況は1946年にノーベル財団が免税となったことと、1950年代に株式への投資が解禁されたことによって改善され、1990年代には設立当初の賞金レベルを回復した[15]。2001年から現在まで賞金額は1000万スウェーデン・クローナ(約1億円)である。しかしスウェーデンのノーベル財団は2012年6月11日の理事会で、過去10年間にわたって運用益が予想を下回ったことなどを理由として、2012年のノーベル賞受賞者に贈る賞金を2割少ない800万スウェーデン・クローナ(約8900万円)とすることを決めた[22]

なお、日本においてはノーベル賞の賞金は所得税法第9条第1項第13号ホにあるように、所得税は非課税となっている。これは、1949年に湯川秀樹が日本人として初のノーベル賞を受賞した際に、賞金への課税について論争が起こったのを受けて改正されたものである[23]

メダル

1974年のノーベル平和賞の金メダル

受賞時に渡されるメダルは1902年から使用され、ノーベル財団によって商標登録されている。1901年の第1回受賞時にはメダルが間に合わなかったため、第2回からの授与となっている。

メダルには表面にアルフレッド・ノーベルの肖像(横顔)と生没年が記されている。表面のデザインは物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞では同じであるが、平和賞と経済学賞では若干異なる。裏面のデザインは賞によって異なるが、物理学賞と化学賞では共通のデザインで、自然の女神のベールを科学の女神がそっと外して横顔を覗いているデザインとなっている。1980年以前のメダルは24Kの純金であったが、落としただけで曲がってしまったり、傷がつきやすいということもあり、現在では18Kを基材として、24Kでメッキした金メダルが使用されている。重量は約200グラム、直径約6.6センチ。

メダルのレプリカは、受賞者本人が上限を3個として作成してもらうことが許可されている。

2010年までは、スウェーデン政府の機関が制作していたが、予算削減のため2011年からノルウェーの企業に委託されることになった。しかし国内での製造を望む国民の要望が多かったため、2012年からスウェーデンの民間企業で製造されることが決定した。

ガムラスタンにあるノーベル博物館には、ノーベル賞のメダルを模した「メダルチョコ」が売られており、観光客だけではなく授賞式に訪れた受賞者本人も土産として購入するという。益川敏英はこのチョコレートを600個も買い込んで話題となった[24]

受賞者がメダルを売却する事例もあり、1962年に生理学・医学賞を受賞しフランシス・クリックは死後の2013年[25]、共同受賞者のジェームズ・ワトソンは経済的な理由から2014年、2021年に平和賞を受賞したドミトリー・ムラトフ所有のメダルが2022年、それぞれオークションを通じて第三者に譲渡された[注 2][27][28]

科学史としてのノーベル賞

前述のようにノーベル賞の自然科学分野における受賞者は欧米の研究者を中心としており、1920年代に日本人の山極勝三郎がノミネートされた際には、選考委員会で「東洋人にはノーベル賞は早すぎる」との発言があったことも明らかになっている[注 3]。また、元国連大使松平康東は、1930年代に呉建がノミネートされた際には日本枢軸国であったことで受賞に至らなかったとしている[29]。欧米以外の国で研究活動を行った非欧米人では、1930年にインド人のチャンドラセカール・ラマンが物理学賞を受賞したのが最初である。日本人である湯川秀樹(1949年受賞)、朝永振一郎(1965年受賞)らがやはり物理学賞で受賞している。


注釈

  1. ^ また、平和運動についても、考えるようになった。ノーベルは本来は土木工事の安全性向上を目的としてダイナマイトを発明したのであり、それが戦争に用いられたのはその意志に反していたという風聞があるが、実際にはノーベルにとってダイナマイトが戦争目的で使われることは想定内であった。むしろノーベルは、ダイナマイトのような破壊力の大きい兵器が使われること自体が戦争抑止力となることを期待した。死の商人として糾弾されたことは、ノーベルにとってダイナマイトが戦争抑止力として機能しなかったことに対しての衝撃であった(『当った予言、外れた予言』ジョン・マローン著 文春文庫 ISBN 4167308967)。
  2. ^ 但し、ワトソンが売却したメダルは後に落札者であるアリシェル・ウスマノフの意向により、返還された[26]
  3. ^ 朝日新聞社編 『100人の20世紀(上)』 朝日文庫 p237-「山極勝三郎」。ただし、科学ジャーナリストの馬場錬成はその著書『ノーベル賞の100年』(中公新書)の中で、3回にわたるノーベル財団への取材経験から、ノーベル賞選考における日本人差別は「100パーセントないだろう。」と指摘している。また、2004年に(山極が候補となった)1926年の医学生理学賞の選考書類を再調査した文献でもそのような指摘はない(山極の項目を参照)。また、この時すでにインドのタゴールがノーベル文学賞を受賞している。
  4. ^ 自然科学分野では、ヨハネス・ベドノルツカール・アレクサンダー・ミュラーが、酸化物高温超伝導体の発見の論文発表から約1年後の1987年に受賞したのが最短記録。

出典

  1. ^ ノーベル賞 オフィシャルサイト” (英語). NobelPrize.org. 2020年10月9日閲覧。
  2. ^ The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel”. 2016年5月5日閲覧。
  3. ^ Not a Nobel Prize, “Nomination and Selection of Laureates in Economic Sciences”, Nobelprize.org, http://www.nobelprize.org/nomination/economic-sciences/ 2016年10月16日閲覧。 
  4. ^ a b c d 「ノーベル経済学賞」は「ノーベル賞」ではない!? - ことばマガジン:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞. 2020年4月15日閲覧。
  5. ^ Golden, Frederic (2000年10月16日). “The Worst And The Brightest”. Time (Time Warner). http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,998209,00.html 
  6. ^ Sohlman 1983, p. 13.
  7. ^ Sohlman 1983, p. 7.
  8. ^ von Euler, U. S. (1981年6月6日). “The Nobel Foundation and its Role for Modern Day Science” (PDF). Die Naturwissenschaften (Springer-Verlag). オリジナルの2011-07月14時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110714080803/http://resources.metapress.com/pdf-preview.axd?code=xu7j67w616m06488&size=largest 2010年1月21日閲覧。 
  9. ^ Abrams 2001, p. 7.
  10. ^ a b Levinovitz 2001, pp. 13–25.
  11. ^ Abrams 2001, pp. 7–8.
  12. ^ Crawford 1984, p. 1.
  13. ^ Patrick Coffey, Cathedrals of Science: The Personalities and Rivalries That Made Modern Chemistry, Oxford University Press, 2008,
  14. ^ 日本放送協会. “ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏 二酸化炭素の温暖化影響を予測”. NHKニュース. 2021年10月5日閲覧。
  15. ^ a b c ウルフ 2002, pp. 29–30.
  16. ^ ノーベル平和賞 (Norway - the official site in Japan)
  17. ^ “ノーベル賞受賞のスタインマン氏、死去していた”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2011年10月3日). オリジナルの2011年10月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111005025751/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111003-OYT1T01344.htm 2011年10月3日閲覧。 
  18. ^ AFP (2013年2月26日). “DNA構造発見のノーベル賞メダルが競売に、米NYで4月”. AFPBB News. http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2931095/10352120 2013年6月15日閲覧。 
  19. ^ About the Nobel Prizes”. Nobelprize.org (2013年1月15日). 2013年6月15日閲覧。
  20. ^ 大隅良典栄誉教授がノーベル賞授賞式・晩餐会に出席 | 東工大ニュース | 東京工業大学
  21. ^ カトラリーにかける思い - 山崎金属工業株式会社
  22. ^ “ノーベル賞の賞金、2割減らします…運用益低迷”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2012年6月12日). オリジナルの2012年6月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120615234752/http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120612-OYT1T00318.htm 
  23. ^ 賞金に税金かかる?湯川博士受賞を機に非課税に 五輪メダリストの報奨金もMSN産経ニュース、2014年10月8日閲覧。
  24. ^ 益川教授「土産はこれだ」 メダルチョコ600個も購入 - asahi.com 2008年12月9日
  25. ^ “Crick's DNA Nobel medal gets $2 million at auction”. ネイチャー. (2013年4月11日). http://www.nature.com/news/crick-s-dna-nobel-medal-gets-2-million-at-auction-1.12790 2017年11月19日閲覧。 
  26. ^ ノーベル賞メダル「お返しします」=落札のロシア富豪-ワトソン博士の元へ”. 時事通信 (2014年12月11日). 2014年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月21日閲覧。
  27. ^ 露紙編集長のノーベル平和賞メダル、140億円で落札…全額をウクライナの子ども支援に”. 読売新聞 (2022年6月21日). 2022年6月21日閲覧。
  28. ^ “ノーベル賞メダル5億4700万円”. 西日本新聞. (2014年12月6日). http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/7943/10825 2014年12月7日閲覧。 
  29. ^ 冲中重雄4. 呉先生のシゴキ ― 国際神経学会へ随行」『私の履歴書 第44集』日本経済新聞社、1971
  30. ^ サルトルのノーベル賞辞退の背景、書簡間に合わず 新資料で判明 サイト:AFP通信 更新日:2015年1月5日
  31. ^ ノーベル平和賞(Norway - The official site in Japan)
  32. ^ 小社会 ノーベル文学賞” (日本語). 高知新聞 (2019年10月11日). 2020年10月7日閲覧。
  33. ^ “[寄稿]英語熱が広がる中での韓国文学”. ハンギョレ. (2016年5月27日). http://japan.hani.co.kr/arti/culture/24252.html 2016年12月3日閲覧。 
  34. ^ ケンネ・ファント 服部まこと訳 『アルフレッド・ノーベル伝』 新評論 1996年 68章
  35. ^ トムソン・ロイターのノーベル賞予測:今年のノーベル賞受賞者9名すべてを過去に予測、2011年10月
  36. ^ それぞれが受賞した年の授賞式の日(毎年12月10日)時点で比較すると、ラウスのほうが約1ヶ月年長
  37. ^ a b c d e f g h Fields Institute "Mittag-Leffler and Nobel"






ノーベル賞と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ノーベル賞」の関連用語

ノーベル賞のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ノーベル賞のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのノーベル賞 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS