ノキア ノキアの概要

ノキア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 00:35 UTC 版)

ノキア
Nokia Corporation
ノキア本社
種類 株式会社
市場情報 Nasdaq Nordic NOKIA
EuronextNOKIA
NYSENOK
略称 Nokia
本社所在地  フィンランド エスポー
設立 1865年
事業内容 通信施設・設備、ソフトウェア開発
代表者 ペッカ・ルントマルク(代表取締役社長およびCEO
売上高 23.315B Euro(2019年度)
従業員数 98,322人(2019年度)
決算期 年末(発表は1月末頃)
主要子会社 ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社
外部リンク www.nokia.com
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日本法人は1989年4月設立のノキア・ジャパン株式会社、および旧ノキア シーメンス日本法人の後身であるノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社(2013年9月1日にノキア シーメンス ネットワークス株式会社より改称、2018年4月1日に合同会社化)[1]

概要

現在の主要事業は、無線技術を中心とする通信インフラ設備の製造・開発であり、売上の9割を占めている[2]

2011年までは世界最大の携帯電話端末メーカーであった。市場占有率および販売台数の両方で、1998年から2011年まで首位を維持していたが、その後、スマートフォン戦略および、アメリカ合衆国での市場戦略の迷走により低落傾向に陥り、2012年第一四半期ではサムスン電子に次ぐ2位となった[3]。さらにこの後、iPhone等を擁したAppleや、Android採用の新世代スマートフォン端末の台頭による経営危機と大規模なレイオフを経て、2013年9月2日にマイクロソフトが携帯電話事業の買収(54億4000万ユーロ、約7100億円)を発表、2014年4月25日に買収手続きが完了し、同事業はマイクロソフト社の傘下に移った。2016年、マイクロソフトは携帯電話部門をノキアOBによるスタートアップHMD Globalに売却し、現在は同社がノキアのブランド名を継承した携帯電話を製造・販売している。同社とノキアの間に資本関係は存在しないが、オフィスはノキアの本社ビル内に位置している。

携帯電話の通信設備では世界第2位であり(世界第1位はスウェーデンエリクソン[4]GSMW-CDMA (UMTS) 方式の携帯電話の通信設備を携帯通信事業者向けに開発して販売している。この携帯電話の通信設備のビジネスは2006年シーメンスドイツ)との合弁事業とし、ノキア・シーメンス・ネットワークスが設立された。2013年にはノキア・シーメンスを100%子会社化し、2014年4月にノキア・ネットワークスと社名変更された。2016年にはアルカテル・ルーセントフランス)を買収した。

その他にも音声電話などのアプリケーションISDN、ブロードバンドアクセス、モバイルラジオ、VoIP無線LAN地上波デジタル放送の受信機、衛星受信機などの通信機器を生産している。近年では、IoTバーチャル・リアリティ(VRカメラOZOなど)、そしてヘルスケア関連製品のビジネスにも参入している。

日本でも情報通信技術(ICT)を使った幅広いソリューション事業を展開している。2017年には宮城県仙台市と、地域産業活性化や街づくり、ドローンを使った防災などで協力する連携協定を結んだ[5]

沿革

ケーブルワークス

1865年、製紙会社として、スウェーデン系フィンランド人フレドリク・イデスタム英語版フィンランド語版によりフィンランド(当時はロシアの自治大公国)のタンマーフォルスに設立された。その後すぐ西のノキアの地に移り、社名をこれにちなんで現在のノキアに改名した。

一方、ゴム製品の製造会社であるフィンスカ・グミと、電話および電信ケーブル製造会社であるフィンランド・ケーブルワークス (Finnish Cable Works) は、フィンランド独立(1917年)後、持株によりノキア社と関わるようになった(現在でもノキアの名前でゴム長靴などを製造・販売している)。

第二次大戦後の1960年にフィンランド・ケーブルワークス社内にエレクトロニクス部門ができると、1967年に3社は合併し、ノキアは電気通信分野に進出することになる。1970年代に社業の中心を電気通信分野に移し、電話交換機用のデジタルスイッチを主力製品とする。

失われたノキア

ノキアの旧ロゴ

1980年代には電子計算機部門に進出し、MikroMikkoフィンランド語版ブランドでパーソナルコンピュータを生産した。後にこの部門はInternational Computers, Ltd. (ICL) に売却され、さらに売却先は富士通シーメンスと合併し、携帯電話部門に進出した。しかし、携帯電話部門の競争は激しく、経営は振るわず、1988年にはCEOのカリ・カイラモが自殺した[6]

1990年代に深刻な経営危機に陥り、それまでの多角経営を見直し、大規模な業種の再編成を行った。携帯電話、携帯電話インフラ、他の電気通信分野に業務を絞り、テレビ受像機製造やパーソナルコンピュータ部門から撤退した。

2002年は高級携帯電話部門であるVertuを立ち上げた。2003年から2011年まで、日本でも事業を展開していた。ヨーロッパやアジア、アメリカ諸国でも事業を展開している。

2004年、小規模な経営合理化をおこなった。これはフィンランドにおけるノキアの印象を損ねるものとなった。それに伴い、テレビ番組での批判についての裁判を含むいくつかの訴訟が行われている[7]

クアルコムとの紛争

2005年、携帯業界を二分しているクアルコムに対するUMTS方式携帯電話の特許料率紛争において、ノキアは反クアルコム陣営の筆頭になった。

2006年春には、CDMA2000方式が世界的なスケールメリットを見込めないなどという理由で、CDMA2000方式の携帯電話の新規自社開発中止を表明。一時、CDMA2000方式の携帯電話を開発している三洋電機と合弁を計画したが、この話は破談となる。

また、6月にはSiemens Communicationsとのジョイント・ベンチャーであるNokia Siemens Networksの設立を発表。これは携帯電話の通信設備で世界第1位のエリクソンスウェーデン)を追撃するための戦略的な合弁であるとみられる。

2007年4月クアルコムとの相互特許ライセンス契約が失効した。2008年7月、クアルコムとの特許紛争について和解したことを発表した。2009年2月、クアルコムとスマートフォンの技術開発について提携することを発表した。

マイクロソフト時代へ

2010年2月、ノキアのMaemoインテルMoblinを合体させて、新しい携帯機器用Linuxプラットホームとして、MeeGoをインテルと開発することを発表した。これに伴いMaemoの開発は終了することになった[8]

2011年2月11日マイクロソフトとの戦略的提携を発表し、スマートフォンの領域では、シンビアンからWindows Phoneの開発に注力していく事を発表した[9]2011年4月27日、ノキアはシンビアンおよび関係する社員3000人を2011年末までにアクセンチュアに移管することを発表した[10]

2013年7月1日、「シーメンスとの合弁であるNokia Siemens Networksのシーメンスの持株分50%を17億ユーロでノキアが買い取ることに、ノキアおよびシーメンス両社の取締役会が合意した」と発表した[11]8月3日に買収は完了し、Nokia Solutions and Networksと社名変更された。

2013年9月2日、マイクロソフトにDevices & Services部門を37億9000万ユーロで売却すると発表。取引は2014年4月25日に完了した[12]。加えて地図サービスなどの各種ライセンスを16億5000万ユーロで売却。また、ノキアCEOであったStephen Elopはマイクロソフトに移籍した。ネットワークインフラサービスの NSN、地図サービスのHERE、先進技術開発とライセンス部門『Advanced Technologies』は、そのままノキアで継続した[13]

フランス化するノキア

2014年4月、Nokia Solutions and NetworksをNokia Networksに社名変更。

2015年4月15日付けで、フランスの通信機器大手アルカテル・ルーセントを時価換算およそ156億ユーロ(約1兆9700億円)で買収し、統合すると発表[14]2016年1月、同社との統合を完了した[15]

2015年8月3日、オンライン地図サービス事業HereBMWダイムラーおよびフォルクスワーゲンのドイツ自動車メーカー連合に売却すると発表した[16]

2016年5月31日、フランスのデジタル・ヘルスケア企業Withingsの買収を完了、同分野に新たに参入した[17]

2018年7月、MTNグループとカスタマー・マネジメント事業を提携[18]。MTNグループというモバイル事業は主にアフリカを営業圏としているが、そこはかつてアフリカ分割でフランス領が多くを占め、現在はユーロ債による対外債務累積や欧州まで押し寄せてなお行き場が無い難民で悩む地域である。MTNグループのサービスは遅くとも2016年からクロスボーダーな資金洗浄に使われているという批判を浴びてきた[19]。資金洗浄に関してはノキアとの提携後2018年8-9月、ナイジェリア当局から101億ドルを請求された。内訳は適切に犯罪を防がなかった罰金が81億ドルで、残りの20億ドルは税金である。前者を請求しているのはナイジェリア中央銀行である。同行はスタンダードチャータード銀行シティグループを含む銀行団にも58.7億ナイラを請求している[20]


注釈

  1. ^ a b 斜体字は、何らかの理由により販売できなかった端末。

出典

  1. ^ ノキアソリューションズ&ネットワークス株式会社
  2. ^ ノキア大変身、世界で攻勢 携帯端末から通信インフラへ”. 朝日新聞デジタル (2015年11月29日). 2016年1月24日閲覧。
  3. ^ David Goldman (2012年4月27日). “Samsung takes cell phone market lead from Nokia”. CNN Money. 2012年10月27日閲覧。
  4. ^ Mobile Experts: Ericsson #1 in RAN market; Huawei falls to #3” (英語). Technology Blog. IEEE ComSoc (2022年1月25日). 2022年11月15日閲覧。
  5. ^ 仙台市、ノキアと協定 IT・通信で地域活性化『日本経済新聞』朝刊2017年10月18日(東北経済面)。
  6. ^ “ヨルマ・ヤコ・オリラ(ノキアCEO) ノキアを世界的企業に育てた北欧の名経営者”. ダイヤモンド・オンライン. (2012年7月17日). https://diamond.jp/articles/-/4732 
  7. ^ アーカイブされたコピー”. 2008年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月14日閲覧。
  8. ^ ノキアのアナウンス記事(英文)”. 2011年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月29日閲覧。
  9. ^ ノキアのアナウンス記事(英文)”. 2011年2月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月29日閲覧。
  10. ^ Nokia、4000人を削減し、3000人のSymbian事業をAccentureに移管 - ITmedia エンタープライズ
  11. ^ Nokia to fully acquire Siemens' stake in Nokia Siemens Networks”. Nokia (2013年7月1日). 2013年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月29日閲覧。
  12. ^ Microsoft officially welcomes the Nokia Devices and Services business” (2014年4月25日). 2014年9月11日閲覧。
  13. ^ Microsoft、Nokiaの携帯端末事業を買収 - ITmedia News
  14. ^ “ノキア、2兆円で仏アルカテル買収 次世代通信強化”. 日本経済新聞. (2015年4月15日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM15H77_V10C15A4FF1000/ 2015年4月16日閲覧。 
  15. ^ ノキア、アルカテル・ルーセントの統合を完了”. 日刊工業新聞 (2016年1月21日). 2016年1月24日閲覧。
  16. ^ Nokia sells Here maps business to carmakers Audi, BMW and Daimler”. CNET. CBS Interactive. 2015年8月3日閲覧。
  17. ^ ノキアがデジタル・ヘルスケア企業の仏Withingsの買収を完了”. ASCII.jp (2016年6月1日). 2017年1月10日閲覧。
  18. ^ ThisDay, MTN Partners Nokia on Customer Management, July 19, 2018
  19. ^ TheNigerianINSIDERNews, MTN in multiple money laundering scams in Nigeria and Iran アーカイブ 2018年10月2日 - ウェイバックマシン, Wednesday, December 14, 2016 - 00:05
  20. ^ NewTelegraph, MTN: $10.1bn demand makes listing in Nigeria challenging, September 13, 2018
  21. ^ Samsung Displaces Nokia as Top Cellphone Brand in 2012 and Takes Decisive Smartphone Lead Over Apple - The Mobile & Wireless Communications portal at IHS iSuppli® provides mobile industry news in addition to updates with the most recent mobile trends. at iSuppli
  22. ^ ノキアの耐久テストの現場拝見(動画あり)
  23. ^ ノキア公式サイトでのプレスリリース (英語)
  24. ^ Nokia、未来の「ナノテク携帯」コンセプトを発表 - ITmedia News
  25. ^ 未来のケータイは“カメレオン”?――Nokiaがコンセプト・ビデオを披露 : ハードウェア - Computerworld.jp”. 2008年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月28日閲覧。
  26. ^ ビックリするほど高価で、ビックリするほど低スペックなスマホ登場 | TABROID(タブロイド)欲しいアンドロイドアプリをギュッと凝縮!
  27. ^ インテルとノキア、次世代のコンピューティング機器向けにソフトウェア・プラットフォームを統合”. Intel Corporation (2010年2月16日). 2010年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月14日閲覧。
  28. ^ 会社情報”. 株式会社テレコムスクエア. 2018年7月15日閲覧。
  29. ^ a b もう迷わない!探さない!成田空港お任せ便利ガイド > 携帯電話”. 2018年7月15日閲覧。
  30. ^ a b 2015年4月、成田空港サービス株式会社はNAAリテイリングに吸収合併され、消滅。
  31. ^ OVERSEAS PHONE/携帯電話レンタル:成田空港第一ターミナル4階(国際線出発ロビー)北ウィング”. もう迷わない!探さない!成田空港お任せ便利ガイド. 2018年7月15日閲覧。
  32. ^ OVERSEAS PHONE/携帯電話レンタル:成田空港成田空港第一ターミナル4階(国際線出発ロビー)南ウィング”. もう迷わない!探さない!成田空港お任せ便利ガイド. 2018年7月15日閲覧。
  33. ^ 2002年6月28日開店。後藤祥子 (2002年6月26日). “「Nokia Store」をひと足さきに体験”. ITmedia Mobile. 2018年7月15日閲覧。
  34. ^ Archived 2009年6月22日, at the Wayback Machine.
  35. ^ 共同通信 (2008年11月27日). “ノキア、普及モデルの販売撤退 豪華端末で富裕層向けに”. 47 News. 2010年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月15日閲覧。
  36. ^ ソフトバンクもノキア製スマートフォン「Nokia E71」発売中止を決定”. マイコミジャーナル. 2018年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月15日閲覧。
  37. ^ Nokia、日本市場から完全撤退”. ITmedia (2011年7月4日). 2011年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月27日閲覧。
  38. ^ ノキア:高級電話部門「VERTU」、日本での事業を閉鎖へ”. Bloomberg.co.jp (2011年7月2日). 2014年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月27日閲覧。


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