ニワトリ 文化

ニワトリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/16 04:17 UTC 版)

文化

伊藤若冲『紫陽花双鶏図』 18世紀。

ニワトリは世界の多くの文化圏において古くから、しかも広く飼育される動物であり、各文化においてさまざまな文化的な意味を付与されている。十二支においてはニワトリはとしてそのうちの一つとなっている。ニワトリが家畜化されたそもそもの要因のひとつが鳴き声に神秘性を感じての祭祀用としてのものだった[26]ことからもわかるとおり、甲高い雄鶏の鳴き声は夜明けを告げるものとして各文化で神聖視された。

日本の古典芸能では、「鶏猫」(けいみょう)という雑物狂言[95]や、「鶏聟」(にわとりむこ)という聟物狂言がある[96]

鶏を扱った謡曲としては、例えば「初雪」がある。昔、ある姫君が白い鶏の雛を貰って大切に育て、朝夕、一緒に遊んでいた。ところがある日、鶏は鳥屋(とや)の中で冷たくなっていた。憐れんだ姫君が菩提を弔ってやっていると、突然、中空に白い塊が現れた。最初は雪かと思ったがそうではない。白塊はどんどん近付いてくる。よく見れば、それは死んだはずの初雪だった。初雪は姫君の前へ舞い降り、いかにも懐かしげな風情で佇むと「あなた様の念佛の功力のお蔭で私は極楽へ至り、他の鳥たちと一緒に、宝樹の梢を飛び回っております。日々、楽しみが尽きません」と言い残して飛び立った。そして、別れを惜しむように暫し上空を飛び回っていたが、やがて何方ともなく姿を消した。

英語における表現

アメリカ英語においては、chickenチキン)は「臆病者(名詞)」「臆病で(形容詞)」という意味のスラングとして使われることがある[97]。例えば、"play chicken"「度胸試しをする」や、動詞として"chicken out"「尻込みする」という成句で使われる[97]。また、no chickenで子供、とくに小娘を表す口語として使われる[97]。雄鶏 cock(コック)は「陰茎」という意味のスラングである[10]

以下のような成句がある。

count one's chicken (before they are hatched)
捕らぬ狸の皮算用[97]。卵が孵る前に雛を数えるなという意味から[97]
go to bed with the chickens
(アメリカ英語で)夜早寝する[97]
chicken-and-egg
鶏が先か、卵が先か[97]。解決できない[97]

古代中国におけるニワトリ

古代中国では、ニワトリには頭に冠を戴く「文」、足に蹴爪を持つ「武」、敵と戦う「」、食を見て呼び合う「」そして夜を守り時を失わない「」の五徳があるとされた[6]。中国における闘鶏は古く「春秋左氏伝」に見え、唐代に最も盛んであった[6]。ニワトリには霊力があるとされ、除夜に門戸に懸け、邪悪を祓うという風習があった[6]。また、ニワトリは吉祥のシンボルとされることもあるが、漢字「鶏」の音が「吉」に通じるためである[6]。またニワトリは時夜、燭夜、司晨(鳥)、金禽、窓禽、徳禽、兌禽、巽羽、翰音、羹本、赤幘、花冠、戴冠郎、長鳴都尉官、酉日将軍など、実に様々な別名で呼ばれた[6]

以下のように様々な故事成語や成句がある。

鶏群の一鶴(けいぐんのいっかく)
鶏群一鶴[98]。鶏群孤鶴[98]。多くの凡人の中に優れた人が一人交じっていること[5]。多くのニワトリの群れの中にいる1羽のツルという意[98]
鶏口牛後(けいこうぎゅうご)
「鶏口となるも牛後となるなかれ」[5]の略。大きな団体で人の後ろ(牛後)となるよりも、小さな団体でその長(鶏口)となった方がよいということ[5]。『史記』に由り、戦国時代蘇秦の王に「小国とはいえ一国の王であれ。大国のに屈して臣下に成り下がってはならぬ」と説いて、六国の合従に導いた故事に基づく[98]
鶏黍(けいしょ)
手厚く客をもてなすこと[5][98]。『論語』に由り、ニワトリを殺して吸い物を作り、キビを炊いてもてなした故事から[5][98]
鶏窓(けいそう)
書斎または書斎の窓[5]の宋処宗が書斎の窓に飼っていたニワトリは人語を解し、彼の学識を助けたという故事に基づく[5]
鶏鳴狗盗(けいめいくとう)
つまらない技芸、つまらないことしかできない人の喩え[98]。一見つまらないことでも何かの役に立つこともあるという意で用いることもある[98]。『史記』に由り、戦国時代のころ、孟嘗君は秦の昭王に軟禁されたが、イヌ鳴き真似で盗みを働く食客とニワトリの鳴き真似をして夜明けだと思わせる食客のお蔭で脱出し帰ることができたという故事に基づく[98]
鶏肋(けいろく)
大した役には立たないが捨てるには惜しいもののことで、自分の労作を謙遜するときに用いる[5][98]。『後漢書』の故事で、ニワトリの肋骨は食べるほどではないが、少し肉がついているため捨てるには惜しいことに由来する[5]。また体がひ弱だという意もある[5][98]。こちらは『晋書』に基づく[5]
鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん(にわとりをさくにいずくんぞぎゅうとうをもちいん)
取るに足りないことを大袈裟な方法で処理する必要はない[98]。『論語』に基づき、ニワトリを捌くのにウシを切り裂く大きな牛刀を用いる必要はないということから[98]
陶犬瓦鶏(とうけんがけい)
瓦鶏陶犬[99]。見かけだけ立派で、実際は役に立たないものの喩え[99]焼き物イヌ素焼きのニワトリの意で、『金楼子』に由る[99]

その他の文化

  • 風見鶏
  • 雄鶏 (紋章学)
  • 早朝に鳴いて人に朝を知らせることを報晨という。『古事記』にて、天岩戸に閉じこもった太陽神である天照大神を呼び出すため常世長鳴鳥の鳴き声を聞かせる故事があり、伊勢神宮では放し飼いとなっている。また、ペルシア王タフムーラスは、早朝を知らせる鳥として導入した[100]。インドや中国、ヨーロッパでも太陽と関連付けされ、闇夜を払う神聖な鳥として、食用を禁じられたり、魔避けとされ、崇められた[101]
  • 太陽が幾度も登ることから、再生力と関連付けされ、鶏が医神アスクレーピオスへの捧げものとされた。哲学者ソクラテスの刑死前の遺言として、アスクレピオスに雄鶏を捧げるよう友人に依頼している[101]
  • 闘鶏として、ギリシアなどで定着したことから、軍神の聖鳥としても崇められた。こういった闘争心は、ブレーメンの音楽隊などでも見ることができる。また、闘鶏好きのイギリス王ヘンリー8世の時代に闘鶏の試合ルールが定められ、それがそのまま人間が行う闘鶏ボクシングのルールになったという逸話がある[101]

鶏を含む語


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