ナトリウム 名称

ナトリウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/05 02:19 UTC 版)

名称

ナトリウムという名称は、天然炭酸ソーダを意味するギリシャ語νίτρον[2]、あるいはラテン語natronナトロン[3]に由来するといわれている。

ドイツ語では Natrium英語では sodium と呼ばれる。いずれも近代にラテン語として造語された単語である(現代ラテン語では natrium が使われる)。日本ではドイツ語から輸入され、ナトリウムという名称が定着した。元素記号はドイツ語からNaになった一方、IUPAC名は英語から sodium とされている。

日本では、薬学栄養学などの分野でソジウムソディウム: sodium [ˈsoʊdiəm])ともいう。工業分野では(特に化合物中において)ソーダ曹達)と呼ばれている[注釈 1]

歴史

1807年ハンフリー・デービー水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を電気分解することにより発見した。

危険性

毒物および劇物取締法により劇物に指定されている[4]

単体

性質

常温、常圧での結晶構造は、BCC構造(体心立方構造)。融点は98℃で、沸点は883℃(ほかに883℃、881℃という実験値あり)。比重は0.97で、わずかにより軽い。

非常に反応性の高い金属で、塩基に侵され、水と激しく反応する。下記に示される化学反応過程を経て水酸化ナトリウムとなるため、素手で触ると、手の表面にある水分と化合し、水酸化ナトリウムとなって皮膚を侵す。さらに空気中で容易に酸化されるため、天然には金属ナトリウム単体は存在しない。保存する際は灯油に浸ける。後述の化学反応に示すように、アルコールなどのプロトン溶媒とも反応するがエーテルや灯油とは反応しないため、灯油などを保存液体として使用する。イオン化する時は一価の陽イオンになりやすい。炎色反応黄色を呈する。

消防法第2条第7項及び別表第一第3類1号により第3類危険物に指定されている。

200GPa(約200万気圧)の高圧下では、結晶構造が変化し、金属光沢を失い透明になる[5]

生産

水酸化物や塩化物を融解塩電解することによって単体を得られる。カストナー法(原料NaOH)、ダウンズ法(原料NaCl)が知られる。2006年まで、新潟県に立地する日本曹達二本木工場が、国内で唯一工業的規模の金属ナトリウム製造を行っていたが、現在は操業を停止している。海外ではフランスのMAAS社とアメリカのDuPont社がダウンズ法で生産している[6]。日本の輸入量は2007年で3,055トンであった[7]。またカストナー法は工業生産としては使用されていない。

用途

熱伝導率がよく、高温でも液体で存在するため、単体としては高速増殖炉冷却材として用いられる。高性能自動車エンジンの排気バルブのステム内部に封入し、熱伝導の向上で冷却する用途にも使われる。そのほかに、負極にナトリウム、正極に硫黄を使ったNaS電池がある。これは大型の非常用電源や、風力発電のエネルギー貯蔵に利用される。トンネルの中などに使われている発光(ナトリウムのD線、D1:589.6 nmとD2:589.0 nm)はナトリウムランプである。二本に分裂するのは3p軌道のスピン軌道相互作用によるものである。

生体にとっては重要な電解質のひとつであり、ヒトではその大部分が細胞外液に分布している。神経細胞や心筋細胞などの電気的興奮性細胞の興奮には、細胞内外のナトリウムイオン濃度差が不可欠である。細胞外濃度は135 - 145mmol/l程度に保たれており、細胞外液の陽イオンの大半を占める。そのため、ナトリウムイオンの過剰摂取は濃度維持のための水分貯留により、高血圧の大きな原因となる。

おもな化学反応

  • 空気中での反応性は高く、乾いた空気中でも速やかに酸化され、金属光沢を失う。
  • 水に固体ナトリウムを投げ込むと、水分子との接触によってナトリウム原子から電子が飛び出し、周囲の水に溶媒和され藍色を呈する[8]。突然に電子を失ったナトリウム陽イオンは、互いに近接しているため、クーロン力の大きな反発を受け爆発的に離散する(クーロン爆発)。陽イオン単位で離散したナトリウムは、水との接触面積が大きいため水との反応が進み、気体の水素が発生する。このときの反応熱によって水素ガスが空気中の酸素と反応して爆発を起こす[8]
  • アルコールカルボン酸フェノール類などのヒドロキシ基と反応して、水素を発生させながらアルコキシドなどを与える。
(アルコール:R=アルキル基、フェノール類:R=芳香族置換基)
  • ナトリウムは液体アンモニア中で電子1個を放出し陽イオンとなり、電子は溶媒であるアンモニアに囲われた溶媒和電子となる。バーチ還元はこの溶媒和電子によって起こる。
  • ハロゲンの単体と結合(反応)して、になる。

化合物

記事カテゴリ Category:ナトリウムの化合物 も参照。

オキソ酸の塩

ハロゲン化物

酸化物・水酸化物

その他の無機塩

有機酸塩


注釈

  1. ^ 炭酸水素ナトリウムを重炭酸ソーダ(重曹)と呼んだり、水酸化ナトリウムを苛性ソーダと呼ぶ。また、ナトリウム化合物を作ることから日本曹達や東洋曹達(現東ソー)などの名前の由来となっている。

出典

  1. ^ Endt, P. M. ENDT, ,1 (1990) (12/1990). “Energy levels of A = 21-44 nuclei (VII)”. Nuclear Physics A 521: 1. doi:10.1016/0375-9474(90)90598-G. 
  2. ^ 近角、木越、田沼「最新元素知識」東京書籍、1976年
  3. ^ 桜井「元素111の新知識」BLUE BACKS、講談社、1997年。 ISBN 4-06-257192-7
  4. ^ 毒物及び劇物取締法 昭和二十五年十二月二十八日 法律三百三号 第二条 別表第二
  5. ^ Yanming Ma et al., "Transparent dense sodium", Nature 458, 182-185 (2009). doi:10.1038/nature07786
  6. ^ Sodium Metal from France”. U.S. International Trade Commission. 2012年8月4日閲覧。
  7. ^ 『15509の化学商品』化学工業日報社、2009年2月。ISBN 978-4-87326-544-5
  8. ^ a b アルカリ金属の爆発の秘密が明らかに
  9. ^ Denisenkov, P. A.; Ivanov, V. V. (1987). “Sodium Synthesis in Hydrogen Burning Stars”. Soviet Astronomy Letters 13: 214. Bibcode1987SvAL...13..214D. 
  10. ^ 小村和久 (2006). “「超低レベル放射能測定の現状と展望」まとめ”. RADIOISOTOPES 55 (11): 691-697. doi:10.3769/radioisotopes.55.691. 
  11. ^ Audi, Georges; Bersillon, O.; Blachot, J.; Wapstra, A. H. (2003). “The NUBASE Evaluation of Nuclear and Decay Properties”. Nuclear Physics A 729: 3–128. Bibcode2003NuPhA.729....3A. doi:10.1016/j.nuclphysa.2003.11.001. 
  12. ^ Sanders, F. W.; Auxier, J. A. (1962). “Neutron Activation of Sodium in Anthropomorphous Phantoms”. HealthPhysics 8 (4): 371–379. doi:10.1097/00004032-196208000-00005. PMID 14496815. 


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