ナス 生産

ナス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/05 00:38 UTC 版)

生産

日本では全国的に栽培されており、出荷量が最も多い高知県をはじめ、栃木県福岡県群馬県などが主産地である[8]。季節により春は大阪府岡山県佐賀県熊本県産、夏から秋は茨城県産も代表的である[8]。夏野菜のため出荷量のピークは6月であるが、通年安定して出回っている[8]。日本への輸入は、韓国産やニュージーランド産が主に輸入されている[8]

栄養素

実際の栄養価は、栽培条件、生育環境、収穫時期、品種などで異なるため一覧表に記載されている値は代表値である。

なす 果実 生[47]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 92 kJ (22 kcal)
5.1 g
デンプン 正確性注意 2.6 g
食物繊維 2.2 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.03 g
1.1 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(1%)
8 µg
(1%)
100 µg
チアミン (B1)
(4%)
0.05 mg
リボフラビン (B2)
(4%)
0.05 mg
ナイアシン (B3)
(3%)
0.5 mg
パントテン酸 (B5)
(7%)
0.33 mg
ビタミンB6
(4%)
0.05 mg
葉酸 (B9)
(8%)
32 µg
ビタミンC
(5%)
4 mg
ビタミンE
(2%)
0.3 mg
ビタミンK
(10%)
10 µg
ミネラル
カリウム
(5%)
220 mg
カルシウム
(2%)
18 mg
マグネシウム
(5%)
17 mg
リン
(4%)
30 mg
鉄分
(2%)
0.3 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
(3%)
0.06 mg
マンガン
(8%)
0.16 mg
他の成分
水分 93.2 g
コレステロール 1 mg
水溶性食物繊維 0.3 g
不溶性食物繊維 1.9 g
ビオチン(B7 2.3 µg
有機酸 0.4 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[48]。廃棄部位: へた
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

ナス果実の93%以上は水分である[4][49]。他の野菜と比べると低カロリーで、脂肪燃焼ビタミンといわれるビタミンB2などをバランスよく含んでいる[4]。ビタミン類はほとんど含まれていないとする意見はあるが[14]ビタミンCや、カリウムカルシウムなどのミネラル類は比較的少ないながらも、まんべんなく含まれている[50]食物繊維淡色野菜としては平均的な量である[50]

またナスにはコリンという機能性成分が含まれている。このコリンは無色の強アルカリ性物質で、血圧コレステロールを下げる[51]動脈硬化を防ぐ、胃液の分泌を促す、肝臓の働きを良くする、気分改善効果[51]などの作用が認められている。

「茄子紺」とよばれるナス果皮の暗紫色の色素成分は、ポリフェノールの一種で、アントシアニン系の色素ナスニンである[4]。ナスニンには抗酸化作用があり、動脈硬化予防や老化予防などに効果があるとされている[4][14]、またナスニンは水溶性で[4]、加水分解によりデルフィニジンとなり、ニッケルイオンが存在すると安定した(えん)をつくるという特徴がある[11]。ナスの漬物を作るときに鮮やかな色を保たせるために、ナスと一緒に鉄くぎなどを入れるのはこのためである[11][14]

栄養的にはさほど見るべきものはないが、東洋医学では体温を下げる効果があるとされている。また皮の色素ナスニンは抗酸化作用があるアントシアニンの一種である。

成形図説』より

2024年1月には、ナスのヘタに含まれる天然化合物に、子宮頸がん細胞に抗腫瘍効果があることが、名古屋大学の研究チームの実験で明らかになった[52][53]

食材

果実は未熟で果肉や種子が柔らかいうちに収穫し、食用とする。野菜としての旬は初夏から初秋(6 - 9月)で、果皮は変色がなく張りツヤがあり、へたのトゲが鋭いものが良品とされる[4]。ナスは味や香りにクセがないが、皮の下の部分に苦味がある[8]。また、産地や品種により、灰汁の多い・少ないに差がある[8]。料理は、蒸し物、煮物、炒め物や漬物など、幅広く使われている[14]。特に油との相性がよく、炒めたり揚げたりするとやわらかくなり、おいしく食べられる[14]。ナスは身体を冷やす作用があることから、夏に食べるのには向いている野菜といえるが、多く摂取すると身体を冷やしすぎてしまうため、ショウガなどの身体を温める作用がある食材と一緒に食べるとよいとされる[54]

調理上の特性

焼く、煮る、揚げるなどあらゆる方法で調理される[5]。淡白な味で他の食材とも合せやすく、また油を良く吸収し相性が良い[8]。野菜炒めなどで油を吸わせたくない場合は、油を入れる前にナスを少量の水で軽く煮るように炒めて、スポンジ状の実に水分を含ませてやると油を吸い難くなる。皮も薄く柔らかいので剥かずに調理されることが多い。

果実を切ったら切り口から灰汁がまわって酸化が始まり、放置すると次第に変色してくる[34]。ナスはポリフェノール系化合物による褐変を起こしやすい食材であり、この褐変を防ぐために水につけるのが一般的で、食塩水を利用すると酵素作用も抑制できる[55]。しかし、ナスニンは水溶性のため、長時間水につけると流れ出てしまうため、調理する直前に切ってすぐに加熱調理すればナスニンの損失は少なく済む[34]

また、ナス科植物なのでアルカロイド灰汁)を多く含み、一部の品種を除き生食はされない。加熱調理しない場合は漬物にするか、塩揉みで灰汁抜きしてから供される。塩で揉んだ後さらにマリネなどに加工されることもある。多くの栽培品種は、品種改良により灰汁が少なくなっている。灰汁は空気に触れると酸化して出てくるため、切ったらすぐに調理してしまえば水につけなくてもよい[4]。大阪の泉州水茄子など水なすと呼ばれる一部の品種は生食が可能で、皮を剥いて味噌だれで食べることができるほか、漬け物(ぬかづけ)などにもする。

代表的な茄子料理

日本では、しぎ焼き、揚げ出し、麻婆茄子浅漬けぬか漬けなどにして食べられる[56]。長ナスは肉質がやわらかく素焼きして焼きなすに向く[8]。一口なすともよばれる民田なすは丸ごと辛子漬けに、水なすはぬか漬けにされることが多い[8]

なす類、漬物、ぬかみそ漬[47]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 113 kJ (27 kcal)
6.1 g
食物繊維 2.7 g
0.1 g
1.7 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
2 µg
チアミン (B1)
(9%)
0.10 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.04 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
1.0 mg
パントテン酸 (B5)
(13%)
0.67 mg
ビタミンB6
(12%)
0.15 mg
葉酸 (B9)
(11%)
43 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
ビタミンC
(10%)
8 mg
ビタミンD
(0%)
(0) µg
ビタミンE
(2%)
0.3 mg
ビタミンK
(11%)
12 µg
ミネラル
ナトリウム
(66%)
990 mg
カリウム
(9%)
430 mg
カルシウム
(2%)
21 mg
マグネシウム
(9%)
33 mg
リン
(6%)
44 mg
鉄分
(4%)
0.5 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
マンガン
(9%)
0.19 mg
他の成分
水分 88.7 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

保存法

乾燥と低温に弱いため、紙袋などに入れて風通しのよい10 - 15度ほどの冷暗所に保存する[61][30]。ただし、気温が高い時期に保存したいときは、ラップなどに包み、冷蔵庫に入れれば2 - 3日ほどは持つ[34]。ただし、冷蔵すると皮も果肉もかたくなってしまい、風味も落ちる[8]。実を薄くスライスして、天日で乾燥させて干しナスにすると、長期保存も可能である[30]


注釈

  1. ^ 卵型の白い果実が一般的だった地域の英語名が“eggplant”となっている。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Solanum melongena L. ナス(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年8月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 86.
  3. ^ a b c d e 貝津好孝 1995, p. 146.
  4. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 24.
  5. ^ a b c d e f g h i j 小川正 (2016年7月20日). “湖国の食 ナス 多様な料理を楽しむ”. 中日新聞 (中日新聞社): p. 朝刊 びわこ版 17 
  6. ^ 加納喜光『動植物の漢字がわかる本』山海堂、2007年、182頁。ISBN 4-381-02200-9 
  7. ^ a b 石尾員浩『野菜と果物 ポケット図鑑』主婦の友社、1995年、118頁。ISBN 4-07-216639-1 
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 講談社編 2013, p. 67.
  9. ^ 講談社編 2013, p. 64.
  10. ^ a b c d e f g 田中孝治 1995, p. 198.
  11. ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 199.
  12. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, pp. 36–37.
  13. ^ 大久保 1995, p. 148.
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 87.
  15. ^ a b c d 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 31.
  16. ^ a b c d e 竹下大学 2022, p. 80.
  17. ^ 武光誠『歴史からうまれた日常語用語辞典』東京堂出版、1998年、230-231頁。ISBN 4-490-10486-3 
  18. ^ a b 竹下大学 2022, p. 81.
  19. ^ 大竹大学 2022, p. 81.
  20. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 28.
  21. ^ a b c d e f g h i 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 241.
  22. ^ a b c d e f g 板木利隆 2020, p. 22.
  23. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 36.
  24. ^ 板木利隆 2020, p. 23.
  25. ^ 板木利隆 2020, p. 26.
  26. ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 29.
  27. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 38.
  28. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 30.
  29. ^ a b 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 39.
  30. ^ a b c d e 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 40.
  31. ^ a b 板木利隆 2020, p. 24.
  32. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 30.
  33. ^ 金沢市中央卸売市場>豆知識>青果雑学>なす
  34. ^ a b c d e f g h i j k l m 主婦の友社編 2011, p. 25.
  35. ^ a b c d e f g h i 竹下大学 2022, p. 84.
  36. ^ a b c d e f g 講談社編 2013, p. 66.
  37. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 82.
  38. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 83.
  39. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 34.
  40. ^ 竹下種苗 2022, p. 84.
  41. ^ a b c d 竹下大学 2022, p. 85.
  42. ^ しみずの農産物・ナス JAしみずホームページ
  43. ^ 萩たまげなす | ぶちうま!やまぐち.net~やまぐちの農林水産物~”. www.buchiuma-y.net. 2019年9月1日閲覧。
  44. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 32.
  45. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 35.
  46. ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, pp. 87, 98.
  47. ^ a b 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  48. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  49. ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂)第2章 日本食品標準成分表 6.野菜類”. 文部科学省. p. 9. 2020年6月24日閲覧。
  50. ^ a b 講談社編 2013, p. 69.
  51. ^ a b 世界初!ナス由来の成分による血圧改善、気分改善効果を実証|What's New”. www.adeka.co.jp. ADEKA. 2020年6月24日閲覧。
  52. ^ a b ナスのヘタに含まれる天然化合物、子宮頸がん細胞に抗腫瘍効果 名大”. 科学技術振興機構 (2024年1月5日). 2024年1月15日閲覧。
  53. ^ 【抗がん成分を発見?】なすのへたで「長生きスープ」つくってみた!”. がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ. 2024年1月15日閲覧。
  54. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 41.
  55. ^ 第3章 調理室における衛生管理&調理技術マニュアル”. 文部科学省. 2020年6月5日閲覧。
  56. ^ 講談社編 2013, pp. 68–69.
  57. ^ 地球の歩き方編集室 編『世界のグルメ図鑑』学研プラス地球の歩き方BOOKS 旅の図鑑シリーズ〉、2021年7月26日、133頁。ISBN 978-4-05801659-6 
  58. ^ Çiğdem TEZ(チーダム・テズ)(著)、天野かよ 訳(編)「トルコの暮らしと食文化」『食品と容器』第57巻第1号、缶詰技術研究会、2016年、52-58頁。 
  59. ^ 服部幸應『世界の六大料理基本事典』東京堂出版、2015年2月20日、208頁。ISBN 978-4-490-10858-3 
  60. ^ Uses of Tropical Grain Legumes: Proceedings of a Consultants Meeting, 27-30 Mar 1989, ICRISAT Center, India. ICRISAT. (1991). pp. 108, 335. ISBN 978-92-9066-180-1. https://books.google.com/books?id=GNKzAAAAIAAJ 
  61. ^ 主婦の友社編 2011, p. 11.
  62. ^ 根田仁、毒きのこ類 森林科学 Vol.54 (2008) p.39-42, doi:10.11519/jjsk.54.0_39





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