ナス 文化

ナス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 07:47 UTC 版)

文化

精霊馬(しょうりょううま)
  • 初夢の縁起物:「一富士、二鷹、三茄子」
  • 盂蘭盆会』には、ナスで馬をかたどって祖先の霊に供える風習がある[10]お盆の期間中には、故人の霊魂がこの世とあの世を行き来するための乗り物として、「精霊馬」と呼ばれるキュウリやナスで作る動物を用意する。4本の麻幹あるいはマッチ棒、折った割り箸などを足に見立てて差し込み、とする。キュウリは足の速い馬に見立てられ、あの世から早く家に戻ってくるように。ナスは歩みの遅い牛に見立てられ、この世からあの世に帰るのが少しでも遅くなるように、また、供物を牛に乗せてあの世へ持ち帰ってもらうとの願いが込められている。
  • 七夕の「七夕馬」に真菰などの材料のかわりに、キュウリやナスを使う地域もある。
  • 子供の嫌いな野菜として挙げられることが多い。
  • 二宮尊徳は夏前にナスを食べたところ秋茄子の味がしたため冷夏になることを予測した。
  • 毒キノコでも、ナスと一緒に調理すれば中毒しない」とする言い伝えがあるが、全くの迷信であり、ナスにそのような効用は存在しない[62]
  • 中国では、日本人が写真を撮るときに言う「はい、チーズ」の掛け声のように、「一〜、二〜、三〜、茄〜子」と言う文化がある。茄子の「子」を発音した際に、口が横に広がり笑顔が作りやすいためである。
  • 茄子紺:茄子の実のような紫みの濃い紺色のこと。江戸時代から使われる色名。

言い習わし

「秋茄子は嫁に食わすな」
この言葉は「秋茄子わささの糟に漬けまぜて 嫁には呉れじ棚に置くとも」という歌が元になっており、嫁を憎む姑の心境を示しているという説がある。また、「茄子は性寒利、多食すれば必ず腹痛下痢す。女人はよく子宮を傷ふ(養生訓)」などから、嫁の体を案じた言葉だという説もある[36]。さらに、そもそも「嫁には呉れじ」の「嫁」とは「嫁が君(ネズミのこと)」の略であり、それを嫁・姑の「嫁」と解するのは後世に生じた誤解であるとする説がある(『広辞苑』第三版、「あきなすび」の項)。しかし「嫁が君」は正月三が日に出てくるネズミを忌んでいう言葉であり、「秋茄子わささの〜」の解としては(季節が合わず)やや疑問ではある。ナスは熱帯の植物であり8月上旬までに開花・結実した実でなければ発芽力のある種子を得ることが難しい。そこから秋ナスは子孫が絶えると連想したという説もある。
「親の小言と茄子の花は 千に一つの無駄もない」
ナスの花が結実する割合が高いことに、親の小言を喩えた諺。
「瓜の蔓に茄子なすびはならぬ」
非凡な子供を茄子に例えて、平凡な親からは非凡な子は生まれない、という意味。似た諺として「蛙の子は蛙」がある。

注釈

  1. ^ 卵型の白い果実が一般的だった地域の英語名が“eggplant”となっている。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Solanum melongena L. ナス(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年8月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 86.
  3. ^ a b c d e 貝津好孝 1995, p. 146.
  4. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 24.
  5. ^ a b c d e f g h i j 小川正 (2016年7月20日). “湖国の食 ナス 多様な料理を楽しむ”. 中日新聞 (中日新聞社): p. 朝刊 びわこ版 17 
  6. ^ a b ナスのヘタに含まれる天然化合物、子宮頸がん細胞に抗腫瘍効果 名大”. 科学技術振興機構 (2024年1月5日). 2024年1月15日閲覧。
  7. ^ 【抗がん成分を発見?】なすのへたで「長生きスープ」つくってみた!”. がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ. 2024年1月15日閲覧。
  8. ^ 加納喜光『動植物の漢字がわかる本』山海堂、2007年、182頁。ISBN 4-381-02200-9 
  9. ^ a b 石尾員浩『野菜と果物 ポケット図鑑』主婦の友社、1995年、118頁。ISBN 4-07-216639-1 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 講談社編 2013, p. 67.
  11. ^ 講談社編 2013, p. 64.
  12. ^ a b c d e f g 田中孝治 1995, p. 198.
  13. ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 199.
  14. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, pp. 36–37.
  15. ^ 大久保 1995, p. 148.
  16. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 87.
  17. ^ a b c d 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 31.
  18. ^ a b c d e 竹下大学 2022, p. 80.
  19. ^ 武光誠『歴史からうまれた日常語用語辞典』東京堂出版、1998年、230-231頁。ISBN 4-490-10486-3 
  20. ^ a b 竹下大学 2022, p. 81.
  21. ^ 大竹大学 2022, p. 81.
  22. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 28.
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  24. ^ a b c d e f g 板木利隆 2020, p. 22.
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  27. ^ 板木利隆 2020, p. 26.
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  29. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 38.
  30. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 30.
  31. ^ a b 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 39.
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  33. ^ a b 板木利隆 2020, p. 24.
  34. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 30.
  35. ^ 金沢市中央卸売市場>豆知識>青果雑学>なす
  36. ^ a b c d e f g h i j k l m 主婦の友社編 2011, p. 25.
  37. ^ a b c d e f g h i 竹下大学 2022, p. 84.
  38. ^ a b c d e f g 講談社編 2013, p. 66.
  39. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 82.
  40. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 83.
  41. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 34.
  42. ^ 竹下種苗 2022, p. 84.
  43. ^ a b c d 竹下大学 2022, p. 85.
  44. ^ しみずの農産物・ナス JAしみずホームページ
  45. ^ 萩たまげなす | ぶちうま!やまぐち.net~やまぐちの農林水産物~”. www.buchiuma-y.net. 2019年9月1日閲覧。
  46. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 32.
  47. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 35.
  48. ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, pp. 87, 98.
  49. ^ a b 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  50. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  51. ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂)第2章 日本食品標準成分表 6.野菜類”. 文部科学省. p. 9. 2020年6月24日閲覧。
  52. ^ a b 講談社編 2013, p. 69.
  53. ^ a b 世界初!ナス由来の成分による血圧改善、気分改善効果を実証|What's New”. www.adeka.co.jp. ADEKA. 2020年6月24日閲覧。
  54. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 41.
  55. ^ 第3章 調理室における衛生管理&調理技術マニュアル”. 文部科学省. 2020年6月5日閲覧。
  56. ^ 講談社編 2013, pp. 68–69.
  57. ^ 地球の歩き方編集室 編『世界のグルメ図鑑』学研プラス地球の歩き方BOOKS 旅の図鑑シリーズ〉、2021年7月26日、133頁。ISBN 978-4-05801659-6 
  58. ^ Çiğdem TEZ(チーダム・テズ)(著)、天野かよ 訳(編)「トルコの暮らしと食文化」『食品と容器』第57巻第1号、缶詰技術研究会、2016年、52-58頁。 
  59. ^ 服部幸應『世界の六大料理基本事典』東京堂出版、2015年2月20日、208頁。ISBN 978-4-490-10858-3 
  60. ^ Uses of Tropical Grain Legumes: Proceedings of a Consultants Meeting, 27-30 Mar 1989, ICRISAT Center, India. ICRISAT. (1991). pp. 108, 335. ISBN 978-92-9066-180-1. https://books.google.com/books?id=GNKzAAAAIAAJ 
  61. ^ 主婦の友社編 2011, p. 11.
  62. ^ 根田仁、毒きのこ類 森林科学 Vol.54 (2008) p.39-42, doi:10.11519/jjsk.54.0_39





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