ドライアイス ドライアイスの概要

ドライアイス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/17 15:37 UTC 版)

ドライアイス。常温常圧下では昇華して直接気体の二酸化炭素になる。
二酸化炭素の固体の分子構造模式図
ドライアイスは、に入れると大量の白煙を発生する。
取り扱いが容易なペレット状のドライアイス。

物理的性質

種類

商品としては形状から次に分けられる[4]

  • スノー - 粉末状
  • ペレット - 小粒
  • ブロック - 塊

表面積の大きな粉末状のものほど冷却能が高いが持ちは悪くなる。したがって輸送時等昇華しては困る場合はブロック状の大きな塊のまま扱うほうが、溶けにくく長時間にわたって利用することが可能であるが、使用する際にはハンマーなどで小さく割って利用する必要がある。スノー・ペレットなどは、ブロックに比べて短時間ではあるが、より急速に冷やすことが可能である。

製造方法と日本での需給

ドライアイスは以下のような工程で製造される[5][6][7]

  1. 製油所の石油精製過程、アンモニア (NH3)の製造過程、ビール工場等の発酵過程などで出る、副産物としての気体の二酸化炭素(炭酸ガス)を用意し、洗浄塔で精製する。
  2. 精製された気体の二酸化炭素を、加圧圧縮した後に冷却して液化させる。
  3. 液化した二酸化炭素を大気圧下にて断熱膨張させる。急速に大気圧力にすることで気化熱が奪われ、残った液体の二酸化炭素は凝固し粉末状(いわゆるパウダースノー状態)になる。これがドライアイスである。
  4. ブロック状またはペレット状で市販されるドライアイスの塊にするためには液体の二酸化炭素に成形性向上のため少量の (H2O) を添加[5][8]し、プレス機の断熱チャンバー内に放出してできたドライアイスを圧縮・成形し(必要があれば切断も)、所望の形状とする。

日本でドライアイスを製造する企業8社は1979年以降、業界団体「ドライアイスメーカー会」(任意団体)を組織している[9]エア・ウォーター炭酸日本液炭レゾナック・ガスプロダクツなどが大手である。

近年、日本では製油所や化学工場の閉鎖によって副産される二酸化炭素の量が減り、ドライアイスの生産量が減少しているため、供給不足となっている。2013年には不足分1万トン以上が大韓民国から輸入された[10]

ドライアイスの国内需要は年35万トン前後で、うち2万6000トン前後を輸入している。夏季(6月末〜旧盆)の需要が特に多く「45日ビジネス」とも言われる。電子商取引インターネット通販)での生鮮食品の輸送量が増えるとともに、ドライアイスの消費量も増加傾向にある[11]

歴史

ティロリエの液化二酸化炭素装置。

最初にドライアイスを観察したのは、1835年フランスアドリアン-ジャン-ピエール・ティロリエ英語版: (1790–1844) が行った実験で、自ら作成した装置で作った液化二酸化炭素を入れた容器を開けると、急速に気化して固体が残る現象が確認された。

1895年にはイギリスの化学者エルワシー (Elworthy) とヘンダーソン (Henderson) が炭酸ガス固化法の特許を取得し、冷凍用途での使用を提唱した[12]

1924年にアメリカ合衆国トーマス・ベントン・スレート英語版は販売のために特許を申請。翌1925年に設立されたドライアイス・コーポレーションにより固形化した二酸化炭素を "Dry ice" と名付け、最初の商業生産者となった。なお "Dry ice" は同社の登録商標だったが、後に一般名詞化して "dry ice" と呼ばれている。なおイギリスのエア・リキードUK社 (Air Liquide UK Ltd.) は "Cardice" の名で商標登録を行った。


注釈

  1. ^ 1 kgのドライアイスが昇華して-15 ℃の炭酸ガスになるまでの呼吸熱量 (kJ/kg)[2]として一般的に採用される値。
  2. ^ もし0 ℃までなら636 KJ/kgとなる[3]
  3. ^ 水の融解熱は333.5 KJ/kg である。
  4. ^ ドライアイスの製造に使用される二酸化炭素は食品添加物・医薬品向けグレードのものではなく、工業用の規格品であり不純物について検査に合格したものではない。
  5. ^ 日本の労働安全規則における二酸化炭素の濃度上限は 1.5 %である。二酸化炭素濃度 7.0 %になると 15分程度、10.0 %では10分程度で意識不明になる。そして25.0 %になると呼吸低下・麻痺等を起こし数時間後に死に至る[21][22]

出典

  1. ^ a b 「二酸化炭素」『岩波理化学辞典』長倉三郎ほか(第5版CD-ROM版)、岩波書店、1999年。ISBN 4001301024 
  2. ^ 物性データ - ドライアイス”. 日本液炭. 2024年1月17日閲覧。
  3. ^ a b c ドライアイスとは”. 株式会社飯倉商会. 2024年1月17日閲覧。
  4. ^ ドライアイス 製品・商品情報”. 株式会社レゾナック・ガスプロダクツ. 2024年1月17日閲覧。
  5. ^ a b 清水鐵男 (1990年8月1日). "ドライアイス". 有機合成化学協会誌. ケミカルス覚え書き. 有機合成化学協会. 48 (8): 766–767. doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.48.766. 2024年1月17日閲覧
  6. ^ 炭酸ガスとドライアイスの製造工程 ドライアイス資料館”. 株式会社レゾナック・ガスプロダクツ. 2024年1月17日閲覧。
  7. ^ 製造プロセス”. エア・ウォーター炭酸株式会社. 2017年3月29日閲覧。
  8. ^ 左巻健男『面白くて眠れなくなる理科』文庫版 PHP研究所 53p
  9. ^ ドライアイスメーカー会”. 2018年6月17日閲覧。
  10. ^ 『今夏も韓国産ドライアイス』. 化学工業日報. (化学工業日報社・東京)2014年7月7日。p.1
  11. ^ ドライアイス 冷や汗の夏 - 原料足りず品薄 輸入でコスト増 各社、値上げには動けず」朝刊 マーケット商品面、『日本経済新聞』、2018年6月13日。2018年6月17日閲覧。
  12. ^ 炭酸ガスとドライアイスの歴史”. レゾナック・ガスプロダクツ. 2024年1月17日閲覧。
  13. ^ ドライアイスの煙は二酸化炭素ではない!?意外と知らないドライアイスの煙の正体は?”. FUNDO. 2021年7月27日閲覧。
  14. ^ a b 松川利行「水に投じたドライアイスで生じる白煙について―氷微粉末(固体)である証明」(PDF access-date=2024-01-17)『研究紀要』第40巻、日本理化学協会、2008年、113–117、 オリジナルの2018年1月8日時点におけるアーカイブ。 
  15. ^ a b 松川利行 (2008年11月). "水に投じたドライアイスで生じる白煙について―氷微粉末(固体)である証明" (PDF). サイエンスネット. 数研出版. 34. 2024年1月17日閲覧
  16. ^ 3.天気は変えられるか!? 〜人工降雨・降雪で水不足克服!?〜”. 日本気象協会北海道支社. 2024年1月17日閲覧。
  17. ^ 長倉三郎 ほか「寒剤」『岩波理化学辞典』(第5版(CD-ROM版))岩波書店、1998年2月20日。ISBN 4001301024 
  18. ^ a b ドライアイスの取り扱い、安全上の注意”. 日本液炭. 2024年1月17日閲覧。
  19. ^ ドライアイス取り扱い注意”. レゾナック・ガスプロダクツ. 2024年1月17日閲覧。
  20. ^ 船山信次『図解雑学 毒の科学』ナツメ社、2003年、189頁。ISBN 4-8163-3287-1 
  21. ^ a b 物性データ - ドライアイス”. 日本液炭. 2024年1月17日閲覧。
  22. ^ a b 炭酸ガスの物性”. レゾナック・ガスプロダクツ. 2024年1月17日閲覧。
  23. ^ a b 棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意”. 消費者庁. 2024年1月17日閲覧。
  24. ^ ドライアイスを入れて密閉したペットボトルが破裂して大けが!!”. 発表情報. 国民生活センター (2007年9月5日). 2012年1月12日閲覧。


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