デジタルオーディオプレーヤー 市場の動向

デジタルオーディオプレーヤー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 15:39 UTC 版)

市場の動向

デジタルオーディオプレーヤーは、フラッシュメモリに記録するタイプとハードディスクドライブ (HDD) に記録するタイプに大きく分けられる。2007年現在ではフラッシュメモリを使用するプレーヤーが世界の出荷台数の9割程度を占める。

近年、HDDの低価格化などから大容量のMP3プレーヤーが増えてきており、また、じわじわと市民権を得た事もあって、国内外で、特にMDが利用されていない地域で多く利用されている。また、低価格化、小型化も進み、最近はFMラジオが聞けるMP3プレーヤーや、ボイスレコーダー搭載などの多機能製品も出回っている。

  • AMラジオは、ノイズが乗りやすく、プレーヤーに内蔵するとラジオ側がプレイヤー側のプロセッサなどが発するデジタルノイズの影響を受けやすいことや、アンテナ部分の小型化がネックとなるために搭載するのが難しい。しかし、トーク番組バラエティ番組プロ野球大相撲競馬などのスポーツ中継などは、ほとんどがAM放送であり、それらをよく聴くリスナーにとっては、AMラジオが搭載されていないことに対して不満の声もある[注 3]
    なお、デジタルオーディオプレーヤーの中には、サン電子トークマスターシリーズや、MP3プレーヤーとしては筐体の大きいシャープミュージックキャリーをはじめとするラジカセタイプ(ステレオスピーカー内蔵)の製品など、AMラジオが搭載されているものもある。ラジカセタイプだとAMは外部アンテナがほとんどであるため実現できたといえる。これらラジオ内蔵タイプでは放送録音機能を持つものが多く、語学放送教育番組の録音に特化して時間指定で特定放送局の録音が可能だったり、あるいは、外部マイクやライン入力からの本格的な生録非圧縮で行える製品も見られる。これはICレコーダー色の強い製品に多い。そうした製品は、『デジタルオーディオレコーダー』とも呼ばれる。このほか、AndroidiOS等を搭載してスマートフォンから電話機能を省いた形式のデジタルオーディオプレーヤーもあり、その場合ネット環境(Wi-Fiテザリング等)さえあればradikoらじる★らじるのアプリを導入することでAM/FMラジオを聞ける製品もある。また中国などアジア大陸・東南アジア産(DEGENTECSUNなど)のメーカーの銘柄によっては、短波放送を受信可能な「マルチバンドレシーバー」タイプのプレイヤーもある。

フラッシュメモリのタイプの特徴としては、小型で軽量、振動に対して音飛びが発生しない、回転部がないために電池の持ちが比較的良いために低電圧の汎用乾電池で動作する物が多い、などが挙げられる。その一方、メモリそのものの記憶単価が高いことから、メモリ容量は2000年代前半で128MB~4GB程度と小さく、またギガバイトを超える容量の製品は高価になっていた。そのため、デジタルオーディオプレーヤーも2004年頃まではメモリ容量がおおむね64MB~256MB程度にとどまっていた。しかし、フラッシュメモリの大容量・低価格化は急ピッチで進み、デジタルオーディオプレーヤーの分野でも2005年には急激な大容量化が見られた。2005年に登場したiPod nanoは従来の「半導体メモリ=高価」という常識を覆し、当時通常の実売価格が4万~5万円といわれた4GBのフラッシュメモリを用いたモデルを27,800円で発表し、話題をさらった。アップルはサムスンから市場価格を大きく下回る価格でフラッシュメモリを仕入れたと言われている。その後もメモリの大容量化は進み、2009年現在では64GBのフラッシュメモリを用いたモデルも登場している。

HDDのタイプは、2000年前後には大型の2.5インチハードディスクを使用するものがあったが、こちらは携帯というよりはポータブルに近いものだった。2000年代前半にはマイクロドライブなど1.0インチ以下のハードディスクを使用するタイプと5GB~60GBのPCカード大の1.8インチハードディスクを使うタイプが登場した。

前者のタイプは容量が少ない代わりに比較的小型軽量で、後者のタイプは大容量だがやや大きくて重くなるという特徴を持つ。また震動やショックに対して損傷の可能性があり、電源負荷が大きいため乾電池での駆動は難しく、専用のリチウムイオン二次電池と充電器構成を取る。また、USBバスパワーからの充電が可能な製品も多い。2004年~2005年頃で1.0インチ以下で1GB~6GB程度の容量、1.8インチで5GB~60GB程度の容量となっている。2000年代前半は各社ともHDDタイプもラインアップされていたが、2006年以降はフラッシュメモリの大容量化により、各社のラインアップのほとんどがフラッシュメモリタイプとなっている。その他、MP3を納めたフォルダをCD-Rに焼きつけ、そのCDを再生することができるCDプレーヤーもある。

最近では、携帯電話などでもMP3が再生出来る機器が標準化されており、ハードディスクや大容量フラッシュメモリーを内蔵させ、MP3再生を主にした携帯電話も出てきており、これら携帯電話がMP3プレーヤーとしてのシェアを上げてきている。

従来は「振動に強い」や「音飛びしにくい」との理由からポータブル型の機器が好まれたが、MP3やWMAフォーマットの音楽ファイルをパソコンに溜め込む人の増加や、音楽CDを一々プレーヤーから出し入れするのが面倒といった需要もあって、BGMの連続再生などを行える、大容量の記憶媒体を搭載した据え置き型の機器や、無線LANを経由してパソコンの内部の音楽・動画ファイルを再生できる機器も登場している。

エイベックスソニー・ミュージックエンタテインメントなどのレコード会社は、ネットによる違法コピー対策としてコピーコントロールCDを開発し、パソコンに曲をコピーできない仕様のCDを販売してきたが、MP3プレーヤーに曲を取り込めないという弊害もあり、特にソニーBMG製CD XCP問題は世界中で不評を招いた。その後は、各社ともMP3プレーヤーの普及に合わせてコピーコントロールCDから撤退していった。

ソニーは元々独自規格のATRAC3専用機を開発・販売し、汎用的なMP3対応機は販売していなかったが、2004年10月に方針転換し、MP3再生に対応する機器の販売を開始した。しかし、2007年頃までは北米・欧州のポータブルプレーヤー市場でのシェアはiPodの6割に対してソニーは1割弱だった。

近年でも米・欧州では依然iPodシリーズが市場を席巻しているが、日本国内に限ればソニーが再びシェアを拡大する傾向も見られ、2010年12月~2011年上半期(1月~6月)はウォークマンの台数シェアが5割を超えている。また中国や韓国等のアジア市場ではMP3プレーヤーの普及初期からアイリバーコウォンアイゴーなどの地場メーカーのシェアが圧倒的に高い。

また2010年代以降は、デジタル機器の所有傾向の変化によりパソコンなしでの音楽取り込みのニーズが高まり、パソコンを介さずにCD取り込みを行えるCDドライブや、レコードやカセットなどのアナログ音源を取り込めるケーブルも発売されている。

2015~2020年代になると、半導体などが安価、高速、小型、低発熱になり、例えばAndroidなど高機能なOSを搭載することが可能となった。iPod touchが良い例であり、これは「電話のできないスマートフォン」と一時期比喩されていたこともある。これらの高機能なプレーヤーは無線LANでインターネットに接続してブラウジングしたり、音楽をダウンロードしたり、各種アプリケーションを追加して機能を増やすことが可能となっているものが多い。Android搭載のウォークマンは、音楽や動画のストリーミングサービスを高音質で利用できることがアピールされた。これらプレーヤーとスマートフォンの異なる点としては、WCDMALTEなどの無線WAN機能をオーディオプレーヤーは持っておらず、外出先ではインターネットに接続できなかったり、スマートフォンのように電話をかけたりすることはできない。

現在においてはAmazonなどのオンラインショッピングで回線契約の不要なWi-Fiで使用できるいわゆるSIMフリースマートフォンがこれらのオーディオプレーヤーとほぼ互角の価格で販売されているため、音質を求めないのならば画面が小さくレスポンスの悪い事が多いオーディオプレーヤーよりもスマートフォンのほうが優れているという意見もある。

2018年頃からは、ハイレゾ対応を謳った音楽プレーヤーも安価に登場し始め、一例を上げればウォークマンでは最も安いグレードを除いてハイレゾ対応するといった実態になっている。しかしハイレゾとそれ以外の違いがわからないというユーザーも多かった。

日本の市場動向

日本では、2002年8月から2010年7月まで、8年間にわたってAppleiPodが月間販売台数シェアの1位を独占していた[6]。しかし2010年後半以降ウォークマンのシェアも拡大しつつあり、GfK Japanの2010年の年間台数シェア調査によると、日本のデジタルオーディオプレーヤー市場はアップルのiPodが約55%、ソニーウォークマンが約40%を占めていた[7]。このように日本市場では両社が大部分のシェアを占めている。かつてはケンウッドMedia Kegシリーズなどの競合製品も展開されていた。

韓国の市場動向

韓国では独自のモバイル機器の発達を見せており、iRiverやiAudioの占めるシェアの割合がiPodよりも高い。

中国の市場動向

中国では、aigo、ONDA、Ramos、DEGENTECSUNなどの地元メーカーのシェアが高い。2005年頃に中小メーカーが淘汰されたとはいえ、それでも多くのメーカーがしのぎを削り新製品を投入している。

他製品との比較

デジタル音楽プレーヤーの世界出荷台数は2004年で2,640万台 (IDC)~2,780万台 (In-Stat)、iPod が世界的にヒットした2005年には推定6,000万台以上と見られている。日本でも2005年にはMDの出荷台数が前年の半分以下にまで落ち込み、フラッシュメモリやHDDを用いたデジタル音楽プレーヤーへの世代交代が急速に進んだ。

他の製品との比較では、2005年頃のパソコンの世界出荷台数は2億台を超える規模、2005年頃の携帯電話の世界出荷台数は8億台以上(2006年は10億台弱の見通し、ガートナー)の規模をもち、単体のデジタル音楽プレーヤーの出荷台数はそれほど多くはない。情報機器の世代交代では、記録・再生技術や使い勝手などハードウェアの技術革新と流通・サービスの技術革新で従来よりも市場規模が拡大する現象がしばしば見られ、デジタル音楽プレーヤーも、音楽も聴けるフィーチャーフォンスマートフォンの普及で変わってきているとはいえ、今後さらに規模が拡大するとの予想も出ている。たとえば、カメラの場合、国内のカメラ市場は、フィルムカメラ時代のおおむね500万台近辺からデジタルカメラに転換した後には900万台弱に拡大している。

デジタル音楽の再生機能は、単体プレーヤー以外にも、旧来のPDAや携帯電話にも搭載されつつある。携帯電話の世界的大手であるノキアは2006年4-6月期だけで、1,000万台を超える音楽対応デバイスを販売しているほか、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは2007年1-3月期だけで1890万台を世界市場で販売した。

旧来のパソコンインターネットを使った音楽購入とデジタル音楽プレーヤーによる視聴以外に、携帯電話を用いた音楽の販売と視聴も、CDの販売額を徐々に落ち込ませるほどに広がりつつある。[8]これはスマートフォンでモバイルブロードバンドの利用が容易になり、音楽の保存に使えるデータ領域も多くなり、更には近年人気の高い各種ストリーミングサービスなどが各社より数多く展開されているということ、および音楽プレーヤーにはパソコンが必要であり、パソコンの不要なプレーヤーは価格が高く普及していないことが背景にある。


注釈

  1. ^ 以上の機能は、アナログ分野でのラジカセミニディスク搭載型ラジオ(ラジMD)に相当する。
  2. ^ フリーソフトをいくつか併用すれば可能な場合もある。
  3. ^ 2014年よりFM補完放送が開始されたものの、内蔵チューナーが90.1MHz~94.9MHz帯に対応していることが必要であることや(一部の局を除く)、NHKラジオ第1放送及びNHKラジオ第2放送は一部の地域を除いてFM補完放送が実施されていないなどの問題もある。

出典

  1. ^ 『電撃王 通巻100号 表紙 田中麗奈』メディアワークス、2000年1月1日、156,157,頁。 
  2. ^ 【緊急寄稿】iPodに白旗! パナソニックが携帯音楽プレーヤー事業の終息を検討
  3. ^ IFA 2007【ソニー編】新ウォークマンは「Goes OPEN」-欧州向けに発売。899/599ユーロのBDプレーヤーも
  4. ^ YouTube Music、ようやく音楽アップロードが可能に(もうすぐさよならGoogle Play Music)ITmedia 2020年3月10日
  5. ^ 約20年におよぶ「iPod」の歴史に幕。iPod touchが在庫限りで販売終了”. PC Watch (2022年5月11日). 2022年5月11日閲覧。
  6. ^ 携帯オーディオ、2010年8月の月間トップはソニー、新iPod登場の9月は?
  7. ^ 参考:GfK Japan Certified
  8. ^ CDの売上不況によるCDショップ衰退、減少の行方はどうなるのか”. Landgather (2017年9月8日). 2021年7月1日閲覧。






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固有名詞の分類

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