チーター 生態

チーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/14 07:33 UTC 版)

生態

サバンナ内の草原や疎林・低木林に生息し、湿生が中程度(カラハリ砂漠南部のような乾燥したサバンナにも生息する)で草原と疎林が点在する環境を好む[6]。砂漠や半砂漠(サハラ砂漠・ナミブ砂漠・イラン)では、水路や山脈の周辺に生息する[6]。地表棲だが、樹上に登ることもある[6][9]。樹上に登るのは臭い付け(マーキング)や、獲物を探すのに有用だと考えられている[6]昼行性[4][5][7]、これは獲物を視認したり大型食肉類を避けるためだと考えられている[6]。一方で涼しい時期や育児中の母親は1日中活動することもあり、サハラ砂漠やオカバンゴなどでは夜間にも活発に活動するとされる[6]。単独で生活するが、母親とその幼獣・血縁関係のある個体(兄弟など)では、小規模な群れを形成することがある[9]。一方でこうした群れに、兄弟ではない個体が含まれることもある[6]。オスは縄張りを形成し、群れを形成している場合は共同で縄張りを防衛する[5]。一方で縄張りを形成せずに半ば放浪するオスもいて、縄張りを形成したり放浪する生活を繰り返すこともある[6]。メスや放浪中のオスの行動圏は非常に大きい[6]セレンゲティ国立公園ではメスは395 - 1,270平方キロメートル、オスは平均777平方キロメートルという報告例がある[6]。一方で獲物が多かったり移動しない地域では行動圏は小さくなり、クルーガー国立公園では185 - 246平方キロメートルという報告例がある[6]

狩りは朝夕に行う[18]。獲物を追跡するときは、走行速度が2秒で時速72キロメートルに達することもある[8]。1965年にケニアで行われた測定では201.2メートル(220ヤード)を約7秒で走行するのが記録され、これは秒速29メートル(時速約104キロメートル)に相当する[2][3]。一方でボツワナのサバンナ林では、平均54キロメートルで走行するという報告例もある[6]近年[いつ?]行われた計測では平均時速は59キロメートルである[19][20]。疾走できるのはオカバンゴでは、平均173メートルという報告例がある[6]。最大600メートルまで全力疾走することができるが、通常は300メートル未満[6]

小型から中型有蹄類、大型有蹄類の幼獣などを食べ、ノウサギ類や鳥類を捕食することもある[3][7]。地域別では主にダマガゼルやドルカスガゼル(サハラ砂漠)、スプリングボック(カラハリ砂漠などのアフリカ南部)、インパラ(アフリカ東部および南部)、グラントガゼルやトムソンガゼル類(アフリカ東部)などを食べる[6]。小型から中型の獲物(体重20 - 60キログラムのガゼル類)がいない・大型有蹄類の生息数が多い場合は大型有蹄類を好んで捕食することもあり、アフリカ南部ではニアラ(体重55 - 127キログラム)・イランではパサン(体重25 - 90キログラム)やムフロン(体重36 - 66キログラム)などを食べることもある[6]。オス同士が協力した場合は単独では通常襲わないようなオグロヌーオリックス・サバンナシマウマの幼獣を襲い、アフリカスイギュウキリンの幼獣を殺すこともある[6]。鳥類はダチョウ、ノガン類、ホロホロチョウ類などを食べる[6]。動物の死骸は食べないが[3][8]、これは大型の食肉類との争いを避けるためだと考えられている[6]。家畜を襲うこともあり、ナミビアの調査では食性の10 - 15 %がヒツジ・ヤギ、3 - 5 %がウシの幼獣だったとする報告例もある[8]。 蟻塚の上や低木の樹上などから獲物を探すが、丈の長い草が茂みがある環境では茂みの中で獲物を待ち伏せる[8]。獲物に100 - 300メートルまで接近してから狩りを行うが、距離が200メートル以上だと狩りの成功率は低下する[3]。獲物を発見すると近距離まで忍び寄ってから、全力で疾走しながら獲物を追跡し引き倒した後に喉に5 - 10分間噛みついて窒息死させる[5][8]。狩りの成功率は半分程度[5]。倒した獲物は他の動物に邪魔されないように、茂みの中などへ運んでから食べる[5][8]。頭部や顎の力が弱く、獲物の骨などは噛み砕くことができないため残す[4][7]。成獣は2 - 5日に1度獲物にありつければ十分だが、子育て中のメスは毎日狩りに成功する必要がある[3][9]。 水は4日に1回、ときには10日に1回だけ飲むこともある[5]。 幼獣の捕食者はヒョウブチハイエナライオンなどが挙げられ、ライオンは成獣も殺すこともあるが逃げきれることが多い[9]

繁殖様式は胎生。発情したメスは木や茂み・岩などに放尿し、その臭いをかぎ付いた優位のオスは鳴き声をあげながらメスを追跡する[5]。メスがオスを受け入れると互いに鳴き交わし、1 - 2日間に数回交尾を行う[5][8]。妊娠期間は90 - 98日[6]。野生下では、1回に6頭までの幼獣を産む[3][9]。主に2 - 4頭の幼獣を産む[4]。飼育下では最大8頭の出産例がある[3][9]。幼獣は生後2 - 14日で開眼し、生後16日で歩行できるようになる[8]。授乳期間は3 - 6か月[3]。生後15 - 17か月で狩りができるようになる[8]。上述のように生後8週間以内はライオンによる捕食により死亡することが多く、ブチハイエナに捕食されることもある[6]。セレンゲティ国立公園では、ある時期の幼獣の死亡率が95 %に達したという報告例がある[6]。一方でこれは開けた環境であるセレンゲティ国立公園で主な死因であるライオンの個体密度が急増した時期の報告とされ、通常はこの割合よりも小さい[6]。生後14 - 16か月で性成熟する[4]。野生での寿命はメスが平均6.9歳だが[21]、セレンゲティ国立公園での平均寿命はオス5年、メス6年[6]。同国立公園では最長寿命はオス11年、メス14年[6]。平均年齢の差異については、上記のライオンやハイエナによる捕食で子供の生存率が低いことが関係しているとされる[22]


  1. ^ a b c UNEP (2021). Acinonyx jubatus. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 23/03/2021]
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Durant, S., Mitchell, N., Ipavec, A. & Groom, R. 2015. Acinonyx jubatus. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T219A50649567. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T219A50649567.en. Downloaded on 23 March 2021.
    Belbachir, F. 2008. Acinonyx jubatus hecki. The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T221A13035738. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T221A13035738.en. Downloaded on 23 March 2021.
    Jowkar, H., Hunter, L., Ziaie, H., Marker, L., Breitenmoser-Wursten, C. & Durant, S. 2008. Acinonyx jubatus venaticus. The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T220A13035342. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T220A13035342.en. Downloaded on 23 March 2021.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x Paul R. Krausman & Susana M. Morales, "Acinonyx jubatus," Mammalian Species, No. 771, American Society of Mammalogists, 2005, Pages 1 - 6.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 成島悦雄 「ネコ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、150 - 171頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w George W. Frame 「チーター」「セレンゲティのチーター 生息環境の利用におけるオスとメスの差」今泉忠明訳『動物大百科 1 食肉類』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、48-51頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai Luke Hunter 「チーター」山上圭子訳『野生ネコの教科書』今泉忠明監修、エクスナレッジ、2018年、165-174頁。
  7. ^ a b c d e f g h i j k 成島悦雄「地上でいちばん速い動物 チーター」『週刊朝日百科 動物たちの地球 哺乳類II 1 トラ・ライオン・ヤマネコほか』第9巻 49号、朝日新聞社、1992年、8-9頁。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 小原秀雄 「チーター」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、12-13,150-151頁。
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Erin R. Lehnert, 2013. "Acinonyx jubatus" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed 23 March, 2021 at http://animaldiversity.org/accounts/Acinonyx_jubatus/
  10. ^ ナショナルジオグラフィック チーター 2024年5月17日閲覧。
  11. ^ 松村明 編「しゅりょうひょう」『大辞林 4.0三省堂、2019年。 
  12. ^ 松村明 編「チーター」『大辞林 4.0三省堂、2019年。 
  13. ^ cheetah / Wiktionary
  14. ^ 体脂肪率5%、速く走るために特化した無駄のない体!”. 2024年6月12日閲覧。
  15. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P74。
  16. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P73。
  17. ^ IUCN SSC Cat Specialist Group, "Acinonyx jubatus," Cat News, Spacial Issue 11, 2017, Pages 30-31.
  18. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P73。
  19. ^ 『ダーウィンが来た』2012年1月1日放送分[出典無効]
  20. ^ 佐藤克文. “頑張りすぎない野生動物”. d-labo. 2019年2月5日閲覧。
  21. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P73。
  22. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P73。
  23. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2021年3月23日に利用)
  24. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P73。
  25. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P74。
  26. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P74。
  27. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P74。
  28. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P75。
  29. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P75。






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