ダークエネルギー 観測的証拠

ダークエネルギー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/21 13:54 UTC 版)

観測的証拠

現在、ダークエネルギーの存在は、主に以下の3つの観測手段によって支持されている。

超新星

1990年代後半、ハイゼット超新星探索チーム[7]超新星宇宙論計画[6]の二つの国際的研究観測チームが、遠方のIa型超新星を観測することにより、宇宙が加速膨張をしていることを独立に相次いで立証した。現在の宇宙の全エネルギーの7割を、ダークエネルギーが占めるという観測結果は、大きな驚きをもって迎えられた。この発見の功績により、2011年ノーベル物理学賞は、ソール・パールマッターブライアン・P・シュミットアダム・リースの3者に贈られることになった[9][10]。Ia型超新星とは、白色矮星を含む連星のうち、白色矮星がもう一方の星からの質量降着によりその質量が、チャンドラセカール限界に達した瞬間に超新星爆発が起きる現象をいう。

チャンドラセカール限界で白色矮星が超新星爆発する時の質量が、太陽質量の約1.4倍であり、光度がほぼ一定であることから、標準光源として距離の測定に使われている。

タイプIa型超新星爆発の最大光度は、母銀河の光度に匹敵する明るさになるため、遠方銀河までの距離の測定が可能になった。ダークエネルギーの発見から10年、精度を上げる観測が精力的に行われ、現在までに700個以上の超新星の観測が報告され、さらに大規模な観測が計画されている。日本のすばる望遠鏡も、遠方の超新星の観測に貢献している[11]。今日でも、暗黒エネルギーの最も正確な測定は、タイプIa型超新星によるものである。

宇宙背景放射

宇宙背景放射の非等方性から、宇宙論パラメータを求めることができる。特に、宇宙の平坦性は主に宇宙背景放射の観測によるものであり、宇宙背景放射観測衛星WMAPは2001年の打ち上げ以来、高精度の宇宙論パラメータの決定を可能にし、大きな成果を上げている。WMAPの最新の宇宙背景放射の観測からも、ダークエネルギーの存在が強く支持されている。

バリオン音響振動

バリオン音響振動英語版とは、宇宙の晴れ上がりの際、後に銀河や星を構成することになるバリオンの共鳴していた距離が凍結され、銀河間の特徴的な距離がおよそ140メガパーセク (Mpc)(約4.57億光年)として銀河分布に刻まれる現象である。

我々からある距離に存在する明るい銀河の特徴的な分布を角度として測り、その角度をこの凍結された距離として解釈することにより、宇宙論パラメータを解くことができる。大規模な銀河探索であるスローン・デジタル・スカイサーベイのチームが、銀河の分布からバリオン音響振動の観測に初めて成功し、その結果は2005年に発表[12]された。その後も検証が続けられ、最新の観測結果もダークエネルギーの存在を強く支持している[要出典]


  1. ^ “全天X線監視装置搭載 X 線 CCD カメラ” (PDF). 日本マイクログラビティ応用学会誌 (日本マイクログラビティ応用学会) 28: 29-33. (2011). http://www.jasma.info/journal/wp-content/uploads/past/assets/images/jornal/28-1/28-1/2011_p029.pdf. 
  2. ^ a b Planck reveals an almost perfect Universe”. ESA (2013年3月21日). 2013年7月7日閲覧。
  3. ^ Perlmutter, Saul; Turner, Michael S.; White, Martin (Jul 1999). “Constraining Dark Energy with Type Ia Supernovae and Large-Scale Structure”. Phys. Rev. Lett. 83 (4): 670–673. arXiv:astro-ph/9901052. doi:10.1103/PhysRevLett.83.670. http://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevLett.83.670. 
  4. ^ 初めて"dark energy"という語が現れた論文は、当時ターナーの学生だったDragan HutererによりArXiv.org e-print archiveに投稿された"Prospects for Probing the Dark Energy via Supernova Distance Measurements"という論文である。翌1999年、Physical Review Dにて正式にこの論文は発表された (Huterer and Turner, Phys. Rev. D 60, 081301 (1999))。しかし、このときは一般的な語としてこの言葉は使用されていた。宇宙学者のSaul Perlmutterは、ターナーがイリノイ大学のMartin Whiteと共著でPhysical Review Lettersの論文において、初めて新語として引用符にくくり明示的にこの言葉を使用したと指摘している[1]
  5. ^ Ostriker, J. P.; Steinhardt, Paul J. (19 Oct 1995). “The observational case for a low-density Universe with a non-zero cosmological constant”. Nature 377 (6550): 600–602. Bibcode1995Natur.377..600O. doi:10.1038/377600a0. https://doi.org/10.1038/377600a0. 
  6. ^ a b S. Perlmutter et al. (The Supernova Cosmology Project) (1999). “Measurements of Omega and Lambda from 42 high redshift supernovae”. Astrophysical J. 517: 565–86. arXiv:astro-ph/9812133. doi:10.1086/307221. http://iopscience.iop.org/article/10.1086/307221/meta. 
  7. ^ a b Adam G. Riess et al. (Supernova Search Team) (1998). “Observational evidence from supernovae for an accelerating universe and a cosmological constant”. Astronomical J. 116: 1009–38. arXiv:astro-ph/9805201. doi:10.1086/300499. http://iopscience.iop.org/article/10.1086/300499/meta. 
  8. ^ Suzuki, N.; Rubin, D.; Lidman, C.; Aldering, G.; Amanullah, R.; Barbary, K.; Barrientos, L. F.; Botyanszki, J. et al. (2012). = 1/a = 85 “The Hubble Space Telescope Cluster Supernova Survey. V. Improving the Dark-energy Constraints above z > 1 and Building an Early-type-hosted Supernova Sample”. The Astrophysical Journal 746 (1): 85–85. arXiv:1105.3470. http://stacks.iop.org/0004-637X/746/i = 1/a = 85. 
  9. ^ The Nobel Prize in Physics 2011” (英語). Nobelprize.org. 2016年7月31日閲覧。
  10. ^ 島田セレーナ (2011年10月5日). “ノーベル物理学賞、宇宙の膨張加速を突き止めた3教授に”. International Business Times. http://jp.ibtimes.com/articles/311102 2016年7月31日閲覧。 
  11. ^ Suzuki, N.; Rubin, D.; Lidman, C.; Aldering, G.; Amanullah, R.; Barbary, K.; Barrientos, L. F.; Botyanszki, J. et al. (2012). “The Hubble Space Telescope Cluster Supernova Survey. V. Improving the Dark-energy Constraints above z > 1 and Building an Early-type-hosted Supernova Sample”. The Astrophysical Journal 746 (1): 85–85. arXiv:1105.3470. http://iopscience.iop.org/article/10.1088/0004-637X/746/1/85/meta. 
  12. ^ Percival, Will J.; Reid, Beth A.; Eisenstein, Daniel J.; Bahcall, Neta A.; Budavari, Tamas; Frieman, Joshua A.; Fukugita, Masataka; Gunn, James E. et al. (2010). “Baryon acoustic oscillations in the Sloan Digital Sky Survey Data Release 7 galaxy sample”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 401 (4): 2148–2168. arXiv:0907.1660. doi:10.1111/j.1365-2966.2009.15812.x. http://mnras.oxfordjournals.org/content/401/4/2148.abstract. 
  13. ^ 宇宙、あと1400億年は「安泰」 すばる望遠鏡で調査」『朝日新聞デジタル』、2018年9月27日。2019年1月13日閲覧。
  14. ^ Hikage, Chiaki; Oguri, Masamune; Hamana, Takashi; More, Surhud; Mandelbaum, Rachel; Takada, Masahiro; Köhlinger, Fabian; Miyatake, Hironao et al. (2018-09-24). “Cosmology from cosmic shear power spectra with Subaru Hyper Suprime-Cam first-year data”. arXiv:1809.09148 [astro-ph]. http://arxiv.org/abs/1809.09148. 






ダークエネルギーと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ダークエネルギー」の関連用語

ダークエネルギーのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ダークエネルギーのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのダークエネルギー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS