ダチョウ 人間との関係

ダチョウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/06 09:30 UTC 版)

人間との関係

1983年にアルジェリア・カメルーン・スーダン・セネガル・中央アフリカ共和国・チャド・ナイジェリア・ニジェール・ブルキナファソ・マリ共和国・モーリタニア・モロッコの個体群のみ、ワシントン附属書Iに掲載されている[2]

鳥として食肉、採卵、羽根が利用され、また大型であるため皮革をとることができ、一部では乗用としても利用された。利用価値が高いため繁殖地域では人為的な「飼育」も行われて交易品となった。

近世に個人的蒐集から公共的な目的を以て制度化された動物園で人気種として親しまれている。ダチョウは陸上生物の最大の眼球を持つ(脳よりも片方の眼球の方が重いといわれる)とされ、睫毛が長い愛嬌ある顔と人を恐れない性質があり、ダチョウ特有の一日見ても飽きのこない愛らしさ、滑稽さを持つ行動は、人の目を釘付けにし楽しませてくれる。

一定の需要があるため、日本国内にも観光用の飼育施設だけでなく、食用の肉や卵を供給するための専門の「ダチョウ牧場」がある[9]。 食肉や皮革を得るために飼育されるダチョウの寿命は1年だが、羽根のために飼育されるダチョウは9ヶ月ごとに羽根を毟られながら長ければ15年間生きられる。[10]

捕獲・飼育と交易

ローマ時代のモザイク画に描かれた狩猟の様子(2世紀頃)

古代エジプト壁画に、ダチョウを飼育していた様子が描かれている。1652年、オランダ人が南アフリカケープタウンに上陸した後は、他の野生動物と同じくダチョウの捕獲・屠殺が盛んに行われた。17世紀頃からダチョウの飼育が活発化し、20世紀に至るまでダイアモンド羊毛と並んでダチョウの羽根が南アフリカの主要貿易品となるに至った。長らく南アフリカの独占的畜産業であったが、1993年に南アフリカからの種卵・種鳥の輸出が解禁され、後発の家禽として世界中に飼育が広まった。日本においても1990年代後半から飼育数が増加し生産者団体が発足するなど活発化し、2008年に家畜伝染病予防法の対象動物となった。

食肉

ダチョウ(ひき肉、生)[11]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 165 kcal (690 kJ)
0.00 g
食物繊維 0.0 g
8.70 g
飽和脂肪酸 2.177
一価不飽和脂肪酸 2.654
多価不飽和脂肪酸 0.910
20.22 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
0 μg
チアミン (B1)
(16%)
0.182 mg
リボフラビン (B2)
(22%)
0.267 mg
ナイアシン (B3)
(29%)
4.377 mg
ビタミンB6
(37%)
0.475 mg
葉酸 (B9)
(2%)
7 μg
ビタミンB12
(192%)
4.61 μg
ビタミンC
(0%)
0.0 mg
ビタミンE
(2%)
0.24 mg
ミネラル
カルシウム
(1%)
7 mg
鉄分
(22%)
2.91 mg
マグネシウム
(6%)
20 mg
リン
(28%)
199 mg
カリウム
(6%)
291 mg
ナトリウム
塩分の可能性あり)
(5%)
72 mg
亜鉛
(37%)
3.51 mg
他の成分
水分 71.07 g
ビタミンA効力 0 IU
砂糖 0.00 g
カフェイン 0 mg
コレステロール 71 mg

成分名「塩分」を「ナトリウム」に修正したことに伴い、各記事のナトリウム量を確認中ですが、当記事のナトリウム量は未確認です。(詳細

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

古代ローマの料理家だったマルクス・ガビウス・アピシウスがダチョウ肉料理の記録を残している。なお、旧約聖書においては禁忌とされる動物に名を連ねている。 ダチョウ肉は高蛋白質・低脂肪であるため、欧米、特に欧州連合(EU)諸国ではBSE問題が追い風となり、健康面に配慮した一部消費者により牛肉の代替赤肉として消費されている。消費量は世界的には年間数万t、日本国内においては100t程度の消費量が推計されている。

ダチョウの肉は鉄分が豊富で赤みが強く、歯応えのある食感をしている。また低脂肪でL-カルニチンも豊富であることからヘルシー食肉として認知が広まりつつある。他の畜肉と比べアラニングリシンといった甘み成分のアミノ酸が豊富である。料理法としてはステーキ焼肉ハンバーグカツレツのほか刺身タタキといった生食でも嗜好される。脂肪が少ない分、クセは少なく和洋問わず味付けの幅は広い。牛肉に比べると加熱し過ぎると固くジューシーさが失われることがあり、ダチョウ肉に見合った調理加減が必要である。

ダチョウには竜骨突起がないためムネ肉がほとんど存在しない。食用とする肉の大部分はモモ肉である。各国、各生産者の分類によるがモモ肉のうち特に柔らかい肉がフィレ肉と分類されていることが多い。また首の肉や砂肝、肝臓、心臓等の内臓肉も食用に用いられる。

卵・卵殻

ダチョウの卵
キプロスラルカナの聖ラザロ教会英語版の天井に吊り下げられたランプに使われているダチョウの卵殻

現在確認されている世界最大の単細胞である。鶏卵の25 倍、重さは 1.5 kg にもなる。卵は可食であり、非常に大きいが味は薄く決して美味ではない。アフリカの狩猟民族にとっては貴重な蛋白源である。ただし、現地では専ら子供や老人の食べ物とされ、成人が食べるのは恥とする習俗がある。卵は鶏卵の20個分の量となる。

古来から普段は動かないように見える卵から生命が孵ることから「復活」のシンボルとされており、大型のダチョウの卵はキリスト教会などでイエスの復活に擬えて人々の前で飾られ、懺悔心を呼び起こすシンボルともされた[12]

卵殻は厚さが2ミリほどもあって頑丈なため、現在はアートなどにも利用される。

抗体生産への利用

京都府立大学教授塚本康浩がダチョウの卵を利用して抗体を低コストでつくることを発案した[13]。このダチョウ抗体を使用したマスクが販売されている[14]。通常、抗体の生産には鶏卵を用いるのが一般的であるが、巨大なダチョウ卵は1個の卵で抗体4gを造ることができ、マスクにすると卵1個で4-8万枚を生産することができるとしている[15]。同研究グループではインフルエンザウイルス等の抗体のほかニキビ原因菌の抗体などの生成にも成功しており商品化が進んでいる[16]

羽根

1919年頃、オランダアムステルダムで制作されたダチョウを使った羽飾り

羽根は古代エジプトにおいて真実と公正の象徴として、エジプト神話の神々やファラオの装飾品に用いられた。欧米でも孔雀の羽などとともに装飾品として利用されている。中世ヨーロッパでは騎士の兜の装飾品に使用された。イングランドエドワード黒太子がダチョウの羽根3本を紋章(スリーフェザーマーク)としたことから、現在もプリンス・オブ・ウェールズの徽章(ヘラルディック・バッジ; Heraldic badge)に用いられている。1912年に沈没したタイタニック号の積荷の中で最も高価だったのは12ケース分のダチョウの羽根で、現在の価格では2億5000万円以上だった。[10] 帽子飾りに良く使われるほか、大量の羽を使用した装飾は舞台衣装に使われることも多い。なお、宝塚歌劇団のトップスターが着用する羽飾りもダチョウの羽である。

鳥の羽根には基本的に互いをつなぎ合わせるための小さなフック状の突起があるが、ダチョウにはない。そのためそよ風に流されたりふんわりと膨らんだりと優雅な雰囲気を持つ。[10]

また、この羽はほとんど静電気を帯びないため、情報機器や自動車のダスターにも使用される。

皮革


「オーストリッチ」と呼ばれる皮革製品はダチョウの背中の部分の皮膚を利用したものである。軽くて丈夫なことを特色とし、バッグ、財布、靴などに幅広く利用されている。 外見にも特徴があり、「クィル(英語: quill)」「シボ」などと呼ばれる羽毛痕が多数散らばり、全体として水玉のような模様を見せる。

乗用

1933年頃にオランダで行われたダチョウレースの模様(動画)

馬などと比べると乗用に適しているとは言い難いが、人間を乗せて走ることができる。日本ではダチョウらんど(沖縄県)でのみ乗る(騎乗するのみ可)ことができる。アメリカ合衆国では騎手を乗せたダチョウレースが開催されており、1907年にオハイオ州のグリーンヴィルで開催されたダチョウレースで騎手を乗せたダチョウが半マイル(約800m)を1分3秒で走ったという記録がある。

  1. ^ アルジェリア、カメルーン、スーダン、セネガル、中央アフリカ共和国、チャド、ナイジェリア、ニジェール、ブルキナファソ、マリ共和国、モーリタニア、モロッコの個体群のみ
  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (downroad 06/06/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Struthio camelus. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 06/06/2020)
  3. ^ a b c d e f BirdLife International. 2018. Struthio camelus. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T45020636A132189458. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T45020636A132189458.en. Downloaded on 06 June 2020.
  4. ^ a b c Ratites: Ostriches to Tinamous, Gill F, D Donsker & P Rasmussen (Eds). 2020. IOC World Bird List (v10.1). https://doi.org/10.14344/IOC.ML.10.1. (Downloaded 06 June 2020)
  5. ^ Brian C. R. Bertram 「ダチョウ」上田恵介訳『動物大百科 7 鳥I』黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編、平凡社、1986年、26-29頁。
  6. ^ 福田道雄 「飛ぶことをやめた鳥たち ダチョウ、ヒクイドリ、エミュー、レア」『動物たちの地球 鳥類I 1 ダチョウ・アホウドリほか』長谷川博編著、朝日新聞社1992年、8-12頁。
  7. ^ 必見!目がテン!ライブラリー
  8. ^ ダチョウの目の玉”. OSTRICH LAB (2017年6月27日). 2020年3月20日閲覧。
  9. ^ 【ぐるっと首都圏・食べる・つながる】栃木・小山 ダチョウ/100%赤身 食感は牛肉/鉄分豊富 美容効果も 『毎日新聞』朝刊2018年11月8日(首都圏面)2018年11月10日閲覧。
  10. ^ a b c 町に富をもたらしたダチョウの羽根 かつてはダイヤモンドや金よりも高価だった”. National Geographic. 2020年9月6日閲覧。
  11. ^ Basic Report: 05641, Ostrich, ground, raw Agricultural Research Service , United States Department of Agriculture , National Nutrient Database for Standard Reference , Release 26
  12. ^ 世界宗教用語辞典『駝鳥』
  13. ^ http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/2008/2008-09/page07.html
  14. ^ マスク出荷ピーク 西日本新聞 1面政治経済社会欄 2013年2月20日
  15. ^ 花粉症対策 カギは抗体 中日新聞 2012年3月25日
  16. ^ “ダチョウ卵でニキビを抑制 府立大グループ、化粧品販売も”. 京都新聞. (2013年6月4日). http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20130604000066 2013年6月5日閲覧。 
  17. ^ 【阿比留瑠比の極言御免】民主党の社民党化がとまらない…国民を「ダチョウの平和」の道連れにするな産経ニュース(2016年2月11日)2018年11月10日閲覧。
  18. ^ “Natural History Notebooks. Canadian Museum of Nature.”, Nature, (2010年2月20日), https://nature.ca/notebooks/english/ostrich.htm 2019年9月4日閲覧。 
  19. ^ “Ostrich head in sand”, ABC, (2006年11月2日), http://www.abc.net.au/science/articles/2006/11/02/1777947.htm 2019年9月4日閲覧。 
  20. ^ “Do Ostriches Really Bury Their Heads in the Sand?”, Wonderopolis, https://www.wonderopolis.org/wonder/do-ostriches-really-bury-their-heads-in-the-sand/ 2019年9月4日閲覧。 
  21. ^ “Ostrich Struthio camelus”, National Geographic Society, (2009年), https://www.nationalgeographic.com/animals/birds/o/ostrich/ 2019年9月4日閲覧。 
  22. ^ “Do ostriches really bury their heads in the sand?”. Science World British Columbia. (2015年12月10日). https://www.scienceworld.ca/blog/do-ostriches-really-bury-their-heads-sand 2019年9月4日閲覧。 


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