ダイコン 変種

ダイコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 03:48 UTC 版)

変種

ハマダイコンの花

栽培種も変種 R. sativus var. longipinnatus として扱われるが、原種ははっきりしていない。染色体はn=9で、アブラナ属の多くの野菜と同様自家不和合性を持ち、交雑しやすい。変異を生じやすいアブラナ科に属する上、気温適応性の幅も広いため、品種が多い[8]。根茎の色も多様で、外皮も内部も白い種類をはじめ、外皮が緑色で内部が白色の種、外皮が赤色で内部が白色の種、外皮も内部も赤色の種、外皮が黒く内部が白色の種などがある[7]。その大きさも幅があり、重さ30キログラム (kg) を超える桜島大根のような種から、わずか10グラム (g) 程度のハツカダイコン(ラディッシュ)まである[7]

遺伝的研究から、日本のダイコンはヨーロッパ系統、ネパール系統とは差が大きく、中国南方系統に近い[15]事が確認されている。

日本の東北大学などは世界各地のダイコン500品種のゲノム情報を分析・公開した。その研究によると、各品種は4つのグループに大別され、日本産は独自のグループを形成していることが判明した[16]

  • ハツカダイコン (R. sativus var. sativus)
    別名ラディッシュともよばれ、収穫が早いことから「二十日大根」といわれる。根茎は直径は2 - 4 cmほどの丸形や長丸形で、表面は鮮赤色をしている[17]。サラダなどの彩りによく使われる[18]
  • ハマダイコン (R. sativus var. hortensis f. raphanistroides)
    日当りのよい砂浜などに自生的に生育する。野草として食用にされるほか、食用選抜も行われている。普及した栽培種と比較してかなり硬く、辛味も強い。
    栽培種が野生化した種と考えられていた[12]が、遺伝的研究では日本の栽培種とは差が大きく[15]、栽培種とは全く別の系統に属す可能性が高い。比較検討の結果としては、古い時代にもともとの原産地である地中海沿岸から中国を経由して人間の移動と共に入ってきた野生ダイコンが起源であるとする説が唱えられている。
  • ノダイコン
    日本の福島県会津盆地山形県米沢盆地などでみられる内陸性の自生種。遺伝的に栽培種に近く[15]、野生化したものと見られるが、中国系統と交雑する前の日本在来種とする説がある[19][20]
  • 黒大根 (R. sativus var. niger)
    イタリア種。黒丸大根・黒長大根ともいう[21]。小型で根の表面が黒く内側は。根が長くなる品種と蕪の様に丸い品種がある。丸い品種は肉質が硬くデンプンが多い。花の色は白や紫。肉質は詰まっていて辛味がある。ふつうの大根同様に利用できる[22]加熱するとカブのようにホクホク感がある[21]

なお、アカザ科テンサイ(甜菜)を形状と用途から「サトウダイコン」(砂糖大根)と呼ぶが、テンサイはアカザ科フダンソウ属であるのに対して、大根はアブラナ科ダイコン属とレベルで異なる縁遠い種である。[23]

日本の主な品種

成形図説』より

色が白くクビが青い青首大根が日本で最も多く出ている品種であるが、日本各地には在来種が数多くあり、赤や赤紫の種や、その土地ならではの大根を使った漬物など名産品もある[17]。特に九州南部は独自性が強いとされている。桜島大根や三浦大根、練馬大根などは、サイズが不揃いで流通に不都合な面があったため、全国的に出回る量は少ない[18]

日本の在来種は、1980年の文献[24]には、全国で110品種が記録されているが[25]、都市部の人口集中によって流通が発達したことに伴い、青首大根などの一部の品種が大半を占めるようになり、在来種の衰退が著しい[7]。しかし、練馬、三浦のような長根種から、桜島、聖護院のような丸大根、守口のような特に細長いものや、辛味の強い品種などの特徴がある地方品種が今も守られている[7]

  • 青首大根 - 季節を問わず収穫できるようにした品種[18]。現在の主流品種で、作付面積の98%を占めるともいう。根茎は少し地面から出て、クビとよばれる日に当たったところは淡い緑色をしている[18]。辛みが少なく甘みが強いこと、地上に伸びる性質が強く収穫作業が楽である事などから、昭和50年代に急速に普及した。他の品種はこれに押されて廃れ、郡大根(こおりだいこん)のように絶滅してしまった品種もある。
  • 宮重大根 - 現在主流の青首大根の片親。
  • 細根大根 - 葉の付いた長さ6cm - 8cmの小さな大根[26]
  • 白首大根 - 胚軸が発達しないため、緑色の部分が無い。沢庵漬け用など。
  • 辛味大根 - 見かけはミニサイズのダイコンで、全長15 - 20 cm。辛味が強い特徴を持つ品種。群馬産が多いが[7]、長野や京都の品種もある[17]。大根おろしにして使うのが一般的で、汁気が少なく辛味が非常に強いため、主に蕎麦などの薬味に用いられる[18]
  • 青皮紅心 - 中国産で、心里美(しんりび)とも。皮が白から淡い阿見取り色で、中が紅色のダイコン。直径10 cmほどで、丸形[21]。甘く水気が多いため果実のようにカービングにも利用される。
  • 赤の丸大根 - 中国系の見た目が赤くて丸いダイコン。葉を含めた長さは70 cmほど。水分が少なく、肉質は詰まっていて、煮物や漬物に向く[21]
  • ビタミン大根 - 中国系の小ぶりな青首ダイコンで、青長大根ともよばれる。青首の部分は、中も緑色。サラダや漬物など、生食に向く[21]
  • 葉大根 - 柔らかな葉を食用とするための専用品種で、家庭園芸向け[7]

その他の地方品種・伝統野菜

  • 亀戸大根[27] - 江戸時代から東京・亀戸で作られたというダイコン。先が細く、形は小ぶりで茎が白い[17]。肌はきめ細かく白色で、肉質が緻密[22]
  • レディーサラダ - 三浦市農協により、三浦大根から品種改良した神奈川県三浦市特産の品種[22]。長さは20 cmほどと小型で、中は白く、やや辛味がある。繊維は柔らかく、生のままサラダなどにして使われる[28]
  • 源助大根(打木源助だいこん) - 加賀野菜の一つ。青首系と練馬系から生まれたとされる品種。短く太く、甘味が強く煮崩れしにくいことから、おでんなど煮物に向く[17]。柔らかいため、たくあん漬けには向かない[22]
  • ねずみ大根 - 長野県坂城町の伝統野菜で、栽培地から「なかんじょ(中之条)大根」とも呼ばれる。太い可食部の下に細い根が伸びた姿がネズミに似ていることから、こう呼ばれる。可食部の長さは12 - 13 cm、太さは7 - 8 cm、重さは250 - 300グラム程度と一般的なダイコンより小ぶり。葉の形も特徴的[28]。9月初旬に播種し、が降りる前の11月下旬までに収穫する。辛味が強く、地元では漬物大根おろしに使うほか、しぼり汁につけた「おしぼりうどん」を食す。1999年度に発足した「ねずみ大根振興協議会」が、各家の栽培で、ばらつきが生じていた形・味を安定させるため品種改良し、品種名「からねずみ」として登録した。他の土地で育てると味などが変わってしまうため、種子は協議会会員の30人余に限定して配布。葉を切り落として出荷している[29][30]
  • 聖護院大根 - 京野菜の一つで、カブのような球形が特徴。大きいものは2 kgにもなる[17]。甘味があり、煮崩れしにくいことから、煮物に向く[18]
  • 守口大根 - ゴボウのように細長く長さが2 mにもなり、世界最長。守口漬に使われる。原産地は大阪府守口市だが、現在は名古屋や岐阜の名産[22]
  • 大阪四十日 - 小型種で、根が屈曲して独自の形状になる。主にカイワレダイコンの種子として利用されている。
  • 祝だいこん - 雑煮の具などに使われる奈良県の伝統野菜(大和野菜)。
  • 庄大根 - 愛媛県松山市(旧北条市)原産で、希少品種の赤首大根[31]
  • 女山大根- 佐賀県多久市に伝わる伝統野菜。江戸時代の書「丹邱邑誌」(1847年)にも登場しており、儒学者草場佩川も好物で詩や絵に取り上げた。アントシアニンを含むため赤紫色の表皮を持つ。青首大根より大振りで最大で長さ80㎝、胴回り60㎝、重さ13㎏にもなる。強い甘みが特徴で肉質が硬く煮崩れしにくい[32]。2022年6月29日、GI(地理的表示)登録を取得[33]
  • 紅大根・赤大根(長崎県原産)・紅しぐれ群馬県原産) - 外見は紫系の赤いダイコンで中は白い。ふつうの品種は、直径は8 cm、長さは25 cm程度[17]。群馬県産の赤城しぐれ大根、熊本産の五木の赤大根、長崎産の長崎赤大根などの在来種もある[34]。すり下ろすと紫色の大根おろしになる。甘味があり、サラダや酢漬け[17]千枚漬けのような漬物や大根おろしなどに使われる。
  • 桜島大根 - 鹿児島県桜島特産。ダイコンの中で最も大きい品種で重さ10 - 25 kg、大きいもので30 kgを超える。胴回りが巨大。カブのような甘味があり、肉質は緻密で煮崩れしにくい[35]
  • 沖縄島大根 - 中心が太くずんぐりした形をしている。沖縄では旧正月に酢の物で食べる習慣がある[17]

注釈

  1. ^ 根菜の中身がスカスカな状態になることを、俗に「スが入る」という。

出典

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Raphanus sativus L. var. hortensis Backer” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年7月9日閲覧。
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Raphanus acanthiformis Morel ex Sisley” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年7月9日閲覧。
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Raphanus sativus L. var. longipinnatus L.H.Bailey” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年7月9日閲覧。
  4. ^ 活用しないともったいない!「大根の葉」を使ったお弁当レシピクックパッドニュース/毎日新聞(2019年11月10日配信)2020年1月21日閲覧
  5. ^ 伊沢凡人・会沢民雄『カラー版 薬草図鑑』(家の光協会 ISBN 4-259-53653-2)157ページ
  6. ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 100.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 講談社編 2013, p. 143.
  8. ^ a b 講談社編 2013, p. 138.
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Raphanus sativus L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年7月9日閲覧。
  10. ^ a b c d e 田中孝治 1995, p. 190.
  11. ^ 植物の観察〜根”. 10min.ボックス. NHK. 2012年1月18日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年12月4日閲覧。
  12. ^ a b 西貞夫、「野菜あれこれ(2)」『調理科学』 13巻 2号 1980年 p.111-119, doi:10.11402/cookeryscience1968.13.2_111
  13. ^ a b c d e 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 114.
  14. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 62.
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  16. ^ 世界のダイコン500品種のゲノム情報を公開東北大学プレスリリース(2020年3月27日)2020年4月15日閲覧
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  21. ^ a b c d e 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 117.
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