タンパク質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 01:19 UTC 版)
生体における機能
タンパク質は生物に固有の物質である。その合成は生きた細胞の中で行われ、合成されたものは生物の構造そのものとなり、あるいは酵素などとして生命現象の発現に利用される。また、類似のタンパク質であっても、生物の種が異なれば一次構造が異なることは普通である。タンパク質はアミノ酸が多数結合した高分子化合物であるが、人工的な高分子のように単純な繰り返しではなく、順番がきっちりと決定されている。これは、そのアミノ酸の種と順番がDNAに暗号で記述されていることによる。遺伝子暗号は往々にしてその形質に関係するタンパク質の設計図であると考えられる(一遺伝子一酵素説)。エンゲルスは「生命はタンパク質の存在様式である」と言ったが、故のないことではない。
タンパク質の生体における機能は多種多様であり、たとえば次のようなものがある[13]。
- 酵素タンパク質
- 代謝などの化学反応を起こさせる触媒である酵素[14]。細胞内で情報を伝達する多くの役目も担う[15]。
- 構造タンパク質
- 生体構造を形成するタンパク質:コラーゲン、ケラチンなど
- 輸送タンパク質
- 何かを運ぶ機能を持つ種類で、酸素を運ぶ赤血球中のヘモグロビンや血液中に存在し脂質を運ぶアルブミン、コレステロールを運ぶアポリポタンパク質などが当たる[15]。
- 貯蔵タンパク質
- 栄養の貯蔵に関与するタンパク質であり、卵白中のオボアルブミンや細胞中で鉄イオンを貯蔵するフェリチンやヘモシデリンなどである[15]。
- 収縮タンパク質
- 運動に関与するタンパク質。筋肉を構成する筋原繊維のアクチン、ミオシンなど。細長いフィラメントを構成し、互いが滑りあう事で筋肉の収縮や弛緩を起こす[13]。
- 防御タンパク質
- 免疫機能に関与する種類であり、抗体とも言われる。B細胞によって作られるグロブリンがこれに当たる[15]。
- 調節タンパク質
- DNAのエンハンサーと結合して遺伝発現を調整するタンパク質や、細胞内でカルシウムを使って他のたんぱく質の働きを調整するカルモジュリンなどが当たる[15]。
その他、よく知られたタンパク質に下村脩が発見した蛍光に関わる提灯形状のタンパク質であるGFP[9]やRFPなどがある。特定波長域の励起光を受けると蛍光を発する。一部の生物(オワンクラゲ, スナギンチャクなど)にみられる。
これらのタンパク質が機能を発揮する上で最も重要な過程に、特異的な会合(結合)がある。酵素および抗体はその基質および抗原を特異的に結合することにより機能を発揮する。また構造形成、運動や情報のやりとりもタンパク質分子同士の特異的会合なしには考えられない。この特異的会合は、基本的には二次〜四次構造の形成と同様の原理に基づき、対象分子との間に複数の疎水結合、水素結合、イオン結合が作られ安定化することで実現される。
注釈
出典
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- ^ 武村(2011)、p.3-6、はじめに
- ^ a b 生化学辞典第2版、p.812 【タンパク質の一次構造】
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- ^ a b 生化学辞典第2版、p.812 【タンパク質の三次構造】
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