タレント政治家 公的場面での芸名(通名)使用

タレント政治家

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/24 09:39 UTC 版)

公的場面での芸名(通名)使用

日本では国会議員は国民の代表として立法に参画して行政にもの申す立場であり、行政機関の一員ではないため通名使用が認められている(ただし、参議院議員芸名通名使用が認められたのは1997年の事である[8])が、国務大臣行政府の役職に任ぜられた場合は、議員としての立場とは別に行政機関の一員として公文書を発し、時に大臣等の肩書きで国民の権利・義務・許認可を左右することがあるため、責任明確化の観点から芸名の使用は認められていない。

このため、閣僚として入閣したタレント議員は、行政府の公文書に対しては本名で署名する事となっている。例えば、元参議院議員扇千景国土交通大臣国務大臣)としての公文書には本名の「林寛子」で署名をしていたが、このような規定のない参議院議長としての公文書には芸名(通名)の「扇千景」で署名をしていた。

東国原英夫宮崎県知事の場合は、選挙の際には芸名(そのまんま東)としたものの、公的には使いづらいと判断し、知事就任後は本名を用いている(政界引退後も本名で活動)。一方、知事就任後も公文書を除いて芸名を使用している(いた)例としては、横山ノック大阪府知事(本名・山田勇)と森田健作千葉県知事(本名・鈴木栄治)の例があるが、『全国市町村要覧』では、前者は本名を掲載していたのに対し、後者は芸名を掲載している。

タレント活動

日本の場合、有名人が選挙への立候補を表明した時点で、公職選挙法放送法の規定から派生したメディア側の自主規制により、選挙終了まで各メディアでのタレント活動ができなくなるのが一般的である。ニュースや選挙関連の番組を除いて、テレビ、ラジオへの出演はできなくなり、雑誌や新聞での連載等も中断される。

横山ノックが司会を務めた「ノックは無用!」(関西テレビ)では、選挙期間中は本人が番組を降板するのみならず、番組のタイトルも「ロックは無用!」に改題されていた。義家弘介が担当していた「ヤンキー先生!義家弘介の夢は逃げていかない」(ニッポン放送)は公示期間中放送休止になっていた。

当選した場合、タレント活動を継続するかどうかはその者の判断による。議員の兼職自体が禁じられているわけではなく、他の職業の者であってもそれまでの仕事を継続する者も少なくないが、タレント政治家の場合はその仕事が世間に露出するものであることから、しばしば論議の的となる。

山東昭子が1987年に参議院環境特別委員長を務めていた時、テレビ東京のゴルフ番組「ゴルフだよ人生は」の収録で公害健康被害補償法の審議を欠席したため、政治職務よりタレント活動を優先したと非難され、委員長辞任に追い込まれた例がある。

橋本聖子1996年に現職参議院議員としてアトランタオリンピックの自転車競技に出場している。2010年のバンクーバーオリンピックでは、国会会期中ながら日本選手団団長として現地入りした。2010年の参院選で当選した柔道選手の谷亮子は、立候補表明時に議員活動と現役選手を両立させ、次回オリンピック出場を目指すと明言し、賛否両論が巻き起こった(当選後に政治職務に専念し、次回のオリンピックに出場しないことを表明した)。一方で、同じ選挙に自民党から出馬した女優の三原じゅん子は、当選した場合は女優を引退すると表明し、これを受けて、当選後は各メディアでは「元女優」などと表記されている(ただし例外として2011年3月に放送されたテレビドラマシリーズ「3年B組金八先生」の最終回で過去の出演者達が卒業生として勢揃いで集合する場面では卒業生の一人として特別出演した)。

プロレスラーではアントニオ猪木スポーツ平和党を結成し第15回参議院議員通常選挙に比例区から初当選し、馳浩第17回参議院議員通常選挙で参議院議員となったが、のち本格的に政治家に転身することとなり衆議院に転出、プロレスラーも引退した(後に2006年8月27日に両国国技館引退試合を行っている)、第19回参院選では大仁田厚が比例区で出馬し当選、第20回参院選では神取忍が繰上げ当選、木村健悟(引退後)・西村修土方隆司第17回統一地方選挙でそれぞれの議会に立候補し初当選した。

覆面レスラーが地方議員になった場合、覆面姿のまま議会に入場しようとすると「病気などの理由を除き、帽子やコートの着用」を禁じた議会会議規則に抵触すると判断される可能性がある。過去に覆面レスラーが地方議員になった例として、ザ・グレート・サスケ(岩手県議)、スペル・デルフィン(和泉市議)、スカルリーパー・エイジ(大分市議)があるが、サスケとデルフィンは議会の別室で素顔の本人確認をすること等を条件に覆面姿の議場入場は認められたが、エイジは覆面姿での議場入場は認められなかった。

公営競技の現役選手で政界に進出した例としては、競輪選手で徳島県小松島市議である米崎賢治の例がある[9]

世界におけるタレント政治家

国家元首となった芸能分野の出身者は、アメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガンフィリピン大統領ジョセフ・エストラーダが知られる。レーガンは任期満了後政界を引退したが、エストラーダは大統領辞任後も政治活動を続け、2013年にはマニラ市長に当選している。また2015年10月、グアテマラの大統領選挙において元コメディアンジミー・モラレスが当選した。2003年から2011年までカリフォルニア州知事を務めたアーノルド・シュワルツェネッガーは在職中も映画カメオ出演するなど一定の芸能活動を続けていたが、退任後は俳優業を再開し、就任前同様に映画主演も行っている。また、クリント・イーストウッド元カリフォルニア州カーメル市長は俳優や監督を続けている。イギリスでは下院議員を務めた作家のジェフリー・アーチャーが、一旦政界を引退して文筆活動に戻った後、再び政界に復帰している。2019年ウクライナ大統領選挙では、コメディアンのウォロディミル・ゼレンスキーが出馬し当選した。スロベニアでは、コメディアン出身のマリヤン・シャレツが首相に就任、アイスランドのスタンダップコメディアンのヨン・ナールは首都レイキャビクの市長になり、アルメニアでは人気コメディアンのハイク・マルチアンが首都エレバンの市長になった[10]

自由選挙制度が行われない体制である国家においても、政治任用によってタレントが政治的役職に就くこともある。中華人民共和国中国人民政治協商会議には、スポーツ関係者枠や文化芸術枠が存在し、映画監督のチャン・イーモウや女優のコン・リーなどが委員になっている。また、元タレントである権力者の配偶者が、政治的な役割を果たすことも多い。フアン・ペロン夫人であったエバ・ペロン毛沢東夫人であった江青が特に知られている。

スポーツ選手ではリベリア出身のサッカー選手であるジョージ・ウェアが2017年に同国の大統領に当選し、ブラジルのサッカー選手であるペレが1995年から3年間スポーツ大臣をつとめていた。アメリカ合衆国の元プロレスラージェシー・ベンチュラは1990年にミネソタ州ブルックリンパーク市長に当選し、1998年から2002年までミネソタ州知事を務めた。阪神タイガース三冠王など活躍したランディ・バースはロートン市議員を経て、オクラホマ州上院議員に当選している。元力士の旭鷲山小結)は母国モンゴル国民大会議議員に当選している。元力士で引退後日本でタレント活動をしていた把瑠都大関)は、母国エストニアの国会(リーギコグ)の総選挙に出馬し、一旦は落選したものの繰り上げ当選している。

また現役のスポーツ選手が政治家となった例では、ロシアのレスリング選手であるアレクサンドル・カレリンが2000年に現職国会議員としてシドニーオリンピックのレスリング競技に出場し銀メダルを獲得したことがある。同じくロシアのフィギュアスケート選手エフゲニー・プルシェンコ2007年3月、サンクトペテルブルク立法議会議員に当選し、2011年バンクーバーオリンピックのフィギュアスケート男子シングルに出場し銀メダルを獲得している。しかしプルシェンコは当選後も競技続行の妨げになるとしてサンクトペテルブルク立法議会へは殆ど出席していなかったため批判の声も上がった。2014年ソチオリンピックの招致活動に地方議員として参加するなどしたものの、議会内活動はほとんどできないまま2011年12月、ソチオリンピックへの出場を目指して競技に専念し政治活動を断念する意向を表明。所属政党を離党した。翌年の任期満了をもって政界を引退している。クロアチアの格闘家のミルコ・クロコップは現職国会議員時代に試合を組んでおり、来日もしている。


  1. ^ 子爵議員は互選であり、黒田は有力者への接待として絵画を贈っていたようである。内藤一成「貴族院」同成社、P76。
  2. ^ 矢野誠一 「タレント議員第一号・石田一松」『さらば、愛しき藝人たち』、矢野誠一、文藝春秋1985年、121-135頁。
  3. ^ 川端要壽「下足番になった横綱」P190、2003年1月1日文庫版初版、小学館文庫(初出1996年)
  4. ^ 三浦博史「ネット選挙革命」(PHP研究所)
  5. ^ 『「お笑い票」の行方は?』産経新聞の2008年1月18日ネット掲載記事
  6. ^ 『タレント票 各党「脅威」 Newsプラス 大阪のタレント票』毎日新聞2010年4月14日大阪版記事
  7. ^ 過去に愛媛1区にて衆議院議員1回当選
  8. ^ 議員について:よくある質問:参議院 参議院公式サイト
  9. ^ 現役オートレーサー梅内幹雄が船橋市議選に立候補 ニッカンスポーツ 2015年3月29日
  10. ^ “イタリア、ウクライナ、グアテマラ......お笑い芸人が政治を支配する日”. (2019年3月13日). https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/03/post-11836.php 2019年4月22日閲覧。 
  11. ^ “このハゲー!”豊田真由子、“炎上芸”上西小百合……「元議員タレント」はありかなしか週刊文春2020年4月22日


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