タミル語 地域

タミル語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/04 00:04 UTC 版)

地域

南インドのタミル・ナードゥ州で主に話されるほか、ここから移住したスリランカ北部および東部、マレーシアシンガポールマダガスカル等にも少なくない話者人口が存在する。

これらはいずれもかつてインド半島南部に住んでいたタミル人が自ら海を渡ったり、あるいはインドを植民地化した英国人がプランテーションの働き手として、彼らを移住させた土地である。

スリランカには人口の約10%を占めるイスラム教徒、スリランカムーア人が存在するが、彼らの母語もタミル語である。

歴史

タミル語はドラヴィダ語族の中で書かれた言語としては最も古く、現在残る文献の最も古いものの起源は紀元前後までさかのぼるといわれる。

文字

現代タミル語は、主として独自の文字であるタミル文字で表記される。詳しくはタミル文字の項目を参照のこと。

  • 母音字
母音字
翻字 (ISO 15919) a ā i ī u ū e ē ai o ō au
IPA [ʌ] [ɑː] [i] [iː] [u], [ɯ] [uː] [e] [eː] [ʌj] [o] [oː] [ʌʋ]

上記の母音単独で用いる文字のほか、子音字に結合する母音記号がある。

  • 子音字
子音字
翻字 (ISO 15919) k c ñ t n p m
IPA [k], [ɡ], [x], [ɣ], [h] [ŋ] [t͡ʃ], [d͡ʒ], [ʃ], [s], [ʒ] [ɲ] [ʈ], [ɖ], [ɽ] [ɳ] [], [], [ð] [n] [p], [b], [β] [m]
子音字
翻字 (ISO 15919) y r l v
IPA [j] [ɾ] [l] [ʋ] [ɻ] [ɭ] [r], [t], [d] [n]

なお、イスラム教徒は、かつてタミル語をアラビア文字で書き記していた(arwiを参照)。現在はイスラム教徒もタミル文字を使用している。

発音

タミル語はa, i, u, e, oの5つの母音があり、それに長短の別と二重母音(aiとau)が加わることで計12の母音が区別される。

タミル語の子音は以下のとおりである[1]

唇音 歯音 歯茎音 そり舌音 歯茎硬口蓋音 軟口蓋音 声門音
鼻音 m n ɳ ȵ (ŋ)
破裂音 p ʈ k
破擦音 t͡ɕ
摩擦音 f[音 1] s[音 2] (z)[音 1] ʂ[音 1] ɕ[音 2] x[音 3] ɦ[音 3]
はじき音 ɽ
ふるえ音 r
接近音 ʋ ɻ j
側面接近音 l ɭ

インド・アーリア語派の諸言語と異なって有気音無気音を区別しないだけでなく、有声音無声音の間の対立もない。ただ単語の先頭や同子音が重なった場合に無声音に発音され、母音間や同器官的鼻音の後では有声音で発音される傾向がある。

日本語を母語とする者にとって習得が難しいとされるものに、そり舌音がある。また流音に5種の区別(r /r/, l /l/, /ɽ/, /ɭ/, /ɻ/)、鼻音にも4種の区別がある。その一方で、日本語では音韻的に区別される子音が異音になっている場合がある。

タミル語の異音
位置 語頭 重子音 母音間 鼻音の後
軟口蓋音 k x~∅ ɡ
硬口蓋音 tɕ~s tːɕ s
そり舌音 ʈː ɽ ɖ
歯茎音 t̪ː r r
歯音 ð
唇音 p β~w b

  1. ^ a b c f と ʂ は借用語にのみ表れ、固有語の音で置き換えられることが多い
  2. ^ a b sɕ は方言によっては t͡ɕ の異音である
  3. ^ a b xɦ は方言によっては h の異音である
  1. ^ Keane, Elinor (2004). “Tamil”. Journal of the International Phonetic Association 34 (1): 111–116. 
  2. ^ マイナーな言語を扱う出版社の一例とされる白水社でも、2012年12月刊行の『ニューエクスプレス タミル語』が唯一である(白水社公式ホームページより。また、大学書林においてはタミル語関連書籍は一点も刊行されていない(大学書林公式ホームページより)。






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