タイミングベルト タイミングベルトの概要

タイミングベルト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/13 02:25 UTC 版)

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タイミングベルト

概要

エンジンの動作周期の中で「点火」や「バルブの開閉」等々が適切な時期に起きるようにするために、クランクシャフトカムシャフトの回転周期を一致させる役割を果たしているベルトを指す。 タイミングベルトはクランクシャフトとカムシャフトをプーリーを介して繋いでいる。カムシャフトとクランクシャフトの回転を同期させるために、滑りのない、歯が付いたコグドベルトが使用される。エンジンによってはカムシャフトに加えてオイルポンプやウォーターポンプを駆動するためにも使用される。

タイミングベルトは温度が高くなるエンジンで長期間に渡って使用されるわけなので、耐熱性・耐久性が求められる。ゴム樹脂としては耐熱性に優れた水素添加ニトリルゴム(HNBR)などが使用される。ベルト歯は表面をナイロンなどの歯布で保護されており摩擦を低減し摩耗を防ぐ役割がある。ベルトは高張力繊維(ガラス、アラミドなどの長繊維)をより合わせた芯線で補強され伸びを防いでいる。 通常ベルトは引っ張り負荷が加わる側(テンションサイド)、と逆の圧縮負荷側(スラックサイド)に分かれる。 テンショナープーリーはスラック側に装備さればねや油圧ダンパを用いてベルトの張力を適切に調節する。さらに共振、ノイズ低減や位置調節などのためのアイドラープーリーなどが装備される場合が多い。通常ゴミやオイルの付着を防ぐために金属や樹脂製のカバーで保護されている。

エンジン動作中にベルトが破損すると、エンジンの構造によっては深刻な損傷が生じる可能性が高い。特にインターフェアレンスエンジン[1]ではベルトの破損時にはバルブピストンが衝突するなど深刻な損傷(エンジン故障)に繋がる恐れがある。[2] [主にホンダのE07Aエンジン、ディーゼルエンジンではそのような機構が多いために、タイミングベルト【T-BELT】警告灯が点くほど]。

そのため、タイミングベルトは製品ごとに「交換時期」「交換距離」がメーカーによって指定されており、その指定の年月がたったり指定の距離数を走った場合は交換すべきものだとされている。

タイミングチェーンと並び取って代わる存在となっていたが2000年代以降チェーンの改良により、新型のエンジンでタイミングベルトを使用する例は少なくなっていた。しかしながら2010年代に入り自動車の燃費向上への要求が高まる中、摩擦損失(フリクションロス)の少ないタイミングベルトが高耐久化など性能向上も進む中で見直されており、燃費を重視した新型の小排気量ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでのタイミングベルトの採用が復活している[3]

油中式(湿式)

チェーンと同じ雰囲気下で使用されるもので、従来のベルトに比べ高い耐久性がありチェーンに比べ摩擦損失が少なく省燃費性に有利となる。チェーンからの置き換えも容易で、2008年に自動車向けで初採用となったフォードの1.8L Duratorq-TDCi (Lynx)ディーゼルエンジンは従来のタイミングチェーンをベルトとプーリーに置き換えている[4]。 耐久性ではプジョー208の1.0Lエンジンではメーカー指定の交換時期は18万キロ、10年で[5]、部品メーカーでは寿命は24万キロをうたっている[6]。 自動車以外では1990年代以降よりホンダ製の汎用小型4ストロークSOHCガソリンエンジンを採用した発電機やごく一部の刈払い機などで油中式タイミングベルトが使用されている[7][8]。 また、日本メーカーの場合では2010年代以降に開発されたホンダのP10A型直列3気筒DOHC12バルブガソリンターボエンジンに油中式タイミングベルトが採用されている。

歴史

DOHCでの使用例
コスワースBDR
コグドベルトとタイミングプーリー

レシプロエンジンの主流がSVOHVであった時代は、カムシャフトクランクシャフトの側にあり、クランクシャフトからギアを介して直接駆動する方式が一般的であった。その後、バルブ追従性を改善する目的で、カムシャフトの位置をシリンダーヘッドに近づけ、プッシュロッドを短くした、ハイマウントカムシャフトが実用化された。その際、カムシャフトの駆動に、それまで一部のレーシングカースポーツカーDOHCに使用が限られていたローラーチェーンが用いられるようになる。これにより、クランクシャフトから離れた場所に動弁系を配置することが容易となった。しかしこの頃のチェーンは、ピッチが粗く騒音が大きく、正確な制御に不向きな面もあり、また、伸び、調整を怠ると、タイミングがずれる欠点もあった。

自動車向けコグドベルト(歯付きベルト)は、米国ユニロイヤル (現ゲイツラバー)のリチャード・ケースが、1945年に開発した。しかし、1950年代までの、OHVエンジンが主流の市場では普及する機会はなかった。量産車に導入されたのは遙かに下り、1962年にドイツのグラース社が発売した小型乗用車、「グラース1004S」の直列4気筒1000 cc・SOHCエンジンであった。

以後、時を同じくして一般車用エンジンにSOHC方式が広まり始めたことから、コスト、騒音、潤滑、タイミング精度の問題を一気に解決できるベルト駆動方式が普及し、多数のエンジンに採用された。タイミングベルトは1970年代から2000年頃まで、SOHC・DOHCのカムシャフト駆動の中心的役割を担っていた。

その後、ベルトの寿命や耐久性を理由とした信頼性の低さと、エンジンの小型化、スリム化に対応できないベルトの幅の広さから、ベルトに見切りをつけるメーカーが現れた。ローラーチェーンの改良による「コマ」の小型化、低騒音化の実現により、1990年代末頃からは再びローラーチェーン(タイミングチェーン)を採用するエンジンが現れ、2000年代以降主流となった。

ベルト側の耐久性向上も常に図られ続けている。ベルトの歯型形状は初期の台形状から、時代が進むにつれ応力が集中しないように解析して改良が進められている。また、ベルト自体の材質・構造も進化し、切れにくいように工夫されている。日本車の場合、1990年代後半には国内10年10万 km/北米10年16万 km(トヨタの例)程度まで交換不要のベルトも生まれていた。 芯線では素材に従来のEガラスからより高性能なガラス素材を使用するなどでの耐久性の向上が図られている。 ベルト幅についても従来の16 - 20 mmから12 mm、10 mmなどへのコンパクト化が試みられており、オイルポンプ用ベルトではチェーン同等の9 mmでの実用例も見られる[9]




  1. ^ ピストンの可動域と、バルブの可動域が干渉する構造
  2. ^ ベルトが断裂するとタイミングがずれるため、上昇したピストンヘッドと解放中のバルブ傘部が衝突(バルブクラッシュ)する。逆に、バルブリセスを深く取る事で圧縮比の上昇に制約が生じたり、バルブタイミングの可動範囲が制限されるリスクを取ってでも、干渉を避けた設計のエンジンはノンインターフェアレンスと呼ばれ る。
  3. ^ http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20130125/262367/
  4. ^ http://papers.sae.org/2012-01-1750/
  5. ^ http://www.servicing.peugeot.co.uk/media/deliacms/media/45/4504-09afda.pdf
  6. ^ http://www.contitech.de/pages/presse/messen-veranstaltungen/pr-messen/2013/130910_iaa_03/presse_en.html
  7. ^ http://ww2.gates.com/europe/file_save_common.cfm?thispath=Europe/documents_module&file=GATES_HOT_OIL_WET_BELT_SYSTEM_TECHNOLOGY.pdf&location_id=6105
  8. ^ http://www.honda.co.jp/news/2002/p020422-gx25.html
  9. ^ http://www.contitech.de/pages/presse/messen-veranstaltungen/pr-messen/2013/130910_iaa_03/presse_en.html





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