ソクラテスの弁明 ソクラテスの弁明の概要

ソクラテスの弁明

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/07 20:42 UTC 版)

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歴史的背景

ペロポネソス戦争アテナイスパルタに敗北後の紀元前404年、アテナイでは親スパルタの三十人政権が成立し恐怖政治が行われた。三十人政権は一年程度の短期間で崩壊したが、代わって国の主導権を奪還した民主派勢力の中には、ペロポネソス戦争敗戦や三十人政権の惨禍を招いた原因・責任追及の一環として、ソフィスト哲学者等の「異分子」を糾弾・排除する動きがあった。

ペロポネソス戦争において致命的な働きをしたアルキビアデスや、三十人政権の主導者であったクリティアス等と付き合いがあり、彼らを教育した師であるとみなされていたソクラテスも、その糾弾・排除対象の一人とされた[注釈 1]。特にソクラテスが「神霊(ダイモニオン)」から諭しを受けていると公言していたことが、「新しい神格を輸入した」との非難の原因となった[2]。こうしてソクラテスは、「国家の信じない神々を導入し、青少年を堕落させた」として宗教犯罪である「涜神罪」(神を冒涜した罪)で公訴され[3]紀元前399年初頭に裁判が行われることになった。本篇はその場面を題材とする。

この告発に対しソクラテスは全面的に反論し、いささかの妥協も見せない。その結果ソクラテスには死刑が宣告された。

死刑宣告された後のソクラテスは、牢屋に約30日拘留された後、刑執行によって毒ニンジン杯を飲んで死亡する(参照:『クリトン』『パイドン 』)が、ソクラテスの刑死から6年後の紀元前393年に、ソフィスト・弁論家であるポリュクラテスが、『ソクラテスに対する告発』という、アニュトスの法廷告発文を脚色した作品を発表しており、本作のプラトンによる『ソクラテスの弁明』や、クセノポンによる『ソクラテスの弁明』、またクセノポンの『ソクラテスの思い出』第1巻の冒頭の内容などは、直接的にはその作品に対する対抗措置という意味合いが強い[4]

構成

登場人物

(告発者は計3名であり、メレトスの他には、手工者・政治家代表のアニュトス英語版古希: Ἄνυτος)、演説家代表のリュコン(古希: Λύκων)の2名がいるが、彼らは本編では話者として登場することはない。アニュトスは、初期末の対話篇『メノン』に話者として登場する。)

時代・場面設定

紀元前399年アテナイ民衆裁判所。500人の市民陪審員を前に、ソクラテスに対する告発者であるメレトスらが論告求刑弁論を終え、それを受ける形でソクラテスが自身に対する弁護・弁明を開始するところから、話は始まる。

途中、「無罪有罪決定」投票、「刑量確定」投票の2回の投票を挟み、それを受けてソクラテスが聴衆に向かって最後の演説をする場面までが描かれる。

特徴

プラトンの著作の多くは対話篇(ダイアローグ)だが、この『ソクラテスの弁明』は、その性格上、途中メレトスとのわずかな質疑応答が挿入される他は、全てソクラテスの一人語り(モノローグ)となっている。

文量は、例えば岩波文庫の訳書[5]では55ページ程度と、他の多くの初期著作と同様に少なく、簡素な仕上がりとなっている。


注釈

  1. ^ ただし、イソクラテスによれば、彼らとの交際に対する非難は実際の裁判では言及されておらず、6年後に発表された弁論家ポリュクラテスの作文『ソクラテスに対する告発』ではじめて持ち出されたものだったとされる[1]
  2. ^ ソクラテスが直接デルポイの神託所に赴いてそれを聞いたのではなく、彼の友人であり熱烈な信奉者でもあったカイレポンから聞かされた伝聞である。
  3. ^ ソクラテスはペロポネソス戦争に関連する3つの戦い、ポティダイアの戦いアンフィポリスの戦い、デリオンの戦いに従軍・奮闘したことが知られている。

出典

  1. ^ 『ソクラテスの思い出』岩波文庫 佐々木理 p6[要文献特定詳細情報]
  2. ^ ソクラテスの思い出クセノポン 1巻1章[要文献特定詳細情報]
  3. ^ エウテュプロン
  4. ^ 『ソクラテスの思い出』岩波文庫 pp.5-7
  5. ^ 『ソクラテスの弁明・クリトン』 久保勉岩波文庫
  6. ^ 参考: 『ソクラテスの弁明・クリトン』 久保勉訳 岩波文庫
  7. ^ 岩波書店 全集1 p101、岩波文庫pp109-110
  8. ^ 岩波文庫p.109では、「黒と白の石票で投票が行われた」と書かれているが、アリストテレスの『アテナイ人の国制』第68章に、当時はψῆφοιという専用の投票用具を用いていたことが説明されているため、岩波文庫のその記述は誤りである。
  9. ^ 岩波文庫pp110-111
  10. ^ 『ソクラテスの弁明・クリトン』久保勉訳 岩波文庫 p126


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