セルビア・クロアチア語 音韻

セルビア・クロアチア語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/07 15:21 UTC 版)

音韻

母音

セルビア・クロアチア語の母音三角形

/i/, /e/, /a/, /o/, /u/ の5つの母音がある。加えて音節核となる「母音的なr」が存在し、これらはそれぞれが長母音にも短母音にもなりうる[11]。イェ方言のクロアチア語には、2重母音/ie/がある[18]。長母音は短母音の約2倍の長さで、音質は変わらない[19]。母音の長短が音調と組み合わさってアクセントを構成する[20]

ヤットと呼ばれるスラブ祖語のěに対応する音は地域的に大きく異なる。シト方言のうち、イ方言では/i/が、エ方言では/e/がそれぞれ対応する。イェ方言では短音節において/je/が、長音節において/ije/が対応する。ただし子音+/r/+/je/の連続が一つの形態素にあるときは、/e/となる。チャ方言ではイ方言、エ方言、スラブ祖語での歯音+後舌母音の前においては/e/でありそれ以外の場合は/i/となるイ方言とエ方言の混合の3種が見られる。カイ方言では、[e][e̞]が対応することが多い。[21]

子音

子音音素の一覧[22][注 3]
両唇音 唇歯音 歯音 歯茎硬口蓋音 硬口蓋音 軟口蓋音
破裂音 p, b t, d k, g
摩擦音 f,v s, z š, ž h
破擦音 c č, dž ć, đ
鼻音 m n nj
側面音 l lj
ふるえ音 r
わたり音 j

/p/, /b/, /f/, /t/, /d/, /c/, /s/, /z/, /ć/, /đ/, /č/, /dž/, /š/, /ž/, /k/, /g/, /h/, /m/, /n/, /n/, /nj/, /l/, /lj/, /r/, /v/, /j/の25個の子音がある[23]。このうち、/j/, /lj/, /nj/, /ć/, /đ/ は軟音(硬口蓋化音)、その他は硬音(非硬口蓋化音)である[3]

/f/は有声子音の前において[v]と発音される。/c/は有声子音の前で[d͡z]。/h/は有声子音の前において[ɣ]と発音される。それ以外の場合は[x]。/m/は/v/の前では[v]と発音される。/n/は/k/, /g/の前では[ŋ]と発音される。/v/には[ʋ]の自由異音がある。/j/は母音間において、後続母音が/i/,/e/の時非常に短い[i˘]と発音される[24]

(/p/と/b/) などの有声子音と無声子音のペアは子音交代を起こすが、(/f/と/v/) のみ交代しない[23]

アクセント

アクセント記号
長母音 短母音
上昇 é è
下降 ȇ ȅ

音楽的アクセントを持ち、上昇長母音、下降長母音、上昇短母音、下降短母音の4種類が区別される[3]

アクセントを持たずに前後の語に続けて発音される接辞を除けば、すべての語にアクセントがある。下降アクセントはほぼ先頭音節においてのみ現れ、特に単音節語はかならず下降アクセントをもつ。上昇アクセントは最終音節以外のどの音節にも現れうる[25][26]

長母音においてはピッチの上昇・下降が見られるものの、短母音においては上昇・下降ははっきりしていない。短母音においては、続く音節との関係によって区別される。上昇短母音の次の音節はアクセントがある音節より高く発音された後下降する。下降短母音の次の音節はアクセントがある音節よりもずっと低く発音される。この次に来る音節との関係は長母音でも見られる[27]

統計的には第一音節にアクセントがある語が66%、第二音節が25%、第三音節が6.7%、第四音節が1.6%である[25]

音交代

交代する子音対
無声 有声
p b
t d
k g
s z
š ž
ć đ
č

有声子音と無声子音が連続すると、後ろの子音の特徴が前の子音に影響し、前の子音が交代する。これは規則的で、語中においては基本的に綴りに反映される。語が連続して発音されるときにも交代するが、その場合は綴りは変わらない[28]




出典

  1. ^ 『実用ユーゴスラビア語入門―文法・日常会話・単語集』(戸部実之泰流社、1993年)
  2. ^ a b c 亀井孝河野六郎千野栄一編著 三省堂『言語学大辞典 第2巻 世界言語編(下-1)』1992年 p.475
  3. ^ a b c d e 栗原, 成郎 (1989), “セルビア・クロアチア語”, in 亀井孝; 河野六郎; 千野栄一; 西田龍雄, 言語学大辞典 第2巻 世界言語編 中 さ-に, 三省堂, pp. 474-477, ISBN 4385152152 
  4. ^ a b Katičić 1984, p. 264.
  5. ^ Browne 1993, p. 382.
  6. ^ a b Sussex & Cubberley 2006, pp. 505-506.
  7. ^ Sussex & Cubberley 2006, p. 506.
  8. ^ Sussex & Cubberley 2006, p. 72-75.
  9. ^ a b 三谷 2011, p. 138.
  10. ^ a b Sussex & Cubburley 2006, p. 73.
  11. ^ a b Browne 1993, p. 308.
  12. ^ Comrie 2013b, p. 737.
  13. ^ Comrie 2013a, p. 703.
  14. ^ Comrie 2013a, p. 702.
  15. ^ 三谷 2011, p. 139.
  16. ^ a b Comrie 2013a, p. 709.
  17. ^ 三谷 2011, p. 150.
  18. ^ 三谷 1997, p. 3.
  19. ^ 中島由美、野町素己著 白水社『ニューエクスプレス セルビア語・クロアチア語』 2010年 p.13
  20. ^ 三谷 1997, p. 4.
  21. ^ Browne 1993, p. 309.
  22. ^ Browne 1993, p. 310.
  23. ^ a b 三谷 1997, p. 5.
  24. ^ 三谷 1997, pp. 6-7.
  25. ^ a b 三谷 1997, p. 9.
  26. ^ Browne 1993, p. 311.
  27. ^ Browne 1993, pp. 311-312.
  28. ^ 三谷 1997, p. 14.
  29. ^ 中島由美著 白水社 『エクスプレス セルビア・クロアチア語』 1987年 p.39

脚注

  1. ^ * は再建形を表す。
  2. ^ カイ方言では/e/となる。
  3. ^ 2つ並んでいる場合は、左が無声音、右が有声音である。






固有名詞の分類

セルビアの言語 ボスニア語  セルビア語  ゴーラ語  ハンガリー語  セルビア・クロアチア語
クロアチアの言語 カイ方言  セルビア語  イタリア語  ハンガリー語  セルビア・クロアチア語
モンテネグロの言語 モンテネグロ語  クロアチア語  ボスニア語  セルビア語  セルビア・クロアチア語
コソボの言語 トルコ語  ボスニア語  セルビア語  ゴーラ語  セルビア・クロアチア語
ボスニア・ヘルツェゴビナの言語 クロアチア語  ボスニア語  ボスニア語版ウィキペディア  セルビア語  セルビア・クロアチア語
マケドニア共和国の言語 トルコ語  マケドニア語  アルーマニア語  ゴーラ語  セルビア・クロアチア語
スロベニアの言語 スロベニア語  イタリア語  ハンガリー語  セルビア・クロアチア語

英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「セルビア・クロアチア語」の関連用語

セルビア・クロアチア語のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



セルビア・クロアチア語のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのセルビア・クロアチア語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 GRAS Group, Inc.RSS