セダン
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モータースポーツ
サーキットレース
自動車競技ではセダンは古くからクーペに準ずる存在であったが、1960年代の日本グランプリや1970年代のTSと呼ばれる特殊ツーリングカー(マイナーツーリングカー)[39]、1980年代のグループA規定によるJTC(全日本ツーリングカー選手権)などのプロフェッショナル向けのツーリングカーレースはいずれも2/3ドアのクーペ・セダンがメインであった。これは国際レースも大同小異であった。
4/5ドアが初めて主役となったのは、グループAが終焉を迎え、「クラス1」/「クラス2(スーパーツーリング)」がFIA(国際自動車連盟)の規定として導入された1990年代である。当時どのメーカーも豊富にラインナップしていたセダンを自由な改造できるこの2つの規定は、一時的に世界中で多数のメーカーが参加した。しかし短期間でコストが高騰しすぎてしまい、90年代を終える頃にはどのカテゴリも下火になってしまった。日本のJTCC(クラス2)もわずか4年で消滅し、国内最高峰はクーペがメインのJGTC(全日本GT選手権)に取って代わられて現在に至っている。
この反省を活かしたFIAは2000年に、量産4座席車両を従来より安価に改造する「スーパー2000」規定を施行。これはクラス1/クラス2よりは長命となり、WTCC(世界ツーリングカー選手権)をはじめ世界各国で用いられたが、公平な開発競争とコスト抑制のバランスを取るのが難しく、年を減るごとにワークスとして参戦したいというメーカーは減り、プライベーターがメインとなっていった。
2015年にグループGT3の成功に倣い性能調整(BoP)を用いて戦闘力均衡を図る、プライベーター向けのFFセダンによる「TCR」規定が施行された。TCRはGT3同様多くのメーカーを呼び寄せたため、2018年にこれを用いたWTCR(世界ツーリングカーカップ)がWTCCの消滅と入れ替わりにツーリングカーレースの最高峰に就いているが、世界選手権からは格下げとなってしまっている。
2021年現在はTCRのほかに、BTCC(英国)、スーパーTC2000(アルゼンチン)、CTCC(中国)といった以前から存在している地域ツーリングカーレースも、セダンによって最高峰クラスが争われている。また下位クラスや草レースも含めれば、セダンの参戦可能なカテゴリは今も昔も無数に存在する[40]。
なお近年は市販車におけるセダン人気の縮小が、レースの規則やエントラントの車種選択にも影響を及ぼす事例が目立つ。日本では埼玉トヨペット Green Braveはトヨペット店の看板車種であったマークXを生産打ち切りにより失ったため、スーパー耐久に長らくレースに馴染みの無かったクラウンを投入している。また、そのスーパー耐久では規制が緩和され、純2座席車が4座席車と同じくらい参戦しやすくなり、これが参戦台数を増やした。メーカーによるセダンの国内のワンメイクレースはかつては多く存在した[41]が、ベース車両の生産終了やエントラントからの不人気などにより、2021年現在はレクサス・IS CCS-Rのワンメイクレースが細々と行われているのみである。この点、クーペ[42]やコンパクトカー[43]、軽ワゴン[44]のワンメイクレースは活況を呈しているのとは対照的である。
海外に目を向けてみると、北米のNASCARカップ・シリーズでは各メーカーの"顔"となるような中級セダンに架装するのが長らく慣習としてあったが、慢性的な米国製セダンの販売不振により、2018年にシボレーがカマロ、2019年にフォードがマスタングと、クーペへの切り替えが進んでいる。トヨタだけはカムリを維持する方針であるが、そのトヨタも直下カテゴリのエクスフィニティ・シリーズでは2019年にカムリをGRスープラに切り替えている。同様に、豪州スーパーカーズ選手権でも2017年以降セダンからクーペへのベース車両の切り替えが行われている。DTM(第二期)も2004〜2011年まで4ドアセダンであったが、こちらはSUPER GTとの規則統一という事情から、2012年から2ドアクーペに置き換えられている。
GTレースでは、先述のJGTCにおいて2003年から同一ファミリー内に2ドアがないことを条件にセダンの参戦が認可され[45]、SUPER GTに改名されて以降のGT300クラスにセダンがたびたび投入されていた(トヨタ・カローラアクシオ、スバル・レガシィ、スバル・インプレッサ、トヨタ・プリウス、レクサス・IS、トヨタ・マークX)が[46]、2021年現在はトヨタ・プリウスPHVのみとなっている。
JTCCのトヨタ・コロナEXiV
WTCCのBMW・320
スーパー耐久のレクサス・GS350
スーパーTC2000のプジョー・408
BTCCのインフィニティ・Q50
ラリー
全日本ラリー選手権など地域選手権では古くから剛性に優れたセダンが活躍していたが、WRC(世界ラリー選手権)では1980年代までトップカテゴリはクーペが主流であった。
1990年代のグループA規定以降のラリーでは、三菱・ランサーエボリューションとスバル・インプレッサWRX STIという2大国産スポーツ4WDセダンがWRC(世界ラリー選手権)や各国選手権の市販車部門を席巻するようになった。これらはWRカーのベース車両としても用いられ、多くのタイトルを獲得している。しかし2000年代後半になるとWRCでは全長の長さが重量バランスの点でネックになったり、市販車部門でも2社の寡占状態への不満が取り沙汰されるようになったため、大規模に改造されたBセグメントのコンパクトカーが代わりに用いられるようになった。
二輪駆動車部門では、ホンダ・シビックタイプRによる参戦が今でもローカルラリーでしばし見られる。
パリ-ダカール・ラリーでも、販促や規則上の優位性を理由にしたセダンベースの車両による参戦例はよく見られる。市販車改造部門ではプジョー・シトロエンがセダンをベースとした車両で1990年前後から一時代を築いた。2008〜2010年には三菱も代名詞のパジェロからランサーへとベース車両を切り替えていたことがある(ただし外観はいずれもSUV型である)。市販車無改造部門でもプライベーターによってトヨタ・パブリカやカリーナによる参戦がされ、クラス優勝を挙げた例もある。現在ではいずれもSUVとピックアップトラックが盤石の地位を築いており、セダンの参戦は冷戦時代の政府御用達車を用いている中国の紅旗[47]のような、メディア受けを狙ったようなものに限られる。
注釈
- ^ 日産・セドリック/グロリアやトヨタ・クラウンなど。
- ^ パーク24株式会社の集計では、セダン、ミニバン、ワンボックスといったレベルに軽自動車が含まれる[1]。
- ^ ちなみに日本国内向けにおける最後の純粋な2ドアセダンは1979年3月から1983年5月まで販売されていたE70型(4代目)トヨタ・カローラ2ドアセダン「1300STD」だった。
- ^ 高級車にステーションワゴンがラインナップされていない理由の1つでもある。
- ^ これまで世界戦略車と言われてきたモデルはほとんどが大衆車であり、2ボックスの3ドア車を基本とすることが多かったが、2000年代以降はピックアップトラック、マルチパーパスビークル、CUVまで世界戦略車と位置づけるメーカーもある。
- ^ また、過去の事例ではダイハツ・コンパーノ、および初代マツダ・ファミリアのように商用バン(ライトバン)をベースにセダンを作る例もあった。
- ^ 車型としてのハードトップの登場以来しばらくは2ドアが主流であったが、Bピラーの省略が難しくなっている現代では、2ドアハードトップはクーペとして分類されることがほとんどである。
- ^ メーカーが独自の呼称を用いる場合もある。トヨタではかつて「5ドアリフトバック」と呼んでいたが、2代目以降のプリウスではセダンとして販売されている。一方、マツダ・ファミリアアスティナやランティス、サーブ・900の5ドアモデルも外観上はハッチバックセダンに見えるが、商標上はクーペとして販売されていた。
- ^ ホンダではハッチバックに分類。なお、初代モデルは2シーターの3ドアハッチバッククーペ。
- ^ 軽自動車規格内で室内空間を大きくできることと、軽ボンネットバンとボディを共用できることから。
- ^ ホンダ・ライフ(初代)とスバル・レックス(初代)のハッチバックはトランクを持つセダンと区別するため、乗用モデルは「ワゴン」として分類していた。
- ^ 日本や欧州で販売されているヤリスとは異なるモデルであり、ヴィオスの姉妹車である。インド向けの名称。
- ^ ラテンアメリカ向けの名称。
- ^ 広汽トヨタ向けの名称。
- ^ タイ向けの名称。
- ^ コスタリカ向けの名称。
- ^ 先代モデルとなるE140型(ナローボディ版)は完全な国内専売車種だったが、現行モデルとなるE160型は2013年2月から2019年7月まで香港、およびマカオの各中華圏特別行政区へ無印のカローラ名義としてそれぞれ輸出されていた。2019年9月現在では法人向けに特化された「EX」、「HYBRID EX」のみが販売されている。
- ^ 既存の2代目カローラアクシオの同型車種。
- ^ 日本国内向けはシリーズ10代目・11代目に限り小型普通車規格(5ナンバーサイズ)を継続した独自車種のカローラアクシオとして独立。
- ^ 台湾・東南アジア向けの名称。
- ^ 欧州向けの名称。
- ^ イギリス向けの名称。
- ^ ドイツ向けの名称。
- ^ 広汽トヨタ向けの名称。
- ^ 広汽トヨタ向けロングホイールベースモデルの名称。
- ^ 一汽トヨタ向けロングホイールベースモデルの名称。
- ^ 北米向けの名称。
- ^ 中東・ミャンマー向けの名称。ミャンマー向けは先代モデルを継続販売。
- ^ ラテンアメリカ向けの名称。先代モデルを継続販売。
- ^ 先代モデルは日本でグレイスの名称で販売されていた。
- ^ 南アフリカ向けの名称。
- ^ 中国市場専売車種。広汽ホンダ向けの名称。
- ^ 中国市場専売車種。東風ホンダ向けの名称。
- ^ 初代はコーダトロンカ型の3ドアハッチバッククーペ、2代目はコーダトロンカ型の5ドアハッチバックだった。
- ^ a b c 中国向けの名称。
- ^ 北米向けはアキュラブランドで販売。
- ^ 新興国、および北米・南米専売。
- ^ インド市場専売車種。なお、2代目モデルまではスイフトディザイアという車名だった。
- ^ 先代モデルは日本でレガシィB4の名称で販売されていた。
- ^ 6代目ミラージュのノッチバックセダン版にあたる。
- ^ 米国・メキシコ・フィリピン向けの名称。
- ^ 台湾市場専売車種。
- ^ ロシア市場専売車種。
- ^ a b c d 上汽VW専売車種。
- ^ 一汽VW専売車種。
- ^ a b 一汽VW向けロングホイールベースモデルの名称。
- ^ 一汽VW向けの名称。
- ^ a b c d e f 4ドアクーペとして販売されている。
- ^ 中国・メキシコ市場専売車種。
- ^ ブラジル向けの名称。
- ^ メキシコ・中米向けの名称。
- ^ インド・メキシコ向けの名称。
- ^ インド市場専売車種。
- ^ インド以外での名称。
- ^ a b c d 中国市場専売車種。
- ^ 中南米向けの名称。
- ^ ブラジル市場専売車種。
- ^ 中国・インド向けの名称。
- ^ ロシア向けの名称。
- ^ 韓国・シンガポール向けの名称。
- ^ オーストラリア向けの名称。
- ^ 東南アジア・南米向けの名称。
- ^ a b 韓国・中国向けの名称。
- ^ オーストラリア・ロシア・ブラジル向けの名称。
- ^ a b 韓国向けの名称。
- ^ 北米向けの名称。
出典
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