スニヤエフ・ゼルドビッチ効果 スニヤエフ・ゼルドビッチ効果の概要

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スニヤエフ・ゼルドビッチ効果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/28 05:33 UTC 版)

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現代宇宙論


宇宙
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概要

スニヤエフ・ゼルドビッチ効果は、さらに次のように分類できる。

  • 熱的効果 : CMB光子が高温に起因する高エネルギーの電子と相互作用を行なう。
  • キネマティック効果 : これは2次のオーダーの効果であり、CMB光子が、観測者に対して全体として運動している電子集団(非熱的な運動エネルギーにより高いエネルギーを持つ。例えば銀河団中の電子)と相互作用を行なう。観測者に対する電子集団の平均的な視線方向の速度がパラメーターとなる。大きさは、通常は熱的効果より1桁小さい[2]。(エレミア・オストライカー(Jeremiah P. Ostriker) とイーサン・ヴィスニアック (Ethan Vishniac) にちなんで、Ostriker-Vishniac 効果とも呼ばれる[4]。)
  • 偏光現象

ラシード・スニャーエフ(Rashid Sunyaev) と ヤーコフ・ゼルドビッチ(Yakov Zel'dovich) がこの効果の存在を予測し、1969年、1972年、1980年に調査を実施した。この効果は、主要な宇宙物理学的、宇宙論的関心事となっており、ハッブル定数を決定する上でも大きな助けとなることが期待されている。銀河団に起因するこの効果を、通常の密度摂動に起因するものから区別するために、電磁スペクトル依存性と、CMB変動の空間的依存性の双方が用いられる。CMBデータの、より高い角度分解能(高次の項を含む)での解析においては、この効果を考慮に入れる必要がある。この効果自体の研究としては、ボルツマン方程式を用い、CMB光子と電子の2回散乱(2回逆コンプトン散乱)を考慮した熱的効果が計算されている。

現在の研究は、この効果が銀河団間のプラズマによって、どのようにして生ずるかというモデリングと、ハッブル定数の評価へのこの効果の利用、背景放射のゆらぎの角度平均統計における異なる成分の分離、といったところに焦点を当てている。この理論における、熱的効果とキネティック効果のデータを得るため、流体力学的な構造形成シミュレーションが研究されている[5]

この効果の振幅の小ささと、観測エラーとの混同、CMB温度ゆらぎなどの要因のため、観測は容易ではない。しかし、この効果は散乱効果であるので、その強度は赤方偏移に依存しない。これは非常に重要な点であり、この方法によって、高い赤方偏移を受けた銀河団を、低い赤方偏移の場合と同様に、容易に検知できるということを意味する。高い赤方偏移を受けた銀河団の検出を容易にしている、別の要因は角直径・赤方偏移関係である: 統計的に角直径を赤方偏移の関数と見なした場合、赤方偏移 z = 0.3 〜 2 では、角直径の変化は小さい。つまり、この範囲の赤方偏移を持つ銀河団は、視野内で同じようなサイズを持つということである。この効果によって発見された銀河団を、宇宙論パラメーターの決定に用いる方法は Barbosa らによって示されている (1996)。これは、今後予定されているサーベイ (SPT, ACT, プランク)で得られるであろうダークエネルギーの力学を理解するうえで参考になるであろう。

観測についての時系列


注釈

  1. ^ 光子のエネルギーが電子に転移するコンプトン散乱とは逆に、電子のエネルギーがエネルギーの低い光子に転移するこの散乱を「逆コンプトン散乱 (inverse Compton scattering) 」と呼ぶ[1]

出典

  1. ^ a b c d 柏川伸成「第14章」『新・天文学事典谷口義明、講談社〈ブルーバックス〉、2013年3月20日、521頁。ISBN 978-4-06-257806-6
  2. ^ a b c 伊藤, 直紀、須藤, 靖、北山, 哲「銀河団をスニャーエフ・ゼルドビッチ効果で見る」『日本物理学会誌』第59巻第6号、2004年、 349-357頁、 doi:10.11316/butsuri1946.59.349
  3. ^ 服部誠「銀河団の重力レンズ現象」『日本物理学会誌』第55巻第7号、2000年、 499-507頁、 doi:10.11316/butsuri1946.55.499ISSN 0029-0181
  4. ^ Ostriker, Jeremiah P.; Vishniac, Ethan T. (1986). “Effect of gravitational lenses on the microwave background, and 1146 + 111B,C”. Nature 322 (6082): 804. doi:10.1038/322804a0. ISSN 0028-0836. 
  5. ^ Cunnama, D. et al. (2009). “The velocity-shape alignment of clusters and the kinetic Sunyaev-Zeldovich effect”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters 397 (1): L41-L45. arXiv:0904.4765. Bibcode2009MNRAS.397L..41C. doi:10.1111/j.1745-3933.2009.00680.x. ISSN 17453925. 
  6. ^ a b Planck > Mission History”. ESA. 2017年3月23日閲覧。
  7. ^ Hand, Nick et al. (2012). “Evidence of Galaxy Cluster Motions with the Kinematic Sunyaev-Zel’dovich Effect”. Physical Review Letters 109 (4). arXiv:1203.4219. Bibcode2012arXiv1203.4219H. doi:10.1103/PhysRevLett.109.041101. ISSN 0031-9007. 
  8. ^ Mroczkowski, Tony et al. (2012). “A MULTI-WAVELENGTH STUDY OF THE SUNYAEV-ZEL'DOVICH EFFECT IN THE TRIPLE-MERGER CLUSTER MACS J0717.5+3745 WITH MUSTANG AND BOLOCAM”. The Astrophysical Journal 761 (1): 47. arXiv:1205.0052. Bibcode2012ApJ...761...47M. doi:10.1088/0004-637X/761/1/47. ISSN 0004-637X. 
  9. ^ Sayers, J. et al. (2013). “A MEASUREMENT OF THE KINETIC SUNYAEV-ZEL'DOVICH SIGNAL TOWARD MACS J0717.5+3745”. The Astrophysical Journal 778 (1): 52. arXiv:1312.3680. Bibcode2013ApJ...778...52S. doi:10.1088/0004-637X/778/1/52. ISSN 0004-637X. 
  10. ^ スニヤエフ・ゼルドビッチ効果を史上最高解像度で観測”. AstroArts (2017年3月22日). 2017年3月24日閲覧。
  11. ^ Kitayama, Tetsu et al. (2016). “The Sunyaev-Zel'dovich effect at 5″: RX J1347.5-1145 imaged by ALMA”. Publications of the Astronomical Society of Japan 68 (5): 88. arXiv:1607.08833. Bibcode2016PASJ...68...88K. doi:10.1093/pasj/psw082. ISSN 0004-6264. 


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