ステロイド ステロイドの概要

ステロイド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/29 07:22 UTC 版)

ステロイド核のA-D環及びステロイドの炭素番号
ステロイドの一種、コレステロール

ステロイドはステラン核と付随する官能基群により特徴付けられるテルペノイド脂質で、核部分は3つのシクロヘキサン環と1つのシクロペンタン環から成る4縮合環炭素構造である。ステロイドはこれらの炭素環に付随する官能基およびその酸化状態により異なったものとなる。

何百もの異なるステロイドが植物動物菌類で見つかっており、それらすべてのステロイドがそれぞれの細胞においてラノステロール(動物および菌類)またはシクロアルテノール(植物)といったステロールから生成され、これらステロール(ラノステロールとシクロアルテノール)は何れもトリテルペンの一種であるスクアレンの環状化により誘導される[2]

ステロールはステロイドの特殊型であり、C-3にヒドロキシ基を有しコレスタンから生成される骨格である[3]コレステロールは最もよく知られるステロールのひとつである。

ステロイドは、ほとんどの生物の生体内にて生合成され、中性脂質タンパク質糖類とともに細胞膜の重要な構成成分となっているほか、胆汁に含まれる胆汁酸や生体維持に重要なホルモン類(副腎皮質ホルモンや昆虫の変態ホルモンなど)として、幅広く利用されている。

構造

ステロイドは側鎖などによって、コレスタン (cholestane)、コラン (cholane)、プレグナン (pregnane)、アンドロスタン (androstane)、エストラン (estrane) の5つに分類される。

下図のように構造式を書いた場合に、それぞれの環を左下から順にA環、B環、C環、D環と呼ぶ。また環上の置換基の立体表示法として、紙面下側方向をα、上側方向をβで表す。隣り合う環同士の間にαとβの両方を含む場合はトランス配置、いずれもα(またはβ)の場合はシス配置と呼ばれる。A/B環の配置は両方を取りうる(そのため下図の例では5位水素の立体が明示されていない)が、B/C環は常にトランス配置であり、C/D環も多くがトランス配置である。

a配座/e配座、α配座/β配座と表現される場合もある。

生合成

HMG-CoAリダクターゼ経路(メバロン酸経路)。画像クリックで拡大と解説
ステロイド骨格形成反応。画像クリックで拡大と解説

高等脊椎動物では、肝臓の肝細胞の滑面小胞体などで酢酸からアセチルCoAなどを経てメバロン酸経路に入り、テルペノイドの一つ、スクアレンとなる。スクアレンの2,3-位が酵素的にエポキシ化されると、逐次に反応が進行するのではなく、一気に閉環反応が進み、ラノステロールが生成する。酵素によりエポキシ酸素がプロトネーションされるのをきっかけに、4つの二重結合のπ電子ドミノ倒しのように倒れこんでσ結合となりステロイドのA, B, C, D環が一度に形成される。それだけでなく、ステロイドの20位炭素上に発生したカルボカチオンを埋めるように、2つの水素(ヒドリド)とメチル基がそれぞれステロイド環平面を横切ることなく1つずつ隣りの炭素に転位することで、熱力学的安定配座となりラノステロールが生成する。

他の生物種では同じスクアレンエポキシダーゼによりスクアレン 2,3-エポキシドからテルペノイドであるβ-アミリンを生成する生合成経路も知られているので、このステロイド構築反応はスクアレンエポキシダーゼ固有の反応というわけではない。

ラノステロールから更に先はリダクターゼとP450酵素によるメチル基の酸化が繰り返されて適用される。その結果、3つのメチル基が二酸化炭素として切断される酸化的脱メチル化によって(ラノステロールから17段階で)コレステロールが生成する[4]

ステロイドホルモンは、すべてホルモン分泌器官に運ばれたコレステロールからプレグネノロンという前駆体を経由して生合成され、このプレグネノロンへの変換が律速段階となる。このため、多くのステロイドホルモン刺激ホルモンはこの過程を促進する。




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  1. ^ IUPAC Gold Book - steroids
  2. ^ Lanosterol biosynthesis
  3. ^ G. P. Moss (1989). “Nomenclature of Steroids (Recommendations 1989)”. Pure & Appl. Chem. 61 (10): 1783–1822. doi:10.1351/pac198961101783.  PDF
  4. ^ Mann, J. Chemical Aspects of Biosynthesis; Oxford University Press: Oxford, 1994; pp 40–52. ISBN 0-19-855676-4.


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