スクーター 概要

スクーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 17:09 UTC 版)

概要

一般的には無段変速機などによるオートマチックトランスミッションを搭載し、後輪サスペンションエンジンと一体化したユニットスイング式とするものが多く、エンジンをはじめとした機器類はカウルによって覆われる。前方にステップが備わり乗降時に足を高く上げる必要がなく、スクーター以外のオートバイと比較して容易に取り扱うことができる。

元々英語ではキックスケーターのことをscooter[1]と呼んでいたが、それと同様の外観でエンジンなどを積んでいることから前述のようなオートバイについてもscooterと呼ぶようになった[2]

歴史

スクーターの起源

1910年代アメリカAutoped Company社がキックスケーターの前輪にエンジンを一体化させた立ち乗りスクーターとしてAutopedを発売した。4ストローク125cc単気筒エンジンに前後10インチホイールを備え25km/hでの走行が可能であった。

1919年イギリスABC社が発売したSkootamotaにはサドルが設けられ、座位で運転できるものであった。また、特許出願に際して「モータースクーター」(Motor-Scooter)と呼称していた[3]。Skootamotaはアンダーボーンフレームの完全なステップスルーで、4ストローク125cc単気筒エンジンを搭載して40km/hを出せたと言われる。エンジンはサドルの下に搭載されているが、これを覆うカバーの類は設けられていない。1920年代前半にはSkootamotaに似たコンセプトのオートバイが各国の複数のメーカーから発売されている。

1920年にイギリスGloucestershire Aircraft社が発売したUNIBUSには外装パネルが全体に装備され、機械構造部分はほぼカバーされていた。1930年代には、アメリカのCushmanPowellSalsbury他、数社が外装で覆われた小排気量エンジンと小径ホイールを備えた、スクーターとしてほぼ完成されたスタイルを持つオートバイを販売している。

現在のスクーターのスタイルを決定づけた機種は、1946年に製造が開始されたイタリアピアッジオ社製のベスパ98であると考えられがちだが、前述の基本的なスタイル要素はベスパ登場以前にすでに完成されていた。

世界各国のスクーターの歴史

日本のスクーター史

1953年(昭和28年)に通商産業省(現・経済産業省)等が定めた定義では「原動機を座席の下に設け、前方に足踏台のある、車輪の直径が22インチ以下であるような2輪自動車を指す[4]」とされる。

黎明期

日本で最初に普及した「ラビット

日本で本格的に普及した最初のスクーターは、富士産業(現:SUBARU)が1946年6月末に試作車を完成させ製造開始したラビットと、中日本重工業(現:三菱重工業)が1946年12月より製造開始したシルバーピジョンである。これら2社はスクーターの存在すら知られていない中、戦前に少数持ち込まれたアメリカ製のスクーターを参考にGHQの許可を得て、台数を規制されながら製造した[5]

ソフトバイクブーム

1976年にホンダはシンプルな構造のロードパル(通称「ラッタッタ」)を発売し、簡単操作、軽量、低価格を売りにして主婦層への浸透を図った。これに対抗してヤマハ1977年パッソルを発売した。前者はモペッド、後者はスクーターであり構造が違うが、当時は両者ともミニバイクソフトバイクと呼ばれ同一視され、主婦層に普及した。

ビッグスクーターブーム

ホンダ・スペイシー250フリーウェイは250ccのエンジンを採用し、さらにホンダ・フリーウェイでヘルメットを2個収納可能なメットインタイプとなった。また、1986年発売のホンダ・フュージョンはロングホイールベースを初めて採用したが、当時はそれほど注目されなかった。これらのクラスはホンダの独壇場であったが、1995年にヤマハがマジェスティを発売し、そのデザインと共に利便性・快適性を求めたコンセプトがヒットしシェアは8.6%[6]となった。ホンダ・フォーサイトの発売と大ヒットによりシェアも13.1%[6]となって、その後ビッグスクーターのラインナップは拡大し、国内4メーカーのうち、カワサキ[7]を除く3社が幅広い商品ラインを展開している。これらブームも続き、ピークとなる2005年にはシェアはほぼ半分[6]、6月にはオートマチック限定免許も新設された。

原動機付自転車と異なり、二段階右折・30km/hの法定速度など制限を受けず、快適性が高く、また通常のオートバイよりも二人乗用が快適など利便性と簡便性において優位性を持っていることがブームとなった理由と見られている[6]

日本で「ビッグ・スクーター(Big Scooter)」と呼ぶスクーターは、ヨーロッパで「マキシ・スクーター(Maxi Scooter)」と呼ぶ。

種別

小型スクーター

ホンダ・リード 110ccのスクーター

ステップスルーを可能にする車体形状では、ダイヤモンド型やクレードル型といった剛性の高いフレーム形状を採用出来ない。 エンジンやトランスミッションは、スイングアームに一体化した「ユニットスイング」と呼ばれる機構を採用している。そのため重心が後よりになり後輪のバネ下荷重が大きく、多気筒のエンジンを搭載することはスペースの制限により難しい。ひざの間にタンクがないためニーグリップと呼ばれる乗車姿勢をとることができず、ひざを使った車体のコントロールや乗車姿勢の安定化が難しい。

小径タイヤを採用している車種が多く、それらは路面の凹凸の影響が大きく直進性が劣る場合がある。一方、アジア諸国では道路の整備状況が悪い、またヨーロッパでは石畳の道路が多く存在するといった理由から、大径のタイヤが採用されている場合が多い。

ビッグスクーター

排気量が250ccもしくはそれを超えるスクーターはビッグスクーターとも呼ばれる。

特に高速走行を想定した大排気量スクーターは[8]、サスペンションの性能を追求するためにエンジンを車体フレームに固定してユニットスイングを用いない車種もある[9]


  1. ^ scootは、英語で「駆け出す」「走り去る」などの意。
  2. ^ scooterという語について、各英語辞書では以下のように定義されている:
    • The Shorter Oxford English Dictionary (third ed.). Oxford, UK: Oxford University Press. (1968) [1956]. pp. 1808–09. "3. A child's toy consisting of a narrow flat piece of wood on low wheels, with a steering-handle, propelled by pushing with one foot on the ground; also, a similar machine propelled by a motor" 
      • (1956年 オックスフォード scooter)小さい車輪の上に木製の狭い板があり、ハンドルが付いている子供の玩具で、地面に付けた片足で押して動かす。また、これと似たエンジンで動く機械。
    • Gove, Philip Babcock, ed (1966). Webster's Third New International Dictionary of the English Language, Unabridged. Springfield, Mass. USA: G & C Merriam. pp. 1476, 2035. ISBN 0-7135-1037-4. "a low 2- or 3-wheeled automotive vehicle resembling a child's scooter, having a seat so that the rider does not straddle the engine, sometimes having a parcel compartment, but having smaller wheels and being less powerful than a motorcycle." 
      • (1966年 ウェブスター scooter)子供用スクーターと似た、小さい車輪を二つまたは三つ持つ自動推進の乗り物。運転手がエンジンを跨がない座席を持ち、小荷物入れがあることもある。ただし、motorcycleより車輪が小さく、低出力である。
    • Webster's New Twentieth Century Dictionary. Cleveland OH USA: The World Publishing Company. (1970). p. 1625. ISBN 0-529-04852-3. "1. a child's vehicle, consisting of a low, narrow footboard with a wheel at each end, the front one attached to a handlebar for steering: it is moved by a series of pushes made by one foot against the ground. 2. a somewhat similar vehicle equipped with a seat and propelled by a small internal-combustion engine: in full motor scooter" 
      • (1970年 ウェブスター scooter)1. 低く狭い足板の前後端に車輪を持ち、前輪には操作用のハンドルが付いた子供用の玩具。片足を地面で蹴る動作を繰り返すことにより動く。 2. これと似た、座席を持ち、内燃機関によって動く乗り物。正式には、motor scooter。
    • The Living Webster Encyclopedic Dictionary of the English Language. The English Language Institute of America. (1973). p. 624. ISBN 0-8326-0001-6. "motor scooter, n A scooter like vehicle usu. having two wheels separated by a low footboard, and equipped with a motor and a seat for the driver" 
      • (1973年 ウェブスター motor scooter)キックスケーターに似た乗り物で、低い足板の前後に車輪があり、エンジンと運転手の座席を持つ。
    • Collins English Dictionary and Thesaurus (3rd ed.). Glasgow: Harper Collins Publications. (2004). p. 776. ISBN 0-00-718139-6. "motor scooter n a light motorcycle with small wheels and an enclosed engine. Often shortened to scooter" 
      • (2004年 コリンズ motor scooter)車輪が小さく、エンジンが露出していない小型のオートバイ。「scooter」と略される。
    • Chambers Concise Dictionary. Edinburgh: Chambers Harrup Publishers. (2004). p. 1084. ISBN 0-550-10072-5. "2. (in full motor scooter) a small-wheeled motorcycle with a protective front shield curving back to form a support for the feet" 
      • (2004年 チャンバース scooter)(正式:motor scooter)足を保護するために後ろに曲がった前板を持つ小径車輪のオートバイ。
    • World Book Dictionary. World Book Inc.. (2005). p. 1356. ISBN 0-7166-0105-2. "motor scooter: A vehicle like a child's scooter, except that the driver is seated. It is run by a motor." 
      • (2005年 ワールドブック motor scooter)キックスケーターに似た乗り物で、運転手が着座するという点で違う。エンジンで走る。
  3. ^ Patent USD55148 - DESIGN FOR A MOTOR-SCOOTER - Google Patents
  4. ^ Honda Fact Book: SCOOTER 1981年7月7日 p1 スクーターとは何か
  5. ^ モーサイ (2019年9月13日). “ラビット&シルバーピジョン 国産スクーター戦後開発史 ” (日本語). 2019年9月17日閲覧。
  6. ^ a b c d JAMAGAZINE 2007年7月号 福原広昌 二輪車新聞社
  7. ^ かつてはカワサキもスズキからのOEM製品を発売していた。
  8. ^ 近年ではスズキ・スカイウェイブ650ヤマハ・TMAXといった2気筒エンジンを採用した車種が増え、世界最大のものではピアッジオ社製ジレラ・GP800がV型2気筒の839ccである。
  9. ^ 日本自動車工業会 JAMAGAZINE 2001年6月号


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