ジョン・ロック 経済学

ジョン・ロック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 07:47 UTC 版)

経済学

労働価値説の源泉といわれるが、彼は当人が所有せる自らの身体より生ずる労働又者労働の混合によって自然の共有物が当人の所有と相なると言う、財産権についての論説を述べたに過ぎない。[16][17]

彼は4パーセントへの利子の引き下げ[注釈 2][注釈 3]に就而、借りている商人はたった4パーセントの利子を喜んで支払うだろうと指摘しました。 しかし、貸し手は其分金額を失うので、借り手へのこの利益は国益または一般利益ではない。利子の強制的な引き下げはせいぜい再分配であるだけでなく、この措置は貯蓄と信用の供給を制限し[注釈 4]、それによって経済を悪化させる[注釈 5]だろうと、述べた。[19]

1695年の大改鋳に対する論争では、ウィリアム・ラウンズ英語版の報告書に反論して、貨幣の軽量化は、購買力を下げる[注釈 6]ことに繋がり、それにより一層多くの負債が弁済される事があるとしても、それは、人々の財産を理由も無く不当に人手に渡すことになる為、完全な詐欺である、と述べて居る。[21][注釈 7]

著作

  • 『人間悟性論』あるいは『人間知性論』(1690年、大槻春彦訳、岩波文庫 全4冊、1972-77年)
  • 統治二論』(『市民政府二論』1689年)(執筆は刊行より10年以上前といわれる)
    • 二部構成 後半に市民政府の起源、範囲および目的に関する小論(「市民政府論」鵜飼信成訳、岩波文庫、1968年)
  • 『寛容に関する書簡』(1689年)
  • 『知性の正しい導き方』(初出は1706年出版の『ジョン・ロック氏遺稿集』)
下川 潔訳、御茶の水書房、1999年
服部知文訳、岩波文庫、1967年。北本正章訳、原書房、2011年
  • 『利子・貨幣論利子部』(Some Consideration of the consequences of the lowering of interest,and raising the value of money,London 1692. 底本reprint版Augustus M.Kelley1696第二版表題)
田中正司・竹本洋共訳、東京大学出版会、1978年

主な日本語訳(新版)

  • 『ロック政治論集』マーク・ゴルディ編、山田園子・吉村伸夫訳、法政大学出版局「叢書・ウニベルシタス」、2007年
  • 『全訳統治論』伊藤宏之訳、柏書房、1997年/改訂版・八朔社、2020年
  • 『統治論』宮川透訳、中公クラシックス、2007年。元版「世界の名著 ロック」中央公論社
  • 『統治二論 完訳』加藤節訳、岩波書店、2007年/岩波文庫、2010年
  • 『市民政府論』角田安正訳、光文社古典新訳文庫、2011年
  • 『知性の正しい導き方』下川潔訳、ちくま学芸文庫、2015年
  • 『寛容についての手紙』加藤節・李静和訳、岩波文庫、2018年
  • 『キリスト教の合理性』加藤節訳、岩波文庫、2019年
  • 『寛容書簡』山田園子訳、京都大学学術出版会「近代社会思想コレクション」、2022年

脚注


注釈

  1. ^ この区別はロックの独創ではなく、既にあったものである
  2. ^ ジョサイア・チャイルドによる一六六五年に於ける法定利子率六パーセントから四パーセントへの引下げを訴えたる手稿「交易と貨幣利子とに関する簡単な考察」(Brief observations concerning trade and interest of money)に対して[18]
  3. ^ 彼は貸し手の供給と借手の需要によって自然利子率が決定せらると至極当然であるが述べて居る。詰り自然利子率を無視せる法定による利子率は、現に存在せる供給量を無視し得る魔法の杖ではなく、まやかしである、と。[18]
  4. ^ 詰り彼らは現在の消費を犠牲にする程に貯蓄と信用の供給による将来の利益を選好したのであるが、利子の引下げによって当然夫れは差し控えらる。[18]
  5. ^ 彼曰く、或人の富の増加は、勤勉さによつて齎さるのであつて、(利子の引下げによる)浪費と無駄遣い(夫れが無ければ到底借りられなかつたような価値順位の低い目的の為め、譬えばリスクの高い事業、投資或者消費)から生まれるのではない、と。[18]
  6. ^ 以前より多くの絹、塩またはパンは購買しはしないからである[20]
  7. ^ 厳密では無い者の、貨幣で幾ら購買可能歟は其名目ではなく貨幣を構成せる財に依るのであるから、名目値は同じなれど重量が変更せらるれば則ち別物である。故に名目値にて返金するは之れ全くの詐欺である。

出典

  1. ^ Peter Laslett (1988). “Introduction: Locke and Hobbes”. Two Treatises on Government. Cambridge University Press. p. 68. ISBN 9780521357302 
  2. ^ Hirschmann, Nancy J. 2009. Gender, Class, and Freedom in Modern Political Theory. Princeton: Princeton University Press. p. 79.
  3. ^ Sharma, Urmila, and S. K. Sharma. 2006. Western Political Thought. Washington: Atlantic Publishers. p. 440.
  4. ^ Korab-Karpowicz, W. Julian. 2010. A History of Political Philosophy: From Thucydides to Locke. New York: Global Scholarly Publications. p. 291.
  5. ^ 浜林正夫『ロック』研究社出版〈イギリス思想叢書4〉、1996年、5頁。
  6. ^ John Locke Internet Encyclopedia of Philosophy 2018年7月21日閲覧。
  7. ^ 富田恭彦『ロック入門講義 イギリス経験論の原点』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2017年、22頁
  8. ^ 浜林正夫『ロック』研究社出版〈イギリス思想叢書4〉、1996年、16頁。
  9. ^ Woolhouse, Roger. 'Lady Masham's Account of Locke', Locke Studies, 3 (2003), p.173
  10. ^ a b "Locke; John (1632 - 1704); philosopher". Record (英語). The Royal Society. 2023年2月5日閲覧
  11. ^ 「「豊かさ」の誕生 成長と発展の文明史」pp104-105ウィリアム・バーンスタイン著 徳川家広訳 日本経済新聞社 2006年8月24日1版1刷
  12. ^ 「ロック政治論集」(叢書・ウニベルシタス844)pp. 420-424 ジョン・ロック マーク・ゴルディ編 山田園子・吉村伸夫訳 法政大学出版局 2007年6月21日初版第1刷
  13. ^ 「国民百科事典7」平凡社 p. 588 1962年6月15日初版発行
  14. ^ John Locke "Second Treatise of Government" Sect.6
  15. ^ 『ジョージ王朝時代のイギリス』 ジョルジュ・ミノワ著 手塚リリ子・手塚喬介訳 白水社文庫クセジュ 2004年10月10日発行 p.8
  16. ^ 『市民政府論』岩波書店、1992年、31-55頁。 
  17. ^ economic thought before Adam Smith:an Austrian perspective on the history of economic thought volume 1. Edward Elgar Publishing Ltd. pp. 316-317 
  18. ^ a b c d 『利子・貨幣論』東京大学出版会、1978年
  19. ^ 『利子・貨幣論』東京大学出版会、1978年、3-129頁。 
  20. ^ 『利子・貨幣論』東京大学出版会、1978年、284頁、原文62葉。
  21. ^ 『利子・貨幣論』東京大学出版会、1978年、284,307頁。 






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