ジェンダー
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ジェンダーと社会
科学
歴史的には、科学は男性が追求するものとして描かれており、女性の参加には非常に大きな障害があった[17]。19世紀に大学が女性の入学を許可した後であっても、依然として大部分の女性は家政学、看護学、発達心理学などの特定の科学分野に降格させられた[18]。また、女性はよく退屈な低賃金の仕事を割り当てられ、キャリアアップの機会を拒否されてきた[18]。こうした行為は、女性は生まれつき、創造性、リーダーシップ、知性が必要な仕事よりも、集中、忍耐、手先の器用さが必要な仕事により向いている、というステレオタイプによって正当化されることが多かった[18]。こうしたステレオタイプは現代には払拭されたが、たとえば物理学などの権威ある「ハードサイエンス」などの分野では、女性はいまだに過小評価されており、高いランクのポジションを持てる可能性は低い[19]。国連の持続可能な開発計画目標 5などのグローバル・イニシアティブは、この状況の是正を試みている[20]。
生物学

人間だけでなく、動物、植物、昆虫などの性(英語: sex)を表現するために用いる。性交との混同を避ける為に、生物学の分野では意識的に用いる必要があったからである。このため、欧米では一般でもジェンダー(gender)は、性(sex)と同義の言葉として婉曲的に用いられるようになった。生物学者は、研究対象が生物学的に雄であるか雌であるかを表現する為にジェンダー(gender)という用語を使う。
スポーツ選手の生物学的な性別検査(スポーツにおける性別確認を参照)は英語で「ジェンダーヴェリフィケイション(gender verification)」と呼ばれ、人間の生物学的な「男女の産み分け」を「ジェンダーセレクション(英語: gender selection)」と呼ぶ。また、昆虫の雌雄を判断し、より分けることを「雌雄判別(英語: gender selection)」と呼ぶ[21]。
戦争
比較的多くの国家で男性に対してのみ徴兵制が課されている。一方、「男性同盟が戦争を起こす」という言説を行い、「ジェンダー理論が平和を創る」とする言説がある[22]。
宗教
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- キリスト教
- 世界人口の4割を占めるキリスト教では、神が男性であるというイメージが保持されている。かつては神の使者たる天使も成人男性の姿でイメージされていたが、近世以降は赤子や女性のイメージで描かれることも多い。カトリックやオーソドクスでは聖職者の特定の地位になることが男性にしか許されていない。プロテスタントでは女性の教職者が認められている教派が多い。
- 仏教
- 大乗仏教では、仏陀は男性であるとの主張が法華経の一節の解釈から生じており女性は成仏しないが来世に男性として輪廻すれば、成仏する可能性があるとの考えが一部存在する。また、法華経という経典において、法華経の功徳で、女性が今生で男性に変化して成仏する場面が説かれている(変成男子)。
- 上座部仏教では、あくまで悟りを目的としており成仏を目的としていない。経典で複数の女性が在家、出家を問わずに涅槃に到達しており(阿羅漢果という)仏が必ず男であるなどという大乗仏教の考えは大乗仏教の異端性を示すものとして捉えられている。
- 神道
- 日本の神道では、明治以降は最高神が女性であるアマテラスとされている。また、国産みは男神・イザナギと女神・イザナミの共同で行なわれている。
- 道教
- 道教では、陰と陽はそれぞれ女性と男性の属性であり、女性は月に、男性は太陽に支配されていると考えられている。
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- ^ 『現代社会学事典』大澤真幸[ほか]/2012/弘文堂/P499
- ^ 『現代社会学事典』大澤真幸[ほか]/2012/弘文堂/P500
- ^ 『社会学事典』日本社会学会社会学事典刊行委員会/丸善/2010/P409
- ^ 『現代社会学事典』大澤真幸[ほか]/2012/弘文堂
- ^ 『社会学事典』日本社会学会社会学事典刊行委員会/丸善/2010
- ^ 『現代社会学事典』大澤真幸[ほか]/2012/弘文堂
- ^ 『社会学事典』日本社会学会社会学事典刊行委員会/丸善/2010
- ^ 日本社会学会・社会学事典刊行委員会 『社会学事典』 丸善、2010年(2010年7月30日第2刷発行)、408頁。
- ^ 中村美亜 「新しいジェンダー・アイデンティティ理論の構築に向けて—生物・医学とジェンダー学の課題」『ジェンダー&セクシュアリティ』 国際基督教大学ジェンダー研究センタージャーナル、2006年12月31日。
- ^ 山内俊雄 「性同一性障害とは—歴史と概要」『Modern Physician 25-4 性同一性障害の診かたと治療』 新興医学出版社、2005年(2005年4月15日発行)、367–368頁。
- ^ 日本社会学会・社会学事典刊行委員会 『社会学事典』 丸善、2010年(2010年7月30日第2刷発行)、408頁。
- ^ 「ジェンダー」という言葉について
- ^ 「ジェンダー概念の検討」舘かおる『ジェンダー研究』第1号/お茶の水女子大学ジェンダー研究センター/1998/P81
- ^ 「ジェンダー概念の検討」舘かおる『ジェンダー研究』第1号/お茶の水女子大学ジェンダー研究センター/1998/P83
- ^ 「ジェンダー概念の検討」舘かおる『ジェンダー研究』第1号/お茶の水女子大学ジェンダー研究センター/1998/P84
- ^ 「ジェンダー概念の検討」舘かおる『ジェンダー研究』第1号/お茶の水女子大学ジェンダー研究センター/1998/P84
- ^ Schiebinger, Londa (2001). Has Feminism Changed Science?. 25 (2nd ed.). Cambridge, Mass.: Harvard University Press. 1171–5. doi:10.1086/495540. ISBN 978-0-674-00544-0. PMID 17089478
- ^ a b c Sheffield, Suzanne Le-May (2006). Women and Science: Social Impact and Interaction. New Brunswick, NJ: Rutgers University Press. pp. 129–134. ISBN 978-0-8135-3737-5
- ^ Eisenhart, Margaret A.; Finkel, Elizabeth (1998). Women's Science: Learning and Succeeding from the Margins. 84. Chicago: University of Chicago Press. 34–36. Bibcode: 2000SciEd..84..793A. doi:10.1002/1098-237X(200011)84:6<793::AID-SCE6>3.0.CO;2-K. ISBN 978-0-226-19544-5
- ^ “Sustainable Development Goal 5: Gender equality” (英語). UN Women. 2020年9月23日閲覧。
- ^ カイコ幼虫の斑紋による雌雄性の判別
- ^ 『戦争とジェンダー―戦争を起こす男性同盟と平和を創るジェンダー理論』 若桑みどり著
- ^ “「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択する国連サミット”. 外務省. 2016年11月30日閲覧。
- 1 ジェンダーとは
- 2 ジェンダーの概要
- 3 ジェンダーと社会
- 4 国連・持続可能な開発目標
- 5 関連項目
ジェンダーと同じ種類の言葉
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