シートベルト シートベルトの概要

シートベルト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/03 21:32 UTC 版)

3点式シートベルト

ここでは主に自動車用シートベルトについて記述する。

シートベルトの効果

非常の場合(事故などの場合)について

自動車が衝突する時、また、衝突を回避しようとブレーキを掛けたりハンドルを切ったりする時、体には急激な減速・加速による、大きな慣性力が加わる。その際、体を座席に固定していないと、体が自動車の内部(ハンドルやフロントガラスなど)に衝突してしまう。また、体が車外に放出してしまう危険性もある。シートベルトが普及する前の交通事故においては、フロントガラスやハンドルに顔面を強打した被害者の縫合手術が頻繁に行われているなど、軽度の衝突でも被害が大きかった[1]。それを防ぐために、シートベルトで体やチャイルドシートを座席に固定する。

現在の自動車の主流である3点式シートベルトでは、ゆっくりと引けばベルトを引き出せるが、一定以上の勢いで引っ張るとロックして引き出せない(ELR : Emergency Locking Retractor、非常時固定及び巻き取り式)。 車両が事故を起こしたとき、乗員は慣性の法則で進行方向へ飛ばされそうになるが、それをロックした状態のベルトが支えてくれるわけである。

また、近年は、車両に一定以上の衝撃が加わった場合に事故と判断し、火薬などにより瞬時にベルトを引き上げることで、さらに上半身をシートに強く拘束し鎖骨を骨折させることで衝撃を吸収し、鎖骨以外の部位のケガを最低限に押さえ込むようになっているものもある。これをプリテンショナー機能といい、多くの場合、ロードリミッター機能(拘束による乗員への負担が一定以上加わらないように調節を行うもの)と組み合わされる。

なお、シートベルトは、腰ベルトは骨盤に、3点式の肩ベルトは鎖骨に掛けるようにする[2]

シートベルトの機能は、これら骨盤や鎖骨を支点としてベルトの張力の範囲で衝撃の大部分を吸収するのであり、人体と接するベルトの面での衝撃の分散吸収は、あくまで補助的なもの[要出典]である。たとえば腹部にベルトを掛けていると、シートベルト外傷を引き起こす可能性があり、内臓などは比較的簡単に破裂してしまう[3]

自動車についているほかの安全装置にはエアバッグがある。しかしエアバッグはSRS(Supplemental Restraint System、補助拘束装置)エアバッグという名称の示すとおり、あくまでも『シートベルトを補助する装置』であり、シートベルトと併用することで効果を示す設計となっている。

非常の場合以外について

事故に遭わなくても、自動車に乗車しているときには乗員にいろいろな衝撃が加わることがある。例えば、カーブを曲がる時、ブレーキをかけたとき、加速をしたときなどに、慣性遠心力で身体が前後左右に揺れることがある。その時に体が固定されていないと、必要以上に揺さぶられてしまい乗り物酔いを引き起こしやすくなる。また運転手の場合はなおのことで、身体が動いてしまえばその分身体と各種インターフェース(ハンドルや各ペダル、シフトレバーなど)との位置関係が変わってしまう為安定・確実な操作ができず安全運転に支障をきたす。それを防ぐ意味でも、シートベルトで体を座席に固定する必要がある。

シートベルトの歴史

1899年イギリスロンドンで、ダイムラーの自動車による事故で乗員2人が放り出され死亡したことがきっかけとなり、シートベルトが開発されたといわれている[要出典]。それを端とした開発は1903年フランスの技術者であるギュスターヴ・ルボー(Gustave Désiré Lebeau)により、シートベルトの原型である、高い背もたれと交差式ベルトからなる「自動車等の防御用ベルト」というものの開発へと至った[要出典]という。

シートベルトが初めて自動車に搭載されたのは1922年[要出典]である。当初は競技用自動車に任意で取り付けられていた[要出典]。一般の乗用車への採用は1946年タッカー・トーピードが最初であったが、コンセプトの一つに「安全性」を取り入れた同車は少数製造されるに留まり、広く普及するまでには至らなかった。

日本ではタカタが1960年12月に初めてシートベルトを販売したが、当時は安全性を向上させるために使用することの必要性が全く認知されておらず、最初はメーカーも在庫の山を抱えていた。

シートベルト普及の契機はアメリカで1966年7月1日に成立した連邦交通車両安全法 (National Traffic and Motor Vehicle Safety Act) であり[要出典]、同法に基づいた連邦自動車安全基準 (FMVSS) により1967年3月1日から義務付けている。

最初はシートベルト販売に苦戦したタカタであったが、運輸省警視庁の協力を得て自動車の衝突実験を実施し、シートベルトの重要性の啓発活動が実った結果、日本でも1969年4月以降国内で生産された自動車へのシートベルト搭載が義務となった。

シートベルトの形態としては、2点式シートベルトが一般的であったが、サーブからボルボに移籍した自動車技術者ニルス・ボーリン(Nils Bolin 1920-2002)により1959年に3点式シートベルトが開発され、特許が取得された。最初に装備したのは当時ボルボが生産していた乗用車PV544120(アマゾン)である。しかし、安全は独占されるべきものではないという考えから、ボルボ社はこの特許を無償で公開した。これにより、3点式シートベルトは全世界の自動車に装着される装置となった。その後、プリテンショナーの追加(後述)などいくつかの改良は行われたが、3点式シートベルトの基本的レイアウト自体は開発後50年以上にわたって踏襲され続けている。

代表的な3点式の他にも、2点式、4点式、5点式、6点式がある。一部の高性能スポーツカーには4点式の採用例が見られ、現在のレーシングカーには6点式シートベルトが使われる。2点式は自動車の後部座席や飛行機の座席に用いられているが、事故の際に腰の部分への負担が大きく、上半身の保護能力も期待できないため、最近では自動車の後部座席については3点式が主流である(義務化している国も多い)。

F1などのフォーミュラカー(葉巻型ボディから4つの車輪が飛び出した一人乗りレーシングカー)では、1960年代末までシートベルトが義務化されていなかった(乗用車改造マシンのレースではすでに義務化されていた)。フォーミュラカーは運転席が狭く、事故で火災が発生すると脱出が困難になりやすいとされ、「焼け死ぬよりは車外に投げ出された方が安全」と考えられていたからである[要出典]。しかしフォーミュラカーにおいてもシートベルトを装着する方が安全と認識され、1970年代以降シートベルトは絶対的な義務となっている。

シートベルトが窮屈だという理由で装着しない人がいる。そのため窮屈にならないように、ベルトを装着したときにだけ巻き取りバネの力を弱めて、窮屈感を和らげるシートベルトが開発された。このタイプのシートベルトは「テンションレリーファー(レデューサー)付きシートベルト」と呼ばれ、一部の高級車に装備されている。衝突時に帯がゆるんでいる場合には、乗員を拘束する性能が低下するため、衝突の際にたるんだ帯が締まるような仕組み(火薬を使う)を持つシートベルトが開発された。このタイプのシートベルトのことを「プリテンショナー付きシートベルト」と呼ぶ。さらには衝突後、帯に入る荷重が設定荷重になると帯が伸び出し、エネルギーを逃がすタイプのシートベルトも開発されている。このタイプのシートベルトを「ロードリミッター付きシートベルト」と呼ぶ。プリテンショナーとロードリミッター付きシートベルトの開発により、衝突時の乗員に対する安全性は飛躍的に改善された。

自動車では、チャイルドシート固定機能付シートベルト(一杯に引っ張り出してから収納すると、完全に収納するまでは収納のみ可能となり、ベルトが一定の位置で固定される)も開発され、後部座席に取り付けられている車種が多い。


注釈

  1. ^ 例外規定・除外規定・車両も大きさ・排気量の規定もあるため、シートベルトをしなくても良いかどうかは確認をとったほうが良い。

出典

  1. ^ ナショナルジオグラフィックス『クラッシュサイエンス』
  2. ^ JAF Traffic Safety Report (PDF)
  3. ^ カーライフマガジン【知って得する、CAR INFO】:シートベルトの正しい装着方法 - タイムズクラブ”. 2009年4月15日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 第4編付則”. 日本自動車連盟. 2019年10月4日閲覧。
  5. ^ 腹くくりタスキがけ 運転席は3点ベルト」『朝日新聞』昭和49年(1974年)6月8日夕刊、3版、11面
  6. ^ 道路交通法施行令第26条の3の2及び座席ベルトの装着義務の免除に係る業務を定める規則(昭和60年国家公安委員会規則第12号
  7. ^ 海外のシートベルト着用・チャイルドシート使用義務 JAFホームページ 2018年1月28日閲覧






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