シンハラ語 発音

シンハラ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/09 08:56 UTC 版)

発音

唇音 歯音/
歯茎音
そり舌音 硬口蓋音 軟口蓋音 声門音
鼻音 [m] [n̪] [ɳ] [ɲ] [ŋ]
破裂音 無声音 [p] [t̪] [ʈ] [tʃ] [k]
有声音 [b] [d̪] [ɖ] [dʒ] [ɡ]
前鼻音化 [mb] [d̪] [ɳɖ] [ŋɡ]
摩擦音 [(f)] [s] [(ʃ)] [h]
R音 [r]
接近音 [ʋ] [l] [j]
前舌母音 中舌母音 後舌母音
狭母音 [iː] [i] [uː] [u]
半母音 [eː] [e] ([ə]) [oː] [o]
広母音 [æː] [æ] [aː] [a]

形態論

名詞

シンハラ語の名詞には定性有生性がある。

シンハラ語のには、多くの言語に見られる主格対格属格与格奪格の他に、他の言語には少ない具格などがある。格の種類は、その定義に揺らぎがあるため、一般的に厳密な種類やその数は示されない。たとえばなにか有生の具格および処格の語尾は atiŋlaŋ だが、それぞれ独立した単語("with the hand" と "near" の意味)としても用いられるため、これを接尾辞とするべきではないとする説もある。学術的な文法化の過程において、ある語の文法化がどれだけ進められているかは、その語が格変化を起こすかどうかが判断の一助となる。

母音記号の長さのところがカッコ付きになっているのは、それがたとえばアクセントをつけずに発音される場合には長母音が短くなる場合があることを示す。

有生 単数 無生 複数 有生 複数 無生 複数
主格 miniha(ː) potə minissu pot
対格 miniha(ː)və potə minissu(nvə) pot
具格 miniha(ː) atiŋ poteŋ minissu(n) atiŋ potvəliŋ
与格 miniha(ː)ʈə potəʈə minissu(ɳ)ʈə potvələʈə
奪格 miniha(ː)geŋ poteŋ minissu(n)geŋ potvaliŋ
属格 miniha(ː)ge(ː) pote(ː) minissu(ŋ)ge(ː) potvələ
処格 miniha(ː) laŋ pote(ː) minissu(n) laŋ potvələ
呼格 miniho(ː) - minissuneː -
意味 書物 人(複数) 書物(複数)

シンハラ語名詞のは単数形と複数形であり、有生、無生、英語から借用語で異なった変化を示す。

有生の名詞では、複数形では語尾に -o(ː)、子音重複 (Gemination)と -u-la(ː) のいずれかが付く。無生ではほとんどの場合、形態素の欠落が生じる (subtractive morphology)。英語からの借用語では単数形の語尾に ekə が付くが複数形としての形にはならないため、単数形であると考えられている。

単数形 ammaː ballaː horaː potə reddə kantoːruvə satiyə bas ekə paːrə
複数形 amməla(ː) ballo(ː) horu pot redi kantoːru sati bas paːrəval
意味 泥棒 書物 衣服 オフィス バス 道路

上の表の左側の方に挙げられているものでは複数形の方が語長が長く、右の方では最後の paːrə ("street") を除いて逆である。有生の語彙は主に左側、無生なら右側のグループになる。

不定冠詞

不定冠詞にあたる機能は、有生の場合は -ek、無生なら -ak が担う。単数形には定性がなく、これにのみ不定冠詞が用いられる。複数形では定不定はとくに示されない。

動詞

シンハラ語の動詞の変化には3種類ある。しかし口語では人称、数、性による変化はない(文語ではその変化がある)。つまり口語では、主語と動詞の一致 (Subject-Verb-agreement) がないということである。

第一変化 第二変化 第三変化
動詞 連体形 動詞 連体形 動詞 連体形
現在 (未来) kanəvaː kanə arinəvaː arinə pipenəvaː pipenə
過去 kæːvaː kæːvə æriyaː æriyə pipunaː pipunə
先行 kaːlaː kaːpu ærəlaː ærəpu pipilaː pipicca
同時 kanə kanə / arinə arinə / pipenə pipenə /
不定形 kannə/kanḍə / arinnə/arinḍə / pipennə/pipenḍə /
強意 kanneː / arinneː / pipenneː /
意味 食べる / 開く / 開花 /

文法

  • 語順SOV型である。
  • 英語の thatwhether のような接続詞はほとんどない。ただし動詞が準動詞である従属節として分詞連体詞を作る。たとえば、"The man who writes books" は [pot̪ liənə miniha]、つまり "books writing man"と表される。日本語ではいずれにせよ「本を書く人」で、同じ語順である。
  • 左方分枝 (left-branching syntax、en) であり、日本語と同じ前置修飾である(上の例を参照)。
  • ただし数量を表す場合は後置修飾である。たとえば: "the four flowers" は [mal hat̪ərə] ("flowers four") である。日本語では普通「4本の花」「花4本」となり、両方可能である。これには異論もあり、「4」が名詞で「花」が修飾語ではないか、英語で言えば "a floral foursome" と解釈するべきではないか、とする意見もある。その意見をとれば数量を表す場合も後置修飾である。
  • 接置詞としては、後置詞はあるが前置詞がない。英語での "under the book" は [pot̪ə yaʈə] ("book under") となる。日本語では「本の下」であり、やはりシンハラ語と同じである。
  • シンハラ語には繋辞がない。英語の "I am rich" は [mamə poːsat̪] ("I rich") となる。日本語の場合は「私は金持ちである」となり、この場合「である」が繋辞に相当し、シンハラ語の表現は「私は金持ち。」と繋辞を省略した場合と同じ形である。日本語の口語では、文末を明示することで文脈的に明らかな繋辞を省くことがあり、その場合はシンハラ語と同じ形になる。シンハラ語では繋辞がない代わりに二種類の存在動詞があり、場所述語として使われる。しかし英語の be 動詞とは異なり、状態述語としては使われない。

  1. ^ Evolution of the Sinhala language シンハラ語の歴史 (英語)
  2. ^ The story of prince Pandukabhaya ウィジャヤ王の侵攻に抵抗したヤッカ族の物語 (英語)
  3. ^ WWW Virtual Library Sri Lanka : Sri Lanka: A Short History of Sinhala Language シンハラ語の歴史 (英語)
  4. ^ Baxter, Craig, Yogendra K. Malik, Charles H. Kennedy, Robert C. Oberst (eds.), (2002), Government and Politics in South Africa, Westview Press, USA.
  5. ^ Geiger, Wilhelm: A Grammar of the Sinhalese Language, Colombo 1938.
  6. ^ Gair 1998, p. 4
  7. ^ Van Driem 2002, p. 230
  8. ^ Indrapala 2007, p. 45
  9. ^ Indrapala 2007, p. 70
  10. ^ Gair 1998, p. 5
  11. ^ Ethnologue report for language code: sin シンハラ語の概略と統計情報


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