シンガポール 経済

シンガポール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 09:25 UTC 版)

経済

外国為替市場の取引額で日本を上回り、世界3位に浮上するなど[53]、屈指の世界都市金融センターになっている

2019年のシンガポールの一人当たりの実質国民総所得(GNI)は92,530ドルで、世界で最も高かった[16]

シンガポール統計局の統計によると、2018年のシンガポールのGDPは3,597億ドル[54]であり、隣国マレーシアをやや上回る経済規模である。また同年の一人当たり国民総所得(GNI)は58,770ドルで、デンマークに次ぐ世界第9位[55]

世界屈指のグローバル都市であり、アメリカのシンクタンク2019年に発表した総合的な世界都市ランキングにおいて、ニューヨークロンドンパリ東京香港に次ぐ世界6位と評価された[56]国際競争力が非常に強い国であり、2016年世界経済フォーラムの研究報告書において、スイスに次ぐ世界2位の国と評価された[57]。アジアを代表する金融センターの一つであり、2021年3月には、ニューヨーク、ロンドン、上海、香港に次ぐ世界5位の金融センターと評価された[15]。2015年の勤労者世帯の平均世帯月収は11,510シンガポールドルであり[58]東京都の勤労者世帯の平均を大きく上回っている[59]

通貨シンガポール・ドルが使用されている[60]。シンガポールとブルネイの間において等価交換協定が締結されており、シンガポールの通貨をそのままブルネイで使用することが可能である[60][61]

ASEANの原加盟国でASEAN自由貿易地域の主導国でもあり、20世紀末から急速な経済成長が続いている。

農業漁業の規模は極めて小さく、食料の9割以上を輸入に頼る。10%未満の食料自給率を2030年までに30%へ引き上げる国家目標を掲げ、垂直農法[62]や魚の養殖など食料生産に力を入れている。これは地球温暖化の食料生産への影響が懸念されていたところに、新型コロナウイルス感染症の流行 (2019年-)に伴う世界的な国境閉鎖や往来制限を目の当たりにしたことが背景となっている[63]。シンガポール政府の食品庁だけでなく企業庁も食料安全保障や食料レジリエンス(復元力)の確保を重視し、培養肉代替肉を研究・生産する企業の育成や誘致にも力を入れている[64]

租税

法人税と個人所得税の両方は、ほかの多くの国と同様に累進課税方式を採っている。住民税事業税のような地方税は存在せず、全て国税となる。シンガポールは政策的に低い税率と大胆な税制優遇を打ち出していることで知られ、同国への外資企業への誘致に重要な役目を果たしている。2014年度の個人への税率で日本と比較すると、例えば年収1億円の場合、日本では所得税以外も含めた概算で納税額の合計は約5,500万円だが、シンガポールでは1,500万円で済むため、約4,000万円節税できる計算になる。

税務当局はInland Revenue Authority of Singapore (IRAS) と呼ばれ、2015年の実績では法人税31%、個人所得税21%、消費税(GST)24%、固定資産税10%という内訳で、過去最高額となる計434億シンガポールドルを徴収した[65]

シンガポールは、積極的な税制優遇措置を取りながら透明性を確保していることでも知られ、経済協力開発機構(OECD)による評価では、タックス・ヘイヴンの疑念もあるものの「国際基準に概ね適合」という評価とされている[66](2016年4月時点)。

法人税

法人税は、日本のような自己申告課税方式ではなく賦課課税方式であり、納税額の確定は納税者の提出する申告書類などによって、IRASという税務当局が行う。このため税額の確定までに通常は2-3年、納税額や条件に確認するべき点があればさらに数年を要する。税務調査官が実地調査することはほとんどない。

現在は17%とシンガポール所得税法で定められているが、実際には部分免税制度などの優遇措置などを受けることで実質的な税負担は10%程度にできる企業が多いとも言われる。またシンガポールでは、交際費損金として認められている。

個人所得税

個人所得税は、前年分の課税を当年に行うため、所得期間と賦課年度はそれぞれ前年と当年となって1年ずれて表記される。個人所得税の源泉徴収制度はないが、企業従業員が前年度の収入分に対して当年での分割納付を行う場合は、税務当局が企業に指示を出して給与から控除される制度が存在する。

GST

2003年1月1日に、消費税付加価値税GST、Goods and Service Tax)は4%から5%に上げられ、2007年7月1日からはさらに7%になった。日本のような記帳方式ではなく、インボイス方式を採っているため、課税業者はすべての取引について「Tax Invoice」と呼ばれる税額票を発行する。住宅不動産の売買、金融商品サービスの提供、輸出取引、サービスの輸出、企業そのものの売買、三国間取引、保税倉庫内取引、(S$1百万/人以下の)個人間の取引を除く、全ての売買について課税される。

外税表示方式と内税表示方式が混在しているために、旅行者などの外国人は、飲食店や物品やサービスの購入時に注意が必要である。

固定資産税

不動産取得税は存在せず、不動産の所有に対して比較的高率での固定資産税 (Property Tax) が毎年課税される。不動産取得時には印紙税が1-3%程度かかる。

パイオニア企業への優遇税制

1967年から何度か改訂されてきた経済拡大奨励法 (Economic Expansion Incentives Act) に基づき、シンガポールにとって特に有益な事業への企業の新規参入と投資を奨励するために「パイオニア企業」(Pioneer Industries)といった分類を設けて、税制上での優遇措置が図られている。これは最初の生産開始日から起算して5-10年間の全額租税免除という適用企業にとっては極めて有利なものである。

中央積立基金

老年年金および医療貯蓄として、中央積立基金英語版が強制的に個人の収入などより徴収される。たとえば、50歳以下では毎年の給与と賞与の総額に対して雇用者14.5%と従業員20%、計34.5%の掛金を政府に払い込まれ、個人ごとのCPF口座に貯蓄される。この貯蓄からは医療費支払い、住宅購入などの特別な用途の原資となり、残りは退職後の生活安定に使用される。

メイド税

シンガポールでは、多くの家庭で外国人メイドを雇用している。 メイドの雇用には、雇用主が毎月200-295シンガポールドル(1シンガポールドルは2015年3月4日時点87.64円なので、1万7528円〜2万5854円)のメイド税を払う義務がある。この金額は多くの場合、メイドが受け取る給料よりも高い。 外国人メイド控除という制度があり、就業している女性などが外国人メイドを雇用した場合、メイド税の2倍に相当する額を、所得から税控除することが出来る。

雇用

シンガポールは伝統的に先進国の中で失業率が最も低い国の一つである。 2005年から2014年までの失業率は4%を超えず、2005年には3.1%、2009年の世界金融危機では3%の最高値を記録した。 2015年の第1四半期には1.8%に低下した。この率は日本よりも低くなっている[67]

政府は、社会家族開発省を通じてホームレスに多数の支援プログラムを提供している。プログラムの中には、貧困世帯に月額400から1000シンガポールドルを提供すること、政府の病院で無料の医療を提供すること、子供の学費を支払うことなどが含まれる。シンガポール政府はまた、市民に公共のジムで運動することを奨励するための給付金、赤ちゃんが産まれるごとに166000シンガポールドル相当の「赤ちゃんボーナス」の給付、医療費の補助、障害者のための補助金、貧しい学生に向けた安価なノートパソコンの配布、そのほか公共交通機関や公共料金など様々な分野で市民に還元している[68][69][70]

外国人労働者は国の経済にとって極めて重要であると認識されているが、政府は外国人労働者が建設産業の80%、サービス産業の50%を占めているため、これらの労働者に上限を設けることを検討している。出入国管理局は、永住権の適格性に関する多くの基準を公開している。


注釈

  1. ^ a b イギリス英語発音:[sɪŋəˈpɔː] スィンガポー
  2. ^ アメリカ英語発音:[ˈsɪŋəˌpɔr] スィンガポア
  3. ^ si beh=福建語で「非常に」、lobang=マレー語で「穴」を意味する。しかし、シングリッシュではlobangとは「何か良いものを紹介して欲しい」を意味する。
  4. ^ 例えば、文の後に「lah」「leh」「mah」をつけたり、動詞の時制を変換しなかったり、be動詞を省略したりする。ほかに、Yar?=Yes.、No lah=No.、Think what?=What do you think?.、OK lah =OK.、You like that think meh? =Do you think like that?、Haiya, Never mind one lah. = It's okay, don't worry.、Can or not? =Can you do it?など。
  5. ^ なお、日本はアジアで2位の16位を獲得している。

出典

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