シリア内戦 影響・関与

シリア内戦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/03 16:28 UTC 版)

影響・関与

シリア

2016年2月に国連の調査委員会はシリアの現状について、国外の政府・勢力による代理戦争が行われており、「戦争犯罪が横行」した結果、「国家として崩壊寸前」であるとした[489]。2016年現在、21世紀最大の人道危機が生じているとされる。

2019年3月15日、イギリスの監視団体は、内戦発生8年が経過した時点の内戦による被害概要として、死者37万人以上(民間人約11万2000人を含む)、避難や亡命を余儀なくされた者約1,300万人、被害総額は数十億ドル規模などを推測している[490]

経済

内戦によって多くの農民が農地から逃げ出し、用水路・綿工場・農業機械・貯蔵設備は損傷を受けた。エネルギー資源の不足も相まってシリアは深刻な食糧難に陥り、食料価格は高騰している[491]。 内戦によって観光客は遠のき、観光業は壊滅状態にある[492]。 シリアの石油産業は壊滅し、生産量は以前の微々たる量に戻ってしまったとされる。その結果、2013年頃には世界中の石油価格を押し上げる原因となった[493]

2011年と比較して、2015年のシリアの実質GDPは半分以下にまで落ち込んだとされる[494]。2016年2月に世界銀行が公表した報告書によると、シリア内戦でシリアとその周辺国(トルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプト)が蒙った経済的損失は約350億ドルに及び、内戦継続によって上昇し続けている[495]

医療

2016年現在、医療機関の約7割は閉鎖されているか、満足な診療を行えていない。内戦開始以降、医療機関への攻撃が相次ぎ、医療従事者の半分が国外に流出したと見られている[496]

教育

内戦によってシリア児童の基礎就学率は2010年のほぼ100%から、2015年には50%に激減し、未就学児の数は300万人に及ぶと見られている。校舎の4分の1が破損しており、シリアの教育システムを回復するには莫大な経費が必要となる。また、シリアの子どもたちがこのまま教育を受けることができず、彼らが「失われた世代」となった場合、シリアは将来にわたって毎年甚大な経済的損失を被り続けることになる[497]

人口

Syrian-American Medical Societyによると、シリアにおける2014年の平均寿命は、内戦前と比べて20年以上も短くなった[498]

2021年現在、世界最大の難民発生国である[499][500]

反政府軍に近い団体であるSyrian Network for Human Rightsは、2011年3月から2021年3月までの間に、228,647人の民間人が殺害されたとしている[501]

攻撃者 殺害された市民の数
シリア政府軍・イラン民兵 200,367
ロシア軍 6928
イスラム国 5043
武装した反政府派/シリア国民軍 4189
多国籍連合軍 3048
シリア民主軍 1348
タハリール・アル=シャーム 508
トルキスタン・イスラム党 4
その他の勢力 7212
合計 228,647

一方でシリア人権監視団は2011年3月から2021年5月までの間に、159,774人の民間人が殺害されたとしている。この値には政府の収容所で殺害された市民の推計値である47,000人は含まれていない[502]

攻撃者 殺害された市民の数 男性 女性 児童
シリアの政府軍 130,254 98,926 11,637 19,691
反政府勢力 9,062 6,742 872 1,448
ロシア軍 8,672 5,233 1,321 2,098
イスラム国 6,441 5,476 417 548
多国籍連合軍 3,847 2,162 712 973
トルコ軍 1,485 1,026 173 286
イスラエル軍 13 7 3 3
合計 159,774 119,592 15,135 25,247

環境

文化

2013年に国連教育科学文化機関は、内戦により甚大な被害を受けたとしてシリアの世界遺産世界文化遺産)全て、すなわち「古代都市アレッポ」「クラック・デ・シュヴァリエカラット・サラーフ・アッディーン」「シリア北部の古村落群」「古代都市ダマスカス」「パルミラ遺跡」「古代都市ボスラ」を危機遺産に指定した[503]

宗教

シリア内戦によって宗教的少数派の信教の自由が脅かされている。亡命や殺害などによってシリアのキリスト教徒の割合は、2006年の10%から2012年には8%に減少したとみられている[504]

スンニ派の間では、ISILに代表される過激派が台頭した。

クルド人

シリア騒乱が内戦へと拡大し、2012年には反体制派の攻勢がシリア全土に拡大。守勢に回ったアサド政権軍は首都ダマスカスをはじめ主要都市が集中する西部地域を優先的に防衛する為にシリア北部のクルド人居住地(西クルディスタン/ロジャヴァ)から部隊の引き抜きを開始し、それに伴いアサド政権軍が撤退したロジャヴァでは、クルド民主統一党(PYD)が裁判所刑務所警察署などを設置して実質的な統治を始めた[505]。2014年1月、PYDとその連合政党はクルド人居住地域の3地方(エフリンコバニジャジーラ)に暫定政権をうちたて、行政機関を整え、新憲法も導入した[506]

一般的に「シリアの反体制派組織の一つ」として括られる事が多いクルド人民防衛隊(略称YPG、前出のPYDの武装部門)だが、反体制派(特にイスラム過激派系の反体制派)と明確な敵対関係にある一方で、アサド政権とは相互に不干渉の姿勢を取り、第三勢力に近い立ち位置を維持していた。

2015年以降はアメリカや英仏独を後ろ盾とするシリア民主軍に参加するも、シリア内戦最大の激戦となったアレッポの戦い (2012-)では欧米が支援する反体制派ではなくアサド政権側に協力するなど、欧米とアサド政権(及びその後ろ盾であるロシア)双方との関係維持を目指す独自の動きを見せていたが、2017年後半から2018年前半にかけてイスラム国の崩壊やアサド政権によるダマスカス近郊及び南部地域の反体制派制圧などが相次ぎ、主要な戦闘地域がイドリブを中心としたシリア北部に移るとクルド人を巡る状況にも大きな変化が訪れた。 クルド人勢力の影響力拡大を嫌うトルコがシリアに対する本格的な越境攻撃を繰り返す一方、クルド人の後ろ盾であった欧米はトルコの軍事行動を黙認。2018年末にはトランプ大統領がアメリカのシリアからの撤退を示唆するに至り、YPGはアサド政権に軍事支援を要請。国土の南西部で反体制派制圧を成功させ戦力に余力が出来ていたアサド政権もYPGの要請に応え援軍の派遣を決定した事でクルド人勢力とアサド政権が急速に接近しつつあり、それに伴いロシアを仲介してYPGが制圧した反体制派支配地域のアサド政権への移譲とその見返りにPYDによるロジャヴァの自治承認を求める交渉が進められている。

各都市の状況

ダマスカス
シリアの首都。大部分はアサド政権が支配していたが、東グータ等の一部地域では反体制派が実効支配を続け激しい戦闘となっていた。しかし、2018年4月に東グータ全域を政府軍が奪還。反体制派は交渉の末イドリブへ退去、5月には政府軍がイスラム国タハリール・アル=シャーム等のアルカイダ系武装勢力が支配するヤルムーク・パレスチナ難民キャンプを解放。これにより、ダマスカス及びダマスカス郊外県のほぼ全域がアサド政権支配下に復帰した。
アレッポ
シリアの最大都市。 行政機関も多く、アサド政権下で登用された人々が多いアレッポはアサド政権の牙城である。郊外から反体制派が侵攻した時も市民の多くは彼らに反発した。そのため、アレッポでは反体制派と政府軍の間で激しい市街戦が行われた。
戦闘によって世界遺産の町並みは破壊され、多くの市民は街を脱出した[507][508]。2016年12月に政府軍が奪還しアサド政権の管轄下に戻る。
ホムス
内戦初期の反体制派の最大拠点となるが、2012年3月に一度政府軍が平定した。以後も断続的に戦闘が継続したが、政府軍が2015年5月に旧市街を、同12月にホムス最後の反体制派拠点だったワエル地区を奪還したことで、主要地域はアサド政権の管轄下に戻ったが、郊外では依然として反体制派支配地域も残されている。
ラタキア
アサド政権の支持基盤であるアラウィー派やキリスト教徒の住民の割合が多く、反政府勢力による散発的な攻撃はあるものの、一貫してアサド政権の統治下にある。戦火を避けるために移住した国内避難民の流入により、内戦後急激に人口が増加した。
ハマー
都市部はアサド政権の統治下にあるが、郊外では依然として反体制派が実効支配している地域も残されている。
ラッカ
2014年8月末にはISILがアサド政権のラッカ県最後の拠点であったタブカ空軍基地を制圧して以来、同組織が首都と位置付けていたが、2017年10月に米軍の支援を受けたシリア民主軍が街を奪還。ISIL壊滅後はシリア民主軍が実効支配。
デリゾール
アサド政権とイスラム国による攻防戦がたびたび行われており、2015年から2016年にかけてイスラム国がパルミラを占領した際には陸の孤島と化したが、いずれもアサド政権側が防衛に成功している。2017年9月に政府軍がイスラム国の包囲を破り打通作戦を成功させ補給路を開設し、11月に市全域を奪還。
イドリブ
シリア内戦発生以降の反体制派の牙城となっており、アルカイダ系のアル=ヌスラ戦線を前身とするタハリール・アル=シャームが拠点としている。2018年末においてクルド人地域を除く最後の纏まった反体制派支配地域。

レバノン

レバノンの窮屈な場所に暮らすシリア難民(2012年)

シリア内戦によってレバノンの貿易・観光・投資は大きな打撃を被った。公共支出は増加し、深刻な経済的な打撃を受けている。世界銀行によると、シリア内戦によるレバノンの損失は2014年時点で25億米ドルにのぼり、同年末までに約17万人のレバノン人が貧困に陥るおそれがある。国民の賃金は下がり、家計を圧迫している[509]

レバノンには2021年の時点で約84.6万人もの難民を受け入れた、世界第8位の難民受け入れ国である。また、そのほとんどがシリア人が占めており、トルコに次いでシリア難民を多く受け入れている国である[510]。2021年現在、レバノン住民の約6分の1がシリアから逃れてきた難民で、全人口に対する難民の割合は世界で最も高い。保健医療・教育・電力・水道・衛生設備などの公共サービスへの需要は高まっているが、全土でインフラが限界に近づきつつある。衛生・ごみ処理の退廃が深刻化し、病院は疲弊し、給水は滞っている。「レバノンの国民は極めて寛大な心でシリア難民を受け入れてきたが、支援は限界に近づいている」(国連難民高等弁務官アントニオ・グテーレス)とされている[509]

在レバノンのシリア難民には子どもが多く、レバノンの学校は10万人以上のシリア難民の子どもたちを受け入れてきた。しかし就学年齢に達しているシリア難民の子どもは全体で40万人を超え、数の上では公立学校に通うレバノン人の子どもを凌ぐ。そのため多くの子どもは就学できずに働いており、女子は幼くして結婚させられている[509]

国内では内戦そのものが波及し、親アサド派と反アサド派の衝突が起きた[511]。隣国シリアの内戦に危機感を覚えたキリスト教徒やドゥルーズ派は武装化を進めるとともに、シーア派武装勢力ヒズボラに接近して生き残りを図っている[512]

トルコ

エルドアン大統領とロシア大統領ウラジーミル・プーチン(2015年)。両者は2015年11月のロシア軍爆撃機撃墜事件で対立する

トルコはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領のもとで高い経済成長を実現し、「ゼロプロブレム外交」によってアラブ諸国との貿易額が上昇していた。しかし、2011年以降はシリア内戦によって流通が滞り、トルコの経済成長が鈍化する[513]

トルコは2021年時点で380万人の難民(シリア人以外を含む)を受け入れ、数の上では世界最大の難民受入れ国となる[500]

トルコは反体制派を支援し、2015年時点で170万人のシリア難民を受け入れてきた。これに対して多くの難民を受け入れてきた国境付近の東南部を中心にエルドアン大統領のシリア政策に対する不満が大きくなり、2015年の総選挙でエルドアン大統領を支持する与党公正発展党(AKP)が過半数割れの敗北を喫した[514]。この事態を受けてエルドアン大統領はそれまでのクルド人武装組織への融和策、ISILへの傍観策を改め、両勢力に軍事的な攻撃を加えた。その結果、AKPへの支持は広がり、2015年11月の再選挙ではAKPが過半数を獲得した[515]

2016年8月末、トルコ陸軍は初めてシリア領内へ侵攻し、自由シリア軍とともにアレッポ県北東部国境地帯のISIL拠点を制圧した。

ISILの退潮と前後するクルド人勢力の拡大を防ぐため、トルコは2018年時点でもシリア北部への派兵を続けている。アサド政権への批判は続けているものの、同時にアサド政権を支持するロシア、イランとも連携している[516]

ヨルダン

隣国ヨルダンでは、63万人以上のシリア難民の流入で、1年あたりの財政負担は国内総生産(GDP)の6%に当たる25億ドル(約2900億円)に上るという

イラン

シリア内戦でイランはアサド政権を支援し、中東地域における影響力を拡大させていった。アメリカのオバマ政権は中東の安定化を図り、イランへの経済制裁を解除した。しかしイスラエルやサウジアラビアなどは、イランの国際社会への復帰に強く反発した[517]

イランのアサド政権に対する支援額は数十億ドルに達し、軍事顧問2000人と民兵2万人を派遣している。アサド一族ら政権関係者の多くが信仰するイスラム教アラウィー派は、イランが国教とするイスラム教シーア派に近いとされ、国民にシーア派が多くイランの影響力を受けているイラクレバノンのシーア派組織ヒズボラと合わせて、イランは本土から地中海に至る影響圏「シーア派の弧」を形成している[518]

2018年5月、イスラエル国防軍は、イスラエルが実効支配するゴラン高原を攻撃したとして、シリア領内のイラン部隊を攻撃したと発表した[519]

イラク

2014年6月9日、シリアから浸透したISILによりモスルが陥落、街全体が武装勢力側に掌握された[520]。ISIL側はキリスト教徒やシーア派の市民を迫害し、彼らの大部分が市内から脱出した[521][522]

モスル陥落によってイラク政府はスンニ派居住地域の一部に対する統治能力を喪失し、ISILの勢力圏に組み込まれた。さらに北部のクルディスタン地域も勢力拡大に乗り出し、キルクークを占領する。こうしてイラク国家は事実上、政府支配地域、ISIL支配地域、クルディスタン地域の3つに分裂した[523]

2014年8月11日、ISILの勢力が拡大する中、フアード・マアスーム大統領は挙国一致体制を作るため、マーリキーを排除し、連邦議会副議長ハイダル・アル=アバーディを次期首相に指名する方針を示す[524]。2014年8月14日、マーリキーは退陣を受け入れ、アバーディへの支持を表明した[525]

その後、イラク政府は領内のISIL支配地域を奪回。2018年4月には、シリア東部のISIL拠点を越境空爆した。

アメリカ

2013年、アメリカ大統領バラク・オバマは、アサド政権が反体制派に対して化学兵器を使用したとしてシリア空爆を試みた。しかし、直前になって断念するなど一貫性のない動きを見せ、中東地域に対するアメリカの影響力を低下させた[526]

2015年、ISILへの地上作戦を開始し[527]アルタンフ基地英語版を設置するなどアサド政権に無断でシリア領内に米軍を駐留させた[528]

2015年、オバマ(民主党)はシリア難民の受け入れを表明した。これに対して共和党に所属する州知事を中心に19人の知事が受け入れ拒否を表明し[529]、当時2016年アメリカ合衆国大統領選挙で当選したドナルド・トランプはオバマ政権が受け入れた難民をシリアに送還する意向を示すなど、論争を巻き起こした[530]

2017年4月6日、トランプ大統領は、アサド政権が一般市民に対し、化学兵器を使用したとみなし、地中海に展開していた、アメリカ海軍の駆逐艦二隻より巡航ミサイルトマホーク59発を発射し、化学兵器使用に関わったとされる空軍基地などを攻撃したと発表した。シリア内戦でアメリカがアサド政権を直接攻撃したのはこれが初であった[531]

2018年4月13日、トランプ大統領は、アサド政権の関連施設への攻撃を指示し[532]、地中海に展開していた、アメリカ海軍の駆逐艦三隻よりトマホーク約100発を発射し、空爆に戦略爆撃機B-1も参加させた。また、イギリス軍トーネードタイフーンフランス軍アキテーヌ級駆逐艦ミラージュラファールも作戦に加わった[533]

同年10月から、シリア領内の油田を防衛すると主張し、デリゾール県ハサカ県の油田地帯を中心に違法駐留を始めた。

同年12月19日、トランプ大統領は、ISILを敗北させたとしてシリアに駐留する米軍を「速やかに」撤退させると表明した[534]。しかし反発から「ゆっくりと」撤退すると発言を修正した[535]。2019年2月21日、ホワイトハウスは撤退後も200人程度の平和維持軍を駐留する方針を発表し事実上無期限の駐留となった[536]

2019年10月28日、トランプ大統領は、エクソンモービルを含む米石油メジャーにシリアで油田操業を担わせる可能性に言及した。これについて、法律やエネルギー業界の専門家からは、戦争犯罪で非倫理的などという批判の声が上がった[537]。翌月には、「石油確保のため兵を残す。」と発言した[538]。2020年4月に、米財務省は米デルタ・クレセント・エネルギーに経済制裁下のシリアでの事業許可を許可する異例の措置を取り、北東部を実効支配するシリア民主軍から投資許可を得た。2003年にシリア政府と開発契約を結んでいた英ガルフサンズ・ペトロリアムは懸念を表明した[539]

2022年2月5日、シリアの石油鉱物資源省は、国内で生産される原油の80%以上が米国によって盗奪されていると発表した。続けており、現地で生産される原油、食糧を、イランとの国境に違法に設置したワリード国境通行所を通じて定期的に持ち出しているという[540]

ロシア

アサドとロシア大統領ドミートリー・メドヴェージェフ(2010年)。ロシアとアサド政権は強い友好関係にある

ロシアは前身であるソビエト連邦時代からシリアと緊密な関係にあり、1980年にソビエト・シリア友好協力条約を締結し同盟関係にある。ソ連崩壊後も地中海沿岸のタルトゥース港をロシア海軍が補給拠点として駐留を継続していた。

シリア内戦では一貫してアサド政権を支持し、タルトゥースのほか新たにフメイミム空軍基地などを開設し、2015年9月からは直接的な軍事介入(ロシア連邦航空宇宙軍によるシリア空爆)を開始した。アメリカ軍などによるアサド政権やシリア駐留ロシア軍への攻撃を警戒して、地対空ミサイル地対艦ミサイルを配備している。

2018年4月時点で、ロシア連邦政府による公式発表でシリアには延べ4万8000人が派遣され、44人が死亡した。これ以外に、ワグネル社などロシアの民間軍事会社スタッフもシリアで活動しており、数百人が死亡しているとの見方もある。またロシアの野党ヤブロコは、シリアでの戦費を2018年3月までで2450億ルーブルと推計している[541]

2013年、アメリカはアサド政権が化学兵器を使用したとして、シリア攻撃を試みた。しかし、ロシアがシリア政府との交渉で化学兵器破棄計画をとりまとめ、攻撃を回避させた。この結果、『フォーブス』誌による「世界で最も影響力のある人物」の2013年番付で、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンが1位に選出された[542]

プーチン大統領は第70回(2015年)国連総会の一般討論演説でアサド政権への軍事支援を宣言、各国に連携を呼びかけた[543]。ロシア国民の多くはシリアへの軍事介入を支持し、プーチンへの支持率は過去最高の89.9%を記録した[544]

2015年11月には、シリアとトルコ国境付近でトルコ軍によってロシア軍機が撃墜されるロシア軍爆撃機撃墜事件が起こり、ロシアとトルコは対立する。ロシアと対立していたウクライナがトルコへの支持を表明した一方で、トルコ国内のクルド人政党人民民主党はロシアに接近した[545]。その後、トルコはロシアに謝罪し、反体制派支援は続けるもアサド政権の存続についても事実上黙認し、イランを交えた3カ国シリアの内戦処理で連携を深めることとなった。

ロシアはシリアへの軍事介入によってアメリカから主導権を奪い、中東地域への影響力を増大させた[526]。2016年2月、プーチンはシリアに派遣していたロシア軍の主要部分を撤退させると宣言した(但しタルトゥース海軍基地及びフメイミム空軍基地への駐留は継続するとしている)[546][547]

日本

シリアでの戦闘の激化により、ゴラン高原に派遣されていた自衛隊はシリア側での輸送任務を中止。さらに自衛隊の活動地域の政情も不安定となったことから、2012年12月になり、ゴラン高原から撤収した[548]


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