ザッハトルテ ザッハトルテの概要

ザッハトルテ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/27 08:31 UTC 版)

ホテルザッハーのザッハトルテ

小麦粉バター砂糖チョコレートなどで作った生地を焼いてチョコレート味のバターケーキを作り、アンズジャムを塗った後に、表面全体を溶かしチョコレート入りのフォンダン(糖衣)でコーティングする。スポンジを上下に切り分けて、間にジャムを塗る場合もある。口直しとして砂糖を入れずに泡立てた生クリームを添えて食べる。

こってりとした濃厚な味わいを特徴とする、ウィーンのホテル・ザッハーの名物菓子であり、チョコレートケーキの王様と称される。

近年は多数のカフェや洋菓子店により、ザッハートルテと称したチョコレートケーキが提供されているが、それらは単にチョコレートのトルテの一種とするのが正しい[要出典]

歴史

1832年に、クレメンス・メッテルニヒに仕える料理人の一人だったフランツ・ザッハーが考案した[注釈 1]。飽食した貴族たちのために新しいデザートを作れというメッテルニヒの要望に応えたものであった。ザッハトルテは大変に好評で、翌日にはウィーン中の話題になったという。当時はザッハーはまだ16歳で下級の料理人にすぎなかったが、ザッハトルテの成功から頭角を現した。ザッハトルテはフランツのスペシャリテ(特製料理)として好評を博しつづけた。後に次男のエドゥアルトがホテル・ザッハーを開業すると、ザッハトルテはそのレストランとカフェで提供された。

レシピは門外不出とされたが、3代目のエドマンド・ザッハーのときにホテル・ザッハーが財政難に陥ったのをきっかけに、資金援助をしたウィーンの王室ご用達のケーキ店「デメル」が、代償にザッハトルテの販売権を得た。この際に「元祖ザッハトルテ」の文字をケーキの上にホワイトチョコレートで描く権利も譲渡したとも言われる。ここで、デメルの娘がザッハーの息子に嫁いだ際にレシピが流出したとする話があるが[1]、事実とは異なる俗説である[2]

その後、ハンス・スクラッチ『ウィーンの菓子店』という本にまで、秘密のレシピは掲載されてしまった。ついにはホテル・ザッハー側が、デメルを相手取って商標使用と販売の差し止めを求めて裁判を起こしたが、7年に及ぶ裁判の結果、ホテル・ザッハーにもデメルにも双方にザッハトルテ(Demel's Sachertorte)の販売を認める判決が下った。その結果、デメルのものは「デメルのザッハトルテ」(Demel's Sachertorte)として、ホテル・ザッハーのものは「オリジナルザッハトルテ」(Original Sacher-Torte)として売ることになった。ザッハーのものはアンズのジャムを内部にも挟むのに対し、デメルのザッハトルテは表面にのみ塗る、という違いがある[3][4][5][6]

なお、ザッハトルテは最古のチョコレートケーキと言われることもあるが[7]18世紀前半には文献上にチョコレートケーキは出現しているので誤りである。チョコレートを混ぜたケーキはヨーロッパ各地にみられ、ザッハーが最初に生み出したものではない[8]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 1814-1815年のウィーン会議で創出されたとする説もある。しかし、その場合、フランツ・ザッハーの生まれる前となり、時期が合わない。

出典

  1. ^ 雁屋哲原作花咲アキラ画「第2話 とんでもない親友」 『美味しんぼ』 第44巻、小学館、1994年5月。ISBN 4-09-183284-9http://oishimbo.jp/modules/find/index.php?id=4&kisetsu=0&ryori=0&ken=0&word=%A4%C8%A4%F3%A4%C7%A4%E2%A4%CA%A4%A4%BF%C6%CD%A7 
  2. ^ 吉田 2008, p.22
  3. ^ トゥーサン=サマ 2005, pp.361-362
  4. ^ ジョセフ・ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』(タイムライフブックス, 1978年), p.179
  5. ^ お菓子の由来物語 pp.22-23
  6. ^ ケーキの歴史物語 pp.67-70
  7. ^ トゥーサン=サマ 2005, p.103
  8. ^ 相原 2002, p.24


「ザッハトルテ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ザッハトルテ」の関連用語

ザッハトルテのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ザッハトルテのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのザッハトルテ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS