ココア 歴史

ココア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 09:07 UTC 版)

歴史

カカオの起源

カカオはアメリカ大陸に自生している。カカオは今日の南米のアマゾン川流域、アンデス山脈山麓東部およびオリノコ川流域が起源といわれる [9]。しかしながらスペイン人到来のはるか以前にもその後同様にこれらの地域で栽培されていたため、過去においてどれだけ広域であったかについては不明瞭である。カカオは古代マヤ族によって中米に伝わりオルメカトルテカ帝国アステカによりメキシコで栽培され、スペイン征服前にはメソアメリカカリブで共通通貨として用いられた。

カカオは、15世紀メソアメリカでの重要な商品であった。エルナン・コルテスによるスペインのメキシコ征服の年代記にて、アステカの皇帝モクテスマ2世が金のゴブレット(酒杯)で給仕され金のスプーンで飲むチョコレート以外何も飲まなかったことが記されている。チョコレートはバニラ香辛料で風味付けされ、口で溶けるようにホイップされていた。モクテスマ2世は日常で50杯、貴族会議では200杯以上飲んでいたといわれている。

ココアの発明

チョコレートはスペイン人により16世紀初頭に欧州へ伝わり、当初は病人に与える薬のように飲用された。17世紀初頭にスペイン国王フェリペ3世の娘アナ(アンヌ・ドートリッシュ)がフランス国王ルイ13世に嫁いだことをきっかけとしてフランスにも伝わり[9]、17世紀中期に一般的な飲み物となった。スペイン人はまた、カカオ栽培を西インド諸島およびフィリピンに伝えた。

カカオは、17世紀のスウェーデンの自然科学者カール・フォン・リンネの植物分類学により初めて植物学名が与えられTheobroma(神の食物) cacaoと呼ばれた。

17世紀以前にヨーロッパで飲まれていたチョコレートはスプーンを立てても倒れないほど濃い飲み物であり、18世紀になると牛乳を加えるようになったが大差なかった[9]。単にカカオをすりつぶしただけでは油脂分が多く、湯や牛乳に溶けにくい難点があり、1828年ごろにオランダのカスパルス・ファン・ハウテン(1770年-1858年)が、カカオマスから油脂を分離し粉末化する手法を開発し、ココアと名付けて売り出した(バンホーテン参照[注 4])。カカオマスからココアバターを分離するようになるまでココアという言葉はなく、固形にも液体にもならないペースト状のチョコレートのみが存在していた。脱脂することで当時の技術でも細かい粉にすりつぶすことができるようになり、湯に溶けやすくなった。

チョコレートの発明

ここまでのココアパウダーはもっぱら飲料にするために開発され、油脂分のココアバターは副産物として利用価値が低かった。その後、ココアバターを再利用する形で初めて固形チョコレートが発明された。ココアパウダーに元のカカオマスより多くのココアバターを混ぜ合わせ調整すると固形チョコレートが実現する。

現在の主な製法ではチョコレートの固形分はカカオマスから直接作り、足りないココアバターが加えられる。固形チョコレートを作るためにも一定量のココアバターが必要になり、ひいてはココアが生産される。チョコレートの原料としての意味でも、両者は異なり、別に作る必要がある。なるべくココアパウダーは飲料にする分だけ、かつチョコレートにココアバターを供給する分だけ作る。最終消費者の嗜好により完全にバランスさせることは困難だが、当初より、ずっと有効利用できるようになった。

日本での歴史

フランスに留学していた徳川昭武の日記に、慶應4年8月3日1868年9月18日)の出来事として「朝8時、ココアを喫んだ後、海軍工廠を訪ねる」とあり、これは日本人がココアを飲む様子が書かれた最古の史料である[10]

1918年大正7年)に森永製菓が田町工場において日本で初めて、カカオ豆からチョコレートの一貫生産を開始した。同年8月原料用ビターチョコレート、10月ポケット用ミルクチョコレートを発売している。この頃から板チョコレートの量産化でチョコレートの普及が進み始め、また、価格も輸入品に比べて安くなった。1919年(大正8年)にミルクココアを発売したのが日本製のココア第一号である[11]。また、2016年森永製菓により立冬の日がココアの日として制定された[12]


注釈

  1. ^ カカオマスの油脂を減らしていないもの、あるいは、ココアバターを加えて油脂分を増やした食品がチョコレートである。
  2. ^ 明治製菓Van Houtenなどの製品包装
  3. ^ 製菓用ローファットココアの製品包装
  4. ^ カカオマスからココアバターを分離する手法を開発したのは、息子のクーンラート・ヨハネス・ファン・ハウテン(1800年-1887年)であるとする解説が多いが、特許申請はカスパルスによる

出典

  1. ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  3. ^ ココア編”. チョコレート・ココアの用語辞典. 日本チョコレート・ココア協会. 2017年10月23日閲覧。
  4. ^ S.T.ベケット、p.51。
  5. ^ S.T.ベケット、p.50。
  6. ^ おいしいココアの飲み方森永製菓
  7. ^ 練らずに☆簡単ミルキーココアクックパッド
  8. ^ チョコレート製品について | チョコレート類の表示に関する公正競争規約 (日本チョコレート・ココア協会)
  9. ^ a b c 河野、p153
  10. ^ 日本のチョコレート事始め”. 日本チョコレート・ココア協会. 2018年11月25日閲覧。
  11. ^ 未来へ向けて。森永ココア、100年品質へ。 - 森永製菓(2024年2月14日閲覧)
  12. ^ 一般社団法人日本記念日協会に登録制定 立冬の日(11月7日)は「ココアの日」 (PDF) - 森永製菓プレスリリース(2016年10月24日)2024年2月14日閲覧。
  13. ^ S.T.ベケット、p.35
  14. ^ S.T.ベケット、p.51 - 52。
  15. ^ Bayard V, Chamorro F, Motta J, Hollenberg NK (2007). Does flavanol intake influence mortality from nitric oxide-dependent processes? Ischemic heart disease, stroke, diabetes mellitus, and cancer in Panama. Int J Med Sci.4(1): 53–8. PMC 1796954
  16. ^ 片頭痛の病態と誘発因子予防から治療まで見つかる、Eisai、2011-12-19閲覧
  17. ^ 医食同源 2003年10月






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