ゲルググ デザイン

ゲルググ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/30 23:21 UTC 版)

デザイン

メカニックデザインは、『ガンダム』総監督の富野喜幸によるラフスケッチをもとに大河原邦男がクリーンアップをおこなっており[1]、ラフの段階で基本デザインは完成している[2]

設定解説

一年戦争初期には空間戦闘用MSとしてザクIIが主力となっていたが、戦争中期には地球連邦軍のMSの情報が入ってきたことから、次期主力機の開発計画が立ち上がった。この時点ではMS-06ザクの性能向上型やMS-09ドムの宇宙仕様(後のリック・ドム)、MS-15(後のギャン)とMS-11(後のゲルググ)の案が提出されていたが、あくまで本命はゲルググであり、他の案は繋ぎでしかなかったと言われている[3]

ジオン軍は量産型ザクII(F型)に代わる次期主力MSの開発に着手するもその計画が遅延していたことから、繋ぎとしてリック・ドムを採用していた[4]。ジオン軍ではMS-11の開発遅延に伴い、主力機の大半をリック・ドムとする案も出始めたため、ジオニック社は生産が中止されていたMS-06R-1Aを改修したMS-06R-2 高機動型ザクII(R-2型)に後のMS-11用ジェネレーターを搭載し、競作機として世に送り出している[5]。ただし、MS-06R-2は一部の性能こそリック・ドムを凌駕していたものの、総合性能では劣っていた[6]。その後、MS-06-R2の技術をフィードバックしたMS-11の開発が進められる。MS-11は連邦軍のRXシリーズのコンセプトを踏襲し、ビーム兵器の標準装備化、装甲の分離構想が持ち込まれた。また、11のナンバーは他の宇宙戦特殊機に移したため、途中から型式番号はMS-14に変更された[7]

ビーム兵器の開発は機体完成よりも3か月遅れた[7][8]。本機は、基本設計をジオニック社、スラスターなどの推進部をツィマット社(熱核反応炉も同社とする資料もある[9])、ビーム兵器の開発をMIP社と、各分野における有力企業が請け負ったことにより、ジオン公国軍が総力を挙げて開発した機体となった。また、「統合整備計画」による規格共有化が3社の技術提携を生み、その成果が本機に活かされている[10][注 1]

その後、本機は「YMS-15 ギャン」に圧倒的な大差をつけ、次期主力MSとして制式採用された[11][注 2]。数値上の機体性能はガンダムと同等以上と、一般量産機としては破格の高性能を誇っており、量産があと1か月早ければ一年戦争の行く末が変わっていたかも知れないとも称された[13]

なお、この次期主力機をめぐる競作という設定は、ムック『ガンダムセンチュリー』が初出である。以後、メカニックデザイン企画『モビルスーツバリエーション (MSV)』などプラモデルの解説やゲームでは、この設定が使われている。

各部解説

頭部
構造はザクのものを高密度化・小型化したものといえる。格闘戦での耐久性を考慮し、パイプは内装式となった[13]
胴体部
内部には水陸両用機やMS-06R-2用のジェネレーターをベースに、新型の冷却機関を搭載。ビーム兵器の連続使用が可能となっている[13]
腕部
駆動機関はザクと同等のものを小型化・高速化し、反応速度を高めている[13]
陸上戦も想定されていたため、前腕部にはジェットエンジン補助推進システムが内蔵されている[3]。ただ、宇宙での戦闘ではデッドウェイトとなったため、追加装備や防御装備に換装される機種もあった[14]
スラスター
スラスターは腰部スカート内、脚部フレア内に設けられている。熱核ジェットエンジンは大気圏内ではジェットエンジンとして機能し、その際には腰部全周に設置されたエアインテークより吸気を行った。これらスラスターの開発には、ツィマット社の技術が投入されている[10]
背部
複数のランドセルが用意されており、任務に応じて換装可能[3]

武装

ビーム・ライフル
ジオン軍がサイド6経由で入手した連邦軍の技術資料(エネルギーCAP技術)を導入し、開発された。ただし、製作に難航して完成は本体よりも遅延している[11]。ジオン公国軍が初めて量産化したビーム・ライフルとなる[13]
ビーム・ナギナタ(ビーム・ソード)
アルバート社製の近接用兵装[7]。資料によってビーム・ソード[8][15][16]、ビーム剣と呼称される[17]。通常のビームサーベルとは異なりツインエミッター式を採用しており、発振器本体の片側のみ、または両端からビームの刀身を形成可能[18]。ただし、両端からビームを発振した状態での取り回しは難しいため、片側のみで使用されることが多かった[14]。なお、テレビ版第38話では発光も発熱もしない実体剣として描写されており、シャア専用機がガンダムのビーム・サーベルをグリップでも受けていた。
刀身の色はテレビ版では水色だが、『めぐりあい宇宙編』のゲルググの新作画シーンでは、両刀状態も含めてビーム刀身の色がすべて黄色になっており、テレビ版の場面を流用した水色から、新作画の黄色への鮮やかな早変わりも見られる。『めぐりあい宇宙編』のテキサスコロニー内でのガンダムとの戦闘シーンでは、グリップが短く黄色い片刀の状態でフェンシング風の突きを披露している。これは、ガンダムに斬りかかるギャンのビーム・サーベルのみのカットをテレビ版から流用し、ゲルググの新作カットに繋げているためで、色もそれに合わせての変更だった。
ガンプラのシャア機には、MGHGUC共に山吹色のクリアーパーツが採用されている(MG Ver.2.0では黄色)。『機動戦士ガンダム0083』に登場したガトー専用機の刀身の色も黄色である。『機動戦士Ζガンダム』に登場した量産型の刀身は、ヤザン・ゲーブルギャプランに奪われて使用された際には水色の両刀状態を見せるが、刀身がS字でなく同方向に反っていた。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』での回想でも、シャア専用機が水色のナギナタを振るっている。
シールド
ゲルググ用の防御兵装として標準的なシールドで、手持ちまたは背部のコネクターに装備する[18]。「MA-08 ビグ・ザム」などの技術流用による耐ビームコーティングにより、実体弾に加えある程度のビーム兵器を防ぐことができた[14][19]。なお、標準のカラーリングは紫紺に山吹色の縁取りだが、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』回想シーンではボディカラーと同じピンク一色になっていた。
その他
出力を推力に回すため、ビーム・ライフルの代わりにドムのジャイアント・バズやザクIIのMMP-80マシンガン、ロケットランチャーなど、下位互換性を完備していることからさまざまな武装を運用できる。メカニックデザイン企画『MSV-R』では、キマイラ隊で使用された武装として、改良型のビーム・ライフルや簡易型のミサイルランチャー、ザク・デザートタイプ用のラッツリバー3連装ミサイルポッドが新たに設定されている[注 3]

設定の変遷

全52話の予定で書かれていた監督の富野の当時のメモによると、当初の呼称はギャンだった[20]

ギャンとの競作の設定は『ガンダムセンチュリー』が初出で、『MSV』に引き継がれ、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』でも再現されている。ただし、テレビシリーズ、劇場版、またその後の映像作品においては触れられていない。また、テレビシリーズの劇中ではマリガンのセリフで「ゲルググの装備は終わっているが、プロトタイプなので完全とは言えない」とシャア専用機がプロトタイプであることが語られている。

高性能だった本機が十分な実績を残せなかった理由については、作中で実戦配備は熟練パイロットの不足した戦争末期であり、多くが学徒動員の新兵によって操縦され、その真価を発揮することができなかったためと語られている[注 4]。また、ザクIIを愛機としていたシャアはテキサスコロニーにてガンダムに敗れた時には「慣らし運転もしないで使うと…」と発言しており、機種変更にはある程度の慣熟訓練を必要とすることを示している。のちの資料では、「熟練パイロットも愛着があり扱い慣れているザクIIやリック・ドムを好んで搭乗し続けた者も多かった」[注 5]「ジオン製MSは統合整備計画の実施まで操縦系統が統一されていなかったため、機種転換時にそれが問題となった」とする説もある。

一方、『MSV』では初期型が多数配備された「エース部隊」が設定された。その後の映像作品(『機動戦士ガンダム MS IGLOO』)や外伝漫画・ゲームなどでも、本機に搭乗するエース・パイロットが多数登場している。

バリエーション


注釈

  1. ^ OVA機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話では、「EMS-04 ヅダ」を巡るツィマット社とジオニック社の確執を目撃したヨーツンヘイム艦長が、「これでは次期主力MS(ゲルググ)の開発が遅れるのも当然だ」と嘆息していた。
  2. ^ しかし、すでに制式採用は決定しており、このコンペティションは形式的に行われたものであったともされる[12]
  3. ^ ドムのジャイアント・バズを携帯するのは、高機動型と呼ばれるB型の設定を創作した小田雅弘が、『HOW TO BUILD GUNDAM2』(ホビージャパン、1982年)においてアクセントとして作例に装備させたものが初出で、当時は特段の理由は持たされていなかった。その後、『ガンダムウォーズ・プロジェクトゼータ』に掲載された高橋昌也の短編ノベライズでシャア専用ゲルググが携帯したり、『機動戦士ガンダムΖΖ』で青の部隊のゲルググが使用したりといった例があるが、やはり装備理由について特に設定はない。
  4. ^ テレビシリーズ『機動戦士ガンダム』および映画『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』のキシリア・ザビとトワニングの会話による。
  5. ^ 漫画『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』では、学徒兵の中でも、機種転換が間に合わなかった古参パイロットと隊列が組めるだけの操縦技量を有する者はザクIIやリック・ドムに搭乗し、技量のない使えない学徒兵が本機を受領した、とされている。しかし、アニメ本編でのキシリアとトワニングの会話内では、本機と合わせてドムもまた「動きが目立たない」ことが指摘されている。
  6. ^ 資料によっては「指揮官用ゲルググ」とも呼称される[21]
  7. ^ 資料によっては初期の型式番号をYMS-14とし、後にMS-14Sに改められたとするものも存在する。
  8. ^ 総生産数、およびゲルググキャノンの未生産分の数はプラモデル 1/144「ゲルググキャノン」の解説書などに見られる。ただし、後年のHGUC「量産型ゲルググ」やMG「量産型ゲルググ Ver2.0」では参考数値として扱われており、正確な数値かは断定を避けている。
  9. ^ 劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』などでは、キシリアに対してトワニング准将が、ゲルググやリック・ドムに学徒兵が搭乗していると報告している。
  10. ^ 宇宙世紀でMSに用いられる「レプリカ」という単語は、外装はそのままで内部を最新のMSで置き換えた機体の意味合いで用いられる。
  11. ^ もともとは、公式ガンダム情報ポータルサイト『GUNDAM.INFO』で2017年まで「ガンダム MS動画図鑑」として配信されていた動画である[36]
  12. ^ 同資料のソロモン防衛戦の描写では、MSデッキには搬入できないほど大型であったとされているが[39]、実際には制式採用のビーム・ライフルよりやや長い程度である。
  13. ^ Ark Performance『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』第5巻、角川書店、2012年9月、8頁。それまでの巻では型式番号・名称とも「UNKNOWN」とされてきた。
  14. ^ 同誌によると、本機は対空MS「MS-06K ザクキャノン」の「ゲルググ版」が着想の元であるほか、(RX-77 ガンキャノンを含む)連邦軍RXシリーズの「ジオンに与えた影響は極めて大きく」、それゆえゲルググにも「ビーム・キャノンを装備したタイプがあってもよいのでは?」と小田雅弘は述べている。
  15. ^ なお、『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』5巻表紙や同10巻1ページの口絵では1年戦争時の機体と同様の左肩以外の左半身もストライプの機体が描かれている。
  16. ^ ゲーム『SDガンダム GGENERATION SPIRITS』では、「ケン・ビーダーシュタット専用ゲルググ」という名称になっており、宇宙でも使用可能であるほか、グレネードランチャーがなくなっている。
  17. ^ 小説版『0083』などで言及されている。
  18. ^ 『0083』第8話、シーマ専用機とジム・カスタム(サウス・バニング大尉搭乗)の戦闘より。
  19. ^ 『0083』第12話「強襲、阻止限界点」で使用。
  20. ^ a b 漫画『0083 REBELLION』のみ。
  21. ^ なお、後述のようにブレード・アンテナを装備しない例も見られる
  22. ^ プラモデルキット説明書内の用語辞典においては記述がみられるが、諸元表に記述がみられず、装備が定かでないものも存在する[62]
  23. ^ 本編には登場せず、設定のみの存在。
  24. ^ 一方で、ΖΖガンダム(ハイパー・ビーム・サーベルの出力は1.1メガワット)と互角に戦えるほどの大出力を誇るとする資料もある[82]
  25. ^ ただし "Constantly changing" と英文表記。
  26. ^ ただし "Super Hard Alloy Steel" と英文表記。
  27. ^ プレミアムバンダイからHGでプラモデル化される際には、「『機動戦士ガンダム MSV-R』より」とされた[89]

出典

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