グルーミング グルーミングの概要

グルーミング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/17 09:11 UTC 版)

「顔を洗う」ネコ
グルーミングするニクバエHelp:音声・動画の再生
やれ打つな蠅が手を摺り足をする――小林一茶『八番日記』

ニワトリからゾウに至るまでのさまざまな動物が、体についた寄生生物を取り除くために水や砂塵を自分に浴びせる。グルーミングは摂食(食物から出た血、土、樹液、汁などの除去)や戦闘の後に行われる場合もある。前=性的もしくは性的な行為、特に自慰的な行為とグルーミングが結び付く種もある(コウモリの一部がそうである[要出典])。しかしながら、掃除と衛生だけがグルーミングの唯一の機能なのではない。

動物行動学はグルーミングの社会的役割と伝播を明らかにし、研究を行っている。これは哺乳類では非常に重要なもので、たとえばサルではシラミ取りが序列の印や紛争の解決に寄与しており[1]、またネコ科などでは個体間や親子間での体毛の舐め合いにも社会的意味がある。

特化した腺から分泌されるホルモンもしくはフェロモンを全身に広げることで個体もしくは群の匂いのサインを維持するという役割もある。木や岩に体をこすりつけることで、動物は縄張りを示すのに役立つ匂いもしくは視覚的な印を残す。イワツバメに見られるように、グルーミングは集団で行われることもある。

ある種の動物では、毛皮や羽根が紫外線の皮膚への到達を妨げている。鳥類や毛皮を持つ哺乳類においては、皮膚から毛皮や羽根に皮脂を分泌し毛繕いすることによって口からビタミンDを摂取しているとの説もある[2]

昆虫の大部分は定期的に体、特に触角の掃除を行う。海洋哺乳類はざらざらの地面や水底にこすりつけることによって体をきれいにする。

寄生生物

進化の過程で、ある種の寄生生物ノミシラミダニなど)はこれに適応し、その宿主のグルーミング方法から効果的に逃れるようになった。さらには、多包条虫などの一部の寄生生物や微生物(真正細菌ウイルス、とりわけトリインフルエンザウイルス[3])は、糞便から口への感染サイクルなどの維持にグルーミングを利用すらしている。

掃除屋

他のより大きな種のグルーミングに特化した種もあり、ダニシラミ、口内に残り腐敗しつつある食べ物などを取り除く。鳥類ではウシツツキ英語版魚類ではホンソメワケベラなど(掃除魚)の種がこの仕事に特化している。ホンソメワケベラにグルーミングされる大きな魚は意図的に口や鰓を開き、ホンソメワケベラが口の中をついばんでも捕食することはない[4]

鳥類

グルーミングは鳥類が余裕のある時にする活動の中で最も多くの時間を費すものである。脚を清め、くちばしをこすり(時には研いで鋭くし)、羽毛をなめらかにし整える。これはまた社会的な活動でもある。水以外のもので体を洗うことを知っている種もあり、たとえばスズメ目の鳥は家屋の煙突で煙を「浴びる」。さまざまなステップが観察される――

  • 水浴び
  • 砂浴び、もしくはその他の何かを浴びる
  • 羽繕いをし羽を整える
  • つや出しと防水加工
  • 綿毛の削り取りや粉振り[訳語疑問点]
  • 乾燥と日光浴

鳥は自分の尾腺フランス語版英語版から出る蝋質の分泌物で羽を整える。この行動の有用性には議論があるが、このワックスは羽の柔軟性に作用し、また羽を劣化させる細菌の増加を抑制する抗菌剤として機能していると考えられる[5]。グルーミングに水しか用いないというわけではなく、250以上もの種がアリから得た蟻酸で自分の分泌物を補い[6]、また多足類のものなどの他の分泌物を用いる種もあり[7]、さらにアリの巣の土を用いる種もあり、これも同等な効果があるものと見られる[8]。この行動はエルヴィン・シュトレーゼマンにより初めて「蟻浴」として記述された[9]。この行動の機能は抗菌・抗寄生虫に類するものであろうと推測されているが[10]、羽の生え変わりに関係があるという可能性もある[11]

アオサギの羽繕い

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  1. ^ 中村美知夫「霊長類の文化 (PDF) 」 、『霊長類研究』第24号、日本霊長類学会、2009年、 pp. 229-240、 doi:10.2354/psj.24.229ISSN 1880-2117
  2. ^ Stout, Sam D.; Agarwal, Sabrina C.; Stout, Samuel D. (2003). Bone loss and osteoporosis: an anthropological perspective. New York: Kluwer Academic/Plenum Publishers. ISBN 0-306-47767-X. 
  3. ^ Leschnik, Michael; Joachim Weikel, Karin Möstl, Sandra Revilla-Fernández, Eveline Wodak, Zoltan Bagó, Elisabeth Vanek, Viviane Benetka, Michael Hess, Johann G. Thalhammer (2 2007). “Subclinical Infection with Avian Influenza A H5N1 Virus in Cats”. Emerging Infectious Diseases 13 (2): pp. 243-247. doi:10.3201/eid1302.060608. pmc: PMC2725870. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2725870/. "Therefore, the most likely route of transmission for these cats is contagious fecal contamination of the hair and oral uptake during grooming." 
  4. ^ 山岡耕作「魚のつくるなわばりから共生を考える (PDF) 」 、『黒潮圏科学の魅力』、BIO City、2007年4月、 pp. 36-43。
  5. ^ Shawkey, M., Pillai, S., Hill, G. (2003). “Chemical warfare? Effects of uropygial oil on feather-degrading bacteria” (英語). Journal of Avian Biology 34 (4): 345-349. doi:10.1111/j.0908-8857.2003.03193.x. 
  6. ^ Ehrlich, P.R.; Dobkin, D.S.; Wheye, D. (1986). “The Adaptive Significance of Anting” (英語). The Auk 103 (4): 835. http://elibrary.unm.edu/sora/Auk/v103n04/p0835-p0835.pdf. 
  7. ^ Clunie, F. (1976). “Jungle mynah “anting” with millipede” (英語). Notornis 23: 77. 
  8. ^ Kelso, L. and Nice, Margaret M. 1963 A Russian contribution to anting and feather mites. The Wilson Bulletin 75(1):23-26 PDF
  9. ^ Erwin Stresemann, Ornithologische Monatsberichte XLIII. 138 en 1935
  10. ^ Revis, H.C. et Waller, D.A. (2004). “Bactericidal and Fungicidal Activity of ant chemicals on feather parasites: an evaluation of anting behavior as a Method of Self-medication in Songbirds” (英語). The Auk 121 (4): 1262–1268. 
  11. ^ Power, E. E et D. C. Hauser (1974). “Relationship of anting and sunbathing to molting in wild birds” (英語). The Auk 91: 537-563. http://elibrary.unm.edu/sora/Auk/v091n03/p0537-p0563.pdf. 
  12. ^ Aureli, F., van Schaik, C., & van Hooff, J (1989). Functional aspects of reconciliation among captive long-tailed macaques (Macaca fascicularis). American Journal of Primatology, 19, 39-51.
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  14. ^ de Waal, F. (1989). Peacemaking among primates. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  15. ^ Smuts, B., Cheney, D., Seyfarth, R., Wrangham, R., & Struhsaker, T. (1987). Primate Societies. Chicago: University of Chicago Press.
  16. ^ Schino, G.; Scucchi, S.; Maestripieri, D.; Turillazzi, P.G. (1988), “Allogrooming as a tension-reduction mechanism: a behavioral approach”, American Journal of Primatology 16: 43–50, doi:10.1002/ajp.1350160106 
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  18. ^ Gumert, Michael D. (December 2007), “Payment for sex in a macaque mating market”, Animal Behavior 74 (6): 1655–1667, doi:10.1016/j.anbehav.2007.03.009 
  19. ^ Moore, D.; Angel, J.E.; Cheeseman, I.M.; Robinson, G.E.; Fahrbach, S.E. (1995), “A highly specialized social grooming honey bee(Hymenoptera: Apidae)”, Journal of Insect Behavior 8 (6): 855–861, doi:10.1007/BF02009512 
  20. ^ Bshary, R.; Schäffer, D. (2002), “Choosy reef fish select cleaner fish that provide high-quality service”, Animal Behaviour 63 (3): 557–564, doi:10.1006/anbe.2001.1923 
  21. ^ Spruijt, B.M.; Van Hooff, J.A.; Gispen, W.H. (1992), “Ethology and neurobiology of grooming behavior”, Physiological Reviews 72 (3): 825–852, PMID 1320764 
  22. ^ Kimura, R. (1998), “Mutual grooming and preferred associate relationships in a band of free-ranging horses”, Applied Animal Behaviour Science 59 (4): 265–276, doi:10.1016/S0168-1591(97)00129-9 
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  24. ^ Nelson, H. (2006), Human mutual grooming: an ethological perspective on its form and function 
  25. ^ Nelson, H. (2007), Encoding and decoding mutual grooming: Communication with a specialized form of touch 
  26. ^ Keverne, E.B.; Martensz, N.D.; Tuite, B. (1989), “Beta-endorphin concentrations in cerebrospinal fluid of monkeys are influenced by grooming relationships”, Psychoneuroendocrinology 14 (1-2): 155–161, doi:10.1016/0306-4530(89)90065-6, PMID 2525263 
  27. ^ Sapolsky, Robert M. (September 1997), “The Importance of a Well-Groomed Child”, Science 277 (5332): 1620–1621, doi:10.1126/science.277.5332.1620, PMID 9312858 


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